紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

第十三話・英雄/天才再臨.後篇

翌日。御崎高校への通学路。


昨日の奇妙な状態から回復した奏夜は、来る途中で会ったシャナ、悠二と共に、通い慣れた道を歩いていた。


「先生、あれから体調はどうですか?」


隣を歩く悠二も、奏夜を気遣っていた。


「ああ、絶好調だよ。お陰様でな」
「いや、僕が言ってるのは違うことなんですけど」
「……うーん、本当に俺がそんなことしたのか?」
「私は軽く胸触られかけたけど」
「……スミマセン」


未だに根に持っていらっしゃる。
こんな事実が証拠なんて、相当にイヤな話だが、事実は事実なので素直に謝罪。


「恵さんから聞きましたけど、前にも似たようなことがあったんですよね」
「ああ。四年前にな、数日で元に戻ったけどさ」


――そう言えばあの時は、ずっと悩んでたヴァイオリンの型が作れてたりしてたな。
アレを誰がやったのかはわからないが、今の奏夜からしても相当な腕だった。


「あんまり無理しないで下さいね。気分悪かったら早退もしなきゃいけないし」
「ん。合点承知」


言いながら、三人は通学途中のガード下に差し掛かる。
――と、前からガラの悪そうな三人組の青年が歩いてきた。


「!! テメェ!」


三人のリーダー格と思わしき青年が、奏夜に食って掛かる。


「あん?」


奏夜はダルそうに青年を見る。


「テメェ、あん時はよくもやってくれたな!!」
「……どちらさんで?」
「なっ、テメェ、忘れたとは言わせねーぞ!」


言いつつ、顔の青アザを指す青年。
――奏夜は記憶の彼方だが、彼らは以前、奏夜が迷子のソラトを救った際、叩き潰した不良グループである。
ソラトやティリエルのことは、奏夜もあまり良い思い出ではないので、無理からぬことかも知れなかった。


なので、こう答える。


「すみませんね。たった一話かそこらで、しかも原作じゃ退場してそうな駄キャラなど、いちいち覚えていられないもので」


ブチリと青年の血管が切れた音がした。


「ちょ、先生!」
「奏夜。手がいるなら貸すわよ」
「下がっとれ坂井。平井も、お前が出るまでもないさ」


慌てる坂井と、青年を不快そうに見るシャナを制し、奏夜は前に出る。


「今日は授業がある上、朝方でテンションが低いんだ。来るならさっさと来い」
「な、なめんじゃねぇぞコラァ!!」


青年の拳が、奏夜を捉える。
不調とはいえ、奏夜からすれば止まっているに等しいパンチ。
そのはずだった。


「!!」


――突如、自らの身体の支配権が奪われる。


(がっ――ま、またかよっ!?)


自分を襲う奇妙な感覚に負け、奏夜の顔に青年のパンチが叩き込まれた。


「先生!!」
「奏夜!!」


悠二とシャナが飛び出しかける。
青年が爽快感にニヤリと笑う。
――だがすぐに、その表情は驚愕に変わる。


奏夜が拳の入ったまま、青年の腕を思い切り掴んだのだ。


「っが!?」


凄まじい力で圧迫された腕を押さえ、青年は仰け反る。
顔を苦痛に歪ませた青年を見て、奏夜は挑発的な目線を作った。




「世の中に、嫌いなものが二つある。
糸こんにゃくと、ア・ホ・な・ガ・キ・だ」




奏夜は青年を指差しながらそう言った。
口調の変わった奏夜に、その場にいた者は呆気に取られる。


「よくそんなバカ面下げて、拳を振るおうなんて思えるもんだ。これ以上何かするなら、その残念な顔が更にブサイクになるぞ」
「っ、この野郎がぁぁ!!」


再び拳を突き出す青年。
奏夜は難なくそれを避け、続けざまに青年の脛を蹴った。


「いぎっ!!」


足を抱え踞る青年の背後から、残りの二人が襲い掛かってきた。
だが奏夜は、意地の悪そうな笑みを崩さず、今度は攻撃が決まるよりも早く、二人の頭を掴んで勢いを止め、そのまま互いの頭を打ち付けさせる。


