紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第二十話・旅人/BLAZING.BLOODの世界.前篇


※注意
今回の話は、ディケイドとのコラボであると同時に、神崎はやて先生の作品『仮面ライダーディケイド After the Movie War』とのコラボでもあります。
以前この小説を投稿していた際に企画したものなので、移転に伴い削除しようかとも考えましたが、この話はブレブラの今後にも関わるものになるので、結局変更なしのままで投稿することとしました。

しかし現在、PIXIVで活動していらっしゃる神崎先生が、まだディケイドAMFを復旧していない為、新規読者の方には非常に不親切な話となることを、ここにお詫び申し上げます;

ただ、基本的に登場人物は、門矢士を始めとするいつものメンバーなので、『仮面ライダーディケイド After the Movie War』を未読の方でも、十分楽しめるようなストーリーになっているかと思いますので、どうか見逃していただければ幸いです。

こちらがディケイドAMFの作品詳細です。↓

・『仮面ライダーディケイド After the Movie War』作品紹介
ムービー対戦2010から一年。ネガの世界(リ・イマジ世界)でディケイドを倒せなかった鳴滝は、自らを首領とする新たなショッカーを立ち上げ、ポジの世界(オリジナルライダーの世界)への侵略を開始。
剣崎一真から再び旅立ちを促され、士達もまた、ポジの世界を巡ることとなる。
カブトの世界、Wの世界、世界から拒絶された怪人が集まる世界、キバの世界を巡る傍ら、謎の少女、彩香を仲間に加え、ディケイド達の旅は続く――。






ーこれまでの仮面ライダーディケイド After the Movie Warは!―


「俺にもう一度、ディケイドになれと?」

「もう脅威は去りました! なのに、なんでまた私達が戦わなければならないのですか!?」

「これが俺の…………俺たちの力だっ!」

「よく覚えておきたまえ。僕のお宝を横取りしようとする奴は、たとえ誰であろうと………叩き潰すよ?」

「おお、あんたこそどちらさん? 彩香(さやか)は今コーヒータイム中なのだ。静粛な態度をしょもーする!」




「写真にポジとネガがあるように、ポジ世界とネガ世界は表裏一体。そして士。お前が旅してきたのは、ライダー達のネガ世界だ」

「ショッカーはまだ滅びてはいない。新たな指導者を迎え、さらに方々の怪人たちと手を組み、攻勢を強めている」

「どこのどいつだ? やつらの新しい頭ってのは」

「………ゾル大佐。本名は、鳴滝という男だ」

「彼はネガ世界ではお前を倒すことは出来なかった。そこで、俺達ポジの世界に目を付けた。まだお前の影響を受けていないポジの世界なら、倒すことが出来るかもしれないと。だが、本来ポジの世界は他の干渉を受けるはずがない世界。その干渉は歪みを生み、世界に波紋をもたらした。このままではこの次元は………全て消滅する」

