紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第八話・不協和音/紅蓮の翼とデュアルドラゴン.後篇

「つまり、あの怪物はファンガイアの死体が集まって出来たモノってことね?」
「ああ。上位ファンガイアが使える魔術で、ファンガイアのライフエナジーを束ね、オーラ集合体に変えるんだ」
「あれが、ファンガイア……」


呆然と呟く悠二に、キバは、彼がファンガイアを見るのは、自分を除けばこれが初めてだというのを思い出す。


「もっとも、アレは複数のライフエナジーを使う特殊なタイプだ。作り手の実力はかなりのものだな」
『ふむ。今も何処かで、サバトを操っているファンガイアがいるということか。だが何のために?』
「さあな。俺が聞きたいくらいだ」


アラストールの質問には投げやりに答えつつも、キバには何となく目星がついていた。サバトの創造主は、さっきの再生体を作り出したヤツと同じ。
目的は分からないが、これだけの実力者で、自分と敵対する相手となれば、容疑者もおのずと限られる。


(あの竜め……、何を考えてやがる)


キバが心中悪態をついたところで、ようやくラミーがこちらのビルに降りてきた。
イクサも一緒にいる。


「無事で何より」
「お陰様でな。しかし――いかんな。深手を負ったフレイムヘイズが暴走している。このままでは封絶が解けるぞ」
「何?」


注意を払ってみれば、確かに封絶の構成が緩んで来ている。


「も、も、もし解けたら?」
「因果が外と繋がって流れ出してしまったら、もう修復は不可能だ。奴の火勢に当てられた中の人間は皆、死ぬだろう」


悠二の質問に淡々と答えるラミー。
シャナ、悠二、キバ、イクサは、事態が急転直下の勢いで進んでいることを再認識した。


「話して分からない相手には、とりあえずぶん殴って言うこときかす。さっきもそうだったし、今もそう。やる事は同じ」


シャナの迷いの無さに悠二は、余裕さえも含みながら言う。


「フレイムヘイズとして?」
「そう、フレイムヘイズとして」


シャナが強く笑う。
キバもまた、その様子に仮面の下で微笑んで、隣に立つイクサを見る。


「じゃ、俺達はサバトの方をどうにかしましょうか」
「ああ。あっちは我々の専門だ」


イクサの同意の声。
ずっと他に気が散っていた悠二は、ようやく見覚えのある姿を視認し、目を丸くした。


「あっ、な、名護さん!?」


シャナが不思議そうに悠二を見て、キバは首を傾げる。
イクサもまた、闘いの中では認識出来なかった悠二を見て、驚きを隠せないらしかった。


「……そうか。噂に聞いた“ミステス”というのは、君だったのか。成る程、君も私と同じ側の人間だったわけだ」
「名護さんこそ、キバの言ってた仲間って、名護さんのことだったんですね」
「知り合いだったんですか、名護さん?」
「ああ、少し縁が合ってね。――まぁ。積もる話は、この後でじっくりしよう。今は『弔詞の詠み手』とサバトだ」


二人はシャナと悠二を下がらせ、ビルの端に立つ。
目標は、暴れ回るサバト。


「あの、どうするつもりなんですか?」


悠二は疑問を感じずにはいられなかった。


「いくらなんでも、あんな大きいのを倒すなんて……」


口には出さなかったが、シャナも同じことを考えていた。
しかし、キバとイクサは、


「まぁ、見ていろ」
「大丈夫だ、見ていなさい」


――シャナと悠二の疑問は直ぐに吹き飛ぶことになる。


◆◆◆


「名護さん、“アレ”は今でも使えますよね?」
「だが、ここは“封絶”の中だぞ? カードの効果はあくまで私のみで、“アレ”には適応されないだろう」
「大丈夫です。“封絶”の構成が緩くなってますから、“アレ”も呼べるし、この中でも動きます」


話が纏まったのか、キバとイクサはそれぞれ、オレンジ色と白色のフエッスルを取り出した。


「よっしゃあ、奥の手だな! キバッちゃうぜぇ~~!!」


シャナ達が見守る中、キバットが笛を吹き鳴らし、イクサベルトが無機質なコールを発する。


『キャッスルドラン!!』
『パ・ワ・ー・ド・イ・ク・サー』


何度か見た、あの笛のような宝具。
また狼の剣のような武器を呼び出す気なのだろうか。
しかし、待てども彫像が飛んでくる気配はなく、イクサの方もそれは同じだった。




――ギャオォォォォ!!




