紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

第八話・不協和音/紅蓮の翼とデュアルドラゴン.前篇

「そらっ!!」


キバの甲冑が備えられた右足が、ホースファンガイアを蹴り飛ばす。


「グ、ウッ!」


ホースファンガイアは苦し気に数歩下がり、しかしまた直ぐにキバ目掛けてステンドグラスの装飾が施された剣を走らせる。


「ちっ」


キバは身を捻らせてそれを回避し、また打撃攻撃を加えていく。
だが相手もそれを見越して攻撃しているのか、上手く防御している。
戦いは平行線を辿っていた。


「散りなさい」


と、そこへイクサが、イクサカリバー・ガンモードの銃撃をホースファンガイアに浴びせる。


「グ、ギャッ!」
「今だ、奏夜くん!」
「はい!」


イクサの援護射撃で生まれた隙を突き、キバが拳のラッシュを浴びせていく。


「グルォォオーーッ!!」
「むっ!」


片やイクサには、ライノセラスファンガイアが、固い身体にスピードを上乗せした突進をかけてきた。


「ハァッ!」


イクサカリバーのトリガーを引くも、発射された弾丸は、装甲のような皮膚に弾かれてしまう。


(迎撃は不可能か)


イクサは冷静な判断でライノセラスファンガイアの突撃を、横に飛び退きギリギリで回避。
直ぐ様イクサカリバーをカリバーモードにチェンジ。
刀身が煌めき、ライノセラスファンガイアの身体に火花が散るが、


「ぐっ!?」


ライノセラスファンガイアのボディブローの衝撃が、イクサを貫く。


――ライノセラスファンガイアの真骨頂は、サイのような見た目に由来するパワー、そして固い皮膚による防御力にある。
かつてキバが戦った際にも、バッシャーフォームの弾丸を難なく防御するほどの代物。


(イクサカリバーでは歯が立たないか……。イクサジャッジメントならばあるいはいけるかも知れないが、決定打とまではいかない可能性もある)


戦況を冷静に分析し、対応策を練るイクサ。
そこへ、


「名護さん!!」


ホースファンガイアを抑えるキバの声がかかった。
彼の指には、紫色の宝具――ドッガフエッスル。


「! わかった、来い!!」


イクサは一瞬で、キバの意図を理解した。
それを確認し、キバは一旦ホースファンガイアから距離を取り、フエッスルをキバットに吹かせる。


『ドッガハンマー!!』


フエッスルの呼び掛けに答え、ドッガの彫像がキャッスルドランから射出され、戦場へと飛んでくる。
すかさずイクサは、ベルト脇のサイドケースから、ドッガフエッスルと同じ紫色のフエッスルを取り出し、ベルトのフエッスルリーダーにセット、イクサナックルを押し込む。


『ド・ッ・ガ・フェ・イ・ク』


無機質な電子音と共に、キバへと渡るはずのドッガハンマーは、持ち主には向かわず、身の丈はある巨大な魔鉄槌は、イクサの両手に収まった。


――フェイクフエッスル。
キバの従者たるアームズモンスターを呼び出すフエッスルの、周波数を科学的に解析。その解析データを元に嶋が作り上げた、特殊な波長で、キバの武器を奪い取るフエッスルだ。
魔皇力を必要とするフォームチェンジは出来ないが、この状況では問題ない。


ドッガハンマーを引き摺りながら迫るイクサに、ライノセラスファンガイアは、身体の隙間から蒸気機関の如く煙を放出し、イクサに襲いかかる。
重量のある突撃を、イクサはドッガハンマーの柄で防ぎ、


「ッハァ!」


そのまま勢いをつけ、ドッガハンマーをスイングする。
元々、アームズモンスターの中で最も攻撃力のあるドッガハンマー。
勢いを乗せたこの一撃には、さしもの分厚い装甲も役に立たない。


