紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第十二話・威風堂々/滲むパープルアイ.前篇


「……っ」


瓦礫をどうにか退かし、イクサの変身を強制解除された名護が出てくる。
浅い場所に埋まっていたのは幸いだった。


だが、助かったところで状況は変わらない。


「まさかイクサ・ジャッジメントを完璧に防ぐとはな……“千変”、恐るべき相手だ」


名護は頭を直ぐ戦いに切り替えた。ことによれば、相手はチェックメイトフォー以上の力量。
となれば、対抗手段は“あれ”しかない。


「やはり、出し惜しみはするものではないな。それに、一人で戦うのにも限界が……」


そこで名護は初めて、あのフレイムヘイズのことを思い出す。


「そうだ。『弔詞の詠み手』の安否も確認しなければ」
『その心配はいらねーぜ、白騎士の兄ちゃん。、こっちだこっち』


マルコシアスの声に導かれ、名護は崩れた立体駐車場に辿り着く。
中の惨状に顔を曇らせつつ、その一角、瓦礫に埋もれ、気絶したマージョリーを見つけた。


「無事で何よりだ、“蹂躙の爪牙”」


グリモアから群青の火が漏れ、軽い調子の笑い声が響いた。


『ヒャハハ、お前さんもな。白騎士の鎧が消えたまま瓦礫に埋まって、よく生きてられたもんだ』
「運はいい方だ。それに、人間は元々、頑丈な生き物だからな。私まで鍛えれば、片足で車も止められる」
『今さらりと凄ぇこと言わなかったか? ――おっと、我が怠惰なる戦人が起きるな』


マージョリーがうめいたのを見て、マルコシアスは言う。


『なぁ、白騎士の兄ちゃんよ。これから俺様がマージョリーに言うことは、全部“嘘”だと思ってくれや』
「嘘?」
『ああ。いい加減、この絶不調な眠り姫も、目を覚まして貰わなきゃならねぇからな』


名護がイマイチ理解出来ないまま、マージョリーが目を覚ました。


「………生きてた……」


ぼんやりした表情のまま、マージョリーは立ち上がり、服の汚れを落とした。


『ヒッヒッヒ! 全く、おめえの往生際の悪さにゃあ感動すらするぜ、我が頑強なる生命、マージョリー・ドー』
「……本当に、死んだと思ったんだけどね」
「まるで死にたかったような口振りだな」


名護が非難がましい視線を、マージョリーに向けた。


「やるべきこともやらずに、まるで脱け殻だぞ『弔詞の詠み手』」
「脱け殻……ふん、そうかもね」


言い返すこともなく、マージョリーに相変わらず気力は無い。


「後悔もなにもない。ただの脱け殻よ、だって、もう、本当にやることはないんだし……」
「……」


本気で怒鳴ってしまおうか。名護は割と真剣にそんなことを思った。
たださっき、マルコシアスが言ったことも引っ掛かっているため、ここは自制する。


「さって、と。いつまでもこんな所に埋もれてらんないわね。外はどうなってんのかしら……。ケーサク、エータ、自在式は今、どんな感じ?」


答えはない。


『……』


マルコシアスもまた、無言だった。


「……なによ、今は戦闘中じゃないから、喋ってもいいのよ」



やはり答えはない。


「どうしたの、ケーサク、エータ、なんとか言いなさい! マルコシアス、どうしたの、通信の自在法は途切れてないわよ!?」


ただマージョリーの声だけが、虚ろに反響する。
やがてマルコシアスが、ぽつりと言った。


『さっきから、ずっと出ねえ。物音も、ねぇ』
「なっ!?」


名護が思わず声を上げる。だが、


「…………」


直ぐに感情を潜め、瓦礫に腰かけた。


「ど、どういうことよ、なに言ってんのよ!? ケーサク!! エータ!!」


脳内で処理仕切れない現実が、マージョリーを襲う。
そんな事実、認められない。とでも言うかのように、マージョリーは怒鳴り続ける。


「まさか勘付かれて、“千変”に? あの兄妹が? なんで、待ってよ! マルコシアス、ケイスケ、なんで起こさなかったのよ!!」
「私が合流したのはついさっきだ。――今、初めて知った」


