紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第二十一話・アチェレランド/崩壊の兆し.後篇

「奏夜、これからどうするの~?」


あてどなく街を彷徨う奏夜に、キバーラはポケットからこっそり問う。


「ファンガイアが現れるまで、適当に街をぶらつくさ。
あの海老のファンガイアがこのまま何もしないとは思えないし、こうしてヤツを嗅ぎ回ってれば、あいつも俺を邪魔に思って出てくるかも知れないだろ」


至極淡白な口調で告げる奏夜に対し、キバーラは思う。


やはり奏夜はキバットを奪われて以降、投げやりというか、つっけんどんになっている気がする。
士への態度が良い例だ。
初対面で、しかも得体の知れない相手というので警戒するのは分かるが、普段ならあそこまで不躾な対応はしない。


(まぁ“奏夜の時間”のことを考えれば、余裕がなくなるのもわかるけどね……)


いや、それ以前の問題か。
幼い頃から連れ添ってきた親友。
それを奪われれば、他に気を払えないのも無理からぬことだ。
しかし、このままの状態が続くのも、キバーラとしては気詰まりしてしまう。


ので、遊んでみた。


「ねぇねぇ塔矢」
「……俺の名前を某囲碁漫画における、プロ棋士期待の新星みたいに呼ぶな。俺の名前は奏夜だ」
「失礼。噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「かぷっ♪」
「リアルにポケットに入れた俺の指を噛むな!! つかこのネタの場合、お前がやらなきゃいけないのはスポーツ腐女子だろう!」


余裕の無い時でも、ボケとツッコミだけは忘れない奏夜だった。
例え周りの人間の目が、悲しいものを見るような光を帯びていたとしても。


と、そんな時だった。


「随分と楽しそうなことですね」
「……そう思うなら、お前の目は節穴だ」


突然、背後からかかった涼やかな声に振り向く奏夜。


目線の先にいたのは、黒いローブのような服装に、蒼眼蒼髪を持つ容姿端麗な女性。
年齢はさして奏夜と変わらないようだが、細長い切れ目と、口元に浮かべている優美な微笑のせいか、より大人びてみえる。


現実離れした美しさに、道行く人々は好奇の目線を向けるが、奏夜の瞳には敵意しか宿らなかった。


「その声……お前があの時のファンガイアだな」
「ええ、レティシア・リネロです。以後、お見知りおきを」


奏夜の威圧的な眼光にも屈さず、レティシアは笑みを崩さない。


「レティシア……成る程、お前があの『アヴェンジャー』の頭目か。
何の用だ? 俺を確実に消しに来たか」
「いえ、正直な話、私“達”の目的において、貴方にはもう興味はありません。ただ、証を失った裸の王が、どんな調子か気になりまして」
「そうだな。わざわざ被害者の前に、面を晒しにくる盗人くらい間抜けだろうな」
「くすっ、皮肉を言うだけの覇気はあるんですね。取り敢えず、場所を変えませんか? このように人間共がのさばった場所では、貴方もやりづらいでしょう」
「気が利くな。気が利くついでに、俺の親友をさっさと返して貰いたいんだが」
「それもまた、向かった先でお話いたしますよ」


ローブを翻し、奏夜の脇をすり抜けていくレティシア。


「むきーっ! なんなのよあの女! 癪にさわる態度取って!」
「カッカすんなよキバーラ。何を考えてるか知らねえが、俺達にとって好都合には違いないだろ」


好戦的に口角を吊り上げ、奏夜はレティシアの後に続いた。


◆◆◆


「で、一体どういうことかしらねこりゃ」


マージョリーが面倒くさそうな、どこか投げやりなような口調で、目の前にある現状を批評した。
士もまた、似たり寄ったりの口調で言葉を返す。


「どういうことかも何もない。ファンガイアの一団だろ」
「こんなにたくさん、街の中心地で、それも封絶の中でか?」


太牙がクールながらも、驚愕を刻んだ表情で告げる。
顔にこそ出さないが、隣に立つシャナも同感だ。


「どうなってるんだ? ここまで沢山の敵対ファンガイア、ワタルのとこでも見たことないのに……」


ユウスケの言う通り、現在五人の眼前には、ビースト、インセクト、アクア等様々なクラスのファンガイアが、ステンドグラスの如き外皮を輝かせながらひしめき合っていた。


場所は大通りに面する交差点。
人気は少ないが、ファンガイア達のすぐ傍には、ライフエナジーを吸われ、色素が透明に変わった人々の亡骸が幾つか転がっていた。


救えなかった人々を想い、太牙は悔しさに歯を軋ませる。


「くそっ、封絶の中なのをいいことに、人々を貪り食うとは……!」
『冷静になれ、登太牙。先刻感じた“徒”の気配も近い。判断力を欠けば、敵の思う壷だ』


太牙を窘めるアラストールの声を聞きながら、既に炎髪を靡かせているシャナは、贄殿遮那を握り締める。
アラストールの指摘にあった、“徒”の存在を警戒しているのだ。


今まで、封絶内にファンガイアが乱入してきたことはあった。
しかし、こうしてファンガイアが狩り場とした場所に、打ち合わせたかのように配置された“封絶”。
これらが意味するものは、


