紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第十話・トライアングル/つがいの愛染兄妹.後篇

「ど、どういうことよ!?」


その違和感に気が付いたマージョリーは、人目も憚らず叫ぶ。


「ど、どうしたんです、マージョリーさん?」
「姐さん?」
「あんたたち、今すぐ『玻璃壇』に向かいなさい」


その言葉が意味するところに気が付き、二人は飛び上がらんばかりに驚く。


「う、嘘でしょ!?」
「“徒”ですか!?」
「何だと!!」


恵に締め上げられていた名護もまた、事態への緊張を露にする。


「本当か、『弔詞の詠み手』」
「こんなつまらない嘘、つくわけないでしょうが!」
「で、でも姐さん。前に『これだけの騒動が起こったこの町には、もう“徒”は来ない』って……」
「私だって間違うときは間違うわよ! さあ、いいから早く!」


二人を怒鳴り付けるマージョリーの傍らで、恵だけが状況を把握出来ずにいた。


「名護くん、“徒”って奏夜くんの言ってた……」
「ああ、新しい敵だ。――『弔詞の詠み手』。佐藤くんと田中くんが行く場所は、安全な場所なのか?」
「? まぁ、他にいるよりかはね」
「恵もそこに避難させてくれないか。彼女は事情を知っている」
「……いいわ。邪魔しないならね」


名護は頷き、恵に緑と黄色のラインが入ったカードを手渡す。
奏夜から預かっていた、二枚目のゼロノスカードだ。


「恵。これを持って行け。“封絶”の中でも動けるはずだ」


ちなみに由利は嶋やマスターと一緒に、御崎市外のテーマパークへ遊びにいっている筈なので、心配はいらない。


「名護くんはどうするの?」
「無論、戦いだ。私はイクサの資格者だからな」
「……うん。わかったわ」


恵は多くを問うことなく頷く。
――私がいても、名護くんの足手まといになるだけ。それは即座に理解していた。恵の心中を察してか、名護は笑いながら彼女の肩を叩く。


「また、時間を作るよ。今度は由利と一緒に出掛けよう」
「――絶対よ。忘れたらひどいんだから」
「ああ、楽しみにしていなさい」


恵が笑い返したのを見て、名護は佐藤と田中に言う。


「恵を頼む」
『は、はい!』


イマイチ状況は飲み込めなかったが、とにかく「二人は事情を知っている」と佐藤と田中は理解した。


「ほら、さっさと行きなさい。グズは嫌いよ」
「りょ、了解! 頑張ってくださいね!」
「それじゃ行きます、お気をつけて、姐さん!」


二人が駆け出し、恵もそれを追っていく。


(……頑張ってください? お気をつけて?)


マージョリーが愉快さに思わず表情を崩したのを、名護は見逃さなかった。


「いい協力者だな」
「ただの子分よ」


慌てて表情を引き締める。



「さて、と。今の私はどこまでやれるのかしら」


以前奏夜に言った戦う理由、それはまだ取り戻せていなかった。


「何を悩んでいるのかは知らないが、戦いに雑念は枷だ。気を引き締めなさい」
「ヒッヒ、キバの兄ちゃんに続いての叱責だあな」
「お黙り」


マルコシアスを軽く叩いて、存在の乱れを探り当てる。


「近くのデパートね。火の手が上がってるみたいだし、ナビが無くてもいけるでしょ」
「わかった。向こうで合流するとしよう。恐らく君の方が早く着く」
「ふん、そっちが来るころには終わってるわ」


先行くわよ、と告げ、グリモアに乗って飛び去っていく。高飛車な物言いに名護は溜め息をついた。


「さて、先ずはイクサリオンを取りに行った方がいいな」


◆◆◆


「!!」


悠二と奏夜は同時に、その違和感を感じ取る。


(自在法!?)


山吹色の霧が、周囲を覆っていく。これが意味するのは、戦い。
…………。


(ヤバい!)