名護は素っ気なく言い放つ。
それきり、暗闇と沈黙が続く。


「――っ、マルコシアス!!」


耐えきれず、マージョリーはわけもわからず、無言なままの相棒を呼んだ。


『おめえの望んだ結果だよ、我が怠惰なる愚者、マージョリー・ドー』
「な――!?」


マルコシアスの口調に、いつもの陽気さは無い。明瞭な侮蔑が込められていた。


『後悔もしねえ脱け殻だぁ? そう嘯いている間に、このザマだ。おめえなんとかすることができた。なのにしなかった。白騎士の兄ちゃんや、あの姉ちゃんが、わざわざ忠告してくれたにも関わらずな。
だからこうなった……どの口で、誰に文句を言うよ?』


マルコシアスの叱責を、雷にでも打たれたかのように、マージョリーは呆然となった。
名護はそんな彼女に構わず、マルコシアスに聞く。


「“そんなこと”よりも“蹂躙の爪牙”。“千変”は今何処にいる?」
「!!」


名護の言い種に、マージョリーは思わず言葉を失った。


「私達が負けたとあっては、悠二君が危険かも知れん」
『ん? ああ、ちょっと待てよ……』
「あ、アンタ!!」


凄まじい勢いで、マージョリーは名護の襟首を掴む。


「アンタわかってんの!? ケーサクとエータがやられたなら、あのメグミって女だって……!!」
「……ああ、だろうな」


名護の冷ややかな目に、マージョリーはたじろいた。


「だから何だ? 腑抜けて何もせず、大切な弟分二人すら守れなかったキミに、とやかく言われる筋合いはない」
「……っ!!」


怒りが飽和状態に達しかけるマージョリーに、名護は更に現実を突きつける。


「恵はいつも、覚悟を持って戦場にいた。もちろん私もだ。こんな仕事だからな。どちらが死んでもおかしくはない。分かるか? 私達は、死など、とうの昔に覚悟している」


揺らぎない口調で、名護は続ける。


「だから恵が死んだとしても、私は歩みを止めはしない。私が歩みを止めれば、それは恵に対する最大の侮辱だろう。死んでいった者の命を受け取り、繋ぐ。それが、生きる者の責任だからだ」


自分を掴み上げている手を払い、名護は逆に言い返す。


「それに引き換え、キミは何をした? 佐藤君と田中君は、まだ高校生だ。死ぬ覚悟が出来ていたとは思えない。ならばそれこそ、力のあるキミが、守ってやらなければならなかったのではないか?」
「………」


マージョリーの手が震え出していた。


「“蹂躙の爪牙”の言う通り、キミは結局、何もしなかった。戦う理由が見つからない――そんな下らない理由で、戦いから逃げ、佐藤君と田中君が、キミに抱く憧れに甘えていただけだ」
「――だって!」


顔を附せ、マージョリーはすがるように、感情を爆発させた。


「もう少し休ませてくれても、甘えさせてくれてもいいじゃない!! 何百年私がやってきて、いきなり全部、それを奪われて、そんな、急に自分を帰るなんてことなんて出来ないわよ!」
「――いい加減にしなさい!!」