(ファンガイアと“徒”が組んでいる)


シャナの読みは的中していた。
ファンガイアの群れが両脇に捌け、謎の人影が現れたのである。


端が破れ、不気味にはためくコートだけなら、まだ常識の範囲内。
だがその姿は、人間の身体にカラスの頭部を持つ異形。


「あれが、“徒”ってヤツか」


士とユウスケはその出で立ちの異様さから、シャナ、マージョリー、太牙は存在の力の質から、あのカラスが敵の中でも一線を隔す存在――“徒”と悟る。


異形は五人を見やり、嘴を僅かに動かす。


「この街に同朋殺しが常駐しておるとの噂は聞き及んでおったが……まさか魔神の契約者と、フレイムヘイズきっての殺し屋とはのぅ」
『“冥夜の船頭”カロン』


アラストールが、ペンダントから遠来の如き唸り声を漏らす。


「ホウ、儂も名を知られるようになったものじゃ。……そこの二人もただの人間ではないのう。もしや、世界の破壊者の一派か?」
「はっ、この門矢士を知っているとは、なかなか博識なカラスだな」
「なに、あの奇妙な外套を着た男から聞き知っていただけのことじゃ」
「お前……やっぱり鳴滝の仲間か!」


食ってかかるユウスケだったが、カロンは肩を竦めるだけだ。


「ただ少々協力を仰いだだけの仲じゃ。世界の破壊者共の排除を依頼されてもいたが、所詮は口約束に過ぎん」
「ふん、誰の差し金かなんてどうでもいいわ。“渡し守”がこの街に何の用よ?」


直接の邂逅は無くとも、噂からこの“徒”のえげつなさを知るマージョリーは、忌々しげに問う。


「儂の――否、儂等の目的に必要なモノを調達しに、かのう」
「儂“等”ですって?」
『まさかオメーみてぇな変わり種が、今更誰かと組んだってのかぁ? ヒッヒ』
「そのまさかよ。キング、貴様なら名くらいは知っておるのではないか? 我らが組織――“アヴェンジャー”を」
「何!?」


太牙の表情が驚愕に変わったのを見て、シャナは問う。


「太牙、アヴェンジャーって……?」


「……アヴェンジャー。未だ存在する、ファンガイアと人間の共存を良しとしないファンガイアで構成された組織だよ。
共存に関わる様々な重要拠点を破壊しているテロリストのようなものだ。
そうか、では奏夜を襲ったファンガイアが、あのレティシア・リネロか!!」
「ご明察」


黒コートを靡かせ、カロンは手甲に覆われた右手を突き出す。


「彼女は少々、貴様の弟に用があるようでのう」
「奏夜にだと? バカな。お前達の目的は知らないが、キバの鎧を奪った以上、奏夜にもう構う理由は無いはずだ」
「理由までは知らんよ。儂は邪魔をされないようにと足止めを買って出ただけじゃ。悪いが、ここでしばらく、このファンガイアと踊って貰おう」
「せっかくのお誘いだけど遠慮しとくわ」


炎の衣『トーガ』を纏い、マージョリーはその群青の巨体を震わせる。


「あたしは自分を安売りしないし、アンタらよりよっぽど、世話のかかるヤツがいるみたいだしね」
『ヒャーッハハハ!! 確かに、今のキバの兄ちゃんは、放っとくと何しでかすかわかんねぇからな!!』


シャナと太牙もまた、贄殿遮那とジャコーダーを構える。
マージョリーの言うように、今の奏夜を一人で戦わせるのはまずい。
余裕が無い精神状態も心配だが、何か言い知れない不安を感じていたからだ。


「シャナちゃん、マージョリーさん、太牙さん、俺達も手伝うよ」


ユウスケが力強く前に躍り出る。士はやや気乗りしない様子ではあったが、


「やれやれ、あいつはあまり好かないが……ま、これも縁には違いないか」


溜め息をつきながら、彼はカードとディケイドライバーを取り出した。
ユウスケも、古代に繁栄した種族、リントの勇者が残したベルト『アークル』を顕現させ、太牙の下にはサガークが飛来し、彼の腰に取り憑く。