そう思ったのは奏夜だった。
隣で池が停止したのを見たところ、これは“封絶”と似たタイプの自在法。
つまり――“悠二からすれば”一般人である奏夜も、停止しなければならないわけで。


「先生、池!!」
「………」

つ、つらい! 地味につらい!
某忍者マンガで「人間は動かないことが一番難しい」とか言ってたけど確かにそうだ!
すいません今までの戦いで封絶の中にいた人!
ずっと「気楽そうでいいよな~」とか思ってましたけど、これかなり苦行です!


そうこうしているうちに、シャナまでも屋上まで駆け上がってきた。
更にクリア難易度アップ。


「シャナ、と、“徒”は裏庭かい!?」
「えっ?」
「さっき、負けないとか怒鳴ってただろ?」
「あ――」


しまった。という風な顔をするシャナ。
さっきの吉田への宣言が聞こえていたことへの焦りと、それを悠二が誤解して捉えている安堵が半々だ。


「いいの」
「え、だって」
「いいの! ……そっちじゃない。“徒”じゃないの、大丈夫」
「……? わ、わかったよ」


曖昧に納得する二人の前に、「お~い」という気の抜ける声が割り込んでくる。


「悠二~!」
「シャナちゃ~ん!」
「キバーラ!」
「キバット!」


シャナと悠二は、二匹のコウモリを出迎える。


「よかったぜい、近くに二人ともいて」
「町が凄いことになっちゃってるわよ」


確かにキバーラの言う通り、ここから見える、山吹色の霧が御崎市全てを覆う光景は、中々に不気味だった。


「じゃあ、この気持ち悪い封絶みたいな感じは……」
「近付いてくる方の“徒”の仕業ね」
「それだけじゃない。市街の辺りにも凄く大きな奴がいて……戦ってる」
「相手は『弔詞の詠み手』と……名護も一緒か」
「名護さんも?」


悠二がキバットに聞き返す。


「ああ。だか敵もバカ強いぜ。近付いてくる方も、名護達が戦ってるほどじゃあないが、かなり強い」
「相手は最低二人……私は近付いてくる方を片付ければいいわけね。アラストール」
「うむ。戦場の環境を操る自在師のようだ。敵本体だけでなく、周囲にも気を配るのだぞ」
「うん」


その後の話し合いで、シャナが“徒”の相手、悠二はこの自在法の核となる宝具探し(最初シャナは渋っていたが)、ということになった。


「俺様達はキバを呼んでくるぜ。……幸い近くにいるみたいだしな」


キバットは止まったフリをしている奏夜を見て「お前も大変だな」みたいな笑みを浮かべた。
ほっとけや、と奏夜が心中で毒づいたのは言うまでもない。


「坂井悠二、断っておくが、お前の行為は危険も付きまとう。この自在法がどのような力を持っているか、それも現状では判断できぬ。あるいは“燐子”の現れる可能性さえある」
「……僕が言い出したことだ。その責任もとるよ」
「うむ」
「きゃ~、悠二くんカッコいい~♪」


悠二の返答に、アラストールは珍しく満足げな声で答えた。
キバーラのはやし立てには苦笑いするばかりだが。


「じゃあ、もう行くわ。出来る限り離れて戦うから、その間に学校から出て」
「うん」
「頑張ってね、シャナちゃん!」
「ありがと」


キバーラに笑いかけ、飛び出しかけたシャナを悠二が「シャナ!」と呼び止める。


「なに」
「学校……皆を、守ってくれるかい?」


シャナは数秒間を置いて、


「できる範囲での最善を尽くすことだけは、約束するわ」
「――ありがとう。僕もやるよ」
「分かってるわよ」


ふと、悠二は思い立ったことを言った。


「なんか役に立ったら、ご褒美でもくれよな」
「――っ」


悠二のそんな言葉に、シャナの頭にここしばらくの出来事がフラッシュバックした。


「ば、馬鹿!!」
「っ!?」


顔を真っ赤にしたシャナが唐突に叫ぶ。


「ば、馬鹿はないだろ」
「うるさいうるさいうるさい! やってもないことで、見返りを期待するんじゃないわよ!」
「分かった分かった! そんなに怒らなくても……」
「いや~、青春だ(ね)」