「うわっ!!」


静寂を破ったのは、何か生き物の鳴き声。
あの黄金の鳥か、と思いきや、キバはそのままだ。
その間も、声は鳴り止むことなく響き続ける。


やがて、ようやくシャナと悠二は景色の変化に気が付く。


御崎市には珍しい、高層ビル。
――その外壁がまるでカーテンのようにクルクル巻かれていくのを。


「―――っ!?」
「えっ、えぇぇぇぇぇーーっ!?」


悠二は声を上げ、シャナも悠二程の反応はないものの、目を見開いて、常識外れな光景を懸命に処理していた。


――中から現れたのは、紫色の巨大生物。
胴体部分はビルのままで、そこから頭部、足、翼が飛び出している奇妙なドラゴン。
キバの居城にして、ファンガイアの城塞たるドラン族――『キャッスルドラン』だった。


――ギャオォォォォ!!


達磨落としの如く、ドランの上層部分は下に落ち、キャッスルドランはこちらに向かってくる。


――それに呼応するかの如く、今度は機械独特のエンジン音が空気を震わせた。
キバ達のいるビルの下、“封絶”の影響で止まった車を掻き分け、真っ白なマシンが走ってくる。
マシンは壁を垂直に登り、あっという間に悠二達のいる屋上の空きスペースに、砂塵を巻き上げつつ到着した。


イメージとしては、ショベルカーが一番近いかもしれない。
メカニカルなデザインに、アームの先にある頭部と、青いポットを搭載した尻尾部分は何処か恐竜を彷彿とさせる。
対巨大ファンガイア用に開発された、イクサ専用ドラゴン型巨大重機『パワードイクサー』だ。


目を疑う情景に、シャナと悠二は言葉を無くし、アラストールとラミーは感嘆の声を上げる。


『見事なものだ。人間の技術の結晶もさることながら、稀少種グレートワイバーンも保有しているとは』
「御目が高い。天壌の劫火”」


キバはそう言って、キャッスルドランの背に飛び乗り、イクサはパワードイクサーのコックピットに乗り込み、起動キーとなるイクサナックルをセットした。


「こっちはいつでもいけるぞ、お二人さん」


キバの呼び掛けで、二人は我に変える。
悠二が敢えて、シャナに訊いた。


「足手まといはいらない?」
「いる」


シャナも始めから答えは決まっていたようだった。
後はシャナの飛翔を待つだけ……なのだが、彼女は中々動かない。
キバ、イクサ、悠二の三人分の怪訝そうな視線が、シャナに突き刺さる。


「? ……どうしたんだ?」
「『贄殿遮那』だ」
「へ? ……ああ」


悠二がそう言うのと同じく、キバも納得した。


(翼があるから背中には掴まれないし、片手を使うと太刀が振れないからなぁ)


ただ、そのためには、シャナの身体に、悠二が真っ正面から密着しなくてはならないわけで。
仮面の下でニヤニヤ笑いを噛み殺し、キバは成り行きを見守る。


「えっと、つかまるけど、いいかな?」
「……」


シャナは不承不承といった態度で、しかし赤い顔のまま、悠二の腕を引っ張った。


『あ』


キバとイクサが間の抜けた様子で、声を重ねた。


状況説明。


良識的に考えて、この場合悠二がつかまるべきは、シャナの腹部辺り。
だが、腕を引っ張った勢いのせいで、悠二のつかまった場所は、腹部よりもやや上になった。――つまり。


「ひゃわっ!? ちょっ、どこに顔押し付けてんのよ! も、もっと下、お腹に」
「じ…自分で引っ張ったんじゃないか! それにさっきは何も言わなかっただろ!?」


顔を押すシャナに対し、更に地雷を踏む悠二。


「さっき!? さっきもこんな事してたって言うの!?」
「痛い、痛い! そんなの覚えてないって!! それどころじゃなかったし!」
「いっ…、言い訳しないッ!!」
『懲罰は後だ、シャナ』


アラストールの仲裁で、シャナはむっとしながらも、黙って太刀を握る。


『ふっ……くくっ』
「やれやれ…君達の歳で、あまり不純な交友をするのは止めなさい」


キバとラミーが肩を震わせて笑いを堪え、イクサが呆れ気味に真面目な意見を言う。


『そ、そんなことしてない(ません)!』


シャナと悠二が抗議して、一先ず場は締まった。


「……覚えてなさいよ」
「忘れて欲しいんじゃっわっ!?」


悠二が言い終わるか言い終わらない内に、シャナは急発進した。


「大丈夫なのか? あれで」
「やる時にはやるタイプの奴らですんで」


イクサに軽く答え、キバはキャッスルドランに飛び乗る。


――ギャオォォォ!