「どうした、もう終わりか?」


ゆっくり近付いてくる奏夜。


「うがー!!」
「う、うわあぁぁぁ!」


脅すように奏夜が手を上げると、不良グループは情けない悲鳴を挙げながら逃げていった。


「ふん、可愛げも張り合いも無いガキだ」


奏夜は余裕の表情のまま、シャナと悠二を振り返った。


「大丈夫か、若人達よ」


二度目の奏夜の変貌に、悠二とシャナはただ頷くしかなかった。


「よろしい。んじゃ、オレはこれにてお役御免だな」
「は? ちょ、ちょっと待って下さい先生! 学校どうすんですか!」
「学校? オレ様の可能性は、狭い学舎に収まるようなものじゃあない」


悠二の制止も聞かず、奏夜は学校とは逆方向に歩き去ろうとする。


「待って」


張りのある声と共に、シャナが奏夜を睨む。
その瞳は警戒心に彩られていた。


「何だ嬢ちゃん。残念だが、お前さんの歳で逆ナンはまだ……」
「お前、誰?」


シャナの一方的な、だが強い物言いに、奏夜は言葉を切った。


「お前、奏夜じゃない。全然違う」
「……ほう」


奏夜は心の中で、密かに感嘆する。


(恐らく根拠は感覚からだろうが、フレイムヘイズとしては合格点だな)


知らず知らずに、表情が緩む。
――マティルダの約束は、果たされたわけだ。


「そうだな。強いて言うなら、通りすがりの愛の天使ってトコだ。別に覚えなくてもいい」
「っ、ふざけないで! 早く奏夜を返しなさい!」
「はっはっは、そうカッカしなさんな。何せ、せっかく“未来”に来たんだ。この身体を使うのは気が引けるが、もう少しゆっくりさせて貰ってもらうさ」


今度は振り返らず、奏夜はシャナと悠二を置いて歩き去ってしまった。


「シャナ、先生が先生じゃないって、どういうこと?」
「……そう言うってことは、悠二は何も感じなかったのね」


とは言え、悠二は力の流れを感じられるようになって間もないから、仕方ないのかも知れない。


「“存在の力”の質が違うの。似てるけど、奏夜のものとは違う。……まるで身体は同じで、心が違うみたい」
「心が違うって……じゃあ、あの変な状態の先生は、先生と違う人格なのか?」
「あくまで例え話よ。それこそ昨日の幽霊話じゃあるまいし」
『……幽霊、か』
「アラストール?」


コキュートスから聞こえてきた物憂げな声に、シャナは違和感を覚える。


『シャナ、坂井悠二。あの紅奏夜は、しばし保留としておけ』
『えっ?』


シャナと悠二は、驚きに目を見合わせた。
アラストールが、“徒”と関わりそうな事象を見逃すなど、信じられなかったのだ。


『すまんが、まだ理由は言えぬ。だが、この状況を見過しても、紅奏夜に害が及ぶことはない。それだけは我が断言しよう』
「……アラストールがそう言うなら、いいけど」


悠二が言って、シャナは納得仕切れていなさそうだったが、一応は「わかった」と同意する。


(――それにしても)


アラストールは心中、疲れたように嘆息する。


(我の契約者が変わろうが、貴様は変わらず、自分の道を行くのだな)