そんな二人を見ながら、キバットとキバーラはニヤニヤ笑いを押さえられなかった。
ようやく気持ちを落ち着かせて、


「じゃあ、あとで」
「うん」

それを最後に、シャナは戦場に向けて跳んでいく。
シャナの後ろ姿を見送って、悠二は「よし」と意気込む。


「僕も行くよ」
「ああ、頑張れよ」
「シャナちゃんに良いとこ見せなきゃだしね♪」
「あはは。うん、やるだけやってみるよ。キバにもよろしく」



悠二が階段を降りていくのを確認して、


「奏夜、もう大丈夫だぜ」
「……っぷはぁ!」


奏夜は大袈裟に息を吐く。
が、二十分はフリーズしていたのだから、それも宜なるかな、という話だ。


「あーぶーねー!」
「感謝しろよ。トークでシャナちゃんと悠二の気を逸らしてやったんだからな」
「ああ、後で飴ちゃんくれてやるよ。――ちっ、身体固まっちまった。多分俺、今なら仙術チャクラ練れるぞ」
「ファンガイアの魔術に蛙組手は無かったと思うけど」


キバーラが冷たく突っ込む。


「で、どうすんでぇ。シャナちゃんの方を助けにいくのか? それとも名護と『弔詞の詠み手』の方か?」
「いや、俺の相手は別だな」


奏夜が「聞こえないか?」と言うと、キバットとキバーラも気が付く。


―――~~~♪


警告音。
ファンガイア出現を表す、ブラッディローズの音色だ。


「な? 街全体が封絶に覆われている。これに乗じて動くファンガイアがいても不思議じゃない。そっちを先に終わらせよう」
「けどよぉ、今回の相手は複数だぜ? シャナちゃん達だけで足りるのかよ」
「そっちも心配いらねぇさ。キバーラ、今すぐキャッスルドランに向かってくれ」
「えっ、何でよ?」


首を傾げるキバーラに、奏夜はニヤリと口の端を吊り上げた。


「ゲームばっかりで運動不足なあいつらにも、活躍の場をやるんだよ」


◆◆◆

場所と時間は移って、とある広い大通り。
山吹色の爆炎を挨拶に、マージョリーの前に現れたのは、三人の人影だった。
紅世の徒“愛染兄妹”――ソラトとティリエル。
その護衛である紅世の王“千変”シュドナイ。