キャッスルドランが一鳴きし、パワードイクサーのアーム部分を噛む。
そのまま、天守閣たるマスターハウスの接合部、ドランマウントにジョイントする。


「じゃ、行きますよ!」
「ああ!!」


キャッスルドランが羽を羽ばたかせ、サバトに飛翔していった。


◆◆◆


「来た!」


こちらに気が付いた群青の狼とサバトが、炎の豪雨と、魔皇力の光線が飛び出してくる。


「出来る限り援護するが、期待はするな。予定通り、お前らは狼。俺達はサバトだ」
「わかってる!」


それを最後に、シャナ、キャッスルドランは豪雨と光線の空域に飛び込んでいく。


――ギャォオオオ!


キャッスルドランのサイドに備え付けられたマジックミサイルが、迎え撃つ。
だが、直ぐに弾幕を通り抜けた数撃が現れる。


「任せなさい!」


イクサがコックピットのレバーを操作し、連動してパワードイクサーのアームが、後ろに稼働。
尾にあたる部分に積まれていた青い爆弾、イクサポッドを挟み、アームの反動を利用して投擲する。


爆炎と共に、残りの炎弾と光線は相殺された。


「行け!」
「うん!」


キバ達の作り出した機を逃さず、シャナは紅蓮の軌跡を描いて群青の狼へ向かっていく。
それを見届けて、キバ達はサバトへ方向転換した。


――ガァァァァ!


サバトはシャナと悠二を標的から外し、キャッスルドランへと光弾を発射していく。
片や狼は、シャナと悠二にホーミング式の炎弾を繰り出す。


援護をしたいところだが、今はサバトが先だ。


「狼のが無くなった分、弾幕が薄くなってるぜ!」


キバの指示に従い、マジックミサイルを発射していくドラン。
イクサもイクサポッドを次々と投擲し、サバトの身体は爆炎へと包まれていく。
二体分の火力には敵わず、相殺仕切れなかった攻撃はサバトにヒットし、ステンドグラスが覆う身体にはヒビが入っていく。


――グ、ゥガァッ!


巨体をよろめかせ、サバトが特攻をかけてきた。
大きな腕が、キャッスルドランに向かって打ち出される。


「フン、接近戦ならどうにかなると思ったか!」


いち早くその攻撃を見切っていたイクサは、パワードイクサーのアームを左右に動かし、パンチの軌道を反らす。
力のベクトルがいなされ、サバトはバランスを崩す。


「接近戦の手本を見せてやれ! キャッスルドラン!!」


キバットの煽りに、キャッスルドランはカウンター気味の体当たりを仕掛ける。


――グゴッ!!


ドランの突進に、サバトの悲鳴が上がる。


「まだまだ行くぞ!」


イクサが更に追い撃ちをかける。
パワードイクサーのアームが、至近距離からサバトを左右に殴打した。
ガァン! と小気味のいい音が連なり、とうとうサバトは下へと落下していく。


「名護さん、決めますよ!」
「わかっている! これで終わりだ!」
「フィニッシュ行くぜぇ~!」


キバはキバットにウェイクアップフエッスルを、片やイクサはアームの先端、パワードイクサーの頭部に飛び乗る。


『WAKE.UP!』


夜の帳が、群青の封絶を呑み込む。
それは当然、狼の懐に飛び込む機を伺うシャナと悠二の眼にも入る。


「向こうも決めるみたいだ」
「こっちも終わらせる!」


高揚をみなぎらせ、シャナはまた狼の腕が迫るのに合わせ、叫んだ。


「悠二!!」
「っ!!」


火除けの指輪、『アズュール』の結界が展開され、追撃となる狼の前足がかき消された。


勢いを保ったまま、二人は巨大な狼の内部へと飛び込む。
“グリモア”を抱き、眠るように動かないマージョリーを見つけ、シャナは大太刀を構えた。


「ハァ~~ッ!!」


キバはヘルズゲートを解放して飛び上がり、落ちつつあるサバトに向かって右足をつき出す。


――ギャオォォ!!