イクサは畳み掛けるように、ドッガハンマーの連撃を加える。


「グ、ッガァ……」


装甲にヒビが入る。
すかさずイクサは、ライノセラスファンガイアをドッガハンマーに引っ掛け、キバが戦うホースファンガイア目掛けて投げた。


ホースファンガイアとライノセラスファンガイアは正面衝突。互いのダメージもあってか、直ぐに体勢を立て直せない。


「よし。一気に決めるぞ!」
「了解です!」


キバとイクサは、再びフエッスルを取り出した。


『WAKE.UP!』
『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』


キバットとイクサベルトのコールを合図に、キバの背後に夜の帳が、イクサの背後に煌々と燃える太陽が顕現。
対極に位置する風景が共存するそれは、戦いの中で絶妙のコントラストを作り出していた。
キバは右足のヘルズゲートを解放して飛び上がり、イクサは臨界点に達した胸部のソルミラーから光子力エネルギーを生成、イクサカリバーへと集中させる。




『ハァーーーッ!!』




キバの『ダークネスムーンブレイク』が決まり、ホースファンガイアはキバの紋章のクレーターを残して砕け散る。
イクサの『イクサ・ジャッジメント』が、ヒビの入った装甲部分を袈裟に斬り捨て、ライノセラスファンガイアを両断。

放出されたライフエナジーが舞い上がるのを見上げ、キバとイクサは手を打ち合わせた。


「さすがです」
「キミも腕は鈍っていないな」



その勝利の余韻に浸る間も無く、上層で起きたらしい大きな爆発音が、ビル全体を軋ませる。


「ふう、いつも戦いは待ってくれないな」
「こいつらの事も気になりますが、今は上が先ですね」


キバとイクサは頷き合って、障害の無くなった階段を駆け上がっていく。
ファンガイアの骸たるステンドグラスを残して。


◆◆◆


「ふん、所詮は、烏合の、衆か」


キバとイクサの後ろ姿を見送ったドラゴンファンガイアは、ステンドグラスの欠片を忌々しげに踏みつける。


「しかし、あれが、スワローテイル、ビショップを葬った、素晴らしき青空の会の戦士、イクサか。成る程、キバも、さることながら、奴の力にも、警戒、しなければ、なるまい」


キバ、イクサ、そして今、ここにはいないキングの持つ、サガの鎧と『闇のキバ』の鎧。
いずれは相対する存在ならば、その力をなるべく正確な形で測るのは有意義な試みだろう。


「ふむ。それを思えば、この、ゴミ共には、まだ、使い道が、あるか」


一片の温かみも無く、ドラゴンファンガイアは手を大きく広げ、叫んだ。


「地の底で眠る我が同胞達よ、今こそ蘇りて一つになるのだ!」


ホースファンガイア、ライノセラスファンガイア、そして彼の手から放たれた一昨日キバが葬ったラットファンガイアのライフエナジーが、宙に舞い上がり、溶け合っていった。


◆◆◆


「っとぉ!?」
「床が!!」


キバとイクサが、最上階の庭園まで辿り着いたのを見計らったかの如く、フロアの床が派手な音と共に崩れた。
どうにか安定したゾーンを見つけるが、ふとそこでフロアの中央。


吹き抜けとなった穴に、悠二とラミーが落ちていくのを確認した。


「っわぁ!?」
「むっ!?」


ラミーが手を伸ばしたが間に合わない。
のまま悠二は宙に放り出され、下まで急降下。


「悠二!!」


戦況を優位に進めていたらしきシャナは、瞬時に天井の強化ガラスを蹴り、落下する悠二に手を伸ばした。勿論相手も隙は逃さない。トーガの獣がすかさず炎弾を発射するが、悠二を中心に展開された結界のようなものがそれを弾く。


(そーいや坂井、フリアグネの宝具拾ってたっけな)


