紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第二十四話・超新星/帰還のエンペラーゴールド.後編



「う~ん、やっぱタッちゃんがいると違うぜぇ!」
「ええ、ワタシも奏夜さんとキバットさんがいる場所が一番落ち着きますよ!」


遂に本来の姿、エンペラーフォームに強化変身したキバ。
興奮の余り語らうキバットとタツロットを目に収めながら、キバEFは声を張り上げる。


「門矢! シャナ! 一瞬でいい、あの竜の幕瘴壁を撃てないようにしろ!」
『!!』


八方塞がりなこの状況にあって、確信の籠もったキバの宣言。
――奏夜が突破口を切り開く。
そう信じ、彼の指示に従うことに一瞬の躊躇もなく、シャナとディケイドは目線を交差させる。


「シャナ、炎を最大まで刀に集めろ! あの生意気な外皮をぶった斬る!」
「わかった!」


シャナの刀が紅蓮の輝きを増していく中、ディケイドはマゼンダと黒でカラーリングされた、タッチ式の携帯端末『ケータッチ』を取り出す。
ディケイドは中にカードを挿入し、描かれたライダー達の紋章を画面越しにタッチしていく。


【KUUGA.AGITO.RYUKI.FAIZ.BLADE.HIBIKI.KABUTO.DEN-O.KIVA!!】
【FINAL.KAMEN.RIDE-DECADE!!】


ケータッチのコールと共に、ディケイドの瞳が赤色に変化。
肩幅にかけて装着されたヒストリーオーナメントには、9枚のライダーカードが収められ、仮面の額には、ライダー世界の王者の証、ディケイドクラウンが輝く。
ケータッチをベルト中央部に付け替えれば、変身完了。


全ライダーの力を引き出すディケイドの真の姿、仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームがここに光臨した。


「切り札が出揃いましたか……異形の竜よ、迎え撃て!!」


エンペラーフォーム、コンプリートフォームを楽観視できるほど、レティシアは自分の力を過大評価してはいない。
早期決着を狙い、死者の書でイルヤンカの動きを操る。


――ゴオッ!!


イルヤンカが肺に空気を吸い込み始める。幕瘴壁へのアプローチだろう。


「向こうもやる気満々みたいだな」
「なら、真っ向から勝負するだけ」


シャナの炎剣は彼女の身の丈を優に越し、その熱気は大気を揺らがせるほど強い。
ディケイドCFの言葉通りに、彼女の全力を注いだのだろう。


「士、半端な攻撃なら必要ないわよ」
「ハッ、それはこっちのセリフだ! お前こそ、俺の足を引っ張るなよ!」


ディケイドCFはケータッチに描かれたクレストの一つ――仮面ライダー響鬼の紋章をタッチする。


【HIBIKI!! KAMEN.RIDE-ARMD】


ヒストリーオーナメントのカードが反転し、ハードターピュラーの右翼に、赤く重厚な装甲を纏う戦士『仮面ライダー装甲響鬼』が現れる。


これこそがディケイド・コンプリートフォームの力。九人の仮面ライダーを最強フォームの状態で呼び出し、その力を使役することができる。
装甲響鬼と動きをシンクロさせながら、ディケイドCFは、右腰に移動したディケイドライバーにカードを装填する。


【FINAL.ATTACK.RIDE-HI.HI.HI.HIBIKI!!】


『はぁぁぁぁ……ッ!!』


ディケイドCF、シャナ、装甲響鬼が各々の剣を振り被る。
すると、ディケイドCFのライドブッカー、装甲響鬼のアームドセイバーからも、マゼンダと赤色の炎が立ち上っていく。
勝負の時と言わんばかりに、正面のイルヤンカは吸い込んでいた息を止め、


「バハァァ――――ッ!!」


凄まじい勢いで発射された攻撃用の幕瘴壁が、風を切る轟音と共に撃ち出される。


『ハァッ!!』


迸る三本の炎剣が、一寸のズレも無く振り抜かれた。
一本では力不足だったその剣も、三本分となれば話は別。
刹那の鍔迫り合いの末、三本の炎剣は幕瘴壁を切り裂き、そのまま延長上にある、絶対の硬度を誇っていたイルヤンカの右腕を深く抉った。


「オォォォォォ――ッ!?」


切り口から鈍色の光を噴出させ、イルヤンカは激痛にその巨体を捩る。


「くっ!!」


レティシアの死者の書に光が灯るも、イルヤンカの支配権はなかなか戻らなかった。
例え意志がなくとも、ダメージを受容する感覚までもが失われたわけではない。
錯乱したイルヤンカの精神が、レティシアの支配を妨げているのである。


「上出来だぜ。門矢、シャナ」


次は自分の仕事だ。


クウガゴウラムから様子を窺っていたキバEFの右手には、いつの間にかバッシャーマグナムが握られていた。
そのままキバEFは、左腕に止まっているタツロットの角『ホーントリガー』を引く。
すると、タツロットの背中に装備された『インペリアルスロット』が回り始める。
やがて回転を止めた図柄が示すのは、緑色の銃器。


『バッシャー・フィーバ~~!!」


タツロットが左腕から外れ、代わりにバッシャーマグナムの銃口部分にジョイントする。


「カチャッ!!」


アームズコネクターから魔皇力が注入され、バッシャーマグナムをフィーバーモードへ移行する。
トルネードフィンが、通常とは比にならないレベルで回転し、大気中の水分を限界まで吸い込んでいく。


「喰らえッ!!」


――バァンッ!!


