紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第四話・調律/帰還のパーフェクトハンター

「青い空、白い雲、小鳥の囀ずり!」


ああ、素晴らしき日常!
早朝5時30分。河川敷で盛大にシャウトする紅奏夜。
久々にキバットの叩き起こしを喰らわず早起きした奏夜は、早朝の散歩に出掛け、この河川敷へとやってきていた。


理屈を抜きにして、早起きとは快楽を伴う行為である。
正確には、普段とは違う行動を取っているがゆえの新鮮さなのだろうが、今の奏夜がそんなことを気にしないくらいにハイなのは、先ほどの変人丸出しのセリフで一目瞭然だ。


「はっはっはー!! ではここらで……」


土手に置いてあるケースを開き、バイオリンを取り出す。


「ご近所の皆さん、今日は十億ドルの演奏をモーニングコールでお届けしよう!!」


ハイテンションを通り越してただの近所迷惑になりつつあるが、止める人間も、止められる人間もいない。
そして唯我独尊状態の奏夜が、バイオリンの弓を弦に当てかけた時、




「先生、近所迷惑になりますよー」




止められるかどうかはさておき、何やら絶賛暴走中の奏夜を止めようと、坂井悠二は土手沿いの道から声を挙げた。


◆◆◆


「……で、ゼェ、お前は何で、ハァ、こんな早朝に、ここにいんだよ……」
「はっ、はぁ……あ、朝の運動ですよ……」


数分後、息を切らした奏夜と悠二が土手に寝転がっていた。


――結局、奏夜は悠二に注意されてもバイオリンを手放さず、割とマジなバトルが展開される運びとなった。
キバになっていない状態での奏夜の身体能力は、一般的な成人男性から見れば、上の中というところ。
しかも暴走状態であったがゆえに、手加減の枷がやや外れ気味だったので、そんな奏夜を悠二が止められたのは、“零時迷子”の超感覚があるとはいえ、奇跡に近かった。


ちなみに数分前のバトルでの音声を拾ってみると、


「ええい離せ坂井! 今日は滅茶苦茶調子が良いんだ、お前は歴史に名を刻むかも知れん名演奏を潰す気か!」
「なら家でやって下さい! 騒音は立派な公害ですし、歴史に名を刻むより早く、警察署のブラックリストに名を刻むことになります!」


こんな調子。
悠二かいかに常識的で 奏夜がいかにアブノーマルかが伺い知れる会話である。


「それにしても先生、バイオリンなんて弾けたんですね」
「ああ。とは言っても、俺の専門は弾くことじゃなくて、作ることだけどな」
「作るって……要するに職人さんってことですか?」
「それ以外にどんな意味があるってんだよ。一応俺の本業はバイオリン職人で……って坂井。何だその滅茶苦茶意外ですみたいな顔は」
「いや、事実意外なんですけど……」
「――そんなに意外か? 公務員の傍らの兼業って」


吉田の時も思ったが、別に驚くようなことではないと思う。
今時、手に職スタイルは珍しくないと思うのだが。


「いえ、バイオリン職人っていう職業もそうなんですけど、何だかいつもの先生のイメージに、音楽が結びつかなくて」
「引っ掛かる物言いだなオイ」


奏夜は顔をしかめるが、普段の彼の傍若無人な態度を見ていれば、紅奏夜=バイオリン職人などという図式は浮かびようがない。
職人業に求められる『繊細さ』という言葉と、奏夜の人格はあまりにミスマッチなのだ。


要するに、原因は『日頃の行い』である。
だが、当人はその事実にまるで気付かない。


「俺のイメージに合わない、ね……。成る程。じゃあ、少し聞いてみるか、坂井? 十憶ドルの演奏を。」


不敵な笑みを浮かべ、バイオリンを再び構える。


「だから先生、音が……」
「安心しろ。なるべく静かな曲調のヤツを弾いてやる。お前は黙って、俺のイメージ払拭を懸けた演奏を聞くがいい」


やや強引に奏夜は立ち上がり、演奏を始める。
と同時に、奏夜の雰囲気がガラリと変わった。



(えっ……?)