『変身!!』


士がカードを反転させ、ディケイドライバーに装填。
ユウスケはスライドさせた右手を、左手と共にアークルの側面へ押し込む。
太牙はジャコーダーをサガークベルトにインサートし、一気に引き抜く。


【KAMEN.RIDE-DECADE!!】
『ヘン・シン』


トリックスター、アマダム、蒼いウェーブの光がそれぞれのベルトから放たれ、三人の姿をディケイド、クウガ、サガ――三人の仮面ライダーに変える。


「ファンガイアの王に平行世界の戦士か……面白い」


カロンがファンガイア達に見えるよう、ディケイド達を指し示す。


「行け。場合によっては滅しても構わん」


ウォォォォッ!!


空気を震わす雄叫びを挙げ、ファンガイアの軍勢は獲物を排除しようと襲い掛かってくる。


「足を引っ張るなよ、赤チビ」
「どっちが」


手を軽く打ち鳴らすディケイドと、彼を未だ敵意を込めた視線で見るシャナを筆頭に、五人はファンガイアの群れに向かっていった。


◆◆◆


「おい、どこまで行く気だ」
「二分二十秒前にも同じ質問をされましたね。せっかちな方は嫌われますよ」


ちっ、と舌打ちをして、奏夜はレティシアの後に続く。


せっかちになるのにも理由はあった。
レティシアに連れられて二十分弱。歩いている場所は既に御崎市の外れ――“何度となく通った道”なのだから、否が応でも予想はついてしまう。


しかし、脳は必死にその推測を捨て去ろうと働く。


(大丈夫)


連れて行かれるのは“あの場所”じゃない――と。


「着きましたよ」


雑木林を抜けると、青空の光が差し込み、景色が開ける。
周囲を山岳が取り囲み、目先には小高い丘。
その頂上には――。


「……」


奏夜は口を閉ざしたまま、レティシアに促され、丘の頂上へ。
点在する岩に紛れ、煌びやかに研磨された石碑を前にし、ようやくレティシアは立ち止まった。


「よく手入れされていますね、このお墓」


おもむろにレティシアは、蒼みがかかった石碑――否、墓標に触れる。


「普通、こんな場所で野晒しにされていたら、どんどん状態が悪くなっていくものですが……手入れはあなたがしているのですか? それとも、兄君がされているのかしら」
「……気安く」


質問に答えず、奏夜は声を怒りに震わす。


「それに触れるな……!!」
「あら、失礼」


シニカルな微笑を浮かべたまま、レティシアはあっさり手を退いた。


「意外と女々しいんですね。四年経った今でも、同じ女性を愛し続けているなんて」
「……回りくどいのは嫌いでね。お前は一体何が言いたいんだ、レティシア・リネロ。こうして俺の“過去”を晒して、みっともないと小馬鹿にしたいのか」
「いいえ。言ったでしょう、あなたにもう用は無いと。あなたをここに呼んだのは、つまらない与太話の為ですよ。
あなたの過去については……ただ、懐かしいなと思うだけですね」
「懐かしい?」
「ええ」


妙な言い回しをするレティシア。奏夜は警戒を怠らぬまま、自分の怒りを抑えつける。


「私もかつて、人間を愛しました」


不躾に、レティシアは口を開く。
だが、淡々と語られた事実は、奏夜をその話に引きつけるには十分だった。


「まぁ、貴方が生まれるずっと前の話ですけれどね」


遠くを見るような目で、レティシアは続ける。


「貴方達が中世と呼ぶ時代、ファンガイアは今よりも認知されていましたが、それ故に、人間の畏怖の対象でした。
既にその頃、ファンガイアは全ての種族の頂点にいましたが、人間の中には、無論、それを良しとしない連中がいましてね。
各地でレジスタンスが結成され、末端のファンガイア達を弾圧していました」
「……酷い話だな」


素直にそう思うが、当たり前だとも思った。
一時期『素晴らしき青空の会』が自分をそう見られていたのと同じく、ファンガイアを未だ恐怖の象徴として見る人間は多い。


人間は、自分と違うものを恐れる。
レティシアは奏夜の心中を見越したのか、


「ええ、酷い話です。ですが、そんな時代に、私は人間を愛したのです」


と、答えた。
ほのかに、暖かさを感じさせる声で。


「私は当時、さしたる力も持たない一介のファンガイアに過ぎず、人々から虐げられて生きてきました。
そんな時、人間によって瀕死の状態に追い込まれた私を助けてくれたのが、私の夫です。彼は辺境に住む医者で、私がファンガイアと知って尚、私に手を差し伸べてくれました。『傷付いた誰かを放ってなどおけない』なんて理由でですよ?」


