紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第十九話・ハーモニー/RIDER'S.FORCE.後篇

――御崎駅西口、駅舎メンテナンス用扉前。


「――よし、これでいいかな。佐藤、お前も」
「もう貼ったよ。後はマージョリーさんの仕事だ」
「よくやってくれたな、佐藤君、田中君。さぁ、早くこの場を離れなさい。もうじき戦いが始まる」
「はい、名護さんも気を付けてくださいね」
「俺と田中も、マル・ダムールでの花火、楽しみにしてますから」
「ああ、任せなさい」


白騎士を残し、二人の少年は去っていく。
街を守ると約束してくれたヒーローへの、激励と期待を残して。
自分が担う役割の重みを再認識し、白騎士――イクサは通信の自在式が込められた付箋を取り出す。


「準備は整ったぞ」
『よーっしゃ、上出来だ。ご両人も白騎士の兄ちゃんもやるねぇ』
『んじゃ、そろそろ行こうかしらね』


軽薄なマルコシアスの笑い声と共に、通話向こうで炎が弾ける音が聞こえてくる。
マージョリーが炎の衣『トーガ』を纏ったのだろう。


『遠慮容赦ナシの全力で行くから、せいぜいケイスケは吹き飛ばないよーにね』
「今更爆発如きでどうこう言わんさ。思い切りやりなさい」
『ヒーッヒヒ! 言ってくれるねぇ、んじゃ早速……』


駅舎の外で、トーガが鋭い牙の奥に、群青の炎をたぎらせ、駅舎内のイクサは、白色のフエッスルを取り出す。


『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』


光子力を纏った赤い刀身が、シャッターの先を睨む。


『ギィヤーーーッハハハハハハ! 殺すぜ、壊すぜ、食いちぎるぜえっ!!』
『ぶち壊してぶち壊してぶち壊してぶち壊すわよっ“紅世のっ、徒”ぁーーー!!』
「イクサ、爆現!!」




『んなぁ!?』


この駅舎を守る教授の“燐子”、ドミノでさえ、何が起こったか理解出来ぬまま、群青の火炎弾が、山吹色の剣閃が、駅舎のホームを吹き飛ばした。




◆◆◆


「たーまやーっ! ……って言うには、ちょっと情緒が足りないかね」
「馬鹿なこと言わないの。戦いなのよ」


狂乱の渦中から、少し離れた高層ビル。
太牙が経営する企業『D&P』本社の屋上にて、キバ、シャナ、サガの三人は待機していた。


御崎市駅には群青と山吹色の爆炎が上がり、さながら狼煙のように、戦いの始まりを告げている。


「私は“教授”を討滅する」


紅蓮の輝きを瞳に灯すシャナ。
憂いは完全に消え去り、フレイムヘイズとしての自分を取り戻している。


「駅を破壊するのが一番手っ取り早いけど、また何かされる可能性もある」
『うむ。その場合に備え、やはり大元を絶っておくべきであろう』


アラストールが補足し、キバとサガも同意する。


「では僕らは、予定通りに駅舎以外の飾りを破壊しよう」
「うん。粗方終わったら、兄さんは駅舎の方を手伝いにいってくれ。俺はシャナと一緒に“教授”を止める」


今回の相手は、あまりに奇天烈な戦法を取る。
シャナの直線的な力だけで、“教授”に対応できるかどうかは、正直微妙なところだ。


「シャナもそれでいいか?」
「うん、わかった。奏夜が来る頃には、終わってるかも知れないけど」
「はっ、お前も言うようになったな」

皮肉っぽい笑みを浮かべ合い、シャナは紅蓮の双翼を羽ばたかせ、夜空に紅い軌跡を描きながら飛び去っていった。


フレイムヘイズの少女を見送り、キバはオレンジの塗装が成されたフエッスルを取り出す。
サガはというと、見慣れないサファイアカラーのフエッスルを携えていた。


「兄さん、それは?」


キバが知る限り、サガが保有するフエッスルはウェイクアップフエッスルのみ。
最初期に制作されたが故の弊害であり、サガの弱点でもあったのだが……。


キバの心中を見越したサガは、


「サガの新しいフエッスルだよ。そろそろ、一本だけではキツくなってきたからね」


キバがよく見れば、サガークベルトのホルダーには、いくつか初見のフエッスルが収められていた。
彼なりに強さを追究した結果、といったところか。


「さっすが兄さん。じゃ、そろそろ……」
「ああ、行こう!」


それぞれのフエッスルを、キバットとサガークが吹き鳴らした。


『キャッスルドラーン!!』
『ヨルムンガンド』




――ギャオオオ!!
――キュルォォ!!