バッシャーアクアトルネードが水球だったのに対し、今回射出口から放たれた『エンペラーアクアトルネード』は、水蒸気に近い細かな水が螺旋を描く姿は、渦潮のような形状だ。


だが、魔皇力が含まれていようと所詮は水。
イルヤンカの脇腹に勢いよく噴射されたそれは、頑丈な外皮に弾かれ、パラパラと地上に落ちていく。


だが、それでいい。
“頑丈だろうがなんだろうが、その皮膚が上皮組織と結合組織から成り、身体の内側にまで続いてさえいれば”、この技からは逃れられない。


「爆ぜな」


――キバEFが指を鳴らすと、突如としてイルヤンカの腹部から水の粒が飛び散った。太陽光を反射し、美しく輝く様子とは裏腹に、イルヤンカの悲鳴は更に激しさを増す。


それはそうだ。


(何せ、“内側から体内器官をブッ壊されてんだからなぁ)


通常のバッシャーアクアトルネードは魔皇力を含んだ水球により、外側から敵の細胞結合を弛緩させるもの。
対してエンペラーアクアトルネードは、“細かな水の粒一つ一つ”に魔皇力が込められており、例え堅い外皮であろうとも、僅かな隙間から体内に入り込み、内側の細胞結合を弛緩させる技だ。


水の一発一発が細かい粒の為、粉塵の盾である『幕瘴壁』では、本体に届くより先に塵へと付着し、阻まれてしまう技だが(ディケイドCFとシャナに隙を作って貰ったのもこの為だ)、バッシャーアクアトルネードよりも多人数戦に優れ、水球では覆い切れない巨大な敵にも効果がある。


あれなら防御用の幕瘴壁は、しばらく貼れまい。


「ふう……さすがに、しんどいかな」


バッシャーマグナムを下ろし、キバEFはクウガゴウラムの背に膝をつく。
周囲にはディケイドCF、シャナ、キバーラに抱えられた悠二らが集う。


「王サマとしちゃ、及第点ってとこだな」
「……はは、お前のジャッジは厳しいな。門矢」


キバEFの声には、疲労の色が濃い。
当然だ。
エンペラーフォームに戻れたとはいえ、ここに来るまでの奏夜は連戦に次ぐ連戦。
正直な話、いつ限界が来ても可笑しくない状態のまま、この戦いに望んでいたのだから。


「先生、やっぱり今まで無理して……」
「奏夜、もう離脱した方がいい。あとは私達で何とかできると思う」


気遣わし気な悠二とシャナの言葉に、キバEFは自分のボロボロな身体を省みる。
――レティシアとの決着はつけねばならないが、しかしシャナやディケイドの足手まといになるのでは話にならない。


「……そうだな。確かにこのままじゃ、お前らの邪魔になっちまうか」
「いや、そうでもないかも知れないぜ?」


だが、ディケイドCFは平然と現実を鑑みずに告げる。


「レティシアと決着をつけるべきなのはお前だ。あれだけの啖呵切って逃げるなよ」
「ちょっと士くん、それはいくらなんでも無茶苦茶ですよ……」
「夏海ちゃんの言う通りだぞ! レティシアだけならまだしも、それに加えてあの竜と戦えるほど、奏夜の力はもう残ってないだろ!」
「『奏夜の力』は、だろ?」


呆れるキバーラと食ってかかるクウガゴウラムに、ディケイドCFは涼しい口調のまま、一枚のカードを取り出す。
絵柄は、ディケイドとキバが輝く光の糸で繋がれているというもの。


「なら、他の力を借りればいいだけだ」


【LINK.RIDE-KIVA!!】


ディケイドライバーの音声と共に、細い光の糸のようなものが、ディケイドCFとキバEFを繋ぐ。


「わ! 何だこりゃ!?」


――ファイナルアームライドに次ぐ、ディケイドの新たな力、リンクライド。
そのカード効果は、対象のライダーと味方の間で、それぞれに掛かっている能力を共有すること。
だが、光の糸が繋ぐライダーは二人だけではない。


◆◆◆


「何だこの光の糸は。敵意は無いようだが……」
「ああ。むしろ逆に力が湧いてくるようだ」


地上で戦っていたライジングイクサとサガは、突如として上空から降り、自分の背中と繋がった光の糸に困惑していた。


「自在法……じゃないわね。かといって魔術でも無いわ」
「士の力だよ。君達は今、士とあのキバと能力を共有しているのさ」


トーガから聞こえるマージョリーの分析に、ディエンドが質問を加えた。


「早くその力を使ってみてくれたまえ。いい加減僕も、この屍達にはウンザリしてきたところだ」
「言われなくてもそうしてやるさ。名護、始末をつけるぞ」
「ああ、任せなさい」


未だにひしめき合っている屍のファンガイア達を真正面から見据え、ライジングイクサとサガが並び立つ。


『ハァァァ……ッ』


動作とタイミングを揃えながら、二人は両手を広げるような構えを取る。
ややあって、二人の足元に朧気な光が集束し、太陽と王冠――ライジングイクサとサガを象徴する紋章を象った。


『ハァッ!』


キバEFとの能力共有によって作られた紋章は、二人の意志に従い、荒れた大地を滑り出す。
紋章は徐々に面積を広げながら、屍のファンガイア達を目映いスパークで捕縛した。


――ギィィィィィィィ!!