「ああ、任せておけ。全部まとめて、俺が救ってやる!」




「お婆ちゃんが言っていた。他人を道から蹴落とす奴は、いつか自分も崖から落ちるってな」

「知ってるか? 友情とは、友の心が青臭いと書くんだそうだぜ? だが、青いなら青いなりに共に足掻いて、時には励まし、時には本気でぶつかり合う。それが仲間だ!」



「興味深いねぇ………。ああ、検索したい!」

「お前に何が解るんだよ!? 俺がどんな思いでドーパントを倒してきたか! どんな思いでその犯人達を警察に送ってきたか!」

「お前の信じる師匠の教えとやらは、そんな簡単に崩れるものだったのか?」

「こいつには、共に生きる仲間もいる。大切なことを教えてくれる師匠がいる。そんなやつを操ろうとしようとも、その絆がある限りこいつは負けない。そう、誰にもな!」

「「2人で1人の………」」
「通りすがりの…………」
「「「仮面ライダーだ!」」」




「さあ、お前のバックルをよこせぇっ!」

「ディエンド、だと…………!?」

「鳴滝を追って、あいつに復讐することを目的にライダー達と戦ってきた。けど、それを否定して生きていける自信が、俺にはないんだ………」

「………きっとあいつは、誰かを守るために何かを破壊する。つまり、大切な誰かを守るために戦え、って言ったんじゃないかと思う」

「破壊しか出来ないなら、大切なものを傷つけようとする敵を破壊してやればいい! それが、俺たち破壊者なりの―――――守り方だ!」



◆◆◆


調律を終え、カムシンが去った御崎市。


「がはッ……!!」


キバが地に倒れ、水溜まりが飛沫をあげる。
雨が降りしきる夜のこと――それは本当に、突然の出来事だった。
少し厄介なデスクワークを片付け、帰路についていた奏夜は、路地裏で突然襲われた。


「もう終わりなのですか? 世に名高いキバが、この程度の実力とは」


人間ではない。姿形は海老に似た、見覚えの無いファンガイア。
キバに変身して応戦する奏夜だったが、ついこの前の“教授”との戦いでの披露が、彼の動きを鈍らせる。


キバはせめてもの抵抗として、悲鳴を挙げる身体を起こし、敵を睨み付ける。


「お前っ、一体何なんだ……!!」
「答える義理も義務もありません。 私の用向きはただ一つ――貴方が持つ、キバの鎧です」


ファンガイアが、甲殻に覆われた手を翳す。紫色のスパークが放たれ、キバのベルト中央部――キバットに直撃した。


「ぐ、おぉぉぉぉ!?」
「キバット!?」
「キバットバット三世、私に従いなさい!!」


キバットは紫電により、ベルトから引き剥がされ、ファンガイアの手の中に収まる。
同時に、奏夜はキバの変身を強制解除させられた。


「貴、様……キバットを、返せ!!」
「出来ない相談ですね。キバの鎧、確かに貰い受けました」


奏夜の激昂にも耳を貸さず、ファンガイアは指を一鳴らしして、夜の暗闇に消える。


「ま、待て……ッ!!」


懸命に立ち上がろうとする奏夜だが、傷の痛みは感覚を麻痺させ、身を打つ冷たい雨が、無情にも彼の体力を奪っていく。


「畜生……これじゃ、タツロットの時と、おな……じ……」


底知れない悔恨を胸に、奏夜は意識を手放した。


◆◆◆


【三日後】


御崎市内某所、一世代前の衣装を残す店【光写真館】。
からんころん、と来客用の鈴を鳴らしながら、店内から四人の男女が現れた。


「ここが、次の世界か……」


呟く長身に茶髪の男。


――彼の名は門矢士。 “世界の破壊者”の異名を持つ戦士、仮面ライダーディケイドにして、様々な平行世界を渡る旅人である。


全ての世界を征服せんとする悪の組織、スーパーショッカーとの戦いを終えて一年。
彼らは現在、剣崎一真/仮面ライダーブレイドの頼みにより、かつて士達の巡ったネガのライダー世界と似て非なる、ポジのライダー世界――俗に言うオリジナルライダーの世界を巡っていた。


一年前、彼らの前に立ちふさがったゾル大佐――本名鳴滝を指導者とする新たなショッカー。
彼らの目的、ポジの世界侵略を止める為である。
彼らは既にカブトの世界、Wの世界、世界から拒絶された怪人達の世界、キバの世界を巡り終え、新たな世界に渡り来ていた。


「見たところ、変わったところはありませんね」
「うん。ポジ・カブトの世界みたいに、廃墟ばっかりでもないしね」
「どんな世界なのかな~。彩香様は楽しみだぞ~!」


光家の一人娘にして、仮面ライダーキバーラ、光夏海。
ネガ・クウガの世界から来た仮面ライダークウガ、小野寺ユウスケ。
Wの世界から付き添ってきた謎の少女、彩香。


三人もまた、士と共に世界を守る為動く、大切な仲間である。


「一体ここは、何の世界なんだろう」
「さあな。ただ、カーテンの絵から察するに……」
「やっぱり、またキバの世界に来たんでしょうか?けど、カーテンの絵は……」
「この前と違ったね!」