主の呼び掛けに応え、キャッスルドランとシュードランが、天空から屋上に降り立つ。


『奏夜、知り合いは全員、クイーンの洞窟へ避難させたぞ』
「サンキュ、次狼」


中から聞こえる次狼の声に礼を言うキバ。と、


――シャガァァァッ!!
次なる異形の鳴き声が、大気を震わせた。
高層ビル下の地面が大きく揺れ、巨大で細長い生き物が、硬質なアスファルトを砕いて飛び出してきた。


黒く固そうな鱗が身体を覆い、体面には禍々しい紋様。
同じく黒い鬣に、幾重にも彎曲し、枝分かれした角。
細長く黄色い瞳は、一睨みで相手を射殺せると錯覚するまでに鋭い。


――ヨルムンガンド。
サガの新たな眷属にして、キャッスルドランと同じドラン族でありながら、その出自を全く異にする蛇神だ。


「おお、またデカいの連れてきたね兄さん……」
「デカいだけじゃないぞ。僕でさえ、フエッスルを介さなければ扱えないじゃじゃ馬だからな」


サガがビルの縁に立ち、ヨルムンガンドに手を伸ばす。
しばらくして、ヨルムンガンドは恭しく頭を垂れ、主をその上に乗せた。


「僕は西側を殲滅する。お前は東側を頼む」
「りょーかい!!」


シュードランの足に掴まり、キバはキャッスルドランの頭上に着地。
シュードランはその後部、ドランマウントに合体した。


途端――キャッスルドランの眼が鋭く輝く。
瞳孔は開き、小さかった黒い翼は、ドランの側面全てを覆えるまでに広がる。


――ギャオオオオッ!!
普段は抑えられていた闘争本能が、シュードランによって覚醒(ウェイクアップ)したキャッスルドランは、天を震わす叫びと共に舞い上がった。


「兄さん、気を付けて」
「そっちもな」


戦士として、必要最低限の言葉を贈り、二人はそれぞれの目的地へ。


――兄は大地を、弟は天空を進む。



◆◆◆


一方、戦乱の渦中にある御崎市駅では。


「ちっ、これじゃ結構時間かかるわね」
『ドミノの野郎も逃げ回ってるみてーだしなぁ』
「愚痴を言う隙があるなら、手を動かしなさい」


火炎弾とトーガの剛腕で御崎市駅を破壊していくマージョリー。
イクサカリバーを乱射イクサは新たなフエッスルを取り出す。


「今は敵の自在式を破壊することだけを考えなさい。壊すのは君達の得意分野だろう」
「――は、言ってくれるじゃない、のッ!!」


ギラギラした戦意が迸り、トーガから再び特大の火球が吐き出された。


『パ・ワ・ー・ド・イ・ク・サ・ー』


――無機質なコールから程なくして、重厚なエンジン音が轟く。
駅舎の壁を豪快にぶち破り、イクサの所有するドラゴン型重機『パワードイクサー』が現れた。


「頼むぞ、パワードイクサー!!」


コックピットに、起動キーたるイクサナックルを差し込み、パワードイクサーが雄叫びを挙げる。


「ハッ!!」


機体を駆るイクサは、マシン後部のイクサポッドを、パワードイクサー頭部を使い投擲していく。
マージョリーの大破壊も相成って、威力は更に上がっていく。――と、


《ああ、『弔詞の詠み手』に名護啓介、聞こえますか》


通信用の付箋から、カムシンの淡々とした声が届く。


「どうした、何かわかったのか?」


《ええ、駅周辺の攪乱が消えたお陰で、お嬢ちゃんが敵の“自在式”の正体を感知出来ました。 奴の狙い――駅舎にあるものは、“探耽求究”到着によって起動する調律の“逆転印章”(アンチシール)です》
「はぁ!?」
『おーいおいおいおい!! 新手のパーティージョークにしちゃ悪質過ぎだろぉ!?』
「“逆転印章”?」


敵の狙いに、驚きを通り越して呆れるマージョリー達に対し、自在式に疎いイクサは、彼女らが取り乱す理由を理解出来なかった。


「何かマズいものなのか?」
「単体じゃ意味の無い自在式よ。自在法を正反対の向きに作動させる為の自在式でね。普通は防御陣なんかに使われるんだけど……」
「調理の正反対……待て、まさか!?」


ようやく話の根幹が呑み込めたイクサに「ご推察の通りだよ」とマルコシアス。


『俺達のミナミナ大破壊とは比べもんにならねぇ、まさに“完全破壊”ってヤツだ。
発動しちまったら最後、この街はごっそり、世界から切り取られちまうぜ?』


さすがのマルコシアスも、普段の軽薄な態度は微塵も見せなかった。
“教授”の目的成就が引き起こす大災害が、どれだけの影響をもたらすのかを物語っていた。


「……こうしてはいられない」


ショックから我に返り、イクサは操縦桿を握り締める。


「一刻も早く、ここを破壊しなければ!!」
《ああ、言われるまでもありません。我々も直ちに攻撃に加わり、駅舎を破壊しますので、よろしく》


カムシンの堂々とした宣言に、青ざめたのはマージョリーとマルコシアスだ。


「え、ちょっと待ちなさいよ!」
『馬鹿おめーら、俺達がまだ中に――』


抗議する二人を鮮やかに無視し、カムシンは一方的に通信を切った。


「あ、の、クソ爺い共……!!」


通信用の付箋をぐしゃりと握りつぶし、マージョリーはイクサに告げる。


「ケイスケ、もう一発デカいの叩き込んだら、さっさとずらかるわよ!!」
「何を馬鹿な! さっき早く駅舎を破壊すると言ったばかり……」
『いーからさっさとその恐竜をUターンさせろぃ!!』