今度は名護が、マージョリーを瓦礫の壁に押し付けた。
その顔には、本気の怒りが刻まれている。


「戦いでそんな甘えが通用すると思っているのか!? 自分を変えることなんて出来ない!? 変えようともしなかった分際で、よくそんな口が叩けるものだな!」


いつもの冷静さは何処へか、名護はマージョリーを怒鳴り付ける。
やがて、語調は落ち着いたが、瞳だけはマージョリーを強く睨み付けていた。


「――私もかつては、キミと同じだった。自分の本質を変えられず、幼稚な正義を否定されれば、自暴自棄になるだけの弱い人間だった」


今ならわかる。
あの時、他人が自分をどういう風に思っていたのか。
自分が、どれだけ愚かだったのか。


けれど、あの頃の自分は、あまりに頑固で、自分勝手過ぎた。
それを言い訳にするつもりは無いが、とにかく、本当の自分を認められなかったのだ。


――そんな時だ。


彼に会ったのは。


「彼は、強大な力を持て余していた。だが、それに負けない心の強さがあった。何度傷付こうが、何度自分の信じたものに裏切られようが、その度に成長し、変わり続けてきた」


彼には、言葉で言い尽くせないほど感謝している。
彼がいなければ、今の自分はいない。


「だがキミは、彼の足元にも及ばない。たった一度の挫折で挫け、そのたった一度の挫折すら、受け入れられないでいる。
――やらなかったことを、言い訳にするのは、もう止めなさい」


名護が手を放すと、マージョリーは糸の切れた人形よろしく、足から崩れ落ちた。


身体がずしりと重い。広がる虚脱感は、涙すら流させてくれなかった。


――それからはしばらく、三人共言葉を交わさなかった。
沈黙が続き、ようやくマージョリーが重い口を開く。


「……やらなかったことは、罪なの……?」
『おめえがそう感じるのならな。それも、勝手さ』
「大切なのは、罪に向き合った時、どうするかだ」


マルコシアスと名護が答える。


「…………今度のは、壊したいものじゃない、守りたいものだったのに」


言って、マージョリーの周りに群青の火の粉が集まり出す。


「またこうやって、なにもかも無くしてから、瓦礫の中、罪に塗れて、這いつくばって、やり直すのね」
『そーいうこった。おめえは、とっくに選んでんだぜ? なにもかも無くして、それまでもこれからもどうしようもねえ場所で、まだ立ち上がる……そんな道をよ』
「まだ、立ち上がる、か……でも、案外、結構、凄く……堪えるわ」


ふと、マージョリーは名護に尋ねた。


「ねぇケイスケ。アンタは何で、立ち上がれるの?」
「決まっている」


名護の答えは簡潔だった。


「この身体の細胞一つ一つが、正義の心に燃えているからだ」


決してそれは、幼稚な理想ではない。
戦う理由。名護を支える、確固たる信念だ。


「ふうん……そりゃ大層な理由ね」


少しだけ笑い、マージョリーはよろよろと立ち上がった。
群青の炎が、更に輝きを増す。


『ここまで聞いてまだ、ここにほとぼりが冷めるまで潜んでるかい?』
「まさか。“可愛い子分”を殺されたのよ。こっちの手落ちだとしても、ただじゃ済まさないわ」
『ヒヒ……じゃあ、行くか』


ずんぐりした群青色の獣――炎の衣『トーガ』を纏い、ギザギザした歯を光らせて、マージョリーは瓦礫の山に立った。




――と、その時である。




「ん、えっ!?」
「どわあっ!」
「きゃっ!!」


驚く声が、三人分。


「――え?」


『トーガ』の中から、呆然とその光景を見下ろす。


「……ケ、ケーサク、エータ……?」


そこには、瓦礫を堀出そうとしていたらしい佐藤、田中、恵の三人が――いなくなったと思っていた三人がいた。


「………ちょっ、と、どう、いう、こと……?」


傍らを見れば、名護とマルコシアスが、笑いを必死に噛み殺していた。


『ヒッ、ヒヒ、ヒ、まあ、この世もたまにゃ、甘えツラを見せることがあるってえわけだ』
「ふ、ふふ……本当に、迂濶だぞ『弔詞の詠み手』。少し考えれば違和感に気付いたろうに」
「か、担、いだ、わ、ね……バカ、マルコ。ケイ、スケまで、グルに、なって……!!」