荒々しく弾ける光は、屍のファンガイア達の動きを縛り、動作を起こすことを許さない。
動かせるのは悲鳴を上げる口だけだ。
無論その状態は、四人からすれば好機以外の何物でもない。


「さっきのはソウヤの魔術……」
『なーるほどなぁ、力を共有するってのはこういうことか!』
「感嘆は後にしたまえ。攻撃するなら今だよ」


トーガの反応を余所に、ディエンドは新たなカードをドライバーに挿入する。


【KAMEN.RIDE-OOO!!】


「取って置きだ。――行け!!」


トリガーが引かれると共に、幾重にも重なった影が、一人の仮面ライダーの姿を作り出す。
身体は上から赤、黄、緑を三段重ねにしたようなカラーリング。
頭部の仮面は鷹を模したタカヘッド。虎の猛々しさを示すトラアーム。圧倒的な跳躍力を秘めたバッタレッグ。
胸部には、ベルトに装填されたメダルの特性を示すオーランドサークルが刻まれている。


【タカ、トラ、バッタ!!】
【タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!】


同種のメダルによるコンボ発動を認識したベルトが発する奇妙な歌をバックコーラスに、メダルの力を操る仮面ライダー、オーズが召還された。


傍らでその歌を聞いていたマージョリーはしばし沈黙し、


「……何よ、今の耳に残る歌」
「歌は気にしない。さぁ、終わらせるよ」


【ATTACK.RIDE-CROSS.ATTACK!!】


召還したライダーとの同時攻撃を発動する『クロスアタック』のカードを使うディエンド。
ディエンドライバーの銃口が輝き、弾丸のエネルギーが溜められていく。
オーズは専用武器である大剣『メダジャリバー』に、銀色のセルメダルを三枚投入し、オースキャナーで刀身をスキャンする。


【トリプル!! スキャニングチャージ!!】


甲高い音声と共に、メダジャリバーの刃を青白い光が覆う。


「その命、神に返しなさい!」


ライジングイクサは、イクサライザーのグリップ部分にあるライザーフエッスルを取り外し、ベルトのイクサナックルに読み込ませる。


『~~♪』


法螺貝を吹き鳴らすような深みのある音色が流れ、ライジングイクサ胸部のコロナコアから、右手のイクサライザーへと、光子エネルギーが吸い込まれていく。


『ウェイクアップ』


無機質なコールと共に、サガークがウェイクアップフエッスルを奏でる。
サガはジャコーダーをベルトにインサートし、赤い魔皇力に染まったロッド部分を構えた。


『木を削れ、土を練れ、岩を運べや堀を掘れ』
『築いた牙城は一級品』
『余剰分は?』
『積み木に使え!』


屠殺の即興詩が紡がれ、トーガが吐き出した火の玉の一つ一つが回り出し、サーカスの如き円環状の火の輪を作り出す。


ファンガイア勢が迫り来る攻撃に『ギッ!?』と呻くが、自らを縛る結界は一向に力を緩めない。


――それに、動けたとしても、回避出来たかどうかは怪しかっただろう。


ディエンドのシアンに煌めく光弾の嵐。
オーズの空間ごと敵を切断する『オーズバッシュ』。
ファンガイアの肉体を一瞬で破壊するライジングイクサの『ファイナルライジングブラスト』。
鞭のように敵を刺し貫くサガの『スネーキングデスブレイク』。トーガの頭上の輪から放たれる群青に燃える火炎弾の一斉砲撃。


五人の強者達の持つ必殺の一撃が、ほぼ同時に牙を剥いたのだから。


耳を貫く衝撃音。
それぞれの武器(トーガは腕)を下げた五人の眼前に残ったのは、炎と大量のステンドグラス片。
ふう、と全員が安堵と疲労から来る溜め息を付く。


「ご苦労様」


何を思ったか、召還時間を過ぎて消えていくオーズに、労いの言葉をかけるディエンドに、


「ライダーは助け合いでしょ」


その一言だけを継げ、オーズの輪郭は霞ようにぼやけ、瞬く間に消え去った。


「さて」


虚空から目を離し、ディエンドは上空を見上げる。


「向こうもそろそろケリがついた頃かな」


◆◆◆


「……魔力が、少し戻った?」


リンクライドの光に繋がれながら、キバEFはゆっくりと腰を上げる。
戻った力は僅かだが、戦うには十分だ。


「下にいる太牙とも力を共有してるからな。ホラ、行くぞ」
「ああ!」


二人が手を広げると、足元にキバとディケイドの紋章が浮かび上がる。


『ハァッ!!』


平面的なそれらは空中で向きを変え、イルヤンカの巨体を双方向から挟み込む。


「くっ!?」
「オォォォッ!?」


赤とマゼンダのスパークが散り、レティシアごと対象を捕縛した。
ディケイドCFはライドブッカーから、二枚のカードを取り出す。
どちらもファイナルアームライドのカードだが、一枚目はポジ・キバの世界で紅渡をファイナルアームライドさせたもの。
二枚目は、先程悠二づてに海東から貰ったカードだ。


