紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第二十三話・リバイバル/信じる答え.前篇

「はぁっ!!」


クウガの鋭い拳が、スパイキーラットファンガイアを貫く。


「くっ!!」


カウンターのパンチを肘で受け止め、がら空きになった下腹部に強烈なキックを繰り出すクウガ。
赤のクウガ、通称マイティフォームは、その名の通り汎用性に優れ、肉弾戦を得意とするが故に、様々な相手への対応力がある。
しかしユウスケは、


「!!」


キックした脚を即座に退かせ、スパイキーラットファンガイアと距離を取る。


「気付いたか。なかなかの判断力だ」
「その身体……」


見れば、攻撃を行ったクウガの拳と脚から、僅かに血が流れている。
出血の原因は、スパイキーラットファンガイアの身体を覆う、鋭い体毛だ。


「針鼠みたいなもんか」
「その通り。鋼の強度を誇る私の身体は無敵の盾であり、そして――」


スパイキーラットファンガイアは、先程奏夜に見せたように、身体を丸くした状態で、ハリを巨大化させた。


「こうして最強の矛にもなる!!」


歪な球体が回転を初め、真っ直ぐクウガに突撃してくる。
ハリがスパイク代わりとなり、攻撃力にスピードによる突進力が付与され、当たればクウガとてただではすまない。


「ちっ!」


クウガは横っ飛びで球体の魔手から逃れようとするが、


「甘いわ!」


球体は軌道をすぐ様修正し、再びクウガを串刺しにしようと向かってくる。
回避は不可。恐らくドラゴンフォームになっても結果は同じ。


(なら、真っ正面から受け止めてやる!)


クウガの意思に呼応し、アマダムの輝きがその色を紫に変える。


「超変身!」


クウガの瞳がアマダムと同じ紫へと変わり、その身体に紫のラインが描かれた重厚な鎧を纏わせる。


――邪悪なるものあらば、鋼の鎧を身に着け、地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり。


クウガの持つパワー形態、タイタンフォームだ。


「変わった……?」


奏夜が呟く傍ら、クウガTFは両手を大きく広げ、スパイキーラットファンガイアと真っ正面から対峙する。
土を巻き上げながら突進してくる球体が、遂にクウガTFへと届くが――


「なにっ!?」


驚いたのはスパイキーラットファンガイアの方だった。
球体がクウガTFに接触した途端、球体の動きが止まり、回転の勢いが完全に殺されたからである。
しかも、ハリは刺さっていない。


「紫のクウガのパワーと硬度を舐めるなよ……!!」
「くっ、だがこのままでは貴様も反撃は出来まい! 加えて、我の装甲は丸腰で砕けるほどぬるくは無いわ!!」
「丸腰ならな!」


言いながらクウガは暴れるファンガイアの群れの中から、青い影を見つけ出す。


「ガルルさん!」
「!」


群れの中で戦っていたガルルが振り返る。このガルルはユウスケの知るガルルではないが――ワタルのいたキバの世界の経験から、彼がどんな能力を持っているのかは、ユウスケも知っていた。


「今だけでいいです、俺に力を貸してください!」
「――わかった!」


ガルルもまた、ユウスケとの面識はない。だが、力を貸すことに対しては、何の躊躇いも無かった。


――自分の主を認め、救おうとしてくれている。
力を貸す理由は、それで十分だった。


「ラモン、力! しばらく持ちこたえろ!」


ガルルの身体がブルーの光と共に、彫像形態へ。
浮かび上がった空中で彫像は更に姿を変え、魔獣剣ガルルセイバーとなり、球体を押し止めるクウガの右手に収まる。


すると、ガルルセイバーの湾曲した刀身が両刃に変化し、生物的だったデザインが、シンプルな大剣『タイタンソード』となった。
――これはクウガの持つ力、決められたイメージを持つ物体を、各フォームの特性を活かす武器に変えることができる力だ。