怒りのあまり、トーガから火花が弾ける。


『あーん? 俺ぁ、『さっきから誰も出ねえ、物音もしねえ』とは言ったが、ご両人が死んだなんて、一言も言っちゃーいねえぜ? ご両人も、“俺が”『ここに埋まってる』って言ったから、姉ちゃんを護衛に頼んで来てもらっただけだしよ。ミナミナ、おめえの早とちりだろ』
「私も恵が死んだ“場合”の話はしたが、はっきり彼女が死んだとは言っていないぞ。ただ、“蹂躙の爪牙”に『これから俺が言うことは全て嘘』と言われただけでな」
『おいおい、俺様に全部責任転化かぁ?』
「提案者はキミだろう?」
『そーだったかぁ? ヒャッヒャッヒャ!』
「はははは」
「あん、た、たち、ねぇ……!!」


爽やかにドッキリ成功の余韻を楽しむ二人を、恨みがましい目線で見る。


「マ、マージョリーさん!」
「姐さーん!」
「名護くーん、ちゃんと生きてるー?」


三人が瓦礫の下から声を張り上げる。
隣で名護が「ああ、ちゃんと生きてるぞー」と返す傍ら、マージョリーは佐藤と田中を見た。


二人が、生きてた。


(――――ぅ、うわ、ちょ、待っ!?)


その実感が急に込み上げてきて、マージョリーはさっきまで出せなかったものが、瞳からポタポタ流れてくるのがわかった。


「? マージョリーさんどうかしたの?」


瓦礫を登ってきた恵が、青い獣が肩を震わせているのを見て首を傾げる。


「気にしてやるな恵。佐藤君と田中君も、ここはもう大丈夫だから、もう戻りなさい」
「え、でも怪我とかは?」


佐藤が気遣わしげに言うと、


『ヒッヒッヒ、この程度で我が不死身の猛者、マージョリー・ドーが傷付くもんかい。むしろ戦いに向かいたくてうずうずしてるところよ』
「この程度って……もうえらい惨事ですけど」


田中は、世紀末世界のように荒廃した周囲を見渡す。


『早く『玻璃壇』に戻れとさ、今ヒス状態だからよ、下手に絡んだら、このドでけえ手で思いっ切りぶったたかれるぜ?』


マルコシアスの言葉に取り敢えず納得したのか、佐藤が頷いて、


「そうですか。じゃあ、俺達、戻ります」


瓦礫を降りる途中で田中が、


「“徒”なんか、ぶっ飛ばしてやってくださいよ!」


二人の声を聞いて、無言のままマージョリーは頷く。
名護もまた、恵に声を掛けた。


「恵、二人を頼んだぞ」
「まっかせなさい! 名護くんこそ、怪我して約束すっぽかしたら許さないからねー!」


笑顔で言い返し、恵も下に降りていく。


ややあって、マージョリーが、名護とマルコシアスにだけ通じる声で聞いた。


(……お礼、言うべきなわけ、コレ)
(ヒヒヒ、さっきのとコレでチャラ、ってことでどうでえ)
(全部自分で撒いた種でしょうが……なんなのよ、もう……私、馬鹿みたいじゃない)
(馬鹿を見ただけで済んだ、と思ったらどうだ? 世の中、それくらい余裕を持った方が面白いぞ)
(そ。んじゃ、その勢いに乗ったまま、余裕でカタをつけちゃいましょうか)
(ああ)
(そーこなくっちゃな)


――迷いなく、新たに生まれた強い決意を胸に、二人の戦士は再び走り出す。


非情なる戦場を目指して。


◆◆◆


同時刻、御崎大橋。
依然として、悠二の危機的状況は継続中だった。


名護の危惧通り、彼ら二人が負けたことにより、“千変”シュドナイは、あっさり御崎大橋まで辿り着き、悠二と対峙している。
どうにか――さっきまでは自分のミステスという立場を利用し、以前シャナから聞き知っていた、史上最悪のミステス“天目一個”と信じ込ませることが出来た。


だが、それも限界である。


(……ど、ど、どうし、よう)


力の流れを手繰れば、シャナとキバが、ここへ近付いて来ていることはわかっている。


だが、シュドナイもまた力の波動を感じ取り、戦意をみなぎらせてしまっていた。
絶対的強者の殺意にあてられ、若干普通でないとはいえ、ほとんどただの高校生である悠二が、それに耐えられるはずもない。