キャッスルドランの口から射出された光球『ドランポッド』がキバを包み、キバの必殺技『ダークネスムーンブレイク』を更に強化する。


「はっ!!」


イクサもまた、後方に大きく引かれたアームに乗り込み、押し出される加速を利用し、サバトに向かってのキックを繰り出す。






『ハアァーーッ!!』


「だぁーーーっ!!」






Wライダーキックが、サバトの巨体を貫き、大太刀『贄殿遮那』の一撃が『弔詞の詠み手』に叩き込まれた。


◆◆◆


サバトが砕け散り、残骸であるステンドグラスがパラパラと散る。


更には、雄叫びを最後に霞んでいく狼。
それを構成していた群青の炎の灯りが反射し、ステンドグラスを輝かせている。


まるで、星の雨だ。


「おお……」


屋上にて戦いの終止を傍観していたラミーは、芸術とも言える光景に感嘆の声を上げた。
キャッスルドランが近付き、ビルに着地する。


そこからキバとイクサが。
ややふらふらした足取りのシャナが、悠二と気絶したマージョリーを抱えて降りてきた。


「紅蓮の翼が出せなくなるまで力を使うな。俺が拾わなかったら、そのまま下にまっ逆さまだったぞ」
「体力の配分は、戦士にとって重要だ。精進しなさい。『炎髪灼眼の討ち手』」
「うるさい、わね……。仕方ないでしょ。力加減が、まだ、掴めないんだから」
「目、目が回りそうだったぁ……」


まだまだ元気なキバとイクサの煽りに、シャナと悠二が息を整えながら答える。


「……っふふ」


ラミーは何処か朗らかな様子に、固い表情を綻ばせ、懐へ手を伸ばす。
出てきたのは、眼球程の大きさの毛糸玉。
糸の端が緩やかにほどけていき、やがて深い緑色の火の粉が沸き上がる。


「おいラミー、それは……」
「構わんさ。恩義には行動をもって応えなければな」


やはり、あれは今まで集めた存在の力か。
キバはしばらく考えて、


「――ドラン」


屋上に座り込むキャッスルドランに呼び掛ける。


――シュン。
キバが何を言いたいのかわかったらしく、キャッスルドランはやや不服そうに頭を垂れる。


「そんな小動物みたいな目をするな。今日は5個も食べただろう」


キャッスルドランは尚も不満がありそうだったが、渋々頷いて、口から3個のライフエナジーを吐き出し、ラミーが出した分に加える。


「焼け石に水かも知れないが、無いよりはマシだろ。使ってくれ」
「――何から何まで、君には借りを作りっ放しだな」
「気にするな。若者の人生相談に対する礼だとでも思っといてくれりゃあいい」


キバの施しに感謝しつつ、ラミーはその力を自分の物に溶かしていく。
それらは封絶内に降り注ぎ、戦いの傷痕を修復した。


◆◆◆


「……生きてんのね」
「お互いにな」


ややあって、マージョリーが目覚めた。
力を限界まで出しきったその姿は頼り無く、饒舌なマルコシアスでさえ、言葉にいまいち覇気が無かった。


マージョリーは、自分に勝った少女を見る。


「……よく殺さなかったもんね。あれだけ酷い目に遭わされて」
「お前達なら、そうしたかもね。でも、私たちは違う」
「それは、フレイムヘイズの……」
「そう、フレイムヘイズの使命」
「……」


その言葉に反抗さえ無く、マージョリーはキバに目線を移した。


「俺は酷い目に遭わされちゃいないからな。仮に遭わされたとしても、それくらいで相手をどうこうしようとは思わない。しばらくラミーを追えないようにすれば、それで俺の役目は終わりだよ」


「……何よそれ」


可笑しな連中だ。
可笑しくて……嫌な奴等だ。


『炎髪灼眼の討ち手』と『ファンガイアの王』。
自分を否定するくせに、何か羨ましく思ってしまう。
これが、世に恐れられた存在なのか。


「第一、そこの本にもう釘を刺されてるんでな。『俺の酒盃に手を出したら、顕現しててめえらを噛み殺してやる』だとさ。ふっ、面白いパートナーだな」
「うるせえ、今も変わらねぇぞ。世界のバランスなんぞ知ったことか。周りの“存在の力”を全部飲み込んで、てめえらを殺して殺して殺して殺し尽くしてやる」