四人の疑問はもっともだ。


士達の世界移動は、光写真館にある背景ロールを引くことで行われる。
その背景ロールには、行き先の世界の特徴が描かれているわけだが……。


――今回の絵は、キバの世界であることを示すキャッスルドランと、紅蓮の炎を纏う魔神の姿が描かれていたのだ。


「ポジ・キバの世界で、あんな炎の巨人はいませんでしたよね」
「俺がワタルのとこで働いてた時も、あんな怪物見たことないぜ」


夏海、ネガ・キバの世界に長く滞在していたユウスケの証言は、士も納得するところである。


「なら、ここはネガでもポジでもないキバの世界ってことだろ」
「そんな簡単に纏めちゃっていいんでしょうか……?」


いつもながら、妙な自信に溢れる士に、夏海は不安を隠せなかった。


「あーあ、こういう時こそ海東がいてくれると助かるんだけどなぁ。一年前ならこのあたりで『やぁ士、この世界について教えあげようか?』とか言いそうなのに」
「あのコソ泥の物真似は止めろ」


妙に上手いユウスケの声真似に、士は不機嫌を隠そうともせず唸る。


――海東大樹。
士とは別ルートで世界を旅する存在、仮面ライダーディエンドにして、世界を股に掛けるトレジャーハンターである。


根っからの悪人では無いのだが、お宝を手に入れる為には手段を選ばないところがあり、士達とは、時に衝突したり協力したりと、喧嘩仲間のような関係だ。
士も内心、海東を認めてはいるが、普段はいけ好かないヤツでしかない。
不機嫌になるのも道理だった。


と、海東の名を出した途端、「あ、忘れてた!」と彩香が士の袖を引っ張る。


「ねぇ士、大樹から伝言預かってるよ」
「海東から?」
「うん。実を言うと大樹、この世界に来る直前まで、写真館にいたんだよ。
でも、カーテンの絵を見てすぐ、私に手紙押し付けて出ていっちった」


ほい、と彩香が渡した手紙を士が広げ、三人も横側から覗き込む。



『士へ。僕は訳あって、この世界では姿を眩ますことにした。
今までみたいに君が泣きついてきても、手助けは出来ないからそのつもりで。
君達が移動する頃には、僕も移動するよ。
PS.これは他意の無い忠告だ。あまりこの世界に長居するのは止めておきたまえ』


「いつ俺が泣きついた!」


読み終えた手紙を、士はくしゃくしゃに丸める。


「でも、珍しいですね。大樹さんがこんなに謙虚なのって」
「うーん、確かに夏海ちゃんの言う通りだよね。普段なら嫌でも関わってくるのに……」


ユウスケが言うように、海東は今までもお宝を得る為、ライダー世界の事情に関わり続けてきた。ここに来て、こんな態度を取るのは妙だ。


「ねぇ彩香ちゃん」
「ん? 何かな、ゆーくん」
「この手紙を渡した時、海東に何か変わったとこは無かった?」
「え~っとね。確かカーテンの絵を見た時、こう言ってたよ」




『………ヤバ。この世界、“あのキバ”がいる世界じゃないか』




「あの大樹さんが、ヤバい?」
「それに“あのキバ”って……この『長居をするのは止めておきたまえ』ってのと関係あんのかな?」
「どっちにしろ、あの目立ちたがり屋がしゃしゃり出てこないなら、俺達としちゃ好都合だ」