互いの挨拶もそこそこに、両陣営は三対一の闘いを始めようとしていた。


「さあ、およろしいわよ、お兄様」
「うん!」


最愛の妹、“愛染他”ティリエルの許可で、鎧と大剣『吸血鬼』を携えた“愛染自”ソラトは、獲物へと飛び掛かる。

「っ舐めるな!」


大剣を避け、群青の炎を走らせる。
しかし、ソラトの剣閃はそれを瞬時にかき消す。


「舐めているのはどっちかな」


シュドナイの声に次いで、再び大剣の殺気がマージョリーを襲おうとする。
だが次の瞬間、ソラトの身体は吹っ飛ばされていた。

「うわぁっ!?」
「お兄様!?」


ソラトの叫びとティリエルの悲鳴が重なった。
残るマージョリーとシュドナイは、ソラトを吹き飛ばした衝撃波の出所を目で追う。


「危なかったな」
「はっ、あの程度、ちゃんと防げたわよ」


マージョリーの後方には、イクサナックルを構えた名護が立っていた。


「――人間だと?」


シュドナイは少なからず驚きを示す。


「ミステス、では無いな。かといって同業者でもない――貴様、何者だ」
「何者でも構わないわ!」


ティリエルが怒りを露にする。


「ゴミ虫風情が、お兄様を傷つけたことを後悔させてあげますわ!」
「ふん、ゴミ虫とは随分だな。正義の味方と呼びなさい」


名護はイクサベルトを巻き、イクサナックルを掌に押し当てる。


『レ・ディ・ー』
「変身!」
『フ・ィ・ス・ト・オ・ン』


真横に構えたイクサナックルをベルトにジョイント。
圧縮されていたアーマーの映像が名護に重なり、クロスシールドが展開。
仮面ライダーイクサへと姿を変える。


「その命、神に返しなさい!」


名乗りを挙げるイクサ。三人という数に臆ないのは、歴戦の経験の賜物だった。


「姿が変わっただと?」
「……あなた、一体何なの」
「誰でもない。ただの人間だ。――行くぞッ!」


イクサカリバーを構え、トリガーを引く。
銃口が火を吹き、銀の弾丸が躍り出る。


「っせい!!」


マージョリーもまた、群青の炎弾を放つ。


「フンッ!」


シュドナイは腕を虎の頭部に変化させ、炎弾と弾丸を全て薙ぎ払った。
だが、イクサの弾丸の幾つかは、シュドナイの腕に食い込んでいる。


「ただの弾丸ではないな」
「対ファンガイア用の特注品だ。貴様達“徒”も無事では済むまい」


言いつつ、イクサは銃撃を続ける。


「ファンガイアだと? ――成る程、そういうことか」
「シュドナイ、どういうこと?」


攻撃を防ぎながら、ティリエルが尋ねる。


「少し前、噂で人間とファンガイアが和解したという話を聞いたことがないか?」
「ファンガイア――ああ、あの節操なく存分の力を喰うケダモノ共」
「そうだ。恐らくあの騎士は、ファンガイアに相対する人間の一派という所だろう。
――抜け目がないな、『弔詞の詠み手』。協力する人間を選ぶ時も、能力の高さを買うわけか」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。そいつとは獲物が同じなだけよッ!」


イクサとマージョリーの嵐のごとき攻撃。
だが、決定打にはならず、闘いは平行線を辿っていた。
と突然、後ろに下がるソラトが、


「ちがうよ! こいつらじゃない、こいつら、持ってないよ!」
「なんですって、お兄様?」


兄の緊張感のない一声に、ティリエルが目を剥く。


「持っていない? どういうことだ」
「あいつらの狙いは、炎髪の嬢ちゃんが持ってる『贄殿遮那』って刀なんだよ」


イクサの疑問に、マルコシアスが小声で答える。


「刀だと?」
「ああ。“天目一個”っつー化け物ミステスが持ってた刀でな。
こいつらはそこの坊っちゃんの我が儘で、その刀をいただきに来たってわけさ」
「――そんなことのために、これだけのことを」
「都合なんてコロコロ変わるわよ。あんた達人間と同じ」


何を今さらという風に、マージョリーが鼻を鳴らす。


「まぁ、なんて無駄骨でしょう。ご挨拶と思ったら人違いだったなんて……」


ティリエルは肩を落とした。


「今ので本命にも気付かれたでしょうし、最悪、威力圏内から逃げられてしまうわね……シュドナイ、この方達を足止めしておいて。『オルゴール』が起動したら、改めて指示を出すわ」
「わかった」


シュドナイの同意を聞き、ティリエルは自分とソラトの回りに、山吹色の木の葉を嵐の如く纏い、その姿を消した。


「あんなのが今回の依頼人とは苦労するわね、“千変”。そろそろ仕事から解放されてみる?」
「君こそ、不調を押して励むほどの仕事でもなかろう。永の休暇でも取ったらどうだ? そこの白騎士も、人間なら尚更厳しい仕事だろう」
「フン、生憎と苦労に見合うだけの報酬は貰っている。休暇ならこれが終わった後、家族とじっくり取らせてもらうさ。イクサの力を――人間の力をなめるなよ。“紅世の王”」
「――ックク、面白い男だな。いいだろう、人間の力とやら、拝見させてもらおうか」