悠二は思わず目を剥く。


そこに、普段学校で見る奏夜の姿は無かった。
目を閉じ、右手の弓と左手の弦を、淀みない動作で操っていく。
優美に生み出されていく涼やかな音色。
まるで、音が支配するこの空間だけが切り取られたかのようだった。


心に染み渡る音楽と、それを生み出す紅奏夜。
これら全てが、一つの芸術。


「………」


もはや形容できない領域にある奏夜の演奏を、悠二は奏夜と同じように、目を閉じながら鑑賞する。
やがて音を長く伸ばし、奏夜は演奏を終えた。


「さて、ご感想は?」
「……えっと」


にかりと笑う奏夜に対し、悠二は言い淀む。
もはやどう形容していいかわからないくらいに、奏夜の演奏は一線を画していたのだ。


「――凄かったです。僕、バイオリンとかには詳しくないんですけど、技術とかそういうもの以前に、音楽が心に響いてきたみたいでした」
「ありがとう。俺にとっちゃ最高の称賛だ」


満足して、再び楽器を閉まった奏夜に悠二は尋ねる。


「でも先生。それだけ弾けるのに、どうして教師になろうと思ったんですか?」


音楽専攻なら分からなくもないが、奏夜の専門教科は現国だ。
ますます接点はない。
奏夜は「んー」と考えるような仕草をして、


「別に名を残したいとは思ってないからな。名声なんて、自分がやったことのオマケに過ぎないし。
バイオリン作りだって、ただ越えたい目標があるから始めただけさ。――俺はさ、ただ音楽が好きなんだよ」


そう言う奏夜の目には、いつもの気だるそうな様子は無く、夢を追いかける少年のような、輝かしさがあった。


(……やっぱり底が知れないよなぁ、奏夜先生って)


名を残すことに興味はない。
それらはただの付属品。
ただ自由に、自分のやりたいようにやる。


それが紅奏夜という人間なのだ。


――自分とは真逆だ、と思う。
自由に生きるどころか、ただ目の前の問題を片付けるだけで精一杯で、あの少女に頼るしかない自分とは。


「それに兼業扱いとはいえ、教師って仕事にも俺は満足してるんでな。お前みたいなのを相手に、楽しくやらせてもらってるよ」
「……それはよく分かります」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」


奏夜は怪訝そうな顔をしたが、取り敢えず気になったことを聞いた。


「そういや坂井。お前朝の運動とか言ってたが、いつもこんな早起きなのかよ。運動部でもあるまいに」
「いえ、運動を始めたのはつい最近です。ちょっと、体力つけなきゃなーって思うことがあって」
「ふーん、何だよその体力つけたいと思うようなことって」


大体の予測はついていたが、奏夜はそれでも聞く。




「……誰かに守られっぱなしなのは、自分の身を自分で守れないのは、いやだから」




はっきりとした口調で、悠二はそう言った。
奏夜のように、万事を思い通りにするほどでなくてもいい。


(ただ、シャナに迷惑をかけないくらいには)


せめて、自分の身を自分で守れるくらいには、強くなりたいのだ。


(……ふむ)


悠二の望むことを察したのか、奏夜は心中で唸る。
つまりは、平井の足手まといになりたくないというわけか。


その選択自体は悪くない。
ただ奏夜は、悠二は別にシャナの足手まといとなっているわけではないと思っていた。
フリアグネの時も彼は十分役に立っていたし、結果的には自分も助けられた一人である。


――要するに、悠二が少し背伸びをしているように見えたのだ。


(まったく……、率直過ぎる向上心だ)


それが悠二の良いところでもあるのだが。


「自分の身を守るねぇ……通り魔にでも襲われたのか?」
「そんなとこです」


実際はもっとタチの悪い話だろう。
何せ、自分が一度喰われているのだから。


「ま、いいんじゃねぇの? 最近は物騒な世の中だしな。最近だと廃ビルが爆発したりもしたしさ」
「……ですね」


その犯人は僕の身近にいますとは、さすがに言わない。


「そうでなくても、自分の身を守れるようにして、損はないだろうさ。誰かを頼るってのも、同じくらい大切だけどな」


キバであることを明かしていないため、奏夜は月並みな一般論を唱え、土手から立ち上がる。


「んじゃ、俺もそろそろ行くわ。鍛えるのもいいが、張り切り過ぎて授業でバテんなよ」
「わかってます。じゃあまた後、学校で」


悠二も立ち上がり、二人は反対方向に歩き去った。


◆◆◆


奏夜と別れて十分後。
坂井家庭園にて。


「はッ!」


そこには、刀に見立てた木の枝を振り回すシャナと、それを懸命にかわす悠二の姿があった。


「……ッ!」


反射神経を総動員して、縦斬りの軌道をどうにか回避する。
しかしシャナはそれを予想し、勢いをつけた足払いをかけた。


「わ、わわ!?」


バランスを崩した悠二は後ろによろめき、地面に落下する。
そこに再び、シャナの斬撃だ。


「っ……わ…」


思わず目を瞑り、


(しまった、目を……!)