お人好しですよね。とレティシアは言うが、決して貶すような口調ではなかった。


「私は彼と暮らし、互いに愛し合うようになりました。人間の家族と同じように、ささやかですが、それでも私にとっては十分な幸せを手に入れました。
既に禁忌とされていた人間とファンガイアの恋ですが……、掟や規律で恋心が縛れないのは、貴方もよく知っているでしょう?」
「……」


知っている。嫌と言うほどに。




――そして最悪の場合、それがどういう結末をもたらすのかも。




「……失ったんだな。あんたも、愛した人を」


レティシアは何も言わない。
沈黙。すなわち肯定だ。


「なんで、失った?」
「殺されました。人間に」


冷水をかけられたような衝撃を受ける奏夜。
それほどまでに、レティシアの放つ威圧感が、劇的に変化したのだ。
それこそ日溜まりのような暖かさから、絶対零度の冷たさにまで。


「魔女狩りという言葉くらいは、知っているでしょう。人間であっても、人外のものを匿うということは、その時点で異端とされる行為。 人間とファンガイアが共にあることを知った人間は、私達家族を捉えました」


奏夜は、足元がぐらつくのを感じた。


「――まず、夫が私の目の前で焼き殺されました。次に、生まれたてだった私達の息子も焼き殺されました。逃げおおせた私も、火炙りよりも激しい絶望を味わいました」


ふっ、と息をつき、レティシアは奏夜に向き直る。
冷ややかな瞳を浮かべたまま。


「貴方の理想は、それは素晴らしいものでしょう。人とファンガイアが互いに手を取り合って生きていく。理想的な形です。ただ――」


私は受け入れられない。


「人間もファンガイアに苦しめられたでしょうが、ファンガイアも人間に苦しめられた。互いに傷つけあって、今更共存など出来るわけがない」


何も言い返せず、奏夜はただレティシアの声に気圧されていた。


「だから私は、人間に虐げられたファンガイアを集め、アヴェンジャーを作った。痛みを抱えた者のことなど知らず、のうのうと生きる人間に、我々の苦痛を知らしめる為に」
「そ、そんなのただの八つ当たりじゃない!!」


我慢出来なかったのか、奏夜のポケットからキバーラが飛び出した。


「人間に酷いことをするヤツがいるのはわかるわよ!! でも、何の罪もない人達を襲って、それじゃ貴女の家族を殺した人間と変わらないじゃない!!」
「知った風な口を聞くな、キバット族!!」


さっきまでとは段違いな剣幕に、キバーラは小さく悲鳴を挙げる。


「ならばこの憎しみはどこにぶつければいい!? 私が得られなかった人とファンガイアの幸せを見せ付けられ続ける世界で、この憎しみがいつ晴れるというのだ!! 共存などと下らない絵空事を掲げた連中に、私の痛みが分かるものか!!」


魂の奥底から響いてくるような叫び。
レティシアから聞こえる心の音楽は、地獄の劫火を思わせるような、激しい憎悪を奏でていた。


「……私が貴方に会いに来たのは、貴方が私と同じ痛みを持ちながら、私とまるで違う理想を追っていることに、興味を持ったからです」


レティシアは冷静さを取り戻した声で、しかし奏夜にとっては、絶大な苦しみを伴う質問を口にした。


「紅奏夜――いえ、影のキングよ」






貴方の理想は果たして、本当に人間とファンガイアを幸せに出来るものなのですか?






「……それ、は」


答えられなかった。


ずっと信じてきた。
人間とファンガイアは手を取り合える。
そうすれば、もう誰も自分のように傷つくこと無く、みんなが笑って暮らせるようになると。


だが今、目の前にこうして、その掟を享受出来ず、新たな苦しみを抱えたファンガイアがいる。
信念を根底から揺るがされた奏夜は動揺し、もはや答えを導き出す術を見失っていた。