カチカチカチ、と恐怖は歯の震えとなって表れる。
無論、シュドナイがそれに気付かぬはずもない。


「! ――貴様!!」
「っ!!」


疑念が怒りに染まり、シュドナイは一瞬の内に腕を伸ばして、悠二の胸を突き刺した。


「この俺をペテンにかけたな?」
「あ……」


ミステスである悠二は、核たる宝具を取り出されれば、その存在は消える。
既知の、だが残酷な事実を、悠二は恐れと共に実感していた。


「ちっ、なんてことだ。せめて中身くらいは当たりであってくれよ」


あまり期待していないような口調のまま、シュドナイは悠二の中から、目当ての宝具を探り当てる。


(あった)
(っ、シャナ、ごめん!!)


悠二はぎゅっ、と目を瞑った。
にやりと笑ったシュドナイが、“それ”に触れる――、




――ピシ。




何かが軋んだような音。


「? っが」


だんだんと、思考力が戻ってくる。


「ぐ、お」


消えていない。
悠二がそう認識するのに数秒。


「おおお」


そしてシュドナイが、自分の腕――悠二の中に潜り込んでいた部分が、根刮ぎ失われたのを認識するのに、更に数秒を要した。


「ぐ、があああああーーーっ!?」


濁った炎を弾けさせる傷口を掴み、シュドナイはこの世のものとは思えないような、絶叫を上げた。


「……か、『戒禁』!? 馬鹿な、俺を、この“千変”を退けるほどの『戒禁』だと!?」
「う、う――」


シュドナイの叫びに、悠二は大した反応を取らなかった。
取り込まれたシュドナイの腕の実在感、異物感、不快感。
それと自分の中とのズレに苦しんでいたからだ。


「一体、何を蔵している。貴様……いや、“封絶”の中で動く…………?」


何かに気付いたように、シュドナイの動きが止まる。
さっきまでの苦悶は消え、代わりに壮絶な歓喜が沸き上がる。


「まさか、貴様――“そうなのか”」
「う、あ――」
「やはり、そうか……。クク、まさか、これほど早く見つかるとは……ク、クク、クククク……」


見た者を凍りつかせるような笑みのまま、シュドナイは再び、悠二に手を伸ばす。


だが、


「ちょっと待ったーーーー!」


ちょうどそのタイミングで、シュドナイの顔面に、白い影が、凄まじい勢いで衝突した。


「がっ!?」


スコーン! といういい音がして、シュドナイはよろめく。
悠二の眼前には、真っ白なコウモリ。


「大丈夫!? 悠二くん!」
「キバーラ、何でここに……」
「悠二くんの気配と、“徒”の気配がかち合ってたから、急いで助けに来たのよ! シューちゃん、お願い!」


――キュルオオオッ!!
幼げな鳴き声と共に、御崎大橋の下の川から、赤いドラゴン――シュードランが飛び出してきた。


「キバット族にドラン族だと……!? ちぃっ、こんな時に!」


一先ずは、シュードランを始末するべく、紫の炎弾を撃つシュドナイ。
だが、小回りの聞くシュードランに、それは当たらない。


「さ、悠二くんは早く逃げなきゃ!」
「け、けど……」
「大丈夫よ、“千変”のお相手はもう来てるわ!」


キバーラが言い終わるか言い終わらないうちに、


「ドカー―ン!!」
「ぬっ!?」


上空のシュドナイを、炎の塊が横様に蹴っ飛ばした。


「うーん、ちょいとタイミングは遅れちゃったかしら?」
『が、戦期は熟して、程好い食い頃だぜ、ヒー、ハー!』


そこにはトーガの獣が、不敵な笑みで立っていた。
やや遅れて、イクサリオンに乗った名護も到着する。


「悠二君、無事だったか?」
「名護さん! 良かった、二人とも無事で……」
「ヒハハッ、色々紆余曲折はあったがな!」
「お黙り」
「あっ、そ、そうだ、『オルゴール』!! この上に!!」


