紅蓮の牙

二次創作中心。仮面ライダーキバと灼眼のシャナのクロスを連載中。

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【感想】特命戦隊ゴーバスターズ Mission14.サバ?救出作戦

前回より引き続き、チューバロイド2とのバトル。

・マスク割れキターー!

・一号と違ってかなり強い二号さん。前回の迷子状態からようやく登場のニックにより形成逆転 …かと思いきや、ヨーコちゃんさらわれたーっ!?


・……ヨーコ、ヘルメットだけ外せばよくね?(それはいうな

・ゴリサキ「すぐメンテルームに持ってく!」
なんかここのゴリサキが凄く頼りになる雰囲気。

・チューバロイドの要求は、ヨーコの身柄を保障する代わりに、メガゾードのエネトロン回収の邪魔をするなとのこと。
不謹慎ながら「あの世へ転送させる」と聞いた時のウサダの「バカバカー!」に和みました。マジこの子保護者過ぎる。

・エンターの狙いはチューバロイドの二段攻撃。
ここはヒロムの冷静な判断力が活きましたね。

・「そんなことよりもヨーコちゃんを!」
中村さんが最近どんどんキャラが立ってきてますね。普通の人代表といいますか。
ヨーコちゃんとも仲良いみたいですし、同じ女性としてヨーコちゃんは妹みたいに思ってるのでしょうか。

・ヨーコのサプライズパーティーは、バディロイド達の誕生日でした。

・ゴリサキ「リュウジ、お父さんになってる!」
吹いたw

・ヒロム「行きますよ、お父さん!」
もう一回吹いたw
どんだけ年上ネタ引っ張んだw

・ちょ、二人とも潜入時のアクションパネェ!!

・ヒロム「それ年ですよ」
本日のストレート発言。

・ヒロム「また言い過ぎました」
リュウジ「気付いただけでも成長じゃないの?」
本当にね…今まではスルーしてたもんね…。

・ヒロム「トレビアーン?」
リュウジ「使い方違うし!」
ま さ か の コ ス プ レ 返 しwwwwww
ヒロムのエンター再現率異常だろ……この前のオペさん二人といい、何でゴーバスのメンツはこんなにコスプレスキルが高いんだwww

・「何故お前から心臓の音が聞こえる!」
なんかまたエンターさんに関して重要そうな伏線が……

・「お待たせ!」
バイクに乗るゴリサキ。無茶しやがって……

・あ、今回はバディロイド達との名乗りなのか!

・見事な連携でメタロイドを倒す三人。しかし息つく間もなく、メガゾードとのバトルです。
え、ゴリサキのタイヤってそんな風に使えんの?(驚

・メガゾードを倒し、ようやくのサプライズパーティー!
・ニック「俺が温泉に…って入れるか!」
ヒロム「入れるだろ。普通のバイクとは違うんだし」
あー……ニックへのサプライズはこういうオチですかwww

・ヨーコ「今度は一緒に乗ろっ!」
ウサダ「まぁ、乗ってあげてもいいけど……」
ウサダがアトラクションが好きなのは、ヨーコと一緒に乗りたかったから。
もうね。なんですかこの可愛いメカウサギは。このちょっと拗ねた感じとか可愛い過ぎだろ!

・結局帰ってこなかった司令官は謎の森へ。と、そこに現れたのは新たな金銀のゴーバスターズ!

・スタッグ「俺は来た。初めてだ」
ビートバスター「どけよ、俺にかぶんじゃねぇ!」
……あちこちで言われてますが、この二人から滲み出る侑斗&デネブ臭はなんなんですかね(笑)

次回から本格参戦の新たなバスターズ。敵か味方か……

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  1. 2012/05/31(木) 12:33:54|
  2. 【感想】特命戦隊ゴーバスターズ
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第零話・プレリュード/覚醒の夜.後篇


気絶状態から覚醒した奏夜は、休む間もなく街を駆け回っていた。


「はぁ、はぁっ……くそっ!!」


苛立ち紛れに舌打ちし、辺りに目を走らせていくが、恵の姿はない。
あんな目立つ化け物と一緒にいるのだから、誰か目撃者がいてもおかしくはない。
しかし相手はファンガイア。証拠を残さない完全犯罪はお手のものだ。


「おい!」
「は、はいっ! なんでしょうか?」


近くにあった弁当屋の店員に声をかける。
人嫌いだなんだと言っている場合じゃない。


「このあたりで怪しいヤツ見かけなかったか!?」
「あ、怪しい人ですか? さ、さぁ……私は今日、朝からずっとここにいましたけど」
「おーいバイトくーん、ちょっとこっち手伝ってくれー!」
「あ、はーい! あの、お役に立てなくてすみません」


ぺこりと頭を下げ、店員は弁当屋の中に消えていく。
時計を見ると、気絶時間込みで一時間は過ぎている。


「マズいな……早くしないと」


奏夜はまた駆け出す。
商店街から離れ、どんどん人影が消えていくが、肝心の恵だけは何処にも見あたらない。


「畜生、どうしろってんだよ……」


焦りと苛立ちをミックスさせながら、奏夜は御崎市外れの雑木林に差し掛かる。
今は使われていない幽霊物件が乱立し、恵を連れ去ったのなら、隠し場所にはもってこいなのだが……。


「うぉーい、奏夜ぁ――!」


パタパタと小刻みに聞こえてきた羽音。
飛来した金色の影は、奏夜のよく見知った相棒の姿。


「キバット!!」
「ふいー、ようやく見つけたぜぇ。こんな町外れで一体何やってんだ?」
「一切合切全部後だ! お前、ここに来る途中までにファンガイア見かけなかったか!? 早くしないとあの人が!」
「あの人? 誰のことだよ」
「あーもう! 前に風呂場で話したろう! お前が言ってたモ、モデ……」
「モディリアーニ?」
「多分それだ! お前がモディリアーニがどうとか話してた時!」
「……ああ! お前のマスク取ったって女のことか!」