「答えられないのですか?」


呆れたようにも、落胆したようにも取れる淡白なトーンで、レティシアの言葉は紡がれていく。


「私は先刻、貴方を消すつもりはないと言いましたね。……ですが、気が変わりました」


ゆっくりと、レティシアは手を前に掲げる。


「信念を貫く意志もない者など、見苦しくて仕方がない。ここで消えなさい」


宣言を合図に、レティシアの姿は海老を彷彿とさせる異形――ロブスターファンガイアへと変わる。


「っ、キバーラ!!」


我に返った奏夜は、未だに動揺した様子のまま、キバーラを己の指に噛みつかせる。


「か~ぷっ♪」


頬にステンドグラスの模様を浮かべ、奏夜はキバーラを手間に突き出す。


「変身!!」


スペードの光が奏夜の身体に収束し、その姿は瞬く間に仮面ライダーRキバーラへと変化した。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈め!」
「沈むのは……貴方です」


召還したクレイモア型の大剣を、片手で軽々と持ち上げながら、レティシアは挑発的な態度を崩さずに告げる。


Rキバーラはザンバットソードとキバーラサーベルを交差させ、ロブスターファンガイアと対峙した。


――その心を、激しく揺れ動かせたまま。



◆◆◆


同時刻、御崎市大通り。


「くそっ、キリが無い!」


ジャコーダーから伸びる真紅の鞭を振るい、サガは周囲のファンガイアを凪ぎ払う。
だが、砕けたファンガイアのステンドグラスを踏みしめ、また新たなファンガイアの波が押し寄せてくる。


「こいつら、一体何人いるんだ!?」


クウガが肉弾戦はきついと悟ったのか、敵の一体の手を蹴り上げ、所有していた槍を奪い取る。


「超変身!」


アークルが青色に輝き、クウガは運動能力に長けたドラゴンフォームへ。


「はっ、だりゃあっ!!」


槍から変化させたドラゴンロッドを振り回し、敵を倒していく。


「中々やるのう、じゃが……!」


観戦していたカロンの腕に装着されていたガントレット、手の甲にあたる部分に装え付けられた小さな鏡が輝く。


――ギィィィッ!


雄叫びを挙げながら、鏡が生み出す光の中から、新たに数体のファンガイアが現れた。


「なんだありゃ? 中からファンガイアが出てきたぞ」
『ヤツが“冥夜の船頭”や“渡し守”といった異名で呼ばれる理由……屍を繰る宝具“死者の書”だ』


ライドブッカーでファンガイアを切り倒すディケイドに、アラストールが答える。


『ヤツの記憶にある魂の情報から、対象者が存在していた頃の姿を映し出すことができる。ファンガイアの魔術と違うのは、リビングデッドと化しても、そのファンガイアの力が劣化しない点だ』
「死人をそっくりそのまま呼び寄せるってワケか。道理で何体か、何の意志も感じられないファンガイアが混じってたわけだぜ」


つまり、アヴェンジャーに所属する生者のファンガイアと、カロンの蘇らせたファンガイアが入り混じっているわけだ。


「でもそうだとすれば、敵は無尽蔵に出てくるんじゃない?」


シャナが危惧するように、このままではゴールの見えないマラソンマッチを永遠に続けることになる。


(早く、奏夜のところに行かなきゃいけないのに)


敵が何を思って奏夜に会っているのかは知らないが、どうせロクなことでは無いだろう。
尚更、奏夜の身が案じられる。
珍しく焦りを見せるシャナの心境を察したのか、


「なら、何人かがこのファンガイア達を足止めするしかないだろ」


ディケイドの提案に、近くで戦っていたマージョリーとサガが、


「確かに、こいつら片付けつつ奏夜のとこに行くのは難しそーね」
「足止めは、僕と『弔詞の詠み手』が買おう。数だけの相手なら、二人もいれば十分だ」


この状況での最善の策、ということを認識し、二人はあっさりとディケイドの提案に乗った。


「でも、本当に大丈夫なんですか? たった二人で」
『ヒャーッハハ!! 気にすんなって! むしろ、こーゆーただぶっ壊せばいいだけの仕事は、俺様達の専売特許ってもんだ!』


気遣わし気なクウガの言葉をマルコシアスの声が一蹴したところで、全員の意見が纏まる。


「なら、道を作らなきゃね」


言って、シャナは贄殿遮那に存在の力を送り込む。
紅蓮の炎に包まれていた刀身が、更に輝きを増した。


「炎か……なら、こっちも炎だ」


ディケイドはライドブッカーから、新たなライダーカードを取り出し、ディケイドライバーに装填する。


【KAMEN.RIDE-RYUKI!!】


現れた白い虚像が、幾重にもオーバーラップしたかと思うと、次の瞬間、ディケイドの姿は鏡の世界の騎士――仮面ライダー龍騎に変わっていた。


【ATTACK.RIDE-STRIKE.VENT!!】


天から落ちてきた手甲、ドラグクローを装着した右手を引き、D龍騎は腰を深く落とす。


「サービスだ。火力はヴェルダンにしてやる。――ハァッ!!」
「だぁっ!!」


シャナの贄殿遮那から生み出された紅蓮の奔流と、D龍騎のドラグクローから放たれる昇竜突破が、ファンガイアの軍勢の一角を、正面から根刮ぎ焼き払った。


――ギ、ガァァァ!!