そう考えて、彼は苦笑のような呟きを漏らした。


「変わらず――貴様は気に食わぬわ」


アラストールの小さな笑い声は、僅かな嬉しさを帯びていた。


◆◆◆


「へぇ。奏夜のヤツ、教師なんてやってるのか」


シャナと悠二の前から立ち去った奏夜は、自分のバックの中身にあった資料をめくっていた。
口元には、嬉しそうな笑みが浮かんでいる。


「元気かどうか不安だったが、あいつも立派にやってるみたいだな。感心感心」


資料をしまって、奏夜は座っていたベンチから立ち上がる。


「しかし、よりによってマティルダの次世代と一緒とはなぁ……。くっくっく、これだから世の中は面白い」


さて、これからどうするか。一先ず思案顔になる奏夜。


(あの堅物魔神と、昔話に花を咲かせるのも悪くないが、奏夜とあいつらの関係もよくわからないしな……)


余計な真似をして、奏夜に迷惑をかけてしまうのもつまらない。
となれば――、


「やれやれ、気は進まんが、あいつらにも礼は言っておかないと寝覚めが悪いな」


行き先を決め、奏夜は歩き出した。


◆◆◆


御崎高校一年二組。
明け透けに退屈そうにする少女が一人。


(……暇)


授業は三時間目、今さら学ぶものの無いシャナは、面倒くさそうに目を擦った。
隣の悠二はノート取りに必死なため、余計に億劫だ。


――そんな必死にならなくても、一言言えば教え……、


(っ! な、何を馬鹿なことを……)


自分が何を考えようとしていたかに気付き、シャナは染めた頬を隠そうと、窓の方に視線を反らした。


「!!」


突如、シャナが跳ね上がるように、席から立った。
教師の授業内容しかなかった教室に、椅子の足と床が擦れる音は、いやに響く。


「ひ、平井?」


一体どうした、と教師が聞くより早く、シャナは悠二の首をひっ掴み、教師から飛び出した。


「ぐえっ、シャ、シャナ! 首、首が絞まる! なんか西部劇みたいになってる!」


しばらく廊下をずるずると引き摺られ、悠二はようやく解放された。


「悠二、気付いてる?」
「げほっ、げほっ、あ、ああ。屋上に現れた気配だろ?」


引き摺られる必要性はわからなかったが、連れ出された理由はわかっていた。


御崎高校屋上。
身体を駆け抜けた感覚が、“敵”の来訪を告げていた。


「“徒”かな?」


走りながら、悠二が聞く。


「わからない。ファンガイアかも」
『いずれにせよ、気を抜いてはならん。屋上から場所を変えぬ理由はわからんが、何か狙いがあるはずだ』
「うん」


シャナは階段を駆け上がり、屋上のドアを蹴破った(ちなみにラミーの時と合わせ、これが二回目である)。


風が吹き抜ける爽やかな空が広がる。
しかし、その風景のただ一点、ステンドグラスのような皮膚をした異形が、せっかくの情緒を塗り潰していた。
背中から透き通るような羽根を生やし、人間でいう目の位置には黒い複眼。
右手首から延びている銀色に輝く針は、見る者を戦慄させるには十分な凶器。


まるで蜂のような姿の異形――ヘルホーネットファンガイアは、自らのテリトリーに踏み込んできたシャナと悠二を、目で捉えた。


「……ほう。キングがかかると思っていたが、フレイムヘイズと“零時迷子”の方か」


シャナと悠二は警戒心を強めた。


(僕のことも、シャナのことも知ってる……)


思わず、胸の灯火に目を落とす悠二。
彼の傍らで、シャナが口を開いた。


「お前、ファンガイアね。わざわざこんな不恰好に姿を見せて……狙いは何?」
「貴様らフレイムヘイズに構っている暇などない。我が目的はただ一つ、キバの抹殺だ」
「!!」


キバの名に反応したシャナと悠二に、ヘルホーネットファンガイアは、口角を吊り上げた。


「やはり、キバを知っているらしいな。ここに来たのも、まんざら無駄足でも無かったようだ」
「どういう意味?」
「意味だと? ……ああ、そうか。貴様らは知らないのだな。良いだろう、ならば教えてやる」