士は心底嬉しそうに、人の悪い笑みを浮かべる。
さっきの手紙が癪に触ったのか、今は当面の間、海東の顔を見たくないらしい。


「俺達は今まで通り、俺達の役目を果たすだけだ」
「そういや士、今回の格好は一体なんなんだ?」


ユウスケが見る士の服装は、きっちりと着付けられたリクルートスーツ。
鞄を携え、何故か伊達眼鏡をしている。


「見た感じ、サラリーマンみたいですけど……」
「いや、違うな」


士が財布の中から取り出したカードを、三人に見せる。


「なんだこりゃ? 免許証みたいだけど」
「高校の教員免許だ。御崎高校一年の代理教師、それが俺の役割らしい」
『はぁ!?』


夏海とユウスケが仰け反る。彩香は「お~、士先生誕生だ♪」と無邪気な反応をしていたが。


「……お前ら、なんだそのリアクションは」
「だ、だって士くん、先生ですよ先生!! 先に生きると書いて先生ですよ!?
士くんが先生になったら、確実に担当クラスは荒れます!」
「そうだぞ士! 落ち着いて冷静に話し合おう、お前は先生なんて役割を担えるほど常識人じゃない!」


散々な言い分であるが、士の滅茶苦茶な人となりを少しでも知る人間なら、確実に夏海とユウスケの意見に賛同するだろう。


それほどまでに、士の前科は数多いのだ。


「……ほぉ~? 言ってくれるじゃねぇか」


当の士は眉間に皺を寄せ、挑戦的な笑みを作る。


「いいかお前ら、俺に写真を撮ること以外で、出来ないことは無い。覚えておけ!」


夏海とユウスケが止める間もなく、士は写真館沿いの道を下っていった。


「あのままじゃ絶対、面倒なことになる気がするんですけど……」
「まぁ、何時ものことっちゃ何時ものことだけどさ」


そもそも、士が誰かの指図を聞き入れること自体が珍しいのだ。
が、唯我独尊に振る舞いながらも、彼はあのスタンスで全ての世界を救っている。
付き合いの長さから、士の行動に順応性がある夏海とユウスケも、それは良く分かっていた。


「じゃあ俺達は俺達なりに、この世界のことを探ってみよう」
「そうですね。士くんは放っておいても……というか、放っておくしかなさそうですし。彩香ちゃんもそれでいいですか?」
「もちろんだよ、なっちゃん♪ じゃ、れっつごー♪」


数々の不安要素を抱えつつ、ディケイド一行は各々、光写真館を後にした。



◆◆◆


「……うっ」


身体中を駆け抜ける鋭い痛みが、奏夜の意識を覚醒させた。
瞼を開くと、白い天井が目に入ってくる。


「ここは……?」
「あっ、奏夜! 気が付いた!?」


すぐその視界に、静香の顔が入ってきた。ぼんやりした頭で応対する奏夜。


「静香……ここ、どこだ?」
「タイガの会社が傘下に置いてる病院よ、ソウヤ」


少し身体を起こすと、椅子に座ってふんぞり返っているマージョリーの姿があった。傍らには、マルコシアスが蔵されたグリモアもある。


「おはよーさん! って言うにゃあ、ちょっと遅えかな? ヒッヒヒ」
「……俺、何日寝てた?」
「3日くらいだよ。もう、本当に心配したんだからね?」


労るように、静香が頬に触れてくる。


「ねーちゃんに礼言っとけよぉ。殆ど毎日見舞いに来てたからな、ヒッヒ」
「そっか……。悪いな静香。大学もあるだろうに」
「そんなの気にしないでよ。今日は振替だし、それに、奏夜の方がずっとずっと大事だもん」


添えられた手から、心地よい暖かさが伝わってきた。
知らず知らず、奏夜の顔が赤くなる。


「ご馳走様」
「やかましい」


ニヤニヤ笑いを浮かべるマージョリーを睨み、奏夜は再びベッドに横たわる。


「で、一体何がどうなってんだ?」
「私達が聞きたいわよ。三日前の夜、倒れてたあんたを近所の住人が発見。その住人が幸いにもファンガイアで、あんたがタイガの弟だって知ってたみたいだったから、ファンガイアに理解がある病院に搬送」
「治療はしたけど、意識不明のまま。誰かに襲われた可能性もあるからって、マージョリーさん達が交代で護衛しててくれたの」