グリモアから炎が弱々しく噴き出す。
キバは、この相棒の声にマージョリーが泣きかけているように思えたが、それに関してはコメントを控える。
代わりにラミーが、杖の先に群青の炎を灯し、口を開いた。


「済まんが、キミの始まりを見させて貰った。――だが、“銀”は追うな」
「!!」


マージョリーが、その単語に異常な反応を示した。


「あれは、追うだけ無駄なものなのだ。追えど付けず、探せど出でず、ただ現れる、そういうものなのだ」
「っ、そんな、そんな言葉だけで! 私の全てを諦めきれるもんか!!」


負傷した身体にも構わず、マージョリーは自分の存在理由を込めて叫ぶ。


「誰にも駄目なんて言わせない!! この復讐は私のもの、この憎しみは私のものよ!!」
(……“銀”、か)


――キングの日記によれば、フレイムヘイズが生まれる理由には、復讐が多いらしい。察するに、その銀とやらが、マージョリーの“人間としての”自分を破壊した存在なのだろう。


「では、言い方を変えよう。あれは、来るべき時節が来れば必ず会える、そういうものだ」
「……なんですって……?」
「私はそのことを伝えたかっただけだ。それをどう受け取り、行動するかはおまえの勝手だ」


用向きはそれだけ、と言わんばかりにマージョリーから目線を外す。


「世話になったな、ファンガイアの王。白き騎士。『炎髪灼眼』……いや、シャナ、か」
「別に。このくらいのトラブル、いつものことだ」
「私は彼に付き添ったに過ぎないからな。気にすることはない」
「使命に従ったまでのことよ」
「――なるほど、さすがは“天壌の劫火”の契約者。よいフレイムヘイズだ。
ファンガイアも、君たちのような者がいれば、昔とは違う未来を歩めるだろうな」


ラミーは笑い、最後に悠二を見た。
悠二は立ち上がり、何を言うべきか迷って、結局出てきたのは素直な謝罪だった。


「悪かったね。せっかく集めた“存在の力”を修復に使わせて」
「なに、望みへ至る時を得た礼……そう思えば安いものだ」


そんなわけがない。
と、キバのみならず、悠二も思った。


キャッスルドランのエネルギーがあったとはいえ、あれだけ広範囲の破壊を修復したのだ。ロストした分は、1年や2年の旅路で集めたレベルではないはず。
誤魔化すようにラミーは苦笑のようなものを浮かべ、代わりにこう言った。


「最後に、利害抜きで助言を一つ、サービスしてやろう」
「?」


――なんとなく、キバはラミーの助言とやらが、悠二には不釣り合いなものだと想像し、そしてそれは予想通りだった。


「これからは、不安になったら、黙って抱き寄せてキスの一つでもしろ。それで、何もかもが、すぐに分かる」
「っな! ななな――!?」
「きす?」
「……若者に何を吹き込んでるんだ。ラミー」
「ははは」


ラミーは軽く笑って、赤面する悠二、不思議そうに首を傾げるシャナ、呆れたように頭に手を当てるキバとイクサに背を向けた。


「では、さらばだ“天壌の劫火”。我が古き友よ。因果の交叉路で、また会おう」


最後に向けられた別れの言葉は、一人の紅世の王へのものだった。
アラストールも、静かに別れに応じる。


『……いつか望みの花吹く日があるように、“螺旋の風琴”』


――ほんの一瞬だけ、老紳士の姿は、儚い風貌の少女に変わった。


少女は悠然とした笑みを浮かべ、夕暮れの赤に溶けていった。


◆◆◆


「螺旋の風琴?」


悠二の問いに、シャナ、キバットが、柄にもなく驚愕した風に言う。


「……封絶を始めとする、数多くの自在法を編み出した“紅世”最高の自在師よ」
「ファンガイアの使う魔術の発展にも、多大な貢献をしたヤツだぜ。正体は謎ってのが通説だったが……なるほど、“紅世の徒”だったわけか」
「そんなに凄い自在師が“屍拾い”なんて名前を名乗って、何百年も他の“徒”の作ったトーチを拾い続けて……たった一つの品物を、元に戻すためだけに……?」


気の遠くなるような時間。
ただ一つの願いに生きる狂気にも近い信念。
だが、キバとアラストールはそれを狂っているとはしない。


「坂井悠二。人間もファンガイアもフレイムヘイズも“徒”も、叶えたい望みってのは、他人から見れば意外とちっぽけなものなんだよ」
『何を大切に思うかは、各々で違う。貴様らと同じだ』