簡単な理解を済ませるが、炎弾は防げても落下は防げない。
二人はそのまま、重力法則に従い、落ちていく。


シャナがいるなら心配はいらない――が、ここまで戻ってくるまでの時間は絶望的だ。
どんなに早くとも、その間にラミーが始末される。
事実、トーガの獣は標的を替え、ラミーへ手を振り上げていた。


「今度こそ」
『終わりだぁ!!』


今まさにラミーに襲い掛かろうとするマージョリーとマルコシアス。


「待ちなさい!!」


イクサカリバーが火を吹き、トーガの腕を貫いた。


「っぐ!?」


撃ち抜かれた腕を押さえるマージョリー。
その隙にキバとイクサは、ラミーの盾となるよう、マージョリーの前に立ち塞る。


「悪い。遅くなった」
「いや、いい頃合いだった。助力感謝する。キバ」


ふと、ラミーはもう一人の乱入者、イクサを見る。


「その鎧……。君は?」
「全て後にしなさい。“屍拾い”。まだ相手は膝をついていない」


イクサの言う通り、マージョリーは直ぐにトーガの腕を修復し、体躯をのしり、と上げる。


「……っ、このクソ忙しい時に!」
「いくら俺でも、再三同じことを言うのは好きじゃないが、敢えて言ってやるよ、『弔詞の詠み手』。――俺は、お前の邪魔をする」


飄々とした態度のキバに、苛ついたのか、バチバチとトーガから炎が上がる。


「……ラミーといい、あのチビジャリといい、アンタも助けを借りる気? 他人にベタベタくっついてるようなヤツが、私の邪魔をすんじゃないわよ!!」


「はっ、上等。――なぁ、助けを借りないヤツってのはさ、お前みたいに独りよがりで、勝手気ままに“徒”を殺すようなヤツのことかよ?」


挑発的に、キバは仮面の下でほくそ笑む。


「だったら、そんなもん願い下げだ。一人でいられる強さなんざ、俺はいらないんだよ。俺は確かに、誰かに助けられなきゃならないダメなヤツさ」


悠二にも言ったことだった。
だが、この言葉には続きがある。


「けど、俺はそれでいいと思ってる。――それはみんなが、仲間がいてくれるってことだ」


視線を合わせてきたキバに、イクサは強く頷く。


――そうだ、君は一人ではない。
声に出さずとも、イクサが――名護が思ってくれているのがわかる。
そう言ってくれる仲間がいてくれれば、仲間が自分を助けてくれるなら、




――俺は、その仲間を守るために、いくらでも強くなれる。




「……だから、てめえらみたいなのには絶対負けねー。他人を理解しようとせず、馬鹿みたいに力を振り翳すだけのヤツにはな!!」
「……いいわね。アンタも最高にブチ殺し甲斐があるわ!!」


片や決意、片や激昂を込めて吠え、キバとマージョリーの拳がぶつかる。


勢いは互角。
つばぜり合いになったところで、イクサが動く。


「私を忘れて貰っては困るな」


イクサカリバーの斬撃が、今はキバへと伸びたトーガの腕に振り下ろされる。


『ハッ、同じ手は喰わねーぜぇ!?』
「むっ!?」


途端、群青の炎が吐き出され、イクサを吹き飛ばす。


「名護さん!」
「余所見してんじゃないわよ!」
『下へ参りまぁすってか!? ッヒヒ!!』


一瞬イクサに気を取られたキバ。
マージョリーはその隙に、先程の崩落で脆くなった足場を、巨腕をスイングすることで奪った。


「げっ!」


咄嗟の回避も間に合わず、キバは悠二と同じく、吹き抜けとなったビルの下へと飲み込まれていった。


「奏夜くん! くっ、おのれ!!」


キバの戦線離脱に、炎から逃れたイクサはイクサカリバーを構え、ラミーを庇うようにして立つ。


「下がっていなさい。私から離れるな」
『ヒッヒッヒ! 一対一になっちまったが、お前さんは強いのかい? 白騎士さんよ』
「フッ、舐められたものだな。イクサの力を甘く見るのは、止めた方がいい」