滑稽だとでも言うように、ヘルホーネットファンガイアはその事実を告げた。


「キバは、この御崎高校の中にいるのだよ」
「!?」
「な――!」


予想だにしなかった言葉に、二人の身体を衝撃が駆け抜けた。


あのキバが、こんな身近にいる。信じがたいが、ここでヘルホーネットファンガイアが嘘をつく理由もわからない。


「だからこそ、この学校にいる人間には利用価値がある。何せ、キバが見知った人間ばかりだからな。一人二人だけでも、十分効果が望めるだろう」
「っ!! お前、みんなをどうするつもりだ!?」


言葉の意味を本能的に察知し、悠二は思わず叫んだ。


「知れたこと。キバをおびき寄せるも良し、人質に使うも良し、目の前でライフエナジーを喰らうというのも悪くないな」


その宣言には何の感慨もなく、ましてや情などというものは皆無だった。


(――最悪だ)


ここでこいつを逃すわけにはいかない。
結論付け、シャナが手を掲げると、指先に灯りが点った。


「封絶」


赤いドーム状の光『封絶』が、屋上一帯を覆い、世界の因果から切り離す。
シャナの瞳と髪が紅蓮色に染まり、煌々と燃える火の粉が弾けた。
続けて、黒衣『夜傘』から大太刀『贄殿遮那』を取り出し、構える。


「お前は――ここで討滅する!」
「血気盛んだな、『炎髪灼眼の討ち手』。まぁ良かろう、前座には丁度いい。
――ドラグ様への、勝手な行動の詫びにもなるだろうからな」


片腕の針を構え、ヘルホーネットファンガイアの目にも戦意が宿った。


「悠二、下がってて」
「えっ? でも……」
「悠二。悠二が出来ることを、悠二自身が考えて」


シャナが言ったのは、愛染兄妹の時と同じことだった。
悠二がはっとしたような表情になり、頷いた。


「――わかった。気をつけて」
「うん」


悠二は一歩下がったのち、シャナはヘルホーネットファンガイアに切っ先を向け直す。


――再び、非日常が始まろうとしていた。


◆◆◆


――時間は少々遡り、キャッスルドラン内、ドランプリズン。


「あ、娘が生まれるだって。力、子供のピン取って」
「次はオレだな、『宇宙人と友達に、20000円貰う』。……最近の人生ゲームは、随分突拍子のないマスがあるな」
「……おれ、いえが、たいふうに」
『御愁傷様』


嘆く力に、次狼とラモンが合唱する。
いつものように、三人はお茶とお菓子をつまみながら、ゲームに興じていた。


「ねぇねぇ、そう言えばさ、お兄ちゃん、まだ立ち直れてないのかな?」


ゲームの最中、ラモンが思い出したように言う。


「結構堪えてたみたいじゃなかった? この前の“徒”のこと」
「しょう、しん」
「そう騒ぎ立ててやるな。あいつもいい加減ガキじゃないんだ。自分のことは自分で決められるだろう」


そこまで言って、次狼はふと、虚空を睨んだ。


「――噂をすれば、か」


回廊の方からコツ、コツと足音が響き、三人のいる部屋の前に人影が現れた。


「よう奏夜、今日は平日だぞ、学校はよかったのか?」
「………」
「……? 奏夜?」
「お兄ちゃん?」
「どう、した」


何も答えない奏夜を、三人は怪訝そうに見つめる。
奏夜は次狼、ラモン、力を順々に眺めていたが、やがて意地悪そうな笑みを浮かべ、




「随分と楽しくやってるみたいだな。意外と退屈してなさそうで何よりだ。オレ様の可愛いペット達よ」




『……!!』


三人は驚きにカッ、と目を見開く。
間違うはずがない。見た目が違えど、あのからかい文句を聞き間違えはしない。


「お前、まさか……」


いち早く混乱から抜け出した次狼が、絞り出すように声を発する。
対して、奏夜は笑みを崩さないままだ。


「皆まで言うなよ。――久しぶりだな、次狼、ラモン、力」


フランクに言い放ち、奏夜は手近にあった椅子に座る。


「……一体何がどうなっている」
「どうしてお兄ちゃんの身体で……」
「びっ、くり」
「ああ、お前らの言い分はわかる、オレも未だに信じられないからな。が、起こったものはしょうがないだろ? きっと、カミサマのプレゼントってヤツさ」
「地獄の沙汰も気分次第、か。……お前らしい」