いつになく焦る二人にただならぬものを感じ、イクサは渋々、三発ほどのイクサポッドを叩き込み(マージョリーも特大の炎弾を置き土産にした)、パワードイクサーが開けた風穴から脱出を図る。




――イクサとマージョリーが駅を出たのと、突然沸き起こった爆風が、二人をぶっ飛ばしたのがほぼ同時だった。




「なっ!?」
「んきゃー!?」
『オギャー!?』


間の抜けた悲鳴を挙げ、マージョリーはトーガごと、イクサはパワードイクサーごと、駅舎前の大通りに投げ出された。


「くっ、い、一体何が……?」


操縦桿を動かしてパワードイクサーを起こし、イクサは再び御崎市駅を見る。


天から降り注ぐ、炎を纏った岩石弾が、隕石よろしく駅舎に降り注いでいる。自分はあれに吹き飛ばされたのだ。


《よーくーもーやったなーー!?》


中を管理するドミノの叫びが聞こえ、イクサの隣にいたマージョリーは、自分の背後目掛けて怒号をぶつける。


「ちょっと爺い、外れてるわよ! 相手を怒らせただけじゃ意味ないでしょうが!」
《ああ、それはどうも。しかし事前に断りは入れておいた筈ですが》
『思いやりが足りねーんだよ、てめーらにゃ!』


マージョリーとマルコシアスのシャウトが届く先――ちょうどさっきまで自分達のいた、旧依田デパートの方に顔を向けるイクサ。


「な……!!」


見た途端、絶句した。




そこにはパワードイクサーを優に越す、瓦礫の巨人が立ち上がっていたからだ。


◆◆◆


カムシンが操る瓦礫の巨人を、キバは遠目から眺めていた。


「すげぇな……あの偉そうな態度は伊達じゃないってわけか」


ちょうど旧依田デパート付近をドランで飛んでいたキバは、その一部始終を目撃していた。


奏夜達に、“逆転印章”を伝えたかと思うと、カムシンは向かいの廃ビルに飛び込んだ。
途端、屋内から例の“カデシュの血脈”という綱のような炎が、廃ビルを駆け巡り、自在式が発動。
コンクリートが内部から爆ぜ、廃ビルが巨人生成の材料へと組み変わり、カムシンの力の証たる、褐色の炎を吹き出した。


カムシンが持っていた布巻き棒『メケスト』は、巨人が瓦礫を炎で繋げて作り出した、超重量級の鞭の柄になっている。
イクサ達を吹っ飛ばされた爆風は、この『メケスト』の一薙ぎによるものだ。


「あの破壊力じゃ、俺が行っても無駄骨だな……」
「なら、“教授”をさっさと止めちまおうぜ。ヤツの目的も分かったし、ここらの飾りを壊すよか効率的だ」


キバットの提案を聞き入れ、キバはキャッスルドランを、線路へ向けて駆る。


駅舎の飾りが壊れたのなら、それ以外の場所を壊すメリットは少ない。
ならば、相手の勝利条件を潰しにかかるべきだろう。


黒い翼を羽ばたかせるキャッスルドラン、その眼下には、見慣れた線路を疾走する奇妙な列車の姿があった。


「あれ、シャナがいない?」


訝しみながらも降下し、列車の隣にドランを付ける。


「取り敢えず、一当てしておくか。ドラン!」


――ギャオオオオッ!!
ドランが吼え、身体の側面に備え付けられたマジックミサイルが火を吹いた。
目映い爆炎と共に、列車の正面部分が消し飛ぶ――はずだったのだが、


「あ?」
「なぬっ?」


二人が目を剥いた。
ドランのマジックミサイルが、奇妙な方向へ弾道を曲げたのだ。
しかし、件の攪乱の自在式とは異なり、湾曲したミサイルは、列車の後部へ命中し、爆炎を上げた。


「ぬぁーーんて野蛮なことを、しぃーてくれるんですかぁ!?」


と、列車の前方に、せり上がった運転パネルと、その運転手“探耽求究”ダンタリオンが立っていた。


「攻ぅー撃をブチ当てるなら、真っ正面から当てなさい!! 側面から当てたせいで、後ろに弾道が曲ぁーがってしまったではありませんか!!」
「……初対面の相手、しかも敵にツッこむのはどうかと思うが、それでも敢えて言おう。 そんなに列車が大事なら、後ろにも自在式かけとけや」
「列車ですとぉ!? そぉーんなもので一括りにしないでもらいたいですねぇ!! そぉーもそもこの『夜会の櫃』は――」