「海東からの貰い物ってのが癪だが……仕方ねぇ、使ってやるとするか」


しばし悩んだ末、ディケイドCFは海東から貰った方のカードを選び、左腰のディケイドライバーに装填する。


【FINAL.ARM.RIDE-KI.KI.KI.KIVA!!】


「奏夜、ちょっとくすぐったいぞ」
「は?」


仮面の下で口を開くキバEFを無視し、ディケイドCFは先程のクウガの時と同じように、彼の背中へ手を突き入れる。


「のわっ!?」


背中から金と赤色の翼が現れ、足の部分が折り畳まれるように収納。そのままキバEFは更に様相を変えていく。


――見た目は、巨大なキバット。
だがその姿の至る所には、キバEFの鎧の名残が見られ、おでこには巨大なインペリアルスロット、足に当たる部分には銃のグリップ。
前方には、タツロットの頭部が融合しており、開いた口からは、ヘルズゲートの甲冑を模した矢が覗いている。
キバEF、もう一つのファイナルアームライド――エンペラーキバボウガンだ。


「奏夜が、武器に?」
「ちょ、ちょっと士さん! これ中の先生は大丈夫なんですか!?」
「心配すんな。本人はちょっとくすぐったいだけだ」


驚愕を覚えつつ、視覚的にかなり惨い変型を遂げた奏夜の身を案じるシャナと悠二。
ディケイドCFは素知らぬ様子でグリップを握る。
すると、エンペラーキバボウガンから、かなり動揺したキバEFの声が聞こえてきた。


「オイ、ちょっとどうなってんだこれ!? 視界が明らかにおかしいし、さっき足があらぬ方向に曲がったぞ!?」
「喧しい。痛みは無いんだから我慢しろ。ユウスケ、後ろから支えてくれ。このバイクの上じゃ、反動でぶっ飛んじまう」
「よっしゃ!」


乗り手のいなくなったクウガゴウラムがディケイドCFの背に回り、角で挟むようにして彼を支える。狙撃体制が整い、ディケイドCFはエンペラーキバボウガンの照準をイルヤンカに合わせていく。


「シャナ、まだ炎は出せるか?」
「? ええ、余力はまだ残ってるけど」
「十分だ。お前もグリップを持ってみろ」


ディケイドCFに促され、シャナは怪訝そうにしながらも、エンペラーキバボウガンのグリップを握る。
その途端、エンペラーキバボウガンの金色だった外装が、紅蓮の炎に包まれ、目も覚めるような真紅に染まる。


「!! これって、私の力を……」
「そうだ。使い手の力を吸収し、己のパワーに加える。これがこのボウガンの――いや、俺達の力だ!」


キバの鎧は、ガルル達アームズモンスターの力を反映し、フォームチェンジを行う。
故に、このエンペラーキバボウガンにも、その特性は引き継がれているのだ。
煌めく紅蓮はまさに、シャナの力を吸収した証であり、その色に紛れ、ディケイドCFのマゼンダのエネルギーと、キバEF本人の持つ真紅の魔皇力も視認出来る。


「キバッて!!」
「テンション、フォルティッシモ!!」


――バキィィン!!
キバットとタツロットの声が重なり、エンペラーキバボウガンの先端にあるヘルズゲートが開放される。
弓が引き絞られていき、弾け飛んだ鎖の下には、紅蓮、マゼンダ、真紅の光を交互に放つ、三叉の矢。




『はぁぁっ!!』




トリガーが引かれ、緊張していた弓が戻ると同時に、先端から目映い光の矢が放たれた。
四方八方に飛び散っていく無数の閃光は、マゼンダ、紅蓮、真紅の軌跡を描きながら、イルヤンカの巨体を射抜いていく。


百を優に超える、破壊の流星群。
連なった刺突音を奏でる閃光の勢いに負け、イルヤンカの巨体は急速に高度を下げていく。


「オォォォォォ――――ッ!!」


広がった翼をも閃光に貫かれ、イルヤンカは回避の術を失っていた。
強固だった筈の外皮も次々に剥がれ落ち、矢によるダメージを追っていく。


――強大な“王”は遂に大空を離れ、叩き落とされた大地には、王の威光を示すキバの紋章が、巨大なクレーターとして刻まれる。
完全敗北を喫したイルヤンカは、自らを葬った者達を瞳に移すと、その肉体は砂のように崩れ落ち、元の屍へと帰っていった。



◆◆◆


(ここまで、ですか)


イルヤンカの残滓とも言える霞が、風に乗って流れて行く。
閃光に貫かれ、歪にひび割れたステンドグラスの肌を見ながら、ロブスターファンガイア――レティシアは静かに、自分自身の幕引きを受け入れていた。


あの矢に射抜かれた傷から、魔皇力が流出していくのが分かる。
身体は地に吸い付いているかのように重く、寄りかかっている木々には、ファンガイアの青い血が滲む。


――腕にあった筈の『死者の書』も無い。
イルヤンカと共に落下した際に紛失したか、それとも跡形も無く砕けたのか。
今となっては、もはや気にすべくも無いが……。


「……カロンには、謝らないといけませんね」


皮肉めいた笑みを浮かべる余裕も、終わりを迎える今だからこそ湧いてくるものだった。


……そう。やっと終わる。


サミュエルとジェフを失った時から始まった、この長い旅路が。


「よぉ」


状況に似つかわしくない軽い声。
顔を上げると、輝かしい黄金の光が目に飛び込んでくる。
その後ろには、彼の仲間の姿もあった。


「あら、ごきげんよう」


そう返したものの、機嫌はまったくよろしくない。
今にも意識が飛びかねないのだ。


余裕ぶってはいるが、あれだけ連戦を積み重ねていたキバEFも、致命傷は負っていないにしろ似たような容態だろう。肩で息をし、足元は目に見えてフラついている。


「……何だよ、逝っちまうのか」
「ええ。そのようです」


キバEFはボロボロになった自分を仮面に映したかと思うと、こちら目掛けて何かを放り投げる。
いつの間にか手から離れていた愛剣、クレイモアが土塊を巻き上げ、近くの地面に突き刺さった。