あまりな事態に次狼が苦笑し、奏夜もつられて頬を緩ませた。
そして奏夜は、今日ここに来た用向きを伝える。


「――約束、守ってくれてるみたいだな。礼を言うぞ、三人とも」
「よせ。お前から礼など、気味が悪い」
「あはは、言えてる♪」


茶化すラモンの隣で、力もうんうんと頷いている。


「はっはっは、そうだな。素直に礼など、オレ様らしくない」
「それはそれで問題だがな。で、どうだ。この時代は?」
「悪くない。奏夜のヤツが、こんな良い時代を生きていると思うと、さすがに嫉妬しちまうね」
「当たり前だ。奏夜だけでなく、“お前”が守った未来でもあるんだからな」
「………」


初めて、奏夜は笑みを消した。
次狼の言葉がこそばゆくなり、頭をがりがりと掻く。


「気持ち悪いこと言うなよ。それこそお前のキャラじゃねぇだろ、次狼」
「そう言うな。何せ26年振りの再会だ。お前には言ってやりたいことが山程ある」
「あ、僕も僕も」
「おれ、も」


次狼を皮切りに、ラモン、力も、会話に加わった。
奏夜はうんざりしたように溜め息をついたが、まんざらでもなさそうに、三人と他愛ない話を楽しんだ。


――親友と呼ぶには、この関係性は複雑だ。
いがみ合い、果てには殺し合ったことさえある。
だがいつの間にか、こうして気軽に話す仲にはなっていた。
ケンカ仲間、というのが一番近いかも知れない。親友でもないし、だが犬猿の仲というほどでもない、そんな奇妙な縁。


――だからこそ、なのだろうか。


あんな約束を26年守ってくれた三人。
王に喧嘩を売ってまで、自分達を救い出してくれた男。


言葉になど出来たものではないが――四人は同じことを思っていた。





また会えてよかった。





◆◆◆


会話の中で、ふとラモンがこんなことを聞いてきた。


「ねぇねぇ、もうクイーンには会ったの?」


クイーン、その名を聞いた途端、奏夜はばつが悪そうに顔を反らした。


「……いや、会ってない。会う気もない」
「へ? 何でさ」


奏夜は軽い口調ながらも、何処か寂しそうに告げる。


「真夜とオレの間には、もうやり残したことはない。オレはもうこの世にはいないし、まして奏夜の身体を借りていくなんてマナー違反もいいとこだ。
第一、ここに来るのだって、正直かなり迷ったぞ。だが、一応お前らに礼は言わなきゃならなかったからな」
「じゃあ、奏夜にも会わない気か? お前の魂がその身体に入っているなら、奏夜の魂に呼び掛けることも出来るだろう。
――それに今は、あいつもお前に会いたいと思ってるかも知れんぞ」
「奏夜がそうだとしても、オレが会いたくない」