教授の話が終わるより早く、ドランの第二波が列車を襲う。
が、今度は列車の中から現れた巨大な野球バットが、ミサイルを全て打ち返してしまう。


「タイムボカンに出てきそうなメカだな……ったく」


弾かれ、空中で爆発するミサイルを見ながら、キバがうんざりしたように呟く。


「おい、マッド博士。一つ訊かせろ。俺の仲間、『炎髪灼眼の討ち手』が先にここへ来てた筈なんだが」
「んんー? やぁーはりフレイムヘイズとのパイプを持っていたようですねぇ? ファーンガイアの王は」


メガネを押し上げ、心底面白そうに、教授はニヤリと笑う。


(こいつ……俺を、キバを知っているのか?)


反対に警戒心を強めるキバに、教授は言う。


「『炎髪灼眼の討ち手』はこぉーの中にいますよぉ?」


教授は自分の足元――つまり、『夜会の櫃車』の車両の一つをダンダンと踏み鳴らす。
見れば確かに、その車両だけ、隙間から微かに紅蓮の炎が漏れていた。


「さぁーきほど私の『夜会の櫃』をウェルダンにしてくれましてねぇー? 少々大人しくしてもら――んん?」


教授が言葉を切る。
贄殿遮那と思しき刀が、車両の屋根に突き出したのだ。


「あっ、さぁーては直接、私の『夜会の櫃』をぉ破壊しよぉーうとしていますねぇ? 全く無ぅー駄なことを、えいや」


教授は操作パネルの傍らにあったレバーを、グイと引っ張った。
途端、




『――――っ!!』




中からこの世のものとは思えないシャナの悲鳴が聞こえてきた。
何が起こったのかと心配するキバの目の前で、あまりの大暴れっぷりに、列車の車輪が2つ外れる。


「んんー? ぉ女の子なのに五百匹かぁらなるアグレェーッシブな『我学の結晶エクセレント29004―毛虫爆弾』が逆ー効果のよぉうですねぇ」
「いじめっ子か!!」


不憫過ぎるシャナの為、キバは全力で抗議する。


「何でそんなピンポイントかつ緊張感のない罠が搭載されてんだよ!! 俺が言うのもあれだが、もっと残虐性に特化したヤツ使えよ!!」
「わぁーかってませんねぇ。そぉーんな何の捻りもなさそうなもの作ってなぁーんになるんです? それと、罠ではあーりません!! 『我学の結晶エクセレント29004――」
「だぁーー!! うぜぇ!! どこのエクスカリバーだテメェはぁ――!!」


教授のあまりの変人奇人っぷりに、理性の許容範囲内を超えたキバは、キャッスルドランからジャンプし、ライダーキックを教授に叩き込もうとする。


「無ぅ駄ですと言ーってるでしょお?」


またレバーが引かれ、『夜会の櫃』内から飛び出してきたトンカチが、キバを殴りつけた。


「痛っ!」


回避が出来ぬまま、キバは車両の屋根を転がる。


「さぁーらに、ポチッと!」


教授が手近にあるボタンを押すと、キバのいた車両の屋根が、まるでどんでん返しのようにくるりと反転した。


「なっ、忍者屋敷かよ!?」


驚愕と共に、キバは車両内の床に叩き付けられた。
その間に屋根は再び回転し、閉じ込められてしまう。


「くそっ、まったく動きが読めねぇ。認めたくないが、かなり厄介な……」
「奏夜、気ぃ抜くな!!」


キバットの声で、キバも気付く。
床の一角が開き、大量の何かが這い出てきたのだ。


いやに細長く、色素が薄い。生物兵器か何かか。


「蛇、にしちゃ小さいな……奏夜、用心しろよ」
「ああ。毒か何かを持ってる可能性もあるからな。十分に間合いを取っ、て……」


キバの声が、どんどん尻すぼみになっていく。
蠢く“何か”の姿を視認した途端、仮面の下にある奏夜の顔から、色が失われていった。


「な、ななな……」


じりじりと、キバが後退りを始める。
何故なら、その“何か”は、奏夜の数少ない弱点だったからだ。





蠢くそれの名は――『我学の結晶エクセレント28223―糸こんにゃく蛇』。


父、紅音也が苦手としたものであり、その息子奏夜も、食べた瞬間気絶するという脅威の加工食品。





「――っだからなんでこんなピンポイントな発明があるんだよぉぉぉぉぉぉぉーーーー!?」





もっともな意見は、列車の喧騒によってかき消された。
あらゆる事態を想定し――おおよそ何にでも備えてある、それが教授の我学の強みなのである。


キバとシャナ、二人分の悲鳴がデュエットを奏でる中、『夜会の櫃』は汽笛を吹き上げ爆進する。


目と鼻の先にある、御崎市崩壊という名のゴールへと。


◆◆◆


巨人の放つ褐色の炎を纏った瓦礫『ラーの礫』が巻き起こす大破壊を、マージョリーとイクサは何とも言えない面持ちで眺めていた。


「さすがに負けるわ、これは」
『まー、俺達の役目は最初で終わったようなもんだからな』
「うむ。最後が他人任せなのは少々気が引けるが、あの力なら、我々よりも効率良く……?」