「俺達はお互いに、もうズタボロだ」


行動の意図が読めないままに、キバEFは告げる。


「最初の戦いも、二回目の戦いも、俺は病み上がりだったからな。今回も門矢達の力を借りた以上、フェアとは言い難い」
「……?」
「けど今は」


二人共、満身創痍。
背後で見守るディケイド達にもシャナ達にも、手は出さないように言ってある。



「――レティシア、最後の勝負だ。俺とお前のケリをつけようぜ」


疲労を感じさせない気迫を纏うキバEF。


「…………ふふ」


レティシアもまた口元に笑みを蓄えながら、クレイモアを杖代わりに立ち上がる。


「良いですね。貴方を倒して散るという幕引きも、悪くない」
「悪いが、俺は死ぬつもりは無ぇぞ。お前は俺の超カッコいい勝利ポーズを見ながら散るんだ」


冗談めかしい態度を取るキバEF。
だがレティシアには、彼の本意が見えていた。


キバEFの理想、レティシアの理想。どちらが正しいのかは、永遠に答えの無い問題。求められるのは、正誤の枠組みに囚われず、理想を追い続ける強い意志。
1対1で対等な条件の元、互いの信念をぶつけ合うキバEFとの勝負。
それは正に、レティシアが最後の一瞬まで理想を貫いた証に他ならない。


(まったく貴方という人は……つくづく甘い)


こんな勝負、私をただの負け犬にしないための手向け花じゃないか。


どこまでも甘く、優しさに溢れた王に向けた笑みは、敬服か、それとも嘲りか。 レティシアが握るクレイモアが、今までとは比べ物にならないほど濃密で、凄まじい量の魔皇力に包まれる。


「……凄ぇな」


文字通り、死力を尽くした最後の一刀。
彼女が奏でる心の音楽は、死にもまるで臆さず、凛とした力強さに満ちている。


(全力で行こう)


後のことなんざ知るか。
今、レティシアの音楽に応えられるだけの力があればいい。


敬意と共に、キバEFはタツロットのホーントリガーを引き、インペリアルスロットを回転させる。
出た絵柄は、大きく広がった真紅の両翼。


『WAKE.UP.FEVER~~!!』


タツロットのコールに呼応し、足裏のルシファーズナイフに真紅の魔皇力が集束していく。
腕を交差させるキバEFの周囲は、溢れ出した力が大気を震わせていた。


渾身の力を持って望む真剣勝負。
ディケイドCF達にせよ、シャナ達にせよ、今はキバEFの勝利を信じることしか出来なかった。





――視線を交錯させ、二人はほぼ同時に動く。
キバEFは上空へと飛び上がり、レティシアが踏み込みから一気に距離を詰め――





『はぁぁぁぁぁ―――ッ!!』


レティシアの青白い魔皇力で生成された巨大なエネルギーブレードと、真紅の翼を生やした両足から繰り出すキバEFの『エンペラームーンブレイク』が、真っ向から衝突した。






轟音と、剣の切っ先と両足の境目に起こった力の激突が、周囲にいた全員の視界と聴覚を奪う。
見えるのは、輝く真紅と蒼の閃光のみ。


――光が止んだ頃には既に、キバEFとレティシアは地に足を付いていた。互いに微動だにせず、まるでそこだけ時が止まっているかのよう。


どちらに軍配が上がったか判断しかねている一同だったが……。


「……っ!!」


苦渋に満ちた呻きと共に、キバEFの身体が僅かに揺れた。
まさか。という思いが全員の胸中を駆け抜ける。





「……お見事」





――ほんの僅かに唇を動かし、レティシアは地に崩れ落ちる。
エンペラームーンブレイクのダメージからか、倒れた瞬間にレティシアの身体は砕け、元の人間態に戻っていた。
手を離れたクレイモアが下に突き刺さり、身体の一部だったステンドグラスが散らばる。


キバEFは紙一重で致命傷を避けた身体を引きずりながら、レティシアの傍に歩み寄る。仰向けのまま、自分を見上げてくるレティシアに、キバEFは静かに告げる。


「……謝んねぇぞ」
「ええ。それでいいのです」


謝れば、すべてが無駄になる。
貫くべき自分の覚悟も、結果的に自分が砕いたレティシアの覚悟も。


「まぁ……、貴女が謝ろうと……謝るまいと……、私は自分の人生を悔やむつもりは、ありませんよ」


一字一句を紡ぐ間にも、レティシアの身体は崩れていく。
だが、彼女にとってそれはさして重要ではないようだった。
ただぽつり、ぽつりと自分の心情を吐露していく。


「私の人生は全部、私が選んで……この結末を迎えた。私は、何も後悔しません……。きっと何度選択の岐路に立たされようとも……同じ道を行くでしょう……」
「……シャナも言ってたが、本当に馬鹿だな。アンタ」
「ふふっ……貴方も、でしょう?」