渾身の力でスパイキーラットファンガイアを僅かに押し返すクウガTF。
またすぐに回転を取り戻すだろうが、彼にとってはその僅かな時間だけで十分だった。


「うぉりゃああ!!」



封印エネルギーを刀身に込めた一点突破の突き技『カラミティタイタン』が、スパイキーラットファンガイアに炸裂した。


「ぐがっ!!」


カラミティタイタンのパワーは針を砕き、そのままスパイキーラットファンガイアの頑丈な皮膚にまでヒビを入れた。


「ぬぅっ、これしきの傷!! ――ウォォォッ!!」


スパイキーラットファンガイアが自身を鼓舞するかのように雄叫びを挙げる。
それだけで、攻撃を食らった腹部に浮かぶクウガの刻印は掻き消えた。


「確かにパワーはある……ならばスピードはどうかな!!」


スパイキーラットファンガイアは再び身体を丸め、球体は二・三度その場で跳ね、


「シャッ!!」
「!!」


クウガTFは、反動を溜めたスパイキーラットファンガイアの突撃を辛うじて避ける。
が、球体は近くの木々に当たって跳ね返り、クウガTFを狙い続ける。
縦横無尽に跳ね回るその姿は、まるでピンボールだ。




(くっ、敵が見えない……!!)


カブトの世界で見たクロックアップと同じだ。
視認できなければ勝負にもならない。
装甲の代わりに機動力の欠如したタイタンフォームでは無理だ。


「フハハハ!! 反動による加速、貴様の視力では捉えられまい!!」
「それなら……!」


クウガTFはガルルセイバーを一旦手放し、


「バッシャーくん! 頼む!」
「オッケイ!!」


彫像に戻ったガルルセイバーと入れ替わりに、バッシャーはクウガの元へ向かう。バッシャーの彫像から変化した魔海銃バッシャーマグナムをキャッチし、クウガは再び姿を変える。


「超変身!!」


クウガの眼とアマダムが緑色に染まり、身体は左肩にプロテクターの付いた、同じく緑の鎧へと変化。
右手にはバッシャーマグナムから変化した縦型のボウガン『ペガサスボウガン』が握られる。


――邪悪なる者あらば、その姿を彼方より知りて、疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり。


感覚機能に特化した形態、クウガ・ペガサスフォームだ。


(……………)


クウガPFは地面に片膝を突き、感覚を研ぎ澄ませた。
余計な雑音は全て排除。
スパイキーラットファンガイアが動くことにより生まれる音を聞き逃さぬよう、全神経を集中させる。


木々を跳ね回るスパイキーラットファンガイアは、そこまで知る由も無かったが、クウガPFが微動だにしないことに警戒心は覚えたようだった。


(諦めたか……? いや、ならば何故姿を変えた? いずれにせよ、接近するのは念の為避けるべきか)


あの武器の形状――動いてさえいれば的中確率は低い。
ここはこちらも遠距離から攻めるべきだ。
スパイキーラットファンガイアは戦法を決め、歪な球体から伸びる針の一本を、クウガへと向ける。


細い針、速い発射スピードに加え、その出所は掴めない。
完璧な状況だ。


(消えろ、異形の戦士!)


射出された針が、風を切りながらクウガPFに迫る。


「!」


強化された聴覚でなければ知り得ない風切り音。
クウガPFが頭を上げ、射出方向を見ることさえもせず、指先だけで針をキャッチした。


「なっ!?」
「見つけた!!」


針を捨て、クウガPFはペガサスボウガン後部のレバーを引く。
弧の部分が緊張し、射出口に封印エネルギーが収束された。


針の飛んできた方向、敵のスピード、僅かな木々の動き。
あとは、それらから算出されたポイントにトリガーを引けばいい!


「ハッ!!」


――バシュッ!!


