紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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第七話・スラー/絆の鎖.後編



時刻は八時を回った頃。
キャッスルドラン内部の回廊。
奏夜はキャンドルの灯がゆらゆら揺れる中に、見知った人影を見つける。


「うっす、次狼」
「ん? 何だ奏夜か。どうした、こんな夜更けに」
「いや、今日は結構身体動かしたからさ。気分転換にお前らとゲームでもと思ってな。ちなみにこれは土産」


途中コンビニで買ってきた菓子類や飲料水の入ったビニール袋を次狼に手渡す。
モンスターの栄養は基本的にライフエナジーだが、別に普通の食べ物が喰えないわけではない。


次狼曰く、別腹。


「なぁ、もう少しジャンクフードから脱却出来ないか? さすがにチキンラーメンはないだろう」
「土産にケチつけんな。大体コンビニにあるもののほとんどはジャンクフードだぞ。おでんとかだとここに来るまでに冷めちまうし」
「……まぁいいか、たまには懐かしい物を喰うのも悪くない。しかし、26年前から進歩が無いな、これも」
「最近は玉子ポケットが付いたりしたんだけどねぇ。玉子かけずに食べる人にとっちゃ無用の長物だからな」


恐らくは本編とまるで関係ない雑談をした後、次狼は「ああ、そうだ」と思い出したように指を立てる。


「奏夜、お前に客が来ているぞ」
「客?」


誰だ。
キャッスルドランを認知こそすれ、入れる人間となれば、おのずと限られてくるが。


「奥の部屋で二世と話しているから、一応顔は見せておけ」
「ん、了解」


次狼と別れ、奏夜は奥にある客間へと足を運ぶ。
と、入り口から話し声が聞こえてくる。


「ふん。お前も相変わらず、残り滓を集めるのに余念がないというわけだ」
「貴公の側も、ここ数年で随分な変革があったようではないか。長年に渡り実現し得なかったファンガイアと人間の共存、その実現には感銘を受ける。現代のキングは、余程の大器を持つ者なのだろうな」
「いや、キングの所業とは言い難いな。事の発端は……」


赤いコウモリ、キバットバット二世は、入り口に立つ奏夜を示す。


「こいつだ」
「……ほう、君がそうか」


椅子から立ち上がった男は、ダークスーツに身を包んだ老紳士。
杖を付きながら、老紳士は恭しく礼をする。


「御初にお目にかかる。キバの継承者よ」
「……アンタが“屍拾い”ラミーか」
「ふむ、よくわかるものだ」


「『弔詩の詠み手』から話は聞いている。無害な“徒”で通っているとな。――で」
奏夜は宙を飛ぶ二世に目をやる。


「こいつをここに呼んだのはお前か? 二世」
「ああ、こいつとは少しばかり因縁があってな。お前としても“屍拾い”に会っておくことは不利益にはなるまい?」


では、俺は帰るぞ。と飛び去る二世の姿を目で追って、奏夜はふん、と鼻を鳴らし、椅子に腰かける。


「まぁいいさ、それで用件は何だ? ただ駄弁るために来たわけじゃないだろう。それとも、キャッスルドランに貯蔵されてるライフエナジーが狙いかな?」
「ふっ、君は歳の割に、随分と駆け引き慣れしているようだな」


喰えない奏夜の態度に、ラミーはシニカルな笑みを浮かべた。


「魅力的な誘いだが、それは止めておこう。ここは仮にもファンガイアの居城だ。相応の礼儀は弁えねばならぬだろう。私がここに来たのは、あくまでも君に、私が無害だと信じてもらいたいからだ。第一、私が本当にそれをやれば、君も黙ってはいまい」
「ご明察」


奏夜は向かいの椅子を指し示し、ラミーもそれに応じて、奏夜と向かい合わせに座る。


「ま、世界のバランスを気にして、トーチしか喰わないってのは信じよう。だが、まだ疑問点が残るな。アンタはそれだけ遠回りなやり方をして、何が得たいんだ?
それが俺に不都合のない条件なら、俺はアンタを無害だと認めよう。なんなら、『弔詩の詠み手』から守ってやってもいい」