後には、消し炭と化したファンガイアと、包囲網を突破する大きな通り道。


「行くぞ、ユウスケ、赤チビ!!」
「ああ!」
「赤チビって言うな!」


カロンの生み出すファンガイアによって、再び塞がろうとする道を、D龍騎、シャナ、クウガは駆け抜ける。
サガとマージョリーが、敵を蹴散らしていくのを目の端に収めながら。


◆◆◆


ガンッ!!


交差させたザンバットソードとキバーラサーベルが、ロブスターファンガイアのクレイモアと真っ向ぶつかる。


「クソッ、舐めんな!」


火花が散り、剣の重圧に足が笑うのを必死に抑え、Rキバーラはロブスターファンガイアを押し返す。


「腐っても王ですね。ですが!!」


クレイモアを構えたまま、ロブスターファンガイアの姿が残像を残して消え去る。


「無駄だ! キバで戦った時とは違う!!」


キバーラもまた加速能力を使い、超高速の世界に入った。
常人には認知すらできない領域での戦いが、二人の間で巻き起こる。
聞こえるのは、互いの剣がぶつかる際の、甲高い金属音だけだ。


剣を挟み、ロブスターファンガイアは不適に笑う。


「成る程。確かにこれで手数は互角ですね。でも、やはり貴方は私には勝てない」
「何っ!?」


言葉を交わす間にも、二人は壮絶な剣さばきで相手へのダメージを狙う。
一方が攻めれば相手が防ぐ、逆もまた然り。
だが、その均衡が破られるのにそう時間はかからなかった。


「はっ!!」


ロブスターファンガイアのクレイモアが、Rキバーラのキバーラサーベルを剣先で弾き飛ばしたのだ。
Rキバーラがそれに気を取られたのは一瞬だったが、ロブスターファンガイアにとってはそれで十分だった。


「しゃッ!!」


水の波動を纏った刀身が、Rキバーラを真一文字に切り裂いた。


「が、はっ!!」


傷口を抑えながらも、Rキバーラは追撃に備え、相手から距離を取る。


「奏夜、大丈夫!?」
「あ、ああ。何とかな……」


キバーラサーベルを持っていた右手を見ると、痙攣を起こし、痺れるような感覚に覆われている、


「いかに手数が互角だろうと、貴方の獲物は、所詮細身の刀剣。
片や私は、一撃必殺をも狙える重量級のクレイモア。剣で防御すればするほど、貴方の腕にはダメージが蓄積されていく。戦略としては、受けるのではなく避けるべきでしたね」
「くっ……」


普通なら、こんなことは有り得ない。
本来両手持ちのクレイモアを片手で軽々と操り、軽量の刀剣と同スピードで振るえるロブスターファンガイアのパワーがあってこそだ。


(やはり、一筋縄じゃいかないか……)


――奏夜は気づいていなかった。


基本的な実力差以上に、先刻の質問が、彼の心を大きく揺さぶり、奏夜の力を鈍らせていることに。
普段の奏夜なら――仮面ライダーキバである紅奏夜なら、一度戦い、戦闘スタイルを把握した相手に対し、こんな愚作は使わないだろう。


冷静な判断が下せないまでに――奏夜には余裕が無かったのだ。


(キバーラ。ウェイクアップだ……一撃に賭ける!!)


自分の状態に気付く由もなく、奏夜は残ったザンバットソードを構える。


「WAKE.UP!!」


キバーラのコールと共に、Rキバーラは紅の翼を羽ばたかせ、ロブスターファンガイア目掛けて特攻する。
Rキバーラの必殺技『ソニックスタップ』だ。


「愚かですね。最後の技がその程度とは」


流れるような動きで、ロブスターファンガイアは宙に指を走らせる。
彼女の魔皇力に引き寄せられ、大地の奥深くの水脈から、怒涛のような水流が吹き出した。


ソニックスタップの解除は効かず、Rキバーラの特攻は、彼女の操る水流に阻まれる。


(み、水で俺のスピードを……!!)


Rキバーラが理解できたのはそこまでだった。


「貴方が、転生の輪廻に沈みなさい」


――ザンッ!!