その言い草に反論する気は――何故か起きなかった。


「おや――そろそろ、時間、です、ね……」


砕け、身体から離れた右腕を眼に収めながら、レティシアは僅かに首をもたげた。


「転生の輪廻の先で……貴方の理想が――作る景色を、見極めさせて貰いますよ……」
「ああ、言われなくても見せてやるよ。アンタが真に望んでた世界をな」


迷いを感じさせない言葉に、レティシアは皮肉っぽくも満足そうにも見える表情を浮かべた。


「……ああ」


朦朧とする意識の中で、彼女はおもむろに虚空へと手を伸ばした。
まるで、そこにいない誰かの手を取ろうとしているかのように。


――蒼い瞳からは零れ落ちたのは、一滴の涙。
震える声で、レティシアは唇を動かした。





「……やっと、一緒にいられるね。サミュエル、ジェフ……」






――暖かな過去を取り戻す為、必死に運命と戦い抜いた女性。
愛した者の名前を最後の言葉に、レティシアは命という名の音楽に幕を引いた。


砕け散った身体から浮かび上がったライフエナジーは、雲一つない空に溶けていく。


舞い上がっていくライフエナジーをやるせない気持ちで見送り、そのまま所在なさげに佇んでいたキバEFの肩を、誰かが叩く。
振り向けばそこにはディケイドとシャナ。
更にその後ろには、自分を支えてくれた仲間達。


「終わったな」
「お疲れ様、奏夜」
「……おう」




二人の労いを素直に受け取り、己の信念を巡る長い戦いは、遂に終焉を迎えた。





◆◆◆


「行くんだな」
「ああ。この世界で、俺達がやるべきことは果たした」


数日後。レティシアの弔いを済ませた一同は、光写真館の前に集まっていた。


見送りの席に現れたのは奏夜、シャナ、悠二の三人で、ディケイド一行の面子は士、ユウスケの二人だけである。


「士、夏海や海東は?」


二人を探すシャナだったが、彼は姿を見せてはいない。


「あいつなら、写真館の中でふてくされてる。魔皇竜を手放した挙げ句、この世界じゃ何の宝も手には入らなかったからな。夏みかんは彩香と爺さんと一緒に、そのお守りだ」


いい気味だ、と言わんばかりに意地悪く顔を歪める士。
ユウスケは「あはは……」と苦笑いを浮かべるしかなかった。
一方の奏夜はと言うと、


「それならちょうど良かった。門矢、こいつを海東に渡してくれ」


言って、奏夜が士に押し付けれ形で手渡したのは、粗末な造りの湯のみ。


「なんだこりゃ、湯のみか?」
「ああ。かのわび茶を大成したとされる偉人、千利休が障害使ったという幻の湯のみだ」


「……先生、湯のみの底に文字を修正した跡があるんですけど。これ寿司屋の湯のみの改造品じゃ……」
「何を言うか悠二。別にタツロットを返して貰っても俺のムカムカは消えないのでせっかくだからちょっと仕返しをしようとかは全然思ってないぞ」


早口でまくし立てる奏夜。
どうやら悠二の考えは正しかったようだ。


「てなわけで、忘れずに渡してくれよな」
「……フッ。任せとけ。必ず渡してやる」


完全に利害が一致し、いたずらっ子のような笑みまでシンクロする士と奏夜。
その他三名の心境も「本当にいい性格してるよ」で統一されていたのは余談である。


「けど、何から何まで世話になっちまったな。今回の一件、お前らがいてくれて本当に助かった」
「気にすんなって。それが俺達の使命なんだからさ」


ドンと胸を張るユウスケ――此度、自分が立ち上がるキッカケをくれた青年に、奏夜は徐に手を差し出す。


「なら、また連れて行ってくれるか? 俺の本当に行きたい所まで」
「――ああ、勿論さ!」


例え異なる世界を生きる人間同士でも、それが友となることの妨げにはならない。
奏夜とユウスケの間で交わされた固い握手が、その証拠だった。


「じゃあ、シャナちゃんも悠二くんも元気でね」
「はい! 色々、ありがとうございました!」
「士も、油断して怪我しないようにね」
「ふん、俺様の心配するなんざ百年早ぇよ。お前の方こそ、せいぜいフレイムヘイズの使命とやらを全うしろよ」