三人は虎の腕、群青の炎、イクサカリバーをそれぞれ構える。混じり合う闘志が臨界点に達した時、沈黙した大通りを轟音が支配した。


『弔詞の詠み手』マージョリー・ドー&『仮面ライダーイクサ』名護啓介vs“千変”シュドナイ。


スタート。


◆◆◆

「っ!」


一方その頃、ブラッディローズの音色に導かれるままにマシンキバーを走らせていた奏夜。
突如彼の視界を、紫色の光が覆った。


(攻撃か!)


マシンキバーを横向きに急停車させ、光弾の余波を最低限に抑える。

「ようやくお出ましか。キバ」


煙が霞んでいき、奏夜は襲撃者の姿を捉えた。


「……!」


しかし、そこにいたのは奏夜にとって、意外な人物だった。


「久しいな、貴様に滅せられて以来か」
「お前……、確か兄さんの会社にいた」


スーツに身を包んだ初老の男性――黒沢は皺の刻まれた顔を歪める。
黒沢――ファンガイアの中でも地位は高く、かつては奏夜の兄、太牙の世話役を勤め、彼が成長してからは、彼の会社『D&P』で側近も兼任していた人物だ。


「何故、お前が? お前は俺が確かに倒したはずだ。それも再生体でもなく、意思を持った個体として復活するとは――一体、何のトリックを使いやがった」


「ふん、出来損ないの貴様に、逐一説明してやる謂れはない。話は聞いているぞ。人間とファンガイアの共存を果たしたとな。――貴様といい、キングの息子といい、ファンガイアの面汚しめが」


黒沢は吐き捨てるように言う。



奏夜はその言い草に、不快感を露にした。


「おい頑固頭。俺の前で兄さんを馬鹿にすることは許さないぜ。――兄さんは、誰よりも強く、優しさを持った真のキングだ」
「キングに優しさなど必要ない! 必要のは他者を圧倒的なまでに屈伏させる力だ!」
「……ああ、そうかい」


奏夜はマシンキバーから降り、黒沢と対峙する。


「なら試してみるか? お前の力とやらで、ファンガイアの面汚しに勝てるかどうか」
「以前のようにはいかんぞ。この私の手で貴様に引導を渡してくれる」


言って、黒沢の姿はヘラジカをモチーフにした異形――ムースファンガイアへと変貌していった。


「キバット、来い! こいつをブチのめして、規制ギリギリの辱しめを受けさせてやる!」
「おおともよ! 水車に磔にして大回転も追加しとけ! ――ガブッ!」


キバットが奏夜の左手に噛み付き、アクティブフォースを注入。彼の顔には、ステンドグラスの模様が浮かび上がる。


「変身!」


巻かれたキバットベルトに、キバットを逆さまに装着。
光の鎖が弾け飛び、コウモリを模した仮面、キバ・ペルソナが輝く。
奏夜の姿は仮面ライダーキバへと変身を遂げた。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈め!」


挑発するかのように指を突き出し、反逆者への宣告を下す。


「切り刻んでくれる……!」


ムースファンガイアが召喚した剣を手先で研ぐ。


「先に俺が蹴り飛ばしてやるよ!」
「そのとーり!」


キバが手を大きく広げる独特の構えを取った。
刹那、両者の目に火花が散る。


『はぁッ!』


次の瞬間には、キバの拳とムースファンガイアの剣が交錯していた。


『仮面ライダーキバ』紅奏夜vsムースファンガイア。


スタート。



◆◆◆

現在のところ、御崎市で行われている三つ目の戦い。
シュドナイを残して戦線を離脱したソラトとティリエルは、存在の力を追ってきた、自分達の真の標的――大太刀『贄殿遮那』を持つフレイムヘイズ、シャナと対峙していた。