彼をせき止めていた水流を目眩ましに、ロブスターファンガイアがクレイモアの一撃を叩きつけた。


「ぐあぁぁぁぁ―――っ!!」
「きゃあぁぁぁ!?」


轟くような悲鳴を挙げ、剣と水流の勢いに負けたRキバーラは、地面に叩き付けられた。
小さなクレーターができたのと同じくして、Rキバーラの変身は強制解除される。


後には、激痛に呻く奏夜と、目を回したキバーラが残された。


「うっ……」
「きゃぷ~……」
「……まだ息がありますか。しぶとさは人間並みですね。忌々しい」


倒れた奏夜に近付き、クレイモアを突きつける。
確実に、トドメをさすためだ。


「せめて安らかに眠りなさい。愚かな信念を掲げた王よ」





◆◆◆





「そこまでだ」


【ATTACK.RIDE-BLAST!!】


「!!」


突如放たれたマゼンダ色の光弾、ロブスターファンガイアはすぐ様これに対処し、奏夜から離れた。


「よぉ、随分と楽しそうだな。俺達も混ぜてもらおうか」


戦場に駆け付けたディケイドがライドブッカーの銃口を向けながら、不敵に言い放つ。
傍らには、シャナとクウガの姿もある。


「奏夜、キバーラ、無事?」
「門矢、シャナ、ユウスケ……?」
「喋っちゃ駄目だ! 傷が深いんだから!」


クウガが奏夜を担ぎ上げ、シャナが目を回したキバーラを夜傘に隠す。


「ごめんね、シャナちゃん……私が、奏夜を守ってあげなきゃいけなかったのに……」


夜傘から聞こえる、キバーラの沈んだ声。シャナはキバーラを気遣い、頑張ってくれた友達に優しい言葉を返す。


「大丈夫。あとは私達が何とかするから、キバーラはゆっくり休んでて」
「……うん、ありがとう」


ややあって、キバーラの安らかな寝息が聞こえてきたのを確認し、シャナは仲間と友達を傷つけた敵――ロブスターファンガイアを、烈火の如き瞳で睨む。


「……世界の破壊者の一派、それに魔神の契約者ですか」
「名乗りは要らなそうね。……討滅させてもらうわ」


シャナの怒りを真っ向から受け止め、ロブスターファンガイアは疲れたような溜め息をつく。


「あなた達三人を相手にするのは、少しばかり骨が折れますね。やむを得ませんか」


次の瞬間、ロブスターファンガイアが掲げた掌には、金色の蝙蝠――キバットバット三世の姿があった。


「キバット!?」


シャナの呼びかけにも反応しないところを見ると、やはりロブスターファンガイアの魔術で操られているらしい。


ロブスターファンガイアはそのまま、腰に巻かれたベルトにキバットを止まらせる。


「変身……」


光の鎖が巻きつき、ステンドグラスのように弾け飛ぶ。


彼女が変身したのは、奏夜と同じ仮面ライダーキバ。
変身プロセスこそ同じだが、奏夜のものとは異なり、アクアクラスであるロブスターファンガイアのイメージを反映したのか、鎧の各部分は固そうな甲殻に覆われ、キバ・ペルソナはガルルフォームよりも鮮やかなマリンブルーに染まっていた。


「蒼い、キバ?」
「こいつは手間がかかりそうだな……。赤チビ、ユウスケ、お前らは下がれ」


前に進み出るディケイドを、二人は当然のごとく止める。


「待てよ士!! キバになったってことは、あいつは並みのファンガイアじゃないぞ! だったら三人で戦った方がいい!」
「お前の勝手な指図は受けないわ」
「なら奏夜とキバーラはどうする。コートに入れたり、背中に担ぎながら戦うわけにもいかないだろ」


ディケイドの正論に、二人は押し黙る。


「安心しろ。俺は全てのライダーをも破壊した男だ。今更あんなパチモンのキバにやられるかよ」
「大層な自信ですね。それともただの慢心ですか?」
「どうかな。やればわかるさ」


アナザーキバの挑発にも、ディケイドは余裕綽々といった口調だ。
彼はそのまま、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。