キッパリと言い切った。
奏夜の事情については、彼もさっき、次狼から聞いている。
その上で、会いたくないと言ったのだ。


「あいつにも、もう教えるべきことは教えてある。それに、ここでオレが手を貸せば、またあいつはオレに甘えちまう」


ある意味、真夜より会いづらい。


「それに」と奏夜は続ける。


「奏夜なら心配いらないさ。何せ、オレ様の究極の遺伝子を継いだ息子だからな」
「――フッ、そうだったな」


一頻り三人と話し終え「さてと」と奏夜は席から立つ。


「オレはそろそろ行くぞ。もう一人、会わなきゃならんヤツがいるんでな」
「もう一人?」
「ああ、500年くらい前からの知り合いだ」


また訳のわからないことを。
次狼達は心中呆れたが、奏夜の言葉を理解することはしなかった。


理解出来ない言動や行動ばかり。このバカは、そういう男だ。


「それじゃあな、次狼、ラモン、力。茶菓子は美味かったぞ」
「はいはい、以後、気軽にあの世から戻ってこないよーに」
「ぐっど、らっく」


ラモンと力が冗談めかしく別れを告げ、次狼は何も言わなかった。
が、奏夜が部屋から出ていく直前になって、次狼は「おい」と彼の背中に呼び掛けた。


振り返らず、奏夜は立ち止まる。


「何だ次狼?」


次狼は感情を隠すように、ぶっきらぼうな口調でただ一言、


「――“またな”。音也」


意外な別れの挨拶に少し驚いて、奏夜は振り返らないまま、だが笑って別れを告げた。


「ああ、“またな”。次狼」


――奏夜が去った後、ラモンは物悲しそうにコーヒーを啜り、力は大声で泣き出し、次狼は顔を伏せ、こっそり目から零れたものを拭った。


◆◆◆


「だあっ!!」


シャナの大太刀から放たれた紅蓮の奔流が、ヘルホーネットファンガイアを捉える。


「ぬるいわ!!」


透明な羽を使い、ヘルホーネットファンガイアは空中へ退避。
左腕に付いた発射口から、右腕の針より一回り小さな針を発射する。


「くっ!」


夜傘を防御に回し、針の雨を振り払う。
シャナは昇降口の壁を蹴り、空中のヘルホーネットファンガイアの頭上を捉えた。


「ぬっ!」


右腕に付いた針で、『贄殿遮那』の斬撃を阻む。
ガキィン、と金属音が鳴り、互いの武器の間に火花が散る。


「さすがは魔神の契約者、というところか……。だが!」
「!?」


シャナは目を見開く。


「甘い!」


“背後に回った”ヘルホーネットファンガイアが、右腕の針を振り被った。
自身に向けられた殺意の塊を、どうにか大太刀で弾き、屋上の床に着地する。


「どういうこと? あいつ、確かに私の正面にいたはずなのに」
「ふむ。高速移動、というよりは、急に姿が消えたように見えたが」


嘲笑うように、ヘルホーネットファンガイアが言う。


「所詮はこの程度か。崇高な存在たるファンガイアに歯向かおうなど、身の程を知るべきだったな!」


殺那、またヘルホーネットファンガイアは消える。
シャナの動体視力をもってしても、捉えられない超高速。


「う、ぐっ!」


紙一重で攻撃を回避、ヘルホーネットファンガイアはまた消え、針を突き出して来る。
そのループは、シャナの攻撃の手を鈍らせ、着実に体力を削り取っていく。


一方、昇降口の側から、戦いの一部始終を見守る悠二はと言うと、


(ダメだ……全然わからない)


シャナを助けられない歯痒さに苛まれながらも、必死に戦いから情報を読み取ろうとしていた。


戦いには参加出来ない。シャナの足手まといになるだけだ。
ならせめて、あの超加速のタネだけでも見破らなければならない。


――以前取り込んだ“千変”の右腕の気味悪さはあるが、“零時迷子”の直感力はまだ健在なのだから。


(あいつが僕に気を払っていない内に、どうにかしないと)


考えろ、与えられた情報を組み直せ。


加速、否、シャナにも捉えられないなら、あれはもはや瞬間移動だ。
端から見ても、確かヤツは一瞬消えている。


(本当にそういう能力なのか? くそっ、だとしたら、手の打ちようがないぞ)


自在法か何かなら、まだ破りようはあるが、純粋な身体能力だったりしたらお手上げだ。
すぐに針を突き立てられて……。


………。


(待てよ、なら何であいつは、最初からアレを使わなかったんだ?)