言いつつイクサは、ラミーを攻撃の範囲に入れないよう気を配る。


(さて……。荷物を抱えたままでの戦いとなると、ややこちらが不利か)


だがそれでも、やるしかあるまい。


別にこの老人には、好意も敵意もなく、イクサにとっては関わり無き存在。
――だがキバが、奏夜が、守ってくれと言った。
彼が言うのなら、この老人は守るに値する存在なのだろう。


守る理由は、それだけで十分。


(昔の私なら、敵側の存在というだけで斬りかかっていただろうにな)


全く、難儀な性格になったものだ。
仮面の下で苦笑し、イクサは、イクサカリバーを握り直す。


イクサの闘志を表すように、トーガの獣との間で、鮮やかな火花が散った。


◆◆◆


「うーん、こりゃ結構ヤバイかなー」
「余裕かましてるバヤイかーーッ!」


朗らかな口調に、流石のキバットも絶叫する。
キバは現在、胡座をかくような体勢のまま、景色が上へ上と流れていくのを眺めながら、壮絶なスピードで落下していた。


「お前あの攻撃絶対避けられただろ! なのに何で俺達絶賛落下中なんだよ!!」
「そう言うなキバット。吹き抜けのビルを落下するなんて体験、そうそう出来るもんじゃないぜ?」
「そりゃそうだろうよ! 経験したら確実に死んでるもん!」


こんな時でも、二人のやり取りは変わらなかった。


「ま、確かに。そろそろ準備はしない、と……?」


ふとキバの耳を、何かを捉えた。
外面的なものではない。
もっと内面的な――心の音楽を聞き取るための感性。


音源は、自分よりも更に下。
もはや点のように見える、シャナと悠二。


(これは、平井か?)


状況も忘れ、奏夜は耳をそばだてた。


(なんでもできる)


シャナの奏でる音楽が、キバの心に広がる。


(大切な誰かのためになら)


それは、奏夜がシャナに言ったこと。
『持たざる者』の強さには限界がある。
しかし『持つ者』には、


(無限の可能性がある!)


シャナは奏夜の教えを、まるで自分を奮い立たせるかの如く、心の中で奏でていた。
シャナの眩く輝いた音楽は、彼女が思うがまま、その有り様を変えた。




(なんでも、できる!!)




かつて見た、“天壌の劫火”の顕現。
あの時感じた、絶大なる存在のイメージが、再びシャナと重なる。




顕現するは――紅蓮の翼。




彼女が生み出した音楽の結晶は、シャナの背で煌々と輝いていた。




「――Bravo!」




胸に染み渡る素晴らしい演奏に、キバはただ称賛の意を示す。


シャナはしばらく不慣れな様子で、だが直ぐにコツを掴んだらしい。悠二の手を取りながら、シャナは紅蓮の光跡を描いて舞い上がり、あっという間に落下しているキバを追い抜いた。


「っはは、すっげぇ!! あんなことも出来んだなぁ! あいつは!」
「お、おい奏夜、ハイなとこ悪いんだが、早いとこ俺達も落下を止めようぜ! シャレになんねーってコレ!」
「ああ、了解了解!! あんなもん見せられちゃあ、こっちも黙ってらんねー!」


言って、キバは自分の中に眠り、普段は抑制されているファンガイアの力を高めていく。キバの意図に気付き、キバットはやや慌てて、


「奏夜、アレになるつもりかよ? ウェイクアップでも良くないか?」
「言ったろ! あんなスゲー音楽聞かされて、こっちが何もしないなんて我慢出来るかよ!」


キバは興奮冷め遣らぬまま、さらにファンガイアの力を上げた。


(……ダメだコリャ。スイッチ入っちまってら)