自分の失敗に気が付く。


――パシンッ!


「イッぎっ!?」


シャナの容赦なく振り降ろされた木の枝がクリティカルヒット。
情けない声と共に、悠二はぐらぐら揺れる頭を押さえて悶える。
そんな悠二に、上から声がかかった。


「良かったのは二撃までね。一番攻め込まれ易い体勢が崩れた時こそ、しっかり目を開いてなきゃダメ」
「うん。そう……だよな」


シャナの評価を素直に受け入れ、悠二は立ち上がる。


「次はちゃんと見るよ」
「よろしい」


シャナはにこやかに笑い、今日の鍛練終了を伝える。


「おつかれさ~ん」


縁側に座っていたキバットが、悠二にタオルを渡す。


「ありがとキバット」
「シャナちゃんもお疲れ様~」
「ん」


同じく縁側にいたキバーラのねぎらいに、シャナも軽く答える。
――あれ以来、“紅世の徒”絡みの事件は起きていないが、何もキバサイドとの交友が途絶えたわけではなかった。


その証拠が、キバットとキバーラだ。
この二人(二匹)はどこで聞き付けたのか、最近始まったシャナと悠二の鍛練風景を、しばしば見にくるのである(ちなみに奏夜も了承済みなため、何の問題もない)。


おかげで、シャナと悠二にとって、キバットとキバーラはもはや馴染みの顔なのだ。


「しかし、悠二も毎日頑張るねぇ」


縁側に座る悠二の隣にキバットは座る。


「うん。少しずつでもいいから、足手纏いから抜け出したいからさ」
「うんうん。その向上心は大事だぜ。……まったく、あいつにも見習わせてやりたいな」


キバットのいう『あいつ』がキバのことだというのは、さすがにわかった。


「キバって、戦う訓練とかしてなかったの?」
「あ~。あいつの戦い方は、技術じゃなくて本能みたいなもんだからな」
「本能って……自分の意思で戦ってないってこと?」
「キバに成り立ての頃の話だけどな。今じゃ自分の経験で戦ってる部分が多いぜ」
「力があっても、それを上手く操れなかったってコトよ。実際最初は負けてばっかりだったしね」


キバーラが言葉を次いだ。


「だから悠二くんも、いつか強くなれるわよ。ね、シャナちゃん?」
「……ちゃんと努力すれば、ね」


突然話をふられ、シャナは悠二から顔を反らして答える。
その様子に、悠二は少し笑って頷いた。


「――うん、頑張るよ」


その時の笑顔を見て、真っ赤になったシャナに、戸惑う悠二を見て、キバットはぽつりと呟いた。


「やれやれ、焦り過ぎなきゃいいんだけどな」


図らずもそれは、奏夜がした心配と同じだった。


――懸念とは、的中するものである。


悪いものなら、なおのこと。


◆◆◆


「!?」


――事は、放課後に起こった。


滞りなく授業を終えたシャナと悠二は、あれ以来執拗に二人の仲を調べたがるクラスメイト(主に佐藤、田中、緒方という悠二の友達だったが)を撒くために一旦別れ、後に合流するという下校方法をとっていた。


そんな折、屋根を飛び移るシャナが、異変を感じ取った。


「アラストール、何かいる!」
『気配はごく小さい……“燐子”か』


アラストールもシャナに同意する。


「“狩人”は討滅したのに」
『はぐれ燐子だ。自身で“存在の力”を取り込めぬとはいえ、主を亡くしても数日なら保つ』
「何で今頃になって活性化を……」


ふと、シャナの脳裏に“ミステス”の少年の顔が浮かぶ。


「まさか悠二!?」


悠二は今、フリアグネが残した火除けの指輪“アズュール”を持っている。
主の力にあてられて、“燐子”が活性化してもおかしくはない。


『いかん。急ぐぞシャナ!』
「うん!」


アラストールが言い終わらない内に、シャナは地を蹴っていた。


◆◆◆


スイングされた腕が、悠二の身体をかすった。


「ぐ……!!」


衝撃で悠二は、アスファルトの上を転がる。
目の前にある、巨大なぬいぐるみのネコの形をした“燐子”は、デフォルメされた身体に似合わぬツメと牙を覗かせている。


「ご主人様の…宝具…。“ミステス”を捕らえて、誉めてもらう……」


悠二は歯噛みしたい気持ちでいっぱいだった。


(くそっ…ここは封絶の中じゃないんだ。シャナが来るまで時間稼ぎをしないと……)