イクサは言葉を切り、闇に包まれた夜空を睨む。 数百羽の影が、御崎市駅を取り囲む形で近づいて来ていた。
攪乱の自在式を生み出す、例の鳥の看板である。


「いけない、ドミノの奴、破壊してなかった分を呼び戻してるわ!」
「何!? あれが一定量集まれば、攪乱の自在式がまた発動してしまうぞ!」
《ああ。ならば、集結する前に破壊しなければなりませんね》
『やーれやれ、この世ってなあ、我慢もさせてくんねえのかあ? ヒッヒヒ』


全員が、標的を鳥の看板へと移す。


それを狙い澄ましたかのように、駅舎前の大通りを這いながら、大蛇ヨルムンガルドが到着した。
頭部には、サガの姿もある。


「太牙!」
「済まない。いくらか破壊し損なった。――ヨルムンガルド!」


――シャガァァァ!
ヨルムンガルドが吼え、大きく裂けた口から、紫色の閃光が吐き出された。
命中した数十枚の看板が、一瞬で腐敗し、地に細かな木屑だけが残る。


全てを腐食させる神の毒、“ヘルデッドブレス”だ。


「大通り側は僕がやる。名護達も四方について、看板を迎撃してくれ!」
「ああ、任せなさい!」


イクサ、マージョリー、サガ、カムシンが、全方位を取り囲み、各方向から来る看板を迎え撃つ。


イクサの駆るパワードイクサーの投擲するイクサポッドが。
マージョリーの『屠殺の即興詩』による群青の火炎弾が。
カムシンの振るう『メケスト』から放たれる『ラーの礫』が。
サガが操るヨルムンガルドが吐き出すヘルデッドブレスが。


歴戦の戦士が放つ四位一体の攻撃に、看板は次々と爆砕していく。だが、


「ちっ、数が多いな」


サガの言うように、どれほど薙ぎ倒しても、すぐ次の波が来る。
防げはするが、攻撃に転じる余裕も無い。


「先に駅の“逆転印章”を破壊するのは、やーっぱ無理かしらね」
『ドミノの野郎を一撃で破壊できるんなら、それもいいがよー、奴は親玉に似て逃げるのだきゃうめえからな』
「逃げ回られている内に、攪乱に必要な看板が揃っては元も子もない。
今、我々に出来るのは足止めだけだ。“教授”討滅は、シャナ君と奏夜君に任せておきなさい」
「ったく、またソウヤとチビジャリに託すしかないってわけね……って」


マージョリーの目線は、高架上にある線路の先へ向いていた。


もうそれほど遠くない距離、“逆転印象”発動の最後のピースたる奇妙な列車『夜会の櫃』が近付いてきていたのだ。
多少破損してはいるものの、その周囲にキバとシャナの姿は無い。


無情にも吹き上がる汽笛に対し、マージョリーは額に青筋を浮かべる。


「あー、もう! 言ってる傍からなにやってんのよ! あの二人は!」
『あぁん? 気配はあん中だぞ。嬢ちゃんとキバの兄ちゃんが、大人しく捕まってるたぁ思えねーが』
「何にせよ、最悪のタイミングだな」


忌々しげにサガが舌打ちする。


手が離せないこの状況で、相手の勝利条件が破壊出来ていない。
あちらが立てば、こちらが立たずだ。


「こうなったら意地でも看板を破壊し尽くすしかないな。おい名護!!」


サガがイクサに呼び掛ける。
だが当の本人は、線路を爆進する『夜会の櫃』を見たまま、微動だにしない。


「名護?」
「ケイスケ?」


看板を壊す傍ら、サガとマージョリーは再度呼ぶと、イクサは仮面の下で、僅かに唇を動かした。


「―――んだ」
『は?』





「なんだあのふざけた列車はぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」





ビール瓶300本は粉々にしそうな、イクサの壮絶なシャウトに、さすがの二人も肩を跳ね上げる。


「フォルム、蒸気機関、どれをとっても列車の常識を大いに逸脱しているッ!!
古き良き時代のロマンがまるで感じられん!」


人が変わったように、鉄道談義を始めるイクサ。


――あまり知られていない事実だが名護啓介、鉄道マニアである。


「大体なんだあの緑色の炎は!! 蒸気機関から迸る炎は、造り手と運転手達の汗と涙の結晶! それをあんな不細工な炎で汚すなど考えられん! 開発者の顔が見てみたいわ!!」
《ぬぁーーんですとぉーー!!》