奏夜がもう止められないと悟ったキバットは、苦笑いをしながらも、意気揚々と言う。


「わかった! けどタッちゃん無しじゃ、精々制御は50秒が限界だ、その間にウェイクアップに切り替えろよ!」
「わかってるさ!」


キバットの警告を聞き入れ、キバは力を一点に集める。
キバの意思に従い、ファンガイアとしての自分を抑える最後の鎖が、最終覚醒(ファイナルウェイクアップ)。




「うぉぉぉッ!!」




魂の咆哮に共鳴し、キバの鎧から、金色の翼が飛び出した。


◆◆◆


「シャナ、上!」
「!」


悠二の声を聞くまでもない。
頭上、シャナの飛翔方向から、瓦礫の雨が降り注ぐ。


イクサとマージョリーの闘いによる余波が、よりによってまだ紅蓮の翼の微細なコントロールが出来ない時に、シャナ達へ襲い掛かった。


「悠二! 体にしがみついて!」
「えっ!?」
「『贄殿遮那』が振れないでしょ!!」
「あ、ああっ!!」


悠二が自分の身体にしがみついたのを確認する暇もなく、シャナは瓦礫の雨を迎え撃つ。
崩落してくる遮蔽物を時に避け、時に切り裂きながら、上へ上へと舞い上がり続ける。


しかし、


「なっ!」


太刀を振り抜いた先に、一際巨大な瓦礫。


まずい。
回避する暇も無い。
これを切り捨てるに足る存在の力を練る時間も無い。
自分だけぶつかるならまだいいが、今は悠二もいるのだ。


「くっ!」


急停止し、夜傘をせめてもの防御に回す。




しかし、衝撃はこなかった。




「……?」


夜傘を視界から退けると、巨大な瓦礫は粉々に“切り裂かれ”、細かいパーツへと別れて落下していった。


「シャナ、今何が……?」
「わ、わからない」


予測不可能な状況に、二人の呆然としていると、




――ギィィィィィ!!




甲高い鳴き声を、シャナと悠二は捉えた。
しかし、その音源は掴めない。


敵か? もう一度、辺りを注意深く見回すと、自分の頭上を、大きな影が飛び回っていた。


(金色の、鳥?)


シャナの最初のイメージがそれだった。


自分のものよりもずっと大きな翼。
影はその翼で、自分達へ落下していたであろう瓦礫を、瞬く間に切り裂いていた。
悠二はもちろんのこと、シャナの動体視力をもってしても、正確な姿は見えない。
動く度に輝く、金色の軌跡が唯一の目印だった。




瓦礫雨が止むまで、ものの七秒もかからなかっただろう。
ターゲットを始末した影は急降下し、自分達のすぐ脇を通り過ぎる。


「っ!!」
「わっ!!」


ビュウッ、という風切り音を残し、影はシャナ達の真下で小さくなっていく。
それが二人とほぼ同じサイズにまで縮んだところで、影は再びシャナ達の視界へと昇ってきた。


「無事のようだな、二人とも」


『キバ!?』


影の正体をハッキリ捉えたシャナと悠二は、驚きを乗せた声で、その名を呼んだ。
キバは二人の驚愕にも何処吹く風で、右足にあるヘルズゲートの翼で浮き上がっている。


「な、なんで!? いきなり影が瓦礫を切り裂いて、その影がキバで……えぇ?」
「ふっ、期待通りの驚愕をありがとう、坂井悠二。だが、それについてはまた後だ」


混乱する悠二を制して、キバは上を指差す。
シャナと悠二がその先に目をやると、『弔詞の詠み手』の闘いを示す群青の炎が弾けた。


「誰かと、戦ってるのか?」
「ああ、俺の仲間が足止めをしてくれている。――同時攻撃をかけるが、いけるな?」


キバが同意を求める。
シャナはそれに、好戦的な笑みを持って答える。


「誰に言ってるのよ」
「上等」


頷き合って、シャナは翼に再び存在の力を込め、キバも勢いをつけるように膝を折る。


「行くぞ!!」
「うん!」


叫び、二人の戦士はそれぞれの翼で舞い上がる。
猛烈な勢いで風を切り、シャナは太刀を構え、キバはキックの体勢を取る。


『WAKE.UP!』


「――!」


庭園でラミーを守りつつ、マージョリーと交戦していたイクサは、聞き覚えのあるコールを知覚する。
本当に微かだが、キバが落ちた、吹き抜けの大穴から聞こえてきた。


(穴……そうか! 狙いは死角からの攻撃!)