「成る程……何か各方面に迷惑かけてるなぁ、俺」


「そう思うなら、何があったのか洗いざらい吐きなさい。
あんたがボロボロになるなんて、よっぽどのことでしょ」


マージョリーの問いに、奏夜の中で三日前の出来事がフラッシュバッグしてきた。


「……学校からの帰り道、ファンガイアに襲われたんだ。
キバになったんだが、“教授”との戦いの疲労が残ってて……いや、それを差し引いても、勝てたかどうか分からない、強いヤツだった。 俺は負けて、キバットがそのファンガイアに拉致られた」


三人が目を剥いた。
キバット誘拐、それが意味する事態を知っているからだ。


「妥当な線だと、そのファンガイアの狙いはキバの鎧、ってことにならぁな」
「ソウヤ、そのファンガイア、何か特徴はあった?」
「海老みたいなファンガイアだったな。声質からして、多分女だ」
「随分断片的ね……」


マージョリーとしても、これだけでは何とも言えない。


「いっぺん、白騎士の兄ちゃんやキングと相談した方が良くねーか?」
「そうね。一応、あんたの回復も伝えなきゃなんないし」
「よし、俺も行くぞ」


起き上がりかけた奏夜を、静香がでこピンでベッドに沈める。
普段なら何ともない一撃だが、やはり弱っているらしい。


「ってぇ!! なに考えてんだ静香!」
「こっちのセリフよ! 何やんわりと退院しようとしてんの! まだ怪我が治りきってないんだから、安静にしてなきゃ駄目!」
「こんなもん掠り傷だ! キバット連れ去られて黙ってられ痛てててて!!」


尚も抗議する奏夜に対し、静香は包帯が巻かれた右腕をつつく。
骨折こそしていないが、奏夜の傷は、ハーフファンガイアと言えど、すぐ回復はしないレベルなのだ。


「何が掠り傷よ! いいから黙って大人しくしてなさい!」
「そこのねーちゃんの言う通りだな。こっちはこっちで何とかすっから、たまにゃあ休んどけよ。ヒヒヒ」
「じゃ、そゆことで。シズカ、もう一回くらい傷口つついときなさい。ソウヤは往生際が悪いからね」
「了解です、マージョリーさん!」
「おい待てコラ! お前ら絶対楽しんでぎゃああああ!」


マージョリーが病室のドアを閉めた後も、奏夜が激痛に喘ぐ声は響いていた。



◆◆◆


場所は移って、御崎高校一年二組。


『先生が大怪我!?』


当人の苦労など知るよしもなく、シャナと悠二が語った報告に、全員が驚いていた。
ちなみに、教室隅の席に集まっているのは、シャナと悠二の他に、佐藤、田中、吉田といった、“本当のことを知る”面々である。


「そんな、先生風邪だって聞いてましたけど……」
「うん。学校側には、嶋さんがそういう風に言ってあるみたいなんだ」
「シャナちゃんと坂井は、三日前から聞いてたのか?」


佐藤の問いに、首を振る二人。


「いや。僕もシャナも、昨日マル・ダムールで名護さんから聞くまで知らなかった」
「なんでまた、名護さんはひた隠しにするんだ? 俺達になら、教えてくれてもいいはずだろ」
「そうもいかない事情があるからよ」


不満気な田中に、シャナは顔色を変えずに応える。


「奏夜が怪我した日から、“蝙蝠”も行方不明みたいなの」
『!!』


周りに一般生徒がいることも考え、シャナは“蝙蝠”と表現したが、三人にはそれが何を指すのか理解していた。


「“蝙蝠”が行方不明ってことは、相手は“鎧”が狙いだったってことか?」
「ああ、名護さん達はそう見てるみたいだった」


悠二達に教えなかったのも、奏夜が意識を取り戻すまで、余計な動揺はさせたくないかった為らしい。


佐藤らが更に詳しく問おうとした直後、HRの予鈴が鳴り、全員は取り敢えず、自分の席に戻っていく。
悠二は一人、机に座りながら考える。


(もし、先生を襲った相手が、キバの鎧を盗んだんだとしたら……)


単純な理由としては、キングの継承争いの為だろう。
今のキングは太牙だが、キバの鎧もまた、王の資格には違いない。
そうでなくとも、キバの力は絶大だ。
太牙を倒し、キングの座を狙うなら、キバは大きな手助けとなる。


だが、悠二はこの線をあまり信じていなかった。


(だったら、なんで先生を殺さなかったんだ?)