ぴんっ、とシャナのおでこを弾き、士はもう一度奏夜に歩み寄る。
額を押さえるシャナの抗議を無視しながら、士は怪訝そうにする奏夜の耳元で、小さく呟く。




「負けるなよ、奏夜。“お前の運命”に」




「……ああ」


その言葉の真意を読み取った奏夜が短く答え、士は近付けていた顔を離した。
一連の動作に気付いたシャナが首を傾げ、


「奏夜、どうかした?」
「いや、なーんも」
「嘘。何か隠してる」
「隠してねぇって。俺が正直者なのは、お前が悠二を好きってことと同じくらいに周知の事実――」


言い終わるか言い終わらない内に、顔を紅潮させたシャナの上段回し蹴りが、奏夜の首筋にヒットした。


「がっ!! お前、俺一応ケガ人だぞ!?」
「うるさいうるさいうるさーーい!!」


痛みに悶えるよりも早く、額に怒りマークを刻む奏夜が反撃を繰り出し、二人の間で子供の喧嘩が始まる。


「ちょっ、先生もシャナも落ち着いて! 端から見てると凄くみっともないから!」


止めに入る悠二を含んだ三人のやり取りに、ユウスケは困ったように頬を掻いて、


「喧嘩するほど仲が良いって言うけど……」
「あいつらほど、それが似合う連中はいないな」


言いながらも、士はどこか楽しそうしながら、首に下げたカメラのフレームを三人に向け、シャッターを下ろした。


◆◆◆


「~~♪」


光写真館。
テーブルにつきながら、鼻歌混じりに湯飲みを眺めている海東大樹。
どうやら結局、士づてに奏夜の嘘情報を信じ込まされたようだ。


(……すっげー嬉しそう)
(カブトの世界の時も思いましたけど、海東さんって、案外ピュアですよね……)
(アホだね♪)


ユウスケ、夏海、彩香が複雑そうに海東を見る中、士だけは手元にある写真を見つめていた。
そこには、じゃれあうように喧嘩する奏夜とシャナ、焦りながらも二人を止めようとする悠二の姿が映っている。


「おお、士くんも随分腕を上げたねぇ。この写真、喧嘩しているように見えて、彼らの仲の良さが伝わってくるよ」
「だろ?」


栄次郎の賞賛を受けながら、士はその写真をアルバムに収め、今までのライダー世界と同じく、その姿を自分の旅路として記録する。


「奏夜達、きっとこれからも大丈夫だよな」


ユウスケがアルバムを覗き込みながら問う。


「ああ、あいつらなら、どんな運命も乗り越えられる。――さて、そろそろ俺達も行くとするか!」


立ち上がった士は、そのまま撮影室奥の鎖を引っ張った。


――ガララララッ!


背景ロールが回転し、新たな世界の絵が降りてくる。


さあ、次なる世界は――?




◆◆◆

「……」


紅邸。
物憂げな表情で自身の手を見つめる紅奏夜。
傍らの机には、キバットバット三世とタツロットが止まっているが、こちらもあまり顔色は優れていない。


「……奏夜」
「ああ、分かってるよ。あのコンディションでエンペラーフォームになれば、こうなるってことは分かってた」
「すみません奏夜さん、ワタシが戻ってきてしまったから……」


うなだれるタツロット。
奏夜は彼を安心させるように、普段と変わらぬ柔らかな表情を見せる。


「何言ってんだよタツロット。お前が戻ってきてくれて、俺は本当に嬉しかったぜ。
エンペラーフォームになるって言ったのは俺なんだし、タツロットが気にすることじゃねぇよ」
「けどよ、奏夜。タッちゃんのことはいいとしても、エンペラーフォームの多用を控えた方がいいのは確かだぜ。 このままエンペラーフォームへの変身を続けたら、お前は……」
「いや、エンペラーフォームはこれからの戦いに必要な力だ。ファンガイア相手にしろ“徒”にしろ、四年前と同格……もしくはそれ以上の力を持つ連中がうようよ出てきてる。そんな中で、我が身可愛さに変身を躊躇うつもりはない」
「けどよぉ……」
「それに、まだ“そう”なると決まった訳じゃない。母さんの話じゃ、兆候が見え始めたとしても、確率は五分らしいしな」


「だからこそ」と奏夜はキバットとタツロットを真っ正面から見つめる。


「キバットにタツロット。お前らは俺の“時間”を知る数少ない存在だ。 俺が変身すると言った時には、必ず変身させろ。お前らはその傍らで、俺を支え続けてくれ」
『……』


奏夜の言葉と瞳には、何があっても曲がらない芯が打ち立てられているように思えた。 レティシアとの戦いが、彼の中の信念を更に強くしたのだろうが……。


果たしてそれは、本当に良いことだったのだろうか?


疑念と不安を入り混ぜながらも、主の力強い姿に平伏したのか、キバットとタツロットは恭しく頭を下げる。


『仰せのままに。我らが王よ』


満足げに二人の答えを聞き、奏夜は木漏れ日の差し込む窓を見やる。






「急がないとな……。“俺”が俺を殺す前に」




呟く奏夜の右手は、ひび割れたステンドグラスに覆われ、窓から差し込む光を鈍く跳ね返していた。





◆◆◆


「スリーカード」
「わん、ぺあ」
「フルハウス。また僕の勝ち~♪」


したり顔をするラモンに、次狼は悔しさから舌打ちし、力は「のぉ~~」と頭を抱えている。
キャッスルドランの中で、ポーカーに興じるアームズモンスター達。
つい数時間前まで、レティシアとの戦いを繰り広げていたとは思えない朗らかっぷりだった。


――しかし、嵐は唐突に現れるものである。


「貴方達は相変わらず楽しそうね」
「!!」


不意を突く声に、臨戦態勢を取る三人。
しかし、声の主を見た途端、敵意は驚愕にすり替わる。


『クイーン……!』


自分達のゲーム場であるホールの中央には、誰であろう、奏夜の母にしてファンガイアの元クイーン、真夜が悠然と立っていた。


「お久しぶりね。四年前の結婚式で会って以来かしら?」
「……ああ、久しぶりだな、クイーン。今日は一体どうした?」
「そうそう。キャッスルドランに顔を見せるなんて珍しいじゃん」
「とりあえず、おちゃとおかし」