最大限、譲歩の意を示して、奏夜はラミーの返答を待つ。


「昔」
「?」
「一人の人間が私のために、たった一つの物を作ってくれた。しかしそれは、私が見る前に壊れ、永遠に失われてしまった」


何処と無く、寂寥や悔恨といった切ない感情を乗せたラミーの言葉に、奏夜は押し黙る。


「私は、彼が贈ろうとしてくれた物を、この目で見たい。この手で触れたい。確かめたいのだ」
「……んなこと、本当に出来るのかよ」


再生術というものがある。
上位ファンガイアのみが行える、死した同胞のライフエナジーを操作し、ファンガイアの個体を復活させたり、ライフエナジーの集合体、サバトを作り出すことも出来る。


しかし、それは原型が存在する場合のみの話だ。
ラミーの言い方から察するに、彼が復元させたいものは、彼にとって如何なる存在なのかすら不明瞭なもの。


復活は神業の領域だ。


「ああ、可能だ」


しかし、奏夜の指摘に対して、ラミーの反応は意外なものだった。


「年月を経て、そのための自在式も編み上げた」
「けど、その自在式の消費コストも半端じゃないんだろう? 何せ遺失物の再生だ。
ましてトーチで集めるとなれば、いつまでかかるか分かったもんじゃねぇぞ」
「ああ。だがそれでも」


ラミーの声に、望みへの強い渇望が籠る。


「私が成すことは変わらない。その程度の労苦は、私にとって障害にはならないのだ。――我が未練を、晴らすためならば」


奏夜は神妙な面持ちのまま、しばらくラミーの顔を凝視する。
そして、


「分かった。信用しよう」


余りに軽く放たれた了解に、逆にラミーは目を見開く。


「警戒は、無いのだな」
「大それた嘘をつきに、わざわざファンガイアの居城に来る意味が無いだろ。騙されたなら――そん時はそん時だ。俺がバカを見るだけさ。その上で、騙したアンタを叩き潰す。これでミッションコンプリートだ」

あっけらかんと奏夜は言い捨て、「それに」と続ける。


「俺にも少しだけわかるからな」
「?」




永遠に失った物を取り返したい気持ちが、さ。




深い感情が刻まれた奏夜の表情に対し、ラミーはコメントを控えた。


「――ま、そんなわけだからさ。アンタは安心してこの街にいていいぜ。トーチに関しても、灯の強いヤツを貰わないなら、自由にしてくれていい。悲しいが、喰われた連中に関してはどうしようもないからな」
「配慮痛み入る。それにしても、君は随分と“徒”に理解があるようだな。ファンガイアは極力、“徒”に干渉しないと聞いていたが」
「別に大した理由じゃないさ。最近、この街にも“フレイムヘイズ”や“紅世の徒”が現れたのは、知ってるよな?」
「ああ。『炎髪灼眼の討ち手』が来ているのだろう。その庇護下にある“ミステス”の少年から、大体の話は聞いている」


どうやら、悠二にも会っているらしい。
――シャナとの和解の際、妙に吹っ切れた顔をしていたのが気になっていたが、どうやらラミーに何か原因の一端があるようだ。


「んで、そいつらと少し話して……まぁ、“徒”もフレイムヘイズあんまり、人間やファンガイアと変わらないなって知っただけさ」
(……ほう)


奏夜のおおらかな見識に、ラミーは心の中で感嘆の声を上げる。


(飄々としているように見えて、その実理解力も、許容力もあるようだ)