名護の話によれば、発見された際、奏夜は満身創痍だったという。
キバを倒した敵に、打ち損じがあるとは思えないし、故意にやったのだとしても、そこにあるのはデメリットだけだ。


奏夜を殺して、その遺体を隠すなどして発見を遅らせれば、此方の動きも鈍る。
乱暴な話だが、その方がよっぽど現実的だ。


(だからこそ、それをしない理由がわからない)


小さな違和感から来る不安が、悠二の心にずっと引っかかり続けていた。


(やっぱり、このままだと何かが起こる)


隣に座るシャナは、険しい顔をしたまま、ずっと物思いに耽っている。――口にこそ出さないが、シャナも自分と同じ、嫌な予感がしているのだと思った。


その証拠に、


「悠二、終わったら奏夜のいる病院に行くわよ」


小声で告げられた言葉に、悠二は一も二もなく「うん」と承諾した。
やがてHRが始まり、奏夜の代理として、学年主任の教師が、生徒達に、奏夜の休養を報告した。


さすがに詳しい病状は伏せられ「すぐ復帰なさいます」とは言っていたが、知らずにいた生徒達は驚きを隠せない。
中には「先生、大丈夫かな」という声も挙がっているところから、奏夜の人望が伺えた。


「というわけで、本日から僅かな間、このクラスを受け持つ、臨時の先生がお越しになっています」


静まりかけていた教室に、再びどよめきが起こった。


学年主任が「どうぞ」と促すと、スライド式のドアが、ガラガラと引かれた。
軽い足取りで教室へ入ってきた人物に、期待と好機の眼差しが向けられる。


年齢的には、奏夜とあまり変わらない。
整えられた茶髪に長身。
フォーマルなスーツとは対照的に、眼鏡の奥で光る目は鋭い。
学年主任が出ていった後、彼は気だるそうな手付きで、黒板にチョークを走らせた。


「通りすがりの高校教師、門矢士だ。どうせ短い付き合いだろうから、覚えなくていい」


渋い名前を持つ彼――門矢士は、開口一番そうのたまった。


(ああ、また面倒そうな先生が来たな……)


その時、一年二組の全員の思考は、確かに一つになった。


「ええと、門矢先生。この前までの授業は……」
「いや、教えなくてもいい」


クラスの良心、池の言葉を鮮やかに遮る士。


「教科書やノートは仕舞え。俺のパーフェクトな授業に、そんな形式ばったものは不要だ」


奏夜との間で培われた順応性の早さは、この場合幸いとすべきか不幸とすべきか。
皆特に動じた様子もなく、士に従う。


「ホウ……、全員順応性があるな。なかなか見込みがあるクラスだ」


そりゃアンタそっくりな人と、毎日付き合ってますからね。


ニヤリと笑う士に対し、生徒達は何かを諦めたような表情になる。
悠二も教科書を仕舞いつつ、こっそり溜め息をついた。


「奏夜先生といい……日本の教員選抜基準はどうなってるんだろう?」


もっともな意見を述べる悠二の隣で、


(あいつは……?)


シャナが、警戒心に染まった眼差しを、士に向けていた。


◆◆◆


「今のところ、仮面ライダーも怪人も見かけませんねぇ」

通りを歩きながら、夏海がぼやく。


「うーん、ネガ・キバの世界ほど、ファンガイアの存在が一般的じゃないのかな」
「または、ここがキバの世界じゃないかのどっちかですね」
「ねぇねぇ、なっちゃん、ゆーくん。そろそろどこかで休まない? 午前中ずっと歩き詰めだしさ」