さすがに届いたのか、当の開発者がいたく憤慨した様子で、拡張された抗議を飛ばす。


《聞ぃーき捨てなりませんねぇーー!! こぉーのかぁーんぺきなるフォルムが理ぃー解できないというんですかぁーー!?》
「黙りなさい! そんなもの、列車とは認めん!! 謝りなさい!! 偉大なるスティーヴンスンとトレビシックの墓前で、頭を擦り付けて詫びなさい!!」


価値観の相違が、無意味な論争を生み出していた。
置いてけぼりな周囲に、イクサはただ一言。


「あれを落とすぞ! あんなものがレールの上にあるなど耐えられん!」
『あぁん? 落とすったっておめー、トンチキ発明王もその辺りは警戒してるだろ。また妙な自在式で邪魔されんのがオチ……』
「違う。狙うのは高架と線路だ!」


イクサの言葉に、全員が水をかけられたようにハッとする。


いかに高度な発明でも、列車である以上、所詮はレールを走る乗り物。
足場を奪えば、下に自然落下する!


「『儀装の駆り手』。お前のパワーも必要だ、手を貸しなさい!」
《ああ、勿論――!!》
《うむ、『アテンの拳』を!》


巨人の腕とパワードイクサーが、線路方面に狙いを定める。


途端、巨人の腕がロケットパンチよろしく、褐色の炎を噴射しながら射出された。
パワードイクサーも、乗り手の怒りを示すように、有らん限りのイクサポッドが、豪速球のレベルで投擲していく。


頑丈なコンクリートと言えど、フレイムヘイズきっての壊し屋と、本気ギレ状態のイクサにかかれば一溜まりもない。
細かな瓦礫と粉塵が散り、『夜会の櫃』の進行方向から、進むすべき線路がごっそり抜け落ちる。


「のぉーう!! なぁーんてことぉしぃーてくれるんですかぁ――!?」


自らを待ち受ける断崖に、教授は絶叫する。
足場を失い、列車の終着駅は奈落の底。


となるはずだった。


「――が!!」


その場で一回転という、いっそ清々しいまでのオーバーアクションを決め、教授はパネル中央の巨大なボタンに、人差し指を添える。


「こぉーんなこともあーろうかとぉ! スイッチ――、オン!!」


ポチッ、という効果音も欠かさず、夜会の櫃の正面ライトが、ピカッと輝いた。


「なぁ!?」
『んげぇ!?』


マージョリーとマルコシアスが、本気で驚く。
サガとカムシンでさえ、驚愕に身体を硬直させていた。


シャキーンという耳障りの良い駆動音と共に、『夜会の櫃』の両サイドから、メカニカルな翼が飛び出したのである。


「さーーぁ飛べ、『我学の結晶エクセレント29182―夜会のぉーー櫃』!!」
「……どこまで列車を愚弄する気だ貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


イクサの怒号も虚しく、『夜会の櫃』は後部からのジェット噴射で、御崎市駅へと飛び立つ。


「――ェエーキサイティング!! ェエークセレント!! 見よ、世界はこんなにも美しい!!」


教授は屋根の上で両手を広げ、完全勝利の高笑いを挙げる。
吠える負け犬の表情を見てやろうと、列車下に目を向けた。


「っな、なな?」


教授の表情に、初めて焦りの色が浮かぶ。
『夜会の櫃』の進路が上反りになり、どんどん上昇していくのである。


――それもそのはず。
列車の床側に空いた穴から、シャナの腕が伸び、紅蓮の炎を放出していたのだから。
強大な推進力により、夜会の櫃はどんどん反り返っていく。


――ギャオオオッ!!


「おおおっ!?」


龍の激昂が、教授の鼓膜を突く。
主の身を安じるキャッスルドランが飛来し、トドメと言わんばかりに、下側から『夜会の櫃』をひっくり返した。


「あぁーーれぇーー」


真っ逆様に『夜会の櫃』は、乗り手を巻き込み落下していく。
刹那、床面を強引に切り裂き、車内から飛び出した二つの影があった。


毛虫の大群により、ガサガサにされた髪を逆立てるシャナ。
糸こんにゃく蛇のぬめった体面により、鎧全体が奇妙な光沢を放っているキバ。


両者とも憤怒に身を震わせ、(キバは仮面の下で)軽く半泣き状態だ。


『よくも、よくも――!!』


シャナの贄殿遮那に紅蓮の炎が、キバのザンバットソードに真紅の魔皇力が宿る。





『この、大バカ(野郎)ーーーッッ!!』





「ほんぎゃーー!?」


落下した列車は主を押し潰し、その頭上から、紅蓮の奔流と、巨大な半円形の衝撃波が、『夜会の櫃』ごと“教授”を呑み込んだ。




《きょ、教授――!!》


駅舎内から絶叫するドミノに構わず、シャナと共に着地したキバは、未だ怒りの収まらない声で叫ぶ。


「名護さーーん、兄ーーさん!!」


キバが赤いフエッスルを取り出したのを見て、イクサとサガは、呼び掛けの意味する所を察した。


「太牙!!」
「分かっている!!」


イクサは脚を模したフエッスルを、サガは蛇の意匠がなされたフエッスルを取り出した。


『WAKE.UP!!』
『イ・ク・サ・レ・ッ・グ・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』
『ウェイクアップ』