悠二が指差す先、御崎大橋の主塔を、名護とマージョリーは振り仰ぐ。


「なるほど、よく見つけてくれたな。だが……」
「あれはチビジャリとキバに任せましょ。こっちはあのグニャグニャ野郎の邪魔をしないと」
「え? でもさっき……ううっ!!」


力の膨張を感じ、悠二がうめく。


「あいつがあの程度で死ぬようなら、誰も苦労しないっての」
「キバと嬢ちゃんに教えてやんな。白騎士の兄ちゃん、乗っかんな」
「ああ!!」


肩に名護が乗ったのを見て、トーガは真南川をすっ飛んでいく。
やがて、水中に浮かぶ影――海蛇のような姿のシュドナイが表れる。


「くっ、邪魔をするな、『弔詞の詠み手』!」
「なーに? つれないこと言ってくれるじゃない“千変”」
「そう言われると邪魔したくなるのが、世の常ってもんだぜい、ヒャーッハハハ!!」
「悠二君に手出しはさせん! この街にもだ!」


名護はイクサベルトを巻き、イクサナックルを手に押し当てる。


『レ・デ・ィ・ー』
「イクサ、爆現!!」
『フ・ィ・ス・ト・オ・ン』


アーマーの映像が重なり、頭部のクロスシールドが展開。
光子力を放出させ、名護は再びイクサへと変身する。


「その命、神に返しなさい!!」
「さあて、さっきは歌えなかったからね……。今度は聞かせたげるわよ、とびっきり酷いのをね!」
「ヒーッヒヒヒ!! いいねぇ、いいねぇ! 一丁、派手にブチかますとすっかぁ!!」


『弔詞の詠み手』マージョリー・ドー&『仮面ライダーイクサ』名護啓介vs“千変”シュドナイ。


リターンマッチ、スタート。


◆◆◆


「……来た!」
「シャナちゃ~ん!」


悠二とキバーラは、ほぼ同時に、シャナの姿を視認する。
二人は指(キバーラは翼)で、主塔の上を指す。宝具の位置を教えるためだ。


(――あの馬鹿!)


自分が狙われていることも知らないで!
シャナは呑気な態度に呆れ、だが同時に嬉しくもあった。


(やっぱり、一緒にいてくれた)


気持ちを弾ませ、更に速度を上げる。
だが、先を行く“愛染兄妹”までの距離は、まだ遠い。


「――さぁ――ぃきます、わよ――彼に、ごぁぃ拶を――!」


ティリエルが生み出した火の粉は、一瞬で炎弾まで膨らみ、悠二目掛けて飛んでいく。


「ちいっ!」


腕を振り、紅蓮の炎を発生させるが、力の消耗のせいか大分サイズが小さく、いくつかの炎弾を取り零してしまった。
直ぐ様滑空し、残りを防ぎにいくが、間に合うかどうかはギリギリだ。