甲高い音と共に、クウガPFの必殺技『ブラストペガサス』がボウガンから発射された。放たれた弾は、スパイキーラットファンガイアを寸分違わず捉え、カラミティタイタンが作ったヒビに命中した。


「ぐ、あぁぁぁ!!」


さすがに二撃目には耐えられない。
落下するスパイキーラットファンガイアの腹には、クウガの刻印が再度浮かび上がり、ステンドグラスの外皮のヒビは、さらに広がる。


「よし、今だ!! ドッガさん!!」
「まか、せろ」


即座に手持ちの武器を、バッシャーマグナムから、ドッガの武器形態である魔鉄槌ドッガハンマーと入れ替え、クウガPFのアマダムが青色に輝く。


「超変身!!」


アマダムと同じ青い瞳と肩無しの軽量装甲。
両手にはドッガハンマーから変化した、先端に金色の装飾が成された棒状の武器『ドラゴンロッド』。


――邪悪なる者あらば、その技を無に帰し、流水のごとく邪悪を薙ぎ払う戦士あり。


運動能力に優れた形態、クウガ・ドラゴンフォームである。


「ふっ!」


その身体能力をもって、クウガDFはスパイキーラットファンガイアの落下地点まで一気に踏み込む。


(マズい……か、回避を……!)


だが、腹部の激痛がそれを阻害する。
スパイキーラットファンガイアは受け身の体勢すら取れず、自然落下に身を任せる他無かった。


無論、クウガDFにとって、その時間は好機。


「ッハァ!!」


ドラゴンロッドの横薙ぎから繰り出される打撃技『スプラッシュドラゴン』が、三度腹部の外皮に直撃した。


「ガ、アァァァ!!」


――バキィィン!!


その一撃で遂に、スパイキーラットファンガイアのヒビが入っていた鋼の針と外皮が砕け散った。
スプラッシュドラゴンの勢いに負け、地面に叩き付けられたスパイキーラットファンガイアの腹部は鬱血し、刻印の刻まれた脆い皮膚が露出していた。


「バ、バカな!! こ、こんなことが……」


どうにか立ち上がるスパイキーラットファンガイアだったが、その足は覚束なく、戦いの構えすら取れていなかった。


「――超変身」


彫像に戻ったドッガハンマーが飛び去り、クウガは再びマイティフォームへ。
狙いを定め、クウガは両手を広げながら右足を一歩退く。


「はぁぁぁ……ッ!!」


黄金に輝く封印エネルギーを右足に収束させ、クウガは駆け出す。


クウガが踏んだ大地に残るエネルギーの残滓は、勝利へのカウントダウン。
踏み切った片足の反動からクウガは天高く飛び上がり――





「だりゃあああぁぁぁ――ッ!!」





マイティフォームの必殺技『マイティキック』が、スパイキーラットファンガイアの脆くなった腹部に炸裂した。


「グ、ガアァァァッ!!」


固い外皮が砕けた今、マイティキックの威力を妨げるものはなにもない。スパイキーラットファンガイアは、キックのパワーを直に受け、吹き飛ばされる。
そのまま近くの樹木で背中を打ったかと思うと、スパイキーラットファンガイアはピクリとも動かなくなった。


「倒……した?」
「ハァッ……ハァッ……!!」


着地したクウガが、息を切らしながら立ち上がる。


(一応、急所は外したけど……)