悠二をたしなめ、キバは軽く伸びをして、気楽な口調で言う。


「さて、と。用は片付けたし、帰りましょうか。名護さん」
「そうだな。いい頃合いだ」


キバに同意して、名護はイクサの変身を解除する。


「じゃあ、俺達はこれで」
「うむ、また世話になってしまったな。キバ」
「困った時はお互い様だろ。また何かあったら助けてやろうか? 『炎髪灼眼の討ち手』」
「私が苦戦するようなことになるなら、ね」


キバの皮肉にも、シャナは余裕を持った笑みで答える。
これも成長か。
悠二はそんな調子のシャナを微笑ましく思いながら、こちらを見る名護に向き合う。


「元気が出たようで何よりだ。あの時は、随分と沈んでいたようだったからな、坂井悠二君」
「はい、ありがとうございました。名護さん。――あの、また会えますよね?」
「ああ、何かあれば、いつでも『マル・ダムール』に来なさい。及ばずながら、力になろう」


――夕暮れと夜の狭間。
非日常は一先ず、日常へ至る。


◆◆◆


「ふわぁぁ~~、眠い」


ゴールデンウィークを挟み、御崎高校。
間の抜けた欠伸を噛み殺しつつ、奏夜は教室に向かう。


(少しダルいけど……ま、フリアグネの時程じゃないか)


楽勝ムード……と言うとマージョリーに悪いが、ファンガイアのキング(代行)がそう何度も追い詰められてはしまらない。


だが、特に変わらなかった。
追い詰められようが追い詰められまいが、さして日常は変わらない。


シャナは幸せ顔でメロンパンを食べていた。
悠二は疲れを感じさせない顔で挨拶をしてきた。
吉田は顔を赤らめながら、坂井に弁当を渡していた。
佐藤と田中は、休んだツケもあってか、やや不服そうな池に勉強を教わっていた。
緒方はばつの悪そうにする二人を見て笑っていた。
今頃だと、名護と恵は由利を幼稚園へ迎えに行っている頃だ。


何のことはない。
何も変わらず、これは日常で、紅奏夜の人生だった。


「戦うことも俺の人生、ね」


ファンガイアのことが一区切りついても、次は“紅世”。
けど、それもいい。


俺はキバなのだから。
キバで――紅奏夜だ。


もうとっくに受け入れたこと。
戦うことに逃げていた、もうあの頃とは違う。


だからこそ、平井と坂井を放って置けなかったのかも知れない。


理由は違えど、戦いから逃げた二人を。


(――全く、あいつらは)


どうしてこうも、自分と重なる面倒を抱えるのだろうか。


「見てる俺の身にもなれってんだ」


自分を見ているようで、落ち着けやしない。
――落ち着かないから、もう少し面倒を見てやるとしよう。
そんな風に理由付けつつ、一年二組の扉を開ける。


「おーし、授業始め」


――スコーン!


『あ』


教室中の目線がドアに注がれた。
奏夜の顔面に激突したのは、菓子の箱。
投げたのはシャナ。


放物線上に、吉田と悠二がいるところを見ると、吉田と話す悠二が気に入らず、八つ当たり気味に箱を投げたのだろう。


しかしすんでのところで悠二はそれをかわし、結果、延長線上にいた奏夜にヒット。


……教室を沈黙が支配する。
シャナ以外はみんな青ざめた顔をし、扉の前で微動だにしない奏夜の審判を待っていた。


「ふ、ふ、ふふ、ふふふ」


引きつった顔のまま、奏夜はポケットに手を突っ込む。


「平井、坂井」
「は……、はい」
「何よ」


そして取り出したのは、もはやネット通販でしか売っていないような、連射式の輪ゴム鉄砲。




「お前らの罪を数えやがれぇぇーー!!」




輪ゴムを撃ちまくる奏夜。
反射的に奏夜を迎え撃つシャナ。
悲鳴を上げて逃げ惑う悠二。
もはやどうしたらいいのかわからず、呆然と成り行きを見守る吉田、佐藤、田中、池、緒方らクラスメート達。


それは無茶苦茶で、しかし楽しさもある、ただそこに在り続けるだけの、日常だった。
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  1. 2012/03/20(火) 18:25:16|
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