屋上に上がった直後、あの加速を使われていたなら、勝負にすらならず、やられていた。
なのにヤツは、わざわざ二人と会話をしていた。キバの情報まで与えて、だ。


(おしゃべりを楽しむような性格には見えないし、僕達をキバへの人質にする気でもなかったはずだ)


だったら、フレイムヘイズであるシャナや、その庇護下にある自分を相手になどせず、この学校にいる、誰か普通の人間を拐ってしまえばいい。


(そうだ。キバが狙いなら、尚更僕らと戦う利益はない。あの加速なら、僕らを撒くのも簡単なはずなのに)


何故、それをしなかった。


無意味な会話。
加速の不使用。


この2つの矛盾に、悠二は辿り着く。


(何かあるんだ。あの加速を使えないわけが)


――ふと、悠二を奇妙な感覚が襲った。


(何だ? 耳が、少し痛い……)


よく耳を澄ませば、キィィン、という壊れたテレビが発するような音がした。
かといって、電子機器などこの近くにはない。
零時迷子の感覚が、発信源をその告げる。


(あいつの、羽?)


ヘルホーネットファンガイアの背にある両翼。
よく見ると、飛んでいない時以外でも、小刻みに震えている。




(――あっ!)




悠二の脳内で、一つの仮説が生まれた。確証は無いが、これならすべてに説明がつく。


「シャナ!」


悠二は、大声で彼女に呼び掛ける。
敵の注意も引いてしまうが、それは相応のリスクだ。


「騙されるな! そいつは瞬間移動なんかしてない!」
「!!」


シャナは戦いながらも、悠二の言葉に耳を傾ける。




――それは、致命的な油断となった。




「はぁッ!!」


轟音。
ヘルホーネットファンガイアが射出した魔皇力の弾丸が、悠二ごと屋上の床を吹き飛ばしたのだ。


「う、わぁっ!?」


悠二の悲鳴が挙がり、周囲は硝煙に包まれた。


「っ、悠二!!」


シャナは青ざめ、一瞬全ての注意を削がれていた。


『シャナ、後ろだ!!』


アラストールの警鐘にも、反応出来なかった。
硝煙に紛れ、近づいたヘルホーネットファンガイアの針が、シャナの肩を刺し貫いた。


「っぐ、あ!?」


焼けつくような痛みが走り、シャナは身体をよろけさせる。
振り向く先には、ヘルホーネットファンガイアの勝ち誇った顔。


(あ、れ? 見え、ない……目が、霞ん――)


目だけではない。傷口から、どんどん身体が麻痺していく。


アラストールが呼び掛けているが、聞き取れない。
悠二の安否を確かめることも出来ず、意識は闇に飲まれた。


◆◆◆


「脆弱なものだ」


自らの針に宿る“毒”により、意識を失ったシャナを見下し、ヘルホーネットファンガイアは呟く。


「やはり我々こそ、世を支配するに相応しいのだな」


次にヘルホーネットファンガイアは、屋上に出来たクレーターの上で気絶した悠二を見る。


「生きていたか。中々にしぶといな、人間というやつは。……まぁいい。少々予定は狂ったが、こいつらを人質とさせてもらうとするか」


言って、ヘルホーネットファンガイアは悠二に近付いていく。


――その時だった。




「ふぅ、やれやれ」




昇降口の鉄扉が開き、一人の男が屋上に姿を表した。


「この時代になってもまだ、人を襲うファンガイアがいるとはなぁ?」
「……ようやくお出ましか。キング」


聞き知っていた容姿を確認し、ヘルホーネットファンガイアは言う。


しかし、直ぐ様その表情は、怪訝そうな顔つきに変わる。


「いや……“違う”。身体はキングだが、中身が違う。……貴様、何者だ」


その質問に、乱入してきた青年――奏夜は、不敵に微笑み、自らの名を告げた。




「紅、音也だ」


スポンサーサイト
  1. 2012/03/30(金) 22:10:41|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<第十四話・再演/天才の贈り物.前篇 | ホーム | 第十三話・英雄/天才再臨.前篇>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://syanakiva.blog.fc2.com/tb.php/33-127e3788
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。