アヴェンジャー達の事情を知っているだけに、クウガはトドメを刺しきれなかった。
もっとも、しばらく動けなくしたことに変わりはないが。


「た、隊長殿が……」
「嘘だろ?」
「なんなんだあのクワガタは!?」


ガルル達と戦っていたファンガイア達も 、指揮者が倒された為か、戦意を失いつつあった。
あれなら、向こうを相手にすることもないだろう。


クウガが奏夜の方を一瞥し、手を差し伸べる。


「大丈夫か? 奏夜」
「あ、ああ……。ていうか、むしろお前の方こそ」


奏夜が、クウガの血が滴る足と拳に目をやる。


「このくらい平気だって。傷の内に入んないよ」


仮面の下からでも、クウガがニカリと笑っているのが分かった。
奏夜は気が抜けたように目尻を下げ、クウガの手を取ろうとした――


時だった。


「ヴ、ア……」
「!!」


クウガと奏夜が、ほぼ同時に同じ方向に視点を合わせる。
気絶していた筈のスパイキーラットファンガイアが、満身創痍ながらに立ち上がったのだ。


「あいつ、まだ動けるのか……?」
「お、おい止めろ!! それ以上動いたら本当に死んじまうぞ!?」


呆然とする奏夜の傍らでクウガが叫んだが、スパイキーラットファンガイアの目はまだ死んでいない。


「ハッ!!」


スパイキーラットファンガイアが手を翳す。しかしそれはクウガや奏夜に向けてではなく、ましてや攻撃でさえも無かった。


スパイキーラットファンガイアが手を翳したのは、仲間のファンガイア達の方。
放たれた光は、攻撃を遮断する障壁を生み出す魔術だった。


「た、隊長殿!?」
「皆、伏せていろ!!」
「!!」


スパイキーラットファンガイアの言葉。
意図せずして、結界の内側にいたガルルが、顔を青ざめさせた。


「おい、そこのガキと奏夜!! 今すぐそのファンガイアから離れろ!!」
「っ!!」


そこで奏夜もようやく気が付く。
スパイキーラットファンガイアの内に、膨大な魔皇力が収束しつつあることに。


「自爆か!!」
「フ、ハハハ!! 気付いたとて無意味!! この威力……この森全域――我が張った結界以外の場所は確実に消し飛ぶ!!」


そう――彼が張った結界は、仲間を巻き込まないようにする為だった。
アームズモンスター達まで範囲に入れてしまったのは計算外だったが、心配はあるまい。
アヴェンジャーの精鋭達だ。たかだか三人、どうとでもなる。


だからこそ自分は――


「レティシア様の為、アヴェンジャーの為、貴様らは生かしておかん!!」


傷口から魔皇力が溢れ出す。爆発の前触れだ。


「奏夜!! くそっ!!」


アームズモンスター達が結界を破ろうとしているのが見えたが、頑丈な障壁はビクともしない。


「キバーラ、まだ変身無理か!?」
「無理無理無理――!!」
「くっ……!?」


どうする。
クウガは次々と思考を展開させていく。


逃げる。
奏夜とキバーラを連れて、この数秒の内に森の外まで? ドラゴンフォームでも不可能だ。
爆発の前にヤツを倒す?
倒せたとしても、爆発自体が止まる保証はない。最悪、爆発までのカウントダウンが早まるだけに終わる可能性もある。


「諦めろ!! 影のキングに異形の戦士! 貴様らの命という旅は、ここで終わりだ!!」


スパイキーラットファンガイアは、勝利を確信し、仲間達を見る。


「レティシア様を……頼んだぞ、同朋達よ!!」
「隊長殿!!」


その言葉を皮切りに、スパイキーラットファンガイアの身体が膨張を始める。


「ここまでか……!?」


奏夜は歯噛みし、自分の無力さを嘆く。
クウガは何も語らず、目の前に近付く旅の終わりを見つめ、


「……まだ、終わらないよ」
「?」


瞠目する奏夜を庇うように、クウガが前に立つ。


こんなとこで終われるか。
あの人と約束した。
世界中の人を笑顔にすると。
もう二度と、誰かの涙を流させないと。




「俺はまだ、あんたの本当の笑顔を見てない!!」
「消えろぉ!!」


スパイキーラットファンガイアが内側から爆ぜ、眩いばかりの光が周囲の景色を飲み込んでいく。





(みんなの笑顔を守る為なら、俺は――)





爆炎の中で、クウガのアマダムが『黒色』に輝いた。






◆◆◆


「何なの? この自在式」


太牙が広げた資料の内、シャナは複雑な陣と式の描かれた模様に着目する。


『我にも見覚えのない自在式だな』
「そりゃそうでしょうね。だってこれ、自在式と魔術を複合させた陣だもの」


マージョリーが軽く付け加えたその言葉に、館内の空気が変わった。
予想した通りの反応に構わず、太牙は話を進める。


「これは大昔、魔術に精通したファンガイアが作った代物でね。ある場所に保管されていて、以前アヴェンジャーに原典を盗まれていたんだ。
作られて以来、解読不能と呼ばれてきた魔術だったんだが――」