気を落ち着かせる為か、椅子に腰掛けた真夜に、紅茶とケーキを差し出す力。
「ありがとう」と微笑み、紅茶を一口啜る真夜だったが、三人はその優美な姿よりも、彼女がここに来た理由が一番気になっていた。


クイーンの力を剥奪され、山奥に移り住んでから、彼女は表舞台に出ることを極端に避けるようになっている。
危険、ということもあるが、それは彼女自身の戒めにも近い。
故に、彼女が洞窟から外に出るのは、余程の事なのだ。


「今日来たのは、貴方達に頼み事ができたからよ」
「頼み事だと?」
「ええ、“これ”をキャッスルドランに封印しておいて貰いたいの」


真夜はフード袖から包みを取り出し、巻かれていた紐を解く。その中身は、三人の予想の斜め上を行く代物だった。


「これは……!!」
「あのカロンって“徒”が持ってた手甲じゃないか!」
「ししゃの、しょ」


レティシアが最後の最後まで無くしたと考えていた宝具『死者の書』。
それが今、三人の目の前で鈍い輝きを放っていた。


「奏夜達とレティシア・リネロが戦った森の近くで見付けたわ。この宝具をその時が来るまで、誰にも言わずに封印しておいて」
「『その時』だと? 」


反芻する次狼に、真夜が頷く。




「そう。過去と現在の扉が、再び開かれるその時まで」





◆◆◆


「どうだ。世界の破壊者の様子は」
「問題ありません、無事に『BLAZING.BLOODの世界』を通過したようです」


周囲を摩天楼に囲まれた小さな噴水広場。
壮観な景色から切り取られたかのようなその姿は、どことなく寂しさを感じさせる。


本来は星が支配している筈の夜空には、高層ビルが鏡合わせの如く立ち並ぶという非現実的な世界で、二人の青年が言葉を交わしていた。


「『BLAZING.BLOODの世界』への影響も殆どありません。我々が出向くこともないでしょう」
「それは僥倖だ。あの世界のバランスを崩すわけにはいかないからな」


鋭い風貌に、サングラスと黒ずくめのスーツを身につけた青年が、僅かにその表情を緩める。


「ただでさえ今は、『フォーゼの世界』が誕生したばかりで、世界の理が不安定な時期だ。ディケイドが鳴滝を追っている以上、余計な問題は少ない方がいい」
「ええ。しかし、危惧すべき問題が消えたわけではありません。……何より今回の一件で、紅奏夜がエンペラーフォームを取り戻してしまいました」


白いセーターにマフラーを巻いた青年が物憂げに目を伏せ、黒スーツの青年もまた、再び顔を曇らせる。


「……紅奏夜。お前に最も近いキバであり、お前の――オリジナルの『残像』か」
「このまま行けば、僕があの世界に出向く日もそう遠くはないでしょう。――なるべく、そうならなければ良いのですがね。あなたはどう思いますか、剣崎さん」
「……俺も最悪の事態は避けたいが、難しいところだろうな」


黒スーツの青年、剣崎一真は、先ほどまで高層ビルが立ち並んでいた夜空を見上げる。
いつの間にか空には、無数の惑星が瞬いていた。




「あのキバが――いや、『BLAZING.BLOODの世界』が、オリジナルの世界の残像である限りな」







◆◆◆


――ヨーロッパのとある国で交わされた会話。


「うーん、さすがに7月ともなると、欧州も暑くなるなぁ……。ま、こっちはカラッとした暑さやし、向こうのむわっとした暑さよりはマシやけど」
「俺様にとっちゃあ、どっちの暑さも地獄だぜぇ……季節はクールな冬にかぁぎる」
「ああ。お前にとっちゃそうやろな……。あーあ、せめて秋くらいまでには日本に帰りたいでぇ」
「だがもうじき、仕事は片付くんだろぉ?」
「うーん、もうじきっちゅうても八割方ってトコやけどな。ファンガイアに加えて最近は、名護さんから聞いた『トモガラ』っちゅーワケの分からんヤツらもおるし」
「徒か……。聞くところによっちゃあ、ヤツらはファンガイアの一派と手を組んでるらしいが、一体何を企んでいるんだろぉな?」
「まだそっちは噂話の領域やしな、俺にも推測は立たん。せやけどな、噂話にかまけとってもあかんで。俺達は、日本で踏ん張っとる奏夜達の分まで、俺達にしかでけへんことをするんや」
「……フッ、そぉれもそうだな」
「分かればよし。さ、休憩は終わりや。また頼むで、相棒」
「ああ、任せとけ。では行こうか! 華麗に激しく!!」





――それぞれの思惑は絡み合い、世界の歴史に新たな1ページを刻む。

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  1. 2012/05/31(木) 11:04:41|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

誤字の報告です

見つかったのはこの話中の一文

「まぁ……、貴女が謝ろうと……謝るまいと……、私は自分の人生を悔やむつもりは、ありませんよ」

【貴方】では?

……

ついにここまで来ましたか…結構追いついてきましたね…
これからも頑張って下さいね!

では、次回の更新を楽しみに待ってます。
  1. 2012/05/31(木) 16:11:57 |
  2. URL |
  3. リュウガ #-
  4. [ 編集 ]

返信

誤字報告ありがとうございます。
毎回毎回指摘してもらってすみません……(>_<)
  1. 2012/06/07(木) 18:36:33 |
  2. URL |
  3. 一条ツカサ #-
  4. [ 編集 ]

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