キバの左足のヘルズゲートが解放され、真紅の翼が靡く。
イクサのコロナコアが展開し、生成された光子力エネルギーが、山吹色の光となって、右足に収束する。
サガはジャコーダーを両足に巻き付け、そのままサガークベルトへインサート。ジャコーダーを介し、サガークの魔皇力がサガの両足へ供給されていく。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈めぇ!!」
「その命、神に返しなさい!!」
「王の判決を言い渡す。死だ!!」


各々の力の象徴たる三日月、太陽、蒼月をバックに、三人は天高く飛び上がる。


キバの翼を生やした左足からの『ダークネスムーンブレイク』。
イクサの太陽光に輝く右足から放つ『イクササンライズパニッシャー』。
サガの螺旋状の紅光を纏った錐揉みキック『スパイラルデスブレイク』。




《――はひぇ!?》


三人の戦士が放つトリプルライダーキックが、ドミノの守る御崎市駅に炸裂し、辿り着く列車を無くした駅舎は、爆炎を上げながら崩壊していった。




まだ毛虫と蛇が残っていないかと、身体中を粗探しするキバとシャナはふと、ほぼ同時に呟く。



『……なんで最初からあの翼で飛んで来なかったんだろう?』
「知らん」
「切り札にしておきたかったんじゃないか?」
『飛んで見せて、驚かせたかったのだろう』


イクサ、サガ、アラストールが、至極どうでも良さそうに答えた。


◆◆◆


「ゆかりちゃん、今日から『シャナちゃん』って呼ぶね」
吉田が穏やかな口調で言った。
「うん」


場所は『カフェ・マル・ダムール』。
全てを片付けた面々は、シャナ達を加え、当初の計画通り、小さな花火大会を開いていた。


「私ね、ずっと感じてたの」
「なにを」


調律は吉田のイメージを使い、今度こそ滞りなく行われた。
久しく感じなかった、街というコミュニティーが生み出す暖かさを、全員が感じていた。


「坂井君と、ゆ――シャナ、ちゃんとの間にある、私には見えない、絆みたいなもの」
「そう」


太牙が蛇花火に火を付け、カムシンとサガークは物珍しそうに、日本独特の花火に魅入っていた。


「それが、羨ましかった。きっと私には分からない、なにか特別な関係なんだと思ってた」
「その、通りじゃない」


名護と恵は、由利と共にスパーク花火に興じている。
辛い戦いの余韻を忘れさせてくれる、家族だけの時間だ。


「ううん、違う。特別じゃない。同じ場所に立ってるだけ。普通の人間には見えない世界に一緒にいる、そんな繋がりだと、今では思ってる」
「……だから、なんだっていうの」


佐藤と田中が、打ち上げ花火をセットする。祭りでは終ぞ見られなかった夜空に咲く花に、マージョリーもまんざらではなさそうだった。


「だから私、改めて言うね」


次狼とマスターが悪のりし、数個の爆竹花火の導火線を纏め、一気に火を付けた。
弾ける騒音に、ラモン、力、嶋が耳を塞ぐ。


「これで、私とシャナちゃんは、本当に対等だから」


“こちら側”に来る覚悟を決めた少女の言葉に、シャナは言い知れない恐怖を覚えた。


「……わ、私」


怯えから、自分の持つ線香花火に目を落とす。


もう吉田は、どうしようもなく強い敵となっていた。幼稚な独占欲などものともしない、強い想いを秘めた少女。


だがシャナの中では、自分から動くしかないという気持ちと、動くことでフレイムヘイズたる自分の有り様が変わってしまうという気持ちが、互いにせめぎ合っていた。


――それでも必死に、酷く弱々しい声で、シャナは言う。
そうすることしか、できなかった。


「私は、悠二が好きなの」
「うん、知ってる」


僅かな反撃さえも受け止め、吉田は揺らぐことなく、シャナを迎え撃った。


「私も、坂井君が好きなの」


◆◆◆


「………」


悠二、静香、キバットとキバーラの四人と、線香花火を楽しみつつ、奏夜は二人の少女の話を聞いていた。


(これは吉田が一歩リードだな)


今回の一件で、吉田はシャナと同じステージに立った。
カムシンや太牙との邂逅が、彼女を劇的に変えたのだ。


ならばシャナもまた、自分の殻を破らなければならない。
シャナが本当にしたいこと――心の声を聞かなければ、この状況はひっくり返せない。


いずれにせよ、二人の勝負はこれからだ。


(なるべく早めにケリがつくといいんだけどねぇ)