ファンガイアの未来は明るい。
そう予感させる何かが、確かにこの青年にはあった。


「それよか、ウチの生徒が世話になったみたいだな」
「? 何の話だ?」
「いや、アンタが会った“ミステス”――坂井悠二は俺の教え子なんだよ」
「おや、仮の姿は教育者かね?」
「まぁそんなとこだ、んで坂井のヤツ、最近つまんねーことでいじけててな。
大方、あいつに何かアドバイスしてくれたの、アンタだろ」


そこでラミーはようやく合点がいったらしい。


「ああ、あの少年のことか」


何処か貫禄のある風貌に、初めて疲れのようなものが混じった。


「別に感謝されるようなことはしていない。私はただ自分に利益となるよう、動いたに過ぎぬからな。それに、利益云々を抜きにしたところで、やはり感謝は必要ない」


ラミーは表情に、憂いと皮肉を入り混ぜる。


「――まだ青い、若者特有の悩みの相談相手などで、いちいち頭を下げられては敵わん」
「ははっ、同情するぜ。坂井は教えんのが面倒だからな。良くも悪くも、世の中を知る年配者はツラいね」
「君が彼の師であるなら、それはお互い様、というヤツだろう?」


ラミーの言い種に、双方苦笑いらしきものを浮かべる。


――長らく“世の中”を渡る二人の語らいは、しばらく続いた。
時たま、とある少年の名が出る度に、坂井家からくしゃみの音が聞こえたという。


◆◆◆


「っ痛!」


シャナの振り下ろした枝が、悠二の頭上に叩きつけられる。


朝の鍛練。
昨日のぶつかり合いもあってか、枷が外れたように張り切るシャナと悠二だったが、結果はあまり変わらなかった。


いつも通り、シャナが悠二を叩きのめしただけ。
だが、ただそれだけのことのはずなのに、二人も奇妙な達成感があった。


「……今日、いきなり進歩すれば、かなり格好良かったんだけど」
「そう簡単にできたら、誰も苦労しないわよ」


地面に倒れた悠二に向かい、シャナが至極ごもっともな返答をする。


「ふっふ~ん、まだまだ鍛え足りないねぇ、少年」
「まして、相手がこんなに張り切ってるシャナちゃんだもんね♪」


キバットとキバーラが追い討ちをかける。
その言い種に少しだけへこみはするものの、今までのように気落ちはしなかった。


キバーラと入れ替わりで、縁側に座った悠二に、キバットがタオルを渡しながら聞く。


「立ち直ったみたいで何よりだ。……で、少しは反省出来たか?」
「……うん。昨日、キバットが言ってたことの意味も、分かった気がする」


シャナの気持ちになれ。全くその通りだ。


キバットの言葉のみならず、シャナの様子からも判断することも出来た。


(それに、先生もきっと分かってたんだ。シャナが、やる気を無くした僕を見て、どう思ったのか)


気付くチャンスはいくらでもあった筈なのに。
なのに、結局悠二は自分のことしか考えられなかった。


勝手に自分を見限って、それがどれだけシャナを裏切る行為かもわからず――ただ自分勝手な思い込みをするだけ。


「……本当に、どうしようもなくちっぽけだ」
「――いいんじゃね? 別にちっぽけでも」


悠二の嘆息に対し、キバットの反応は意外なものだった。


「ちっぽけだと思うから、自分が弱いと思うから、人間はそんな自分を変えようと頑張れるんだ。悠二が自分を『ちっぽけ』だと思ったなら、それは変われるチャンスなんだよ」


キバットは、かつての自分の親友の姿を、悠二に重ね合わせる。
仲間に裏切られ、信じていたものを否定され、自分の隠された生い立ちに苦しめられて尚立ち上がってきた、一人の気弱“だった”青年。