――と、シャナの視界、御崎大橋の端から、轟音を響かせる紅のバイクが走ってくる。


シャナとは違い、陸路を追ってきたキバだ。


『キバ!』
「坂井悠二、キバーラ、上手く避けろ!」
『えっ?』


悠二とキバーラの声が重なった。
キバはブレーキをかけるどころか、更にアクセルを入れて突進してくる。


「うわぁ!」
「キャー!」


悠二とキバーラはほとんど転がるように、マシンキバーを回避。


「ハッ!」


マシンキバーをウィリー走行させ、反転。
車体のターンを利用し、“愛染兄妹”の炎弾を弾き返した。


「無事だったか」
「無事だったか、じゃないわよっ!!」


キバーラが頬を膨らませ、悠二も、


「危うく轢き殺されかけたじゃないか!」


いや、もう死んでいるけれど。


「悠二!」


追い付いたシャナが、呼びながら悠二の手を掴んだ。


「来て」
「――うん」


頷いて、悠二はシャナの手を、しっかりと握り返す。


紅蓮の軌跡を描きながら、
二人は主塔へと舞い上がっていく。


「キバーラ、お前はここにいろ」
「わかったわ」


言い残し、キバも柱を蹴り移りながら、シャナ達を追い掛ける。


「ぐえっ!」


主塔の屋上に悠二が乱暴に放り捨てられ、続いてキバとシャナが降り立つ。


屋上の中心部に、小箱に入った宝具――オルゴールがポツンと置かれていた。規則正しく、涼やかな音楽を奏でている。


「やっととまった! ねえ、はやくわたしなよ、ボクの『にえとののしゃな』!!」
「――さぁ……ぉ兄様――に、渡し、て――」


キバ達とは反対側に降り立った愛染兄妹は、相も変わらず、シャナの宝具を欲していた。


「な、な……!?」」


悠二が、顔半分の輪郭以外を保っていないティリエルを見て後ずさる。
片やシャナとキバは冷静に、状況を把握していく。


「――その『オルゴール』とやら、自在法を音色に変えて奏でているのか」
「ぁら――よく、気付き――ましたわね」
「ああ、音楽は好きなんでな」


素っ気ない口調でキバは答える。


「ボクらの『オルゴール』はすごいんだぞ! むずかしいじざいほーを、まとめてたくさんつかえるんだ!!」
「――ええ、その通りですわ、お兄様。複雑な『ピニオン』稼動のための自在式も、一度これに込めれば、あとは自動的に行ってくれる」


言いながら、ティリエルはまた新たに、自在式を打ち込んだ。


『オルゴール』の音色が、また変わる。


(力の消費が、更に加速した)


ティリエルの姿が、更に霞んでいく。
シャナは、彼女にしては珍しい、別れを惜しむような口調で言う。


「なんて、馬鹿なの」


ティリエルは笑みを崩すことなく、消滅に一抹の恐怖も抱かず、返す。


「うふふ――“ありがとう”――でも私は、私のお兄様以外から、賞賛を受けようとは思っていませんのよ――――いえ――そう、“誰からも”――」
「――貪り愛し、他に染まる。“愛染他”か。キミに相応しい名だよ、ティリエル」


キバはぽつりと呟く。


「ぇえ、そぅ――それが、私――ですわ」


当たり前のように答えたティリエル。


「……そうか」


キバにもはや、贈れる言葉は無かった。
口を閉ざし、シャナと並び立つ。


「行くぞ、『炎髪灼眼』」
「――大丈夫なの?」


シャナは短く問う。


――戦えるのか。裏打ちされた思いが、キバの頭に響いてくる。


「………」


キバは沈黙したまま、腕を空に翳す。
赤い魔皇力が雲を切り裂き、上空に紅の紋章を描いた。




――コウモリの如きそれは、キバの紋章。
キバを受け継ぐ者、人間とファンガイアを守る戦士の証。




「戦うさ」


今度は優しさではなく、弱さを仮面に封じ込め、キバは答える。


「何もかも、俺が決めて選んだ旅路だ。すべてを背負う覚悟は、もう出来ている」
「――そう」


『贄殿遮那』を構え直し、


「なら、いいわ」


再び満ちた二人分の戦意は、空気をピリピリと震わせる。
シャナは一度だけ、後ろの悠二に宣言した。


「大丈夫」
「うん」


ただそれだけのやり取り。


一緒にいるんだ。それだけを、シャナと悠二は感じる。


「さあ、参りましょう――お兄様――」
「うん、ティリエル! ボクの『にえとののしゃな』!!」


バックミュージックは、ソラトの我欲、ティリエルの献身。
『オルゴール』の、何処か悲し気な音色がそれらを彩り、決着の時は訪れた。




『炎髪灼眼の討ち手』シャナ&アームズモンスターズvs“愛染自”ソラト&“愛染他”ティリエル。
延長戦。
『炎髪灼眼の討ち手』シャナ&『仮面ライダーキバ』紅奏夜vs“愛染自”ソラト&“愛染他”ティリエル。


スタート。
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  1. 2012/03/30(金) 22:07:17|
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