そう思っていても、不意討ちまがいのダメージを負った身体は動かない。
“燐子”の唸り声が、着実に近づいてくる。


――一番攻め込まれ易い体勢が崩れた時こそ、しっかりと目を開いてなきゃダメ。



動悸を押さえながら、シャナの言葉を反芻する。


(体勢が崩れた時……しっかりと)


スピードが上乗せされた三本のツメが、悠二の身体をとらえた。


(目を瞑らずに…)


視界が真っ暗になった。


――ガンッ!


「がっ……」


目を閉じたと認識する間も無かった。
そのまま悠二は背中から塀に激突し、壁に打ち付けられた。
肺から空気が根こそぎ吐き出され、意識が朦朧としてきている。


満身創痍の悠二の様子などお構い無しに、“燐子”はトドメを刺すため、再び右腕を振り被る。


(消えるのか……僕)


虚ろな意識の中で、悠二は無力感を噛み締める。
浮かぶのは、あのフレイムヘイズの少女。


(あの子に、何も、出来ないまま……)


心を支配する深い後悔。


それら全てを塗り潰すかのように“燐子”の巨腕が、痛烈な一撃を悠二に叩き込もうとし――。





白い影が、悠二の視界を覆った。





「……えっ?」


否、その影が、燐子の攻撃を弾いたのだ。
激痛を訴え続ける身体を起こし、壁に全身を預ける形で、悠二はようやく、その影の正体が、白と金、蒼のカラーリングが施されたバイクだということに気が付いた。


バイクの乗り手は、燐子を威嚇するように、エンジンを軽く鳴らして、機体から降りる。
乗り手は二十半ばに見える青年だった。
やや猫っ気のある髪に、その下にある表情は引き締まり、黒いスーツを着こなす様には、年齢よりも大人びて貫禄がある。


「……成る程。これが“燐子”か」
「!!」


鋭い声の中に含まれた単語を、悠二は見逃さなかった。


――誰なんだ、この人は。フレイムヘイズなのか?
弱々しく壁に身体を預ける悠二に、青年は険しい顔のまま振り向く。


「少年、そこでじっとしていなさい。努力はするが、キミを巻き込まないという保証はない」


威圧的な言い方には、出会ったばかりの頃のシャナを彷彿させるものがある。
だが同時に、遠回しな気遣いのような様子も伺えた。


「帰ってきたと思えばこれか……。世の中儘ならないものだな」


言って、青年はメカニカルなデザインのベルト――イクサベルトを腰に装着。
懐から、手甲のような機械――トランスジェネレーター『イクサナックル』を取り出し、左手に押し付けた。


『レ・ディ・ー』


無機質な電子音と共に、イクサナックルを右横に構える。





「変身!」





『フィ・ス・ト・オ・ン』


掛け声と共に、青年はベルトにイクサナックルをジョイント。
エネルギー体に圧縮された鎧の映像が足元から出現し、青年の身体と重なった。


(白い……騎士?)


悠二の的を射た表現の通り、そこには太陽光も手伝ってか、白銀に輝く騎士がいた。
白を基調とし、ダイヤモンドに匹敵する硬度を誇る超合金『イクサプラチナ』が使用された鎧、『イクサアーマー』。
その中央に位置する、次世代型電力エンジンにより、人智を越えたパワーを生み出す動力ユニット『ソルミラー』。
表情は、魔を絶つ十字架を模したパワー抑制装置たる防護装甲『クロスシールド』に覆われている。


――Intercept.X.Attacker(未知なる驚異に対する迎撃戦士)。




『仮面ライダーイクサ』。




素晴らしき青空の会が誇る、対ファンガイア用のライダーシステムだ。


「その命、神に返しなさい!」


己の力に、絶対の自信を持つがゆえの宣言。
底知れぬ力強さをみなぎらせたイクサの出現と共に、戦いの火蓋は切られた。


「邪魔は、させない……」


突然の乱入者に驚きはしたものの、“燐子”は自らの障害になるイクサを排除しにかかる。


「フンッ!!」


振り被られた巨腕をイクサは難なくかわし、何処からともなく、イクサ専用武器たる退魔剣・イクサカリバーを手に取る。
刀身部分を押し込み、イクサカリバーをソードモードからガンモードに移行。