やや憔悴した彩香が、ユウスケと夏海に提案する。
確かに、今のところ手掛かりは無い上、根を詰めすぎるのも良くないのは確かだった。


「じゃあ、どこか適当な喫茶店で休みましょうか。写真館まで行くとなると、ちょっと遠いですし」
「だね。美味しいコーヒーが飲めたりすると更にグッド……」


言いながら門を曲がったユウスケが、突然言葉を切った。


「ユウスケ?」
「ゆーくん?」
「夏海ちゃん、彩香ちゃん、あの店って……」


ユウスケが指差す先には、白塗りの外装を持つ、一軒の建物があった。
夏海が目を丸くする。


「『マル・ダムール』……!」


ポジ・キバの世界にも存在した『素晴らしき青空の会』の拠点である喫茶店だ。


「やっぱりこの世界は、キバの世界なんだ」
「じゃあ、あそこに行けば、この世界での使命について、何か分かるかも!」
「休めるし一石二鳥だね♪」


思わぬ手掛かりに喜びつつ、三人はマル・ダムールへと足を踏み出す。




――ぐに。




「ぐに?」


ユウスケの足元から、奇妙な感覚が伝わる。
ゆっくり下へと目線を移す。


――そこには、ユウスケが踏んだと思しき、一人の青年が大の字に倒れていた。


『うわっ!?』


三人が声を合わせて仰け反るものの、青年はアスファルトの地面に突っ伏したままだ。


「な、なっちゃん、警察呼んで! 火曜サスペンスだよ!」
「お、落ち着いて下さい彩香ちゃん! これは死体じゃありませんから!」


珍しくパニクる彩香を落ち着かせようとするが、当の夏海も随分と動揺していた。
ユウスケが恐る恐る、青年に近付く。


「行き倒れ、かな?」
「このご時世に、しかも喫茶店の前でですか?」
「じゃあ、二日酔い?」
「アルコール臭はしませんけど」
「ソウルサイドに意識が飛んでる?」
「ここはWの世界じゃありません」
「……」
「……」


まさかまさかまさか。
三人の間に、嫌な沈黙が落ちた。


「あ、あはは。だ、大丈夫だって。こんな白昼堂々と、警察沙汰になるような事件が起きるわけないって!」


さすがは『世界中を笑顔にしたい』と願う男。
こんな状況でも、夏海と彩香を安心させる為、ユウスケは懸命に笑う。
――若干、その笑みは引きつっていたけれど。


勇気を総動員して、ユウスケは青年の肩を揺すった。


「あの、もしも~し? こんなとこで寝てたら、健康に悪いですよ~?」
「…………………」


ノーリアクションのまま、五秒経過。
十秒、二十秒、三十秒、一分。


…………。






「……返事ガ無イ。タダノ屍ノヨウダ(彩香裏声)」
『皆まで言わないでぇぇぇぇぇぇぇ!!』


ユウスケと夏海の絶叫が轟いた。


◆◆◆


「まったく、君というヤツは……『弔詞の詠み手』が、意識回復を伝えてくれた途端にこれか?」
「……返す言葉もございません」


『マル・ダムール』で奏夜が意識を取り戻した時、そこには名護の呆れ果てた表情があった。


「静香君の目を盗んで病院を抜け出した挙げ句、疲労と貧血で倒れるとは……」
「だって、じっとしてなんかいられないですよ。こうしてる間にも……」
「君の気持ちはわかるが、倒れたら元も子もないだろう。なぁマスター」
「そうそう、コーヒーを淹れる時と同じだよ奏夜くん。何事も急くのは失敗の元さ」
「うっ……」


名護のみならず、マスターにまで言われては、奏夜も形無しだ。


「それよりも、君には私より先に、謝罪と感謝をすべき相手がいるのではないかな?」
「わかってますよ」


奏夜は、後ろのテーブル席でコーヒーをご馳走になっている三人――自分を『マル・ダムール』まで運んでくれた、ユウスケ、夏海、彩香に頭を下げた。


「えっと、ユウスケに、夏海ちゃんに、彩香ちゃんだったよな。ありがとう。世話になった」
「いやいや、そんな畏まらなくてもいいってば」
「当たり前の事をしただけですしね」
「うん♪ こうしてコーヒーも奢って貰えてるし♪」