それも当然である。魔術の他に、自在式という全く理論の異なる要素が混じっていたのだから。
今回、自在師であるマージョリーがいなければ、太牙も気が付かなかっただろう。


『恐らく開発者のファンガイアは、紅世と通じていたのだろうな。しかし、自在式と魔術を組み合わせるだと……? そんなことが可能なのか?』
「可能かどうかは問題ではない。問題は、この式が何を生み出すのかだ」


アラストールの指摘に答えながらも、名護は険しい表情を崩さない。
それほどまでに厄介なものなのだろうか。


「連中にこれが盗まれた以上、何か関係あると見て間違いない」
『つーわけで、マージョリーと俺様、キングの兄ちゃんでこいつを解読してみたんだよ。そしたら何とビックリ』





「私とタイガの解読が間違ってなきゃ――これって死者を黄泉から引き戻す式なのよね」





『!!』


全員が受けた衝撃は、先程のものを遥かに超えていた。
死者を黄泉から引き戻す。それは、つまり――


「死んだ誰かを、生き返らせる式ってことですか?」


『そのとーり。しかも、カロンの野郎が呼び出す死体以上――魂まで持ったまんま生き返らせちまうみてーでな。
加えて、一度起動の為の自在式さえ入れちまえば、何度でも働く永続式の陣だ。
ヒヒッ、いよいよ何でもアリって感じだぁな』


悠二はマルコシアスの冷やかしが、ややシニカルな口調であることに気付いた。
その態度が逆に、事の重大さを理解させる。


「でも、死者を呼び戻すなんてバカな真似できる訳ない!!」


自在法に疎いシャナでも知っていること。いかなる自在法を持ってしても、死者は生き返らない。
理論以前の問題、言わば絶対の真理。
アラストールもまた、その真理を疑ってはいなかった。


『かの“螺旋の風琴”ですら、遺失物を復元させる自在式を組むのが限界だったのだぞ?
無機物ならいざ知らず、生命ある者をいくらでも蘇らせられるなど、夢物語もいいところだ』
「ああ。事実、この陣は不完全だった。このままでは自在式としても、魔術としても体裁を成さない。使えたとしても、膨大な存在の力とライフエナジーが必要だ」
『ならば……』
「だが、今回は状況が違うんじゃないか?」


アラストールの声に被せるように、沈黙し続けていた士が口を開く。
彼の中では既に、全てが繋がっていた。


「連中は今、王の鎧である『キバ』と魂の無い死体を劣化させずに操る『死者の書』を手中に収めている。――そういうことだろ、太牙」


『キバ』と『死者の書』。
それらの単語により、シャナ達も士の言いたいことが分かった。
太牙が頷き、話を続ける。


「ああ、その通りだ。『キバ』は装着者に強大な力を与える。例えライフエナジーが足りずとも、不足分を補うことくらいはできるだろう。
しかもレティシアは、チェックメイトフォークラスの実力者だ。不完全だった自在式も、完成させているとみていい」
「あのカラス野郎も、紅世じゃ名の通った自在師よ。『死者の書』の能力を考えれば、陣発動のサポートには十分でしょうね。プラスして、生き返らせた連中を操ることもできるわ」


太牙とマージョリーの説明を否定できる者はいなかった。
これだけの要素が集まれば、世の理をひっくり返せる可能性も、無視出来ないものとなる。
疑問は、これで全て氷解した。


『“冥夜の船頭”の目的は恐らく、自身の軍団を最強のものにすることであろうな』
『だろーよ。『死者の書』は破格の宝具だが、蘇らせるヤツの記憶がなきゃならねぇし、その対象が強けりゃ強いほど、使う存在の力もデカくなってくるからなぁ、ヒッヒヒ』


逆に此度の永続式の陣が起動すれば、厄介な制限は消え、同時に、死した数多の徒、ファンガイアを自由に呼び出すことが可能となる。そうなればカロンは、真に死者を自在に操る強大な敵となって、自分達の前に立ち塞がるだろう。