幸いにも、マージョリーはさっきのキバットの声に気付いていない。
ならば、


『縦横無尽に咲き狂え!』
『掃除は嵐にお任せだぁ!』


鋭く槍のような炎が襲い掛かる。
イクサは防御を捨て、その中に飛び込む。


最低限、致命傷を避けられればいい。
この行動を予測はしてなかったのか、攻撃はイクサの肩を僅かに焦がしただけだった。


『んなっ!?』


トーガが目を剥くのにも構わず、イクサはその懐に飛び込み、ベルトにフエッスルを装填する。


『イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』
「喰らえッ!!」


イクサナックルを瞬時に拳にはめ、イクサは右ストレートをトーガに叩き込む。
ナックル装備時の必殺技『ブロウクンファング』が、0距離で炸裂した。


「っぎ!!」


よろめいたマージョリーは衝撃からバランスを崩し、背後にあった穴へ身を踊らせる。


――体勢を整えようとした時には、もう遅かった。




『っだぁ――ッ!!』




キバの『ダークネスムーンブレイク』とシャナの炎剣が、その身体に炸裂した。


「――――ッ!?」
『なんだとぉ!?』


痛みに、意識が飛んでいく。


見上げた先には、紅蓮の翼を広げる『炎髪灼眼の討ち手』と、血のように鮮やかな鎧を纏う『ファンガイアの王』。
頼りなく燃えた群青の炎を最後に、トーガの獣は真っ逆さまに落ちていった。


◆◆◆


異変に気が付いたのは、シャナ、悠二、キバとも、ほぼ同時だった。


互いの健闘を称える時間すら貰えぬまま、アトリウム・アーチとは違うビルに着地する。宙に浮くラミーに連れられ、イクサもこちらに合流。


しかし、キバの注目はそちらに行かなかった。


(『弔詞の詠み手』の曲調が、変わった)


元々、粗野な傾向はあったが、ここまで暴走すればもはやノイズに等しい。
膨れ上がり、溢れた存在の力は、アトリウム・アーチの屋上を喰い破り、その姿を表した。




「群青の…狼…!?」




悠二の呟きの通り、それは群青の炎で出来た巨大な狼。
フリアグネの時のアラストールと同じ。


――“蹂躙の爪牙”マルコシアスの顕現である。


が、驚きはそれで終わらなかった。
三人がその姿に見魅る中もう一つ、巨大な影がビルの一角を粉砕し、キバ達の視界に現れる。


「うわっ! な、なんだ!?」


有り体に言えば、様々な獣のパーツが組み合わさった怪物。
表面はステンドグラスのような皮膚に覆われ、マルコシアスよりやや小柄だが、それでもかなりの大きさだ。


「あれって、燐子?」
「違う」


シャナの疑問を、キバは即座に否定する。
四年前に数度戦ったきりだが、あの容姿は忘れようもない。


「やれやれ、本当に空気を読まないな。この世界は」


ファンガイアのオーラ集合体『サバト』を目に収め、キバはシニカルな口調でそう呟いた。

スポンサーサイト
  1. 2012/03/20(火) 18:24:08|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<第八話・不協和音/紅蓮の翼とデュアルドラゴン.後篇 | ホーム | 第七話・スラー/絆の鎖.後編 >>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://syanakiva.blog.fc2.com/tb.php/19-b22a938a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。