それと同じ、自分を変えられるだけの強さが、悠二にはある。


――シャナ程ではないかも知れないが、キバットも悠二を高く買っているのだ。


「だからよ、焦ることはねーさ。少しずつでもいいから、前に進んで行きゃいいんだよ」


キバットの軽い口調に、悠二は自分の心が軽くなる。
ふと、今はキバーラと談笑するシャナを見た。


彼女にいつ追い付けるかはわからない。
――けど、もう辿り着くのを諦めようとは思わなかった。


「あの子のために、強くなるんだろ」
「――うん、頑張るよ。中々進歩しないけどね」
「ははっ、結構結構。目標は達成困難じゃねぇとつまんねぇだろ?」


そんな冷やかしに苦笑いして、悠二はこの気のいいコウモリに、ただ感謝の意を述べる。


「ありがとう、キバット」
「よせやい。大したことしちゃいねぇよ」


◆◆◆


――場所は移って、御崎高校渡り廊下。


『本ッ当にすいませんでした!』
「いや、俺は別にいいんだがよー」


携帯電話片手に、奏夜は昨日無断欠席した佐藤啓作に連絡を取っていた。
同じく休んだ田中栄太宅に連絡したところ、佐藤家の方に泊まっているとのことだったので、こちらの方が手っ取り早いのである。


「全く、お前らが休むのは勝手だが、連絡くらいはしろよな。出席日数の整理は意外に大変なんだよ」
『……あの、無断欠席した身で言えたことじゃないんですけど、先生が電話掛けてきた理由って、俺や田中への配慮とかじゃなくて、ただ先生が面倒なだけでしょ』
「…………………チッ、バレたか」
『先生今舌打ちしましたよね!? ボソッと聞こえないように言ってたみたいですけど舌打ちしましたよね!?』
「何を言うか。俺がそんな配慮に欠けた言葉を口にするはずなかろう。やれやれ、自意識過剰な坊っちゃんだ」


電話越しの佐藤のツッコミを軽く聞き流し、奏夜は続ける。


「どうやら親御さんにも詳しい連絡してないみたいだが、何か理由があるのか?」
『……えっと』


佐藤が言い澱む。
言いたいが言えない、そんな沈黙だ。


「……それと、さっきから雑音に混じって『死ぬ~、いっそ殺して~』って声が聞こえてくるんだが」
『ッ!!』


奏夜は音楽に携わっているからか、耳がいいのである。


佐藤は電話越しからでもわかるくらいに動揺した。


『き、気のせいです気のせいです!! 嫌だな先生、何を言ってるんですか!』
「ちなみに正確な分析をするなら、声質からして女性。悲鳴のトーンからして二日酔いか何かが原因と思われる」
『特殊捜査班か何かですか先生は!!』
『おーい佐藤、さっきからツッコミの声しか聞こえねーけど、どうしたー?』


佐藤の声の後ろで、田中の呼び掛けが聞こえる。
佐藤は業を煮やしたのか、半ばヤケクソ気味に、


『とっ、とにかく、昨日は俺も田中も外せない用事がありまして、その関係で今日もお休みさせて戴きます! ご迷惑を掛けてすいませんでしたっ!!』
「あっ! おいコラ逃げん……ったく」


一方的に電話は強制的に切られ、奏夜は溜め息をつきながら、それをポケットにしまう。


「外せない用事ねぇ……」


佐藤と田中は何も不良というわけではないから、不純な動機ではないだろうが……。


「しかし、さっき電話越しに聞こえてきた女の声、どっかで聞いた気がすんだが……おっと」


思考を遮断し、向こうの廊下から歩いてきた生徒に軽く挨拶する。


「よう、坂井に平井」
「あっ、先生。おはようございます」


悠二も奏夜に気付き、頭を下げた。


「おはよ」
「………」


“にこやかな笑顔”で挨拶してきた平井ゆかりことシャナに、不覚にも、奏夜は顔をひきつらせた。


「あ、ああ。おはよう」


奏夜がフリーズしかけた頭をフル稼働させて挨拶を返すと、シャナはご機嫌なまま、教室へと入っていく。


「……な、仲直りは出来たみたいだな、坂井」
「はい。多分、ですけど」
「ただ少し、リバウンドが大きいみたいだが」


そう言う奏夜の心境が痛い程分かる悠二は、苦笑いを返す。


「ま、仲直り出来たなら良かったよ。昨日のレッスンも無意味じゃなかったわけだ」
「……あの、先生、昨日はすみませんでした。いきなり怒鳴ったりして」
「あーあー、気にすんな気にすんな。若い内にはよくあることさ」