「本物の力ってヤツを拝ませてやるぜ」


【KAMEN.RIDE-KIVA!!】


新たなカードを入れたディケイドの身体を光の鎖が包み、ステンドグラスとなって弾け飛ぶ。
奏夜の使うキバと同じ、赤い仮面ライダーキバの姿がそこにあった。


「キバの鎧!?」
「キバにはキバってね」


驚く仕草を見せるアナザーキバに、Dキバは悪戯を成功させた子供のような気分だった。
しかし、驚いたのはシャナも同じだ。


「あいつ、キバにまでなれるの?」
「当然だよ。全ての仮面ライダーの力と、歴史を受け継ぐ仮面ライダー。それがディケイドだからね」


事情を知るクウガは別段驚きはしない。戦いの行方と、奏夜の容態を気にかけるだけだ。


「はぁっ!!」


奏夜のキバと酷似した構えを取り、Dキバは鋭いパンチを繰り出す。
対するアナザーキバは変身前と同様に、クレイモアの腹でそれを防ぐ。


「甘いな!」


Dキバはそのまま、アナザーキバのクレイモアを持つ腕を自分の両腕で挟み込んだ。
斬撃を封じ、キバは再びカードを取り出す。


【FORM.RIDE-KIVA.GARURU!!】


狼の鳴き声と共に、Dキバはガルルフォームへとフォームチェンジ。


「ハァッ!」


ディケイドライバーから出現したガルルセイバーを掴み、相手の右腕を離した瞬間に、その刃を振り抜く。


「くっ、小癪な!!」


ダメージをものともせず、クレイモアを振り被るアナザーキバに背を向け、DキバGFは次なるライダーカードを装填する。


【FORM.RIDE-KIVA.DOGGA!!】


「そら、よッ!!」


重装甲に覆われたパワー形態、ドッガフォームは、振り返り様に魔鉄槌・ドッガハンマーをスイングする。


「ガハッ!!」


さすがに耐えきれなかったのか、重厚な一撃に押し負けたアナザーキバは、数メートル先まで吹き飛ばされる。


「まだまだ行くぜ!」


【FORM.RIDE-KIVA.BASHER!!】


バッシャーフォームの持つ魔海銃・バッシャーマグナムから発射された水球が、ドッガハンマーの攻撃に怯んだアナザーキバを襲う。


「ちぃっ!」


アナザーキバは手を突き出し、バッシャーマグナムと同じように魔皇力の籠もった水球を放ち、DキバBFの弾を叩き落とす。


「ほう……パチモンにしては中々やるじゃないか」
「貴方こそ、さすがは世界の破壊者と謳われるだけのことはありますね。そこの王とは比べ物になりません」


多少ダメージを喰らいながらも、アナザーキバはまだまだ余力があるらしかった。


(ユウスケの言う通り、ただのファンガイアじゃなさそうだな。少なくともワタルの親父と同等の力は持っている)


敵の強さを再認識し、DキバBFは、更に畳み掛けようとするが……。


「ですが、これ以上の戦いは無駄なようですね」
「……何だと?」


DキバBFの目の前で、アナザーキバは変身を解除し、レティシアの姿にまで戻る。


「おい、何の真似だ。まさか今さら敵前逃亡かよ」
「そう思いたくばどうぞ。 貴方がいかに強者かは分かりました。ここで貴方に勝てたとしても、残る二人を相手にするだけの力は残らないでしょう。
今戦ったのは、あくまで貴方の力を試す為ですよ」
「俺がこのまま逃がすと思うのか?」
「逃がすしかないんじゃありませんか? そこの方が背負う愚かな王――早くしないと手遅れになりますよ」


よく見ている。


士は相手の掌で踊らされた気分だったが、確かに奏夜の容態は素人目に見ても危ない。 できるだけ早く、医者に見せるべきだろう。


「狸野郎が。あいつの容態を見越して俺と戦ったってわけか」
「何とでも。私は無理な戦いはしない主義でしてね。 私達の――いえ、私の果たすべき目的を達成するまで、私は決して死ねないのです」


ローブを翻し、レティシアはDキバBFに背を向ける。


「愚かな王が目覚めたら伝えてください。貴方の思想は、所詮ただの綺麗事だと」


その言葉を最後に、レティシアの輪郭はぼやけ、周囲の景色へと溶けていった。


「……“私”の果たすべき、目的?」


変身を解除した士の言葉は、誰に届くでもなく、吹き抜ける風に浚われていった。



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  1. 2012/05/01(火) 00:48:22|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

誤字の報告をば…

「サービスだ。火力はヴェルダンにしてやる。――ハァッ!!」

【ウェルダン】では?

レティシアさん登場!やっぱりこの人のスタンスがなぁ…
レティシアさんがあそこまで愛される理由として一番強い理由になるのかな…

それでは、次回の更新を楽しみに待っています。
  1. 2012/05/01(火) 03:55:38 |
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  3. リュウガ #-
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