「あのファンガイア――レティシアがカロンに協力してるのは」


悠二が口元に手を当てながら呟き、シャナが言葉を継いだ。


「……大切な誰かを蘇らせる為」
「ま。あのアヴェンジャーって組織の根幹を考えりゃ、それが妥当なとこだな」


士が緊張感の感じられない様子で付け足した。
人間を敵と見る組織。そんな組織の構成員の中になら、レティシアのみならず、大切な誰かを失ったファンガイアは五万といるだろう。


「レティシアとカロンが組んだのは、利害が一致したからだろうな。何しろあの陣は、魔術と自在式の素養が無ければ読み解くことすら出来な――」


名護が突然口を閉ざす。彼にしてはかなり焦った様子で、写真館の中を見渡していく。


「……士君。多少予想がつくんだが敢えて聞かせて貰いたい。奏夜君はどうした?」
「ユウスケとバイクツーリング中だ」


夏海の「何故わざわざ暗に伝えるんですか」というツッコミも間に合わないまま、まず名護と太牙が写真館から飛び出していった。
二人のバイクのエンジン音が轟いた後、マージョリーはシャナ達の方を振り向き、


「じゃ、私達も行こうかしらね。どーせアンタ達のことだから、奏夜の気配感じ取れなかったんでしょ?」
「ば、馬鹿にするな!」


「明確に否定はしないんだなぁ」と悠二は思ったが、言った瞬間にシャナの鉄拳が飛んでくるのは目に見えていた為、口には出さない。


「士君、私達も行きましょう」
「……仕方ない。ユウスケも拾ってこなきゃならんしな」
「アヴェンジャーの本拠地……お宝もありそうだね」
『お前は留守番してろ!!』
「えー?」


いつの間にかいた海東を指差す士とシャナの動きがシンクロした。


こいつは場を引っ掻き回すことしかしない。
士はもちろんのこと、シャナも何となくそれを理解しつつあった。


「仲間外れにするなよ士。僕とキミの仲じゃないか」
「何が俺とお前の仲だ、ただの被害者と加害者だろ!! おい彩香、爺さん、こいつを縛り上げて物置にでも――」





店の奥にいる二人を呼ぶ士の声が、突然止まった。
数瞬遅れ、シャナ達もまた、その波動を感じ取る。





「な……なんだ、この、気配……!!」


辛うじて、声を発することができたのは悠二だけだった。
シャナとマージョリーは突如現れた存在の解析に全ての神経を使い、声を出せるような余裕はなく、アラストールとマルコシアスもまた同じだった。


士、夏海、海東だけが目の色を純粋な驚愕に染め上げ、虚空を睨んでいる。


――遥か遠くで吹き上がり、しかしここからでも、その暗さと恐怖は否応なしに人の精神を蝕む。そして士は、誰よりもその恐ろしさを知っていた。


――今、生み出されている『闇』はかつて、自分の前に立ちはだかった存在なのだから。




「ユウスケ……『究極の闇』になるつもりか?」




◆◆◆


爆発は起こらなかった。


「……?」


アームズモンスターとファンガイア達が、恐る恐る目を開ける。


凄まじい光はあった。
全員がそれを爆発の合図と判断し、反射的に目を瞑ったのだから。


しかし既に結界は解除され、周囲には煙が立ち込めているものの、景色そのものにはなんら変化はない。
木々は消し飛ぶどころか一本も折れたり燃えたりはしていないし、大地が焼け野原になっているということもない。


「どうなっている……?」
「確かにあのファンガイアが膨らんで、凄い光が見えたよね?」
「そうやは、ぶじか?」


アームズモンスター達もファンガイア達も戦うことを忘れ、状況把握に全力を注ぐ。


――と、風のお蔭で段々と視界が晴れていく。


まず目についたのは、砕け散ったステンドグラス。
これがスパイキーラットファンガイアのものなのは間違いないだろう。
不思議なのは、ステンドグラスに炎が灯っていることだ。


「これは……」


ガルルが近くでそれを観察する。
爆発による炎――ではないだろう。規模が中途半端過ぎる。


(この炎があのファンガイアを、爆発する前に焼き尽くしたのか?)