そう言って奏夜は、謝罪する悠二の肩を軽く叩く。


「それよりも、宿題の答えは見つかりそうか?」
「――はい」


何故強くなりたいのか。
それをまだ、はっきり口にすることは出来ない。
恥ずかしいというのもあるけれど、口にすればするだけ、それは曖昧になってしまいそうな気がするから。


奏夜は悠二の何処か晴れやかな様子を確認して、


「そっか。じゃあ“口に出来る”ようになったら、また教えてくれよ」


いつもの快活な笑みを浮かべ、奏夜の脇をすり抜けていった。


「敵わないよなぁ、先生には」


あの奇妙な先生は、人の内面を理解することに長けている。
今回のことで、ほとほとそれを実感した。


奏夜があの時くれた助言は、どれもこれもあの時の悠二にピッタリな言葉だった。
いつも飄々としている破格教師と皆は言うが、本気でそう言う人間は、この学校にはいないと、悠二は思う。


世の常識から外れようが、ただ自由。
そんな生き方をしながら、誰かを助けられる。
端的に言って――




物凄くカッコいいのだ。




シャナとは違う意味で、憧れる。


(どうしたら、あんな風になれるんだろう)


それとも、こう思うこと事態が、昨日ラミーが言っていた“青さ”なのだろうか。
己の弱さを自覚し、悠二は呟く。


「――頑張ろう」


今口に出せる、精一杯の覚悟を。


◆◆◆


そんなこんなで、四時間目の現国。


(来た)
(動いたか、『弔詩の詠み手』)


授業を続ける奏夜とシャナは、自在法の気配を感じ取る。
シャナが立ち上がり、悠二もそれに習う。


奏夜と、クラス全員の注目を集めつつ、シャナは言い放った。


「お腹が痛いから早退するわ。坂井悠二に送ってもらうから」


……ここまでわかりやすい嘘だと、いっそ清々しい。
だが、奏夜もシャナと悠二が早退する理由はわかっていたので、


「そうか。一応医務室には寄っておけよ」


いいのかそれで。


昨今、奏夜へのツッコミに関して、息が合ってきた一年二組である。
撤収準備を整えた悠二が、軽い調子で言う。


「それじゃ先生、そういうことで」
「あぁ、気ぃつけてな」


二重の意味を込めた奏夜の言葉に対し、シャナも答えを返す。


「ありがと、奏夜」
「……」


……名前呼ばれたっ!


もはやフリーズどころの話では無かった。
昨日の件での、彼女なりの感謝なのかもしれないが……。


(……すまん平井。普通に怖いぞ)


シャナと悠二が去っていったドアを呆然と見つめながら、奏夜は思う。
そんなびっくりイベントのせいもあってか、授業が終わってしばらく経ってからも、奏夜の体感温度は下がりっ放しだった。


だがそれでも、やることは変わらない。
携帯電話を取り出し、ある人へ連絡をかける。


「――あ、名護さん? 奏夜です。少し手伝って貰いたいことがあるんですけれど」


◆◆◆


学校から抜け出した奏夜が向かった先は、昨日悠二達のいた御崎アトリウム・アーチ。


「名護さんは……まだ来てないか」


マシンキバーを近場に停め、存在の力を感じ取る。


今、この建物全域には群青色の巨大な“封絶”が張られていた。
明らかに『弔詩の詠み手』――マージョリーの製作物。中からは、ラミーとマージョリーの気配。


そして、建物から少し離れた位置に、シャナと悠二の力を感じた。


「これなら、平井達の方が早く、ラミーと合流出来そうだな」


そう算段をつけ、奏夜はアトリウム・アーチの中へ。
ビルを一気にかけ上がり、五階まで来た辺りで、上層の外構庭園に大爆発が起きる。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す! “紅世の、っ徒”ぁー!!」