「跪きなさい」


柄についたトリガーを引き絞り、鍔の部分から弾丸が発射される。


「グッ、ギィ!」


正確な狙いの元、足を撃ち抜き、イクサは敵の機動力を削ぐ。


「“燐子”…人の存在を喰らう者。許すわけにはいかない」


静かな呟きと共に、イクサの仮面、クロスシールドが展開した。


「うわっ!」


側にいた悠二は、イクサから放出された熱量に仰け反った。
視覚化された太陽のごとき熱気を発するその姿は『イクサ・バーストモード』。
システムへの負担から、三十分以上の使用が制限されるまでに強力なイクサのフルパワー状態だ。


淀み無い動作で、イクサはイクサカリバーをソードモードに戻す。


「ッハァ!」


赤い刀身、ブラッディエッジが揺らめく度に、“燐子”の身体が切り裂かれていく。


「ぎっ、ぁあぁ!!」


悲鳴を上げる“燐子”に、一切手を抜かないイクサの攻撃が怒濤のように浴びせられていく。


「断罪の光を受けなさい」


よろめく“燐子”に反撃不可と判断したイクサは、ベルトのケースからキバが使っていたものとは別型のフエッスル――カリバーフエッスルを取り出す。
ベルトのフエッスルリーダーにそれを差し込み、イクサナックルを押し込む。


『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー、ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』


無機質な音声が流れ、ソルミラー内のエネルギーが臨界点に達した証、太陽の紋章がイクサの胸部に浮かび上がる。
供給されるスパークがイクサの身体を駆け巡り、バックにはキバと対を成す、光子力によって作られた太陽が煌々と燃えていた。




「ハアァーーッ!!」




光子力エネルギーを上乗せしたイクサカリバーから放つ、一撃必殺の斬撃『イクサ・ジャッジメント』が、燐子を袈裟に斬り捨てる。
断末魔を上げる暇さえもなく、“燐子”は二つのパーツに別れ、消滅した。


(す、凄い……)


悠二が感嘆する中、イクサはベルトからイクサナックルを外し、元の青年の姿に戻る。


「怪我はないか。少年」


燐子の残骸たる火の粉に一瞥をくれ、壁に寄りかかる悠二の安否を確かめた。


「骨折箇所は無いな。打ち身程度だろうが、一応は病院に行った方がいい」


脇腹などに触れ、一通りの怪我具合を確かめる姿からは、手馴れている様子が伺えた。


「よければ、最寄りの病院まで送っていこう」
「あ、いえ。多分……大丈夫、です」
「そうか? まぁ、本人が言うのなら構わないが」


青年は悠二から離れ、乗ってきたバイク『イクサリオン』に跨がる。


「今見たこと――あの化け物や、私のことは忘れなさい。それがキミのためだ」


青年は最後にそう言い捨て、バイクのアクセル音を唸らせ、颯爽と去っていった。
悠二は壁を支えに、ふらつく身体を無理矢理立ち上がらせる。
助かった。という事実からは、何も生まれなかった。
それとはまるで違う、暗く重い気持ちがのし掛かってくる。


助かった? そんなもの、運が良かっただけだ。
自分が何をした? 何も出来ていない。


――曲がりなりにも、努力してきたにも関わらず、だ。


「悠二!」


俯き加減だった顔を上げると、シャナが全速力で屋根を飛び移り、こちらに走ってきていた。


「悠二、大丈夫!? 怪我はない!?」


彼女にしては珍しく、焦燥が口から零れている。


「……うん。ちょっと、身体打ったくらい」


弱々しく答え、悠二はまた顔を伏せた。


「……悠二?」


少し怪訝そうに、シャナは悠二の顔を覗き込む。
そんなシャナを見て、悠二は思う。


シャナ。
『炎髪灼眼の討ち手』。
“天壌の劫火”アラストールのフレイムヘイズ。
――どんな時でも、ただ強くある少女。


(僕は何も、してない)


あの白い騎士が現れなければ。
シャナが来る前に、あの燐子を倒していなかったら。
……また、この子の足を引っ張っていた。


(僕みたいに、ちっぽけな存在が)





――白き狩人の来訪は、今のもつれを告げた。
そして現れるもう一人の訪問者により、歪みはさらに加速する。
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  1. 2012/03/16(金) 15:28:02|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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