ソラトの斬撃、ティリエルの操る蔓を、上手く路面を蹴ることで回避し、信号機の上に着地する。


「戦力を見誤ったか」
「やるわね」
「ふふ、なにをしても無駄ですわよ。この『揺りかごの園(クレイドル・ガーデン)』の中での私達は無敵」
ティリエルが指を一撫ですると、何百もの山吹色の蔓が、通りを津波のように飲み込んでいく。


「さあ、私は手出しいたしませんわよ。せいぜいの奮闘をなさって」
「ちっ!」
「『にえとののしゃな』!」


蔓に乗り、跳躍してきたソラトが大剣『吸血鬼』を振り下ろす。
があん! という重厚な音と共に、『贄殿遮那』と『吸血鬼』がぶつかった。


「っつ!」


僅かに力負けし、シャナが怯む。
無論、ソラトはそれを見逃さない。


「――は!」


ソラトが存在の力を注ぎ込むと、『吸血鬼』の刀身で揺らめく波紋が、その速さを増した。


「ぐっ!?」


突如、全くノーマークだった方向から来た斬撃が、シャナの右首筋を浅く切り裂いた。


「すごいだろ、ボクの『ぶるーとざおがー』!! “そんざいのちから”をこめれば、けんにさわってるあいてが、きずをおうんだ。――こんなふうに!」


それこそ子供のような無邪気さで、ソラトは狂気を振り翳す。


「あうっ!」


ソラトの絶妙な技巧から刀を離すことも出来ず、シャナの肌に更なる傷がつけられていく。
ぎりっ、と歯噛みすることで痛みに耐え、シャナはソラトへ鮮血が滲む足を突き出そうとした――時だった。




「――ふんっ!」




大きな拳が、ソラトの身体目掛けて強烈な一撃を叩き込んだ。


「っぐぅ!?」


奇声を漏らし、ソラトは後方へ仰け反る。


「!! ――っだぁ!」


機を逃さず、シャナはソラト目掛けて鋭い蹴りを炸裂させた。バランスを崩していたソラトは、数メートル先まで路面を滑る。


息を切らして、シャナは自分を助けた拳の持ち主を見る。


「だい、じょぶ、か?」
「お前……!」


そこにいたのは、タキシードに身を包み、髪をオールバックにした大柄な青年――力だった。


(どうして? 封絶は張られてるのに)


シャナの疑問が口に出かけた矢先、新たに二人の影が彼女の隣に立つ。


「この姿で会うのは初めてだな、『炎髪灼眼の討ち手』。中々、面白い見せ物だった」
「お姉ちゃん、久しぶり~♪」


タキシードを着崩した鋭い風貌の青年――次狼が、シャナに乾いた拍手を送る。
セーラー服に身を包む幼さの残る少年――ラモンは、この場に似つかわしくない明るさを振る舞った。



「ふん、何やら激しく盛り上がってるようだな。どれ、俺達も混ぜさせて貰おうか」
「お兄ちゃんに頼まれちゃったしね。焼き芋のおつり分は働くよ♪」
「おお、あばれ」
「……お前ら、何? フレイムヘイズなの?」


シャナは未だに理解が追い付かない様子だった。
彼女はラモン、力との面識はあるが、彼らの素性は焼き芋屋としか知らない。
いきなり現れて、手を貸すと言われても、反応に困るだけだ。