『ヒャーッハーッハーッハー! 殺すぜ、壊すぜ、食いちぎるぜぇ!!』


マージョリー、マルコシアスの狂笑まで聞こえてきた。


「わっかりやすいなぁおい!!」


舌打ち三寸、奏夜は更に足を早める。


どうにか、庭園の一階層下まで辿り着く。
しかし、そこから見える景色は、マージョリーの入るトーガの獣が、ラミーに向けて太く長い腕を振り被るところだった。


「終わぁ」
『りだ!!』


ここからでは間に合わない。打つ手も無い。
――だが、奏夜は焦っていなかった。




刹那、獣の長い腕が真っ二つに裂けた。




『――!』




トーガの獣の驚愕は、派手に割れたガラスから飛び込んできた何者かを、凝視する。




ここからでもわかる、
“紅蓮”の炎を携えた少女の姿を。




「こんにちは、“蹂躙の爪牙”マルコシアス、それに『弔詩の詠み手』」


威圧的に、少女は大太刀の切っ先を向ける。




「改めて名乗るわ。私は、“天壌の劫火”アラストールのフレイムヘイズ。


『炎髪灼眼の討ち手』……名前は、シャナ」




誇らしげに、堂々とシャナは名乗った。
その姿に、昨日までの憂いは微塵もない。
煌々と燃え上がる強さだけが、そこにはあった。


「奏夜くん!」


自信を取り戻したシャナの姿に安心していると、後ろから名護が追い付いてきた。


「すみませんでした。急に呼び出したりして」
「いや、私の方こそ遅くなってすまない。――あれが、君の言っていたフレイムヘイズ、『炎髪灼眼の討ち手』か」


名護が庭園を見ながら言う。


「名護さん、“封絶”の中で、何か違和感はありますか?」
「取り敢えずは大丈夫だ。これのお陰でね」


ポケットから出したゼロノスカードを見せ、名護は問う。


「それで、私は何をすればいい? “屍拾い”という“徒”を、守って貰いたいとのことだったが」
「はい。“屍拾い”は老紳士みたいな格好で、あの青い獣っぽいヤツが、今回ブチのめさないといけないヤツです。だから早く上に上がって――」


そこで奏夜は言葉を切る。
名護もまた、自分の後ろを振り返り、嘆息した。


「――どうやら、先に黙らせなければならない相手が来たようだな」


二人の背後には、二体の異形――ホースファンガイアとライノセラスファンガイアが、唸り声を上げて立っていた。
奏夜と名護は並び立ち、神経を張り積める。


「見たところ、再生体のファンガイアですね。一体誰が……」
「わからない。だが、私達のやることは、一つだ」
「ははっ、それもそうですね。――キバット!」
「っしゃあ、出番だな! キバるぜキバるぜぇ!」


奏夜は飛来したキバットを掴み、左手を噛ませる。
名護も、懐からイクサナックルを取り出し、手のひらに押し付けた。


「ガブッ!!」
『レ・デ・ィー』


噛み付きと待機音が鳴り、奏夜はキバットを掲げ、名護はイクサナックルを右横に構えて叫ぶ。




『変身!!』




『フィ・ス・ト・オ・ン』


キバットをキバットベルトに、イクサナックルをイクサベルトに装着。
奏夜の身体に巻き付いた光の鎖が弾け、ベルトから放出される圧縮されたアーマーの映像が、名護に重なる。


仮面ライダーキバ。
仮面ライダーイクサ。


二人の仮面ライダーが、ここに降臨した。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈め!」


「その命、神に返しなさい!!」




フレイムヘイズと仮面ライダー。
それぞれの戦いの火蓋が、切って落とされた。


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  1. 2012/03/19(月) 13:04:05|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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