だが、ただ燃やし尽くすだけでは爆発は止められない。刺激を与え、爆発時間を短縮して終わりだ。

(まるで……)





原子・分子レベルで、内側から自然発火でも起きたかのような――





ザッ。


大地を踏みしめ、奮迅の向こうから黒い影が歩いてくる。
その場にいた全員が身構え、彼の放つ絶大なオーラに畏縮した。


黒く歪な形状に、血管の如く金色のラインが駈け巡る鎧。
鋭く天を突くように伸びる四本角。
アークルの外観は黄金に染まり、アマダムの色は深い闇を思わせる漆黒。
希望の霊石と同じブラックに染まった無機質な瞳が、ファンガイア達を睨み付けていた。


――聖なる泉、枯れ果てし時。凄まじき戦士雷の如く出で、太陽は闇に葬られん。





『究極の闇』の名を冠す最強形態、クウガ・アルティメットフォーム。
世界の破壊者に勝るとも劣らぬ力を持つ、究極の域に達した仮面ライダーだ。





クウガUFは流れるような動作で左手を上げる。


――ボウッ!!
すると、ファンガイア達が立つ直ぐ傍の気が、何の前触れもなく燃え上がった。
突然の怪現状に、ファンガイア達が震え上がった。


クウガ・アルティメットフォームが持つ超自然発火能力。
対象物を即座にプラズマ化し、内側から原子・分子レベルで焼き尽くす。
衝撃を与えないのだから、誘爆の危険性もない。原子・分子の単位で敵を燃やすのだから尚更だ。


「……あのファンガイアは、残されるお前達のことを想って、自爆の道を選んだ」


クウガUFのクラッシャーの下から、低く唸るような声が漏れる。


「あのファンガイアの遺志を無駄にしたいっていうなら、相手になろう。
だが、気を付けろよ」


――この姿は、俺自身も上手く手加減できないからな。


そのクウガUFの警告がトドメだった。
彼が纏う絶対的強者の風格。
このまま戦えば、スパイキーラットファンガイアが犬死になってしまう。
アヴェンジャー達がそう理解するのに、時間は要らなかった。


「――っ、全員撤退だ! 負傷者に手を貸せ!」


アヴェンジャー勢は苦虫を噛み潰したような表情でクウガUFを睨みながら、森の奥深くへ消えていった。


「……………うっ!」


同時に、クウガUFの姿がブレた。
スパークが走り、アルティメットフォームの輪郭が、どんどん変化していく。


(やっぱまだ、こいつは制御出来ないか……っ!?)


これ以上の変身はマズい。
アルティメットフォームの破壊本能に精神が飲み込まれる。


制御の手綱を手放し、クウガUFはふらりと後ろ向きに倒れた。
その身体が地面につくかつかないかという内に、クウガの姿は白い弱体化形態・グローイングフォームに変わり、すぐユウスケの姿へと戻る。


――ガシッ。
だが、ユウスケが地面に倒れることはなかった。


「……サンキュ」
「どういたしまして」


ユウスケの振り返った先――同じくフラフラな紅奏夜が、彼の身体をしっかり受け止めていた。


◆◆◆


「ユウスケ。お前何で、俺にここまでするんだよ」


不躾に、奏夜がユウスケに尋ねる。


アームズモンスター達をキャッスルドランへ返し、キバーラは奏夜のポケットの中で睡眠中。
奏夜とユウスケも戦いの疲れからか、小休止のつもりで近くの木に寄りかかっていた。


「何かあるとすぐ落ち込んで、理想を見失っちまうようなヤツの為に、どうして違う世界から来たお前が戦ってくれるんだ?」
「いくら情けなくても、俺が違う世界から来た人間でも、それが奏夜を助けない理由にはならないよ。ただ俺は、アンタが泣いてるのを見たくなかったんだ」