苦笑して、奏夜は誰にも聞こえない小さな声で、ぽつりと呟いた。









「俺には、あまり時間が無いからな」







奏夜の線香花火が、静かに地面へ落ちた。


◆◆◆


「やれやれ、ようやっと見つけたわ」
「んー?」
「はえ?」


『我学の結晶エクセレント7930―阿吽の伝令』により、すんでのところで難を逃れた教授とドミノを待ち受けていたのは、一人の女性だった。


長身に、タイトスカートを着こなす妙齢の美女で、その周囲には幾重もの鎖が蠢いていた。
右目に眼帯、しかし左目に加え額にも目がある、三つ目の女性。


〔仮装舞踏会〕三柱臣(トリニティ)、ヘカテー、シュドナイと並ぶその一柱“逆理の裁者”ベルペオルだ。


「はうぁー! 軍師さま!? きょきょきょ教授、みみみ見つかっちゃっはひはひひはひ(たいたい痛い)」
「あまり遠くにお行きでないよ、“教授”。“壊刃”に行き逢って行く先を聞けなんだら、どうなっていたことやら」
「んー、やぁはり、奴の雇いを解ぉーくべきではありませんでしたねぇ」


困ったように頬を掻く教授に対し、女性は感情の読めない笑みを浮かべた。


「実験も一段落したのだろう? そろそろ私たちの方も、手伝ってはくれないかね?」
「んんー、〔仮装舞踏会〕でぇすかー? 『星黎殿』も『暴君』も、いぃー加減いじるのに飽ぁーきたんでぇすがねぇ―?」
「近々、『零時迷子』が手に入るかもしれない、としたら?」


教授の目の色と気分が、一瞬で変わった。
ドミノをどつき、すぐ様、次の実験場への引っ越し準備にかかる。


その様子に口角を吊り上げたベルペオルは、思い出したように付け加える。


「ああ、そうそう。もう一つ、お前さんが興味のありそうなものがあるんだがね」
「ほぉーう? あなたにしては気ぃー前が良いですねぇ? なぁーにか裏があるんでぇーすか?」
「いやいや、これは単純に、我々の大命と関係ない話なだけさね」


訝しむ教授に向け、ベルペオルは告げた。






「教授、“深淵のキバ”について、興味はあるかい?」


◆◆◆


「おいドラグ、教授はやられたみたいだぜ? 早くしねーと感づかれるぞ」
「待て。もう、終わる」


奏夜達が戦った御崎市。
限られた者しか知らないある入り口を使い、ドラグとゼブは御崎市の遥か地下を通る、隠された洞窟の深部にいた。
続く道には何重にも罠が仕掛けられていたが、二人にとってはなんのこともない。


遂にドラグは、巧みに魔術を操り、奥へ続く最後の結界を破る。
石造りの重々しい扉が開き、中の光景が二人の目に飛び込んできた。


そこにあったのは――黒塗りの大きな棺桶だった。


古めかしい様式だが、貴重な宝石や装飾がいくつも成され、埋葬された人物の地位が見受けられる。
フードの下でドラグが歓喜に身を震わせ、軽薄なゼブでさえも、神妙な様子でその棺を見ていた。


やがて二人は棺の前で、恭しく膝を折る。






『お迎えに上がりました。我らが主よ』


◆◆◆


その日、奏夜は次の授業のため、一年二組へと足を運んでいた。
階段をゆったりとした動作で上がり、踊り場に立つ。


「……?」


ふと、頭上に位置する二階の廊下に、誰かが立っているのがわかった。
一昔前の旅人のようなコートを身に纏い、鍔のついた帽子と眼鏡を着た中年の男性。


見ない顔だ。生徒というには無理があるし、かといって教員なら奏夜が知らぬ筈がない。


「……あー、一応部外者の立ち入りは」
「いつか、君の前に悪魔が現れる」
「は?」


男は急にわけのわからないことを言い出しかと思うと、次の瞬間には、奏夜の背後に回り込んでいた。


「ッ!」


奏夜は慌てて飛び退く。


今、この男は何をした?
自分に視認されず、後ろに回り込むなど不可能。
異形の存在ならまだわかるが、気配でわかる。こいつはファンガイアでも“徒”でもない。


驚愕を隠せない奏夜に、男は続ける。


「その悪魔は、これまでも様々な世界を破壊してきた。完璧な調和の保たれたこの世界でさえも、あの悪魔は破壊してしまうかも知れん。――悪魔を破壊しろ。君の世界を破壊されたくなければ」


言い置いて、男の姿は突然現れた不気味なオーロラの中に消えていく。


「なっ! おい、待てよ!」
「その悪魔の名は“ディケイド”。忘れるな。ヤツを、世界の破壊者をこの世界から排除するのだ!」


言い終わるか言い終わらない内に、男はオーロラの壁に呑まれ、姿を消した。





「……世界の破壊者、“ディケイド”?」


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  1. 2012/04/18(水) 16:29:00|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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