三人は特に気にせず答える。――もしかすると、最初に死体と間違えてしまった引け目かもしれないが。


「私からも礼を言わせて貰おう。まだ若いのに、立派なものだ」
「そんな、名護さんまで水くさいこと言わないで下さいよ。俺達、一緒に戦った中……」
「ユウスケッ!!」


危うい発言をしかけたユウスケの首筋に、


「光家秘伝――笑いのツボ!」


夏海が慌てて親指を突き立てた。


「くっ、ふ、あはははははははははは!!」


突如、腹を抱えて笑い出したユウスケに、さすがの奏夜と名護も退いていた。


「ど、どうかしたのか? 小野寺君、急に笑い出したように見えたが……」
「い、いえ、こっちの話ですから! 名護さんはお気になさらず!」


夏海が誤魔化し、名護は首を傾げたものの、それ以上追求はしてこなかった。


笑いが止まったユウスケは、夏海に口パクで「ごめん、助かった」と告げる。


(やっぱり、この名護さんは、ポジ・キバの世界で会った名護さんとは別人なんだな)


ユウスケと夏海(彩香はどうか知らないが)は、すんなりこの事実を受け入れていた。
一年前に通りすがった『仮面ライダーBLACKの世界』と、『仮面ライダーBLACK.RXの世界』では、同じ容姿でありながら、まったくの別人である仮面ライダー、南光太郎の前例があったのが、大きな理由だろう。


ならば、士の読み通り、ここはポジでもネガでもない、新たなキバの世界なのだろうか。


(でも、もしそうなのだとしたら、この世界のキバは一体誰なんでしょうか?)
(うーん。普通に考えれば、渡さんともワタルとも違う人なんだとは思うけど……)


名護にでも訊いてみたいところだったが、ユウスケ達が異世界から来たという事実を、彼は知らない(それどころか、完全に初対面だ)。
下手に事情を話しても、相手の不信感が募るだけだろう。
他に訊くとしたら、キングである登太牙だろうが、彼の行方も調べがついていない。
手掛かりを見つけはしたが、結局ユウスケ達は、直接的な行動に移れなかった。


「あとは士が、何か良い情報を拾ってきてくれりゃいいんだけど」
「でも士くんのことですから、使命そっちのけで滅茶苦茶な授業してるかも……」


夏海の言う士の姿は、ユウスケにも容易に予想できた。
……士にも、あまり期待は出来なさそうである。
先行き不安な二人。
呑気に「コーヒーおかわり♪」と注文している彩香が、素直に羨ましい。


そんな中――騒動の火種は、ユウスケと夏海が揃って溜め息をついた時に起こった。


「!!」


奏夜が、いきなり立ち上がったのだ。
勢い余って、椅子が床に倒れ、乾いた音を立てる。


『~~~♪♪』


店内の人々が目を剥く中、奏夜は頭の中に響くブラッディーローズの音色を聞いていた。
それが意味するのは――ファンガイアの出現。


「まさか、キバットを攫ったヤツか……!!」


言うが早いか、奏夜は弾かれたように、マル・ダムールから飛び出していった。


「あっ、待ちなさい奏夜君!! 今の君では何も出来ないだろう!」


奏夜に続く形で、店を飛び出していく名護。
残されたユウスケ達は、奏夜の口走った単語を聞き逃していなかった。


「キバット……キバットだって!?」
「ユウスケ。キバットって、キバの鎧を持ってる蝙蝠ですよね?」
「ああ、キバーラと同じ、キバット族の末裔だよ」


キバットの名を、それもあんな親しげに語ると言うことは……。


「まさか、あの奏夜って人が……!?」
「ねぇ、ゆーくんになっちゃん! 早く行かないと、見失っちゃうよ!!」



彩香に促され、二人は我に返る。
僅かな手掛かりを逃さぬようにすべく、三人もまた、奏夜と名護を追いかけ走り出した。

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  1. 2012/04/18(水) 16:33:02|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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