ユウスケはまるで悩むこともなく、軽々とした様子で答えた。逆に奏夜は納得がいっていないらしく、


「それだけか?」
「俺はそれで十分な理由だと思うけどな。あと他に理由があるとすれば――」


ユウスケは目を細める。
誰かの笑顔の為に戦う。けれど、奏夜を助けたいと思った理由はそれだけではなくて――


「似てるからかな」
「え?」
「アンタさ、俺の友達にそっくりなんだよ。誰かに迷惑を掛けたくなくて一人で頑張っちゃうところとか、一度迷うとすぐ思考の袋小路に入っちゃうところとか」


奏夜と同じ、キバの世界の仮面ライダー、ワタル。
最初は似ていないと思った。
ワタルと違い奏夜は、自分の本音をガンガン出していくタイプだと思っていた。


けれど、そうではなかった。
ワタルが前に進まないことで、周囲の人々と向き合うことを拒絶したのに対し、奏夜はがむしゃらに前に進むことで、自分の本音を人々に悟られまいとした。
ワタルのは弱気で、奏夜のそれは空元気。


――要するに、


「アンタ、強いように見えて、凄く危なっかしいんだよな」


だから放っておけない。
フラフラしながら前に進んでも、道は開けない。
旅路の過酷さに負け、すぐ倒れてしまう。


「俺は、奏夜の理想は間違ってないと思うよ」


奏夜から目を逸らさず、ユウスケは真っ正面から告げる。
力の無かった奏夜の瞳が、僅かに揺れた。


「そりゃ、反対するヤツはいるだろうさ。どんな理想でも、それを拒絶するヤツは必ずいる。でも、本当に自分の理想を貫きたいなら、そいつらとも向き合わなきゃダメだと思う」
「――向き合う?」
「ああ。そいつらの抱えた理想も全部受け入れた上で、みんなが笑っていられる為にはどうすればいいのか考えていかなきゃ」


迷うのではなく、考え続けること。


ユウスケもかつて、答えの無い二択を迫られたことがあった。
親友と世界とを天秤にかけるという、残酷な選択。
だが最後には、親友を止めるべく、心中も覚悟の上で『究極の闇』になることを選んだ。


それがもたらす結果を、覚悟の上で。


「奏夜ならできるよ。奏夜は、自分の選択から逃げないだけの覚悟があるはずだ。
もし、選択の重さに耐え切れなかったり、理想を見失って迷い道に出たりして、アンタが行きたい場所に行けないって言うなら」


ドンと自分の胸を叩き、ユウスケは自分が今できる最高の笑顔で告げる。





「俺が連れてってやるよ。奏夜の、本当に行きたいところまで」





呆けたように奏夜はユウスケを見つめる。
彼の言ったことを脳が処理し終えた瞬間、奏夜は盛大に破顔してしまった。


「――馬鹿だな。お前」


少し小馬鹿にするような口調。だがその表情に刻まれたのは紛れもなく、奏夜の本当の笑顔。


「馬鹿で、度を超えたお人好しだ」
「よく言われるよ」
「………っくく」
「………ははは」


緊張の糸が切れたのか、二人はしばらく声を出して笑い合う。
特に奏夜は、今までの余裕の無さが嘘のように、声のトーンを落とさず、心の底から笑っていた。


さっきまで真っ暗だった心が、今は青空のように澄み切っているのがわかる。
一人でズタボロになるまで戦っていた分、傍らに誰かがいてくれることが、堪らなく嬉しかったから。


「――ユウスケ、悪いんだけど、もうしばらく付き合ってくれないか?」


一頻り笑い声を出し切った後、奏夜は立ち上がった。


「会わなきゃならないヤツが――答えを聞かせなきゃならないヤツがいるんだ」
「りょーかい」


ユウスケもよっこらせと足を立たせる。


「どこまででもお供しますよ。我らが王」


冗談めかした言い方に、奏夜はいつもの人を喰ったような態度で応える。


「うむ、苦しゅうないぞ。ついて参れ」


二人の仮面ライダーは疾駆する。


互いに支え合うような、二本のわだちを残して。




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  1. 2012/05/31(木) 11:01:35|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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