「――貴様ら、もしやキバの従者か?」


アラストールの問いに、次狼、ラモン、力は頷く。


「アラストール、こいつら何なの?」
「シャナ、此奴らはキバの使役していた武器だ」
「えっ?」


理解出来ず、シャナは首を傾げる。


「なんのこと」


これには次狼も、不満そうに眉を寄せる。


「おい、俺を真南川に道連れにしておいてそれはないだろう」
「真南川? ――あっ!」


思い出した。
フリアグネとの戦いの時、キバが貸し与えてくれた剣――ガルルセイバー。
シャナはそれを持ったままフリアグネに撃たれ、真南川に落下したことがあった。


「あの時の剣!」
「やっと思い出したか。まったく、あの後俺は大変だったってのに」
「次狼ったら油断して風邪ひいちゃったもんねー♪」
「うるさいぞラモン。――とにかく、キバの命は『炎髪灼眼の討ち手を可能な限り助けろ』だったんでな。悪いが、勝手に助けさせて貰う」
「いや、助力感謝しよう」
「でも、アラストール」


信用……出来るのだろうか。それ以前に、こいつらは自分達にとって、足枷にならないのだろうか。


「キバの助力なら是非はない。武器化してあの力なら、我等にとっても不利益はなかろう」


シャナは不安を覚えながらも、信頼する契約主の言葉に従う。


「わかった。けど私は、足を引っ張る奴は助けないわよ」
「ふん、そういう減らず口は俺の十分の一でも生きてから言うんだな」


シャナの突っぱねた物言いを軽くあしらって、次狼、ラモン、力が並び立つ。


「ティリエル、またへんなやつがきたよ! きっちゃってもいいかな?」
「ええ、勿論ですわお兄様。……けど、本当に余計な連中が多いわね。この街は」


新たなイレギュラーに、ティリエルは歯噛みする。


「ファンガイア風情が……! 私達の、お兄様の邪魔をしないで下さる?」


ティリエルの言葉に、今度は次狼のみならず、ラモンと力も表情を曇らせる。


「ファンガイア? 検討違いも甚だしいな。“愛染兄妹”」
「そーそー。僕達をファンガイアと一緒にしないでよね」
「おれたちは、ほこりたかき――」



――王の従者は、自らのプライドを乗せ、雄叫びを挙げる。


「ウルフェンだ!」
「マーマンだ!」
「フランケンだ!」


獣の咆哮と共に、次狼を蒼、ラモンを緑、力を紫のオーラが包んでいく。
異形の幻影が浮かび上がり、三人の姿がオーラと重なる。


光が消えると、そこに“人間”としての彼らはいなかった。


ウルフェン族の末裔――俊足を誇る蒼き狼、ガルル。
マーマン族の末裔――水を支配する半魚人、バッシャー。
フランケン族の末裔――剛腕の人造人間、ドッガ。


キバの臣下たる彼ら、その真の姿だった。


「ウルフェン、マーマン、フランケン……まさか、13魔族の生き残り!?」


ティリエルは語り聞いた記憶を掘り起こし、驚愕する。
ウルフェン、マーマン、フランケン。
どれも全て、かつて栄えた滅ぼされた希少種族。
ファンガイアの手勢に屈し、滅亡こそしたものの、元来はファンガイアに勝るとも劣らぬ怪物達だ。


「……本ッ当に、どうなっているのかしらね。この街は」


計算外にも程がある。一体何人、人外の存在を抱え込んでいるのか。
――だが、


(『揺りかごの園』がある以上、まだ戦うには十分だわ)


ティリエルは優位を崩さず、ソラトに寄り添った。


「よーし、久々に暴れるぞぉ!」


バッシャーがはしゃぐように腕をあげ、


「ぶっ、つぶ、す」


ドッガが拳を打ち鳴らし、


「行くぞ、『炎髪灼眼』……!」


ガルルが爪を構え、鋭い歯を光らせる。


「――ええ!」


彼らの変化への余韻もそこそこに、シャナの瞳にも再び力が灯った。
――六人は標的を目に捉え、戦意の赴くままに飛び掛かっていく。


『炎髪灼眼の討ち手』シャナ&アームズモンスターズvs“愛染自”ソラト&“愛染他”ティリエル。

スタート。




――闘いのトライアングルから燃え上がる戦火は、優しき日常を全て呑み込む。
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  1. 2012/03/26(月) 10:34:48|
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