キバットは羽の先で器用にポンと手を打つ。


そして切羽詰まった奏夜の様子。そしてブラッディローズの覚醒から、キバットは大体の事情を察した。


(にゃるほどねぇ……)


僅かな時間で変わるもんだ。
本当に成長する兆しはどこにでも転がっている。
だがキバットは、敢えて聞いた。


「探す分には構わねぇけど……いいのかよ?」
「は?」


奏夜は本気でわからないという顔をした。
ほんの数時間前まで、浮かべなかっただろう感情である。


「お前、そのモディリアーニの姉ちゃん助けようとしてるみてーだけど、もし助けたら、今までのお前にゃ戻れねぇぞ?」


奏夜はあからさまに表情を曇らせ、口を閉ざした。


「誰にも関わらない。自分だけが世界の全て。モディリアーニの姉ちゃんを助けるってことは、今までのお前を全て否定するってことだぞ。
それだけじゃない。お前は今まであまりに排他的だった。今更他人を受け入れるなら、そのツケを支払わなくちゃならない。それ、とんでもなくツラいことだと思うぜ」


それでも。





「助けるのか? その姉ちゃんを」





「……」


奏夜はぎゅっと拳を握り締める。
改めて、自分が今までどういう人間だったのかを自覚させられた。
紅奏夜を理解しようとしてくれた人達を全て拒絶し、容赦なく傷付けてきた。


わかっている。
今頃になって誰かを助けても、これまでの罪状は消えない。ただ、苦しいだけだ。


けど。それでも。




「…………助けるよ」




小さく、しかしハッキリとした口調で答える。


「正直、まだ人間は苦手だ。ファンガイアと敵対するのだって凄く怖いし、そもそも助けられるかどうかだって怪しい」


どう見てもリスクしかない行動。
まさに奏夜の嫌いな正義のヒーローの如き行いだ。


「けど、動かなきゃいけない気がするんだ」
「ほーう?」
「俺、さっき初めて、心の底から人を助けたいって思ったんだ。そしたら、ブラッディローズの音色が聞こえた。『戦え、戦え』って」


あの音色が聞こえてきた時から、胸の鼓動が止まらない。
奏夜の心は、名前のつけられない衝動で満たされていた。


「正義のヒーローになるつもりはない。でも、俺の心が言ってるんだ――ここで動き始めなきゃ俺、絶対に後悔する!」


制御不能な感情が、戸惑いを焼き払い、昨日までの自分を忘失させていく。
生まれ変わっていく自分を止められないまま、奏夜の『心の音楽』は、一際大きな波動を生み出した。
世界中に響き渡るかのように。
新しい自分の目覚めを伝えるかのように。





「俺がどれだけ変わったって構わない!
ただ俺は、あの人を助けなきゃいけない! いや、助けたいんだ!」





魂の咆哮と共に吹き上がった魔皇力。
奏夜が忌み嫌い、抑えつけてきた力が今、再び覚醒した。


(文句なしの合格だな、真夜)


ニヤリと笑うキバット。しかし不敵な仕草とは裏腹に、その表情はどこか嬉しそうでもあった。


「よーし、お前がそこまで言うんなら、このオレ様が力を貸してやるよ」
「……力?」
「ああ。真夜から預かってた、ファンガイアにも負けない特別な力だ」
「母さんから、預かってた力? おいキバット、どういう……」


奏夜が尋ねるよりも早く、キバットは奏夜の左腕あたりにまで降下した。
その口からは、鋭い犬歯が覗く。


「ファンガイアに受け継がれし至高の魔装具『黄金のキバの鎧』。これより継承の試練を執り行う!!」




――ガブッ!!




膨大な魔皇力――アクティブフォースがキバットの牙を介し、奏夜の中に流れ込んでいく。力の注入に伴い、奏夜の頬にはファンガイアと同じ、ステンドグラスの紋様が浮かび上がった。


「う、あああああああぁぁぁぁぁぁ!?」


焼け付くような痛みを感じながら、奏夜の意識は遠のいていった――


◆◆◆


そこは、漆黒の闇が支配する世界。
美しい三日月が、下界の人間を嘲笑うかのように浮かんでいる。
そして、月が放つ孤高の光をバックに立つのは、禍々しい容姿を持つ異形。


「誰、だ」


異形は答えない。
蝙蝠を模した仮面越しに此方を見続けるだけだった。
やがて、銀色の甲冑を揺らしながら、異形はゆっくりと近付いてくる。
淀みない動作で、血に染まったように赤い手が差し出された。


「……」


一瞬、躊躇いに手が震えた。
弱い感情と戦いながら、恐る恐る手を伸ばし、相手の手をしっかりと握る。
異形は頷くと、仮面の下からくぐもった声が聞こえてきた。





「継承の儀は終わった。闘おう、共に」





うん――頼りない主だけど、よろしく。




◆◆◆


御崎市郊外にある寂れた礼拝堂。
若い男女が永遠を誓う祭壇の傍らには、気を失い、黒い気品溢れるドレスを纏った恵が、花の詰まった棺の中で眠っていた。やはりダメージが大きかったのか、気絶から目覚める様子はない。


「おぉ――! 美しいぃぃぃぃ……! まぁさに天使だぁ……」


その側には、歓喜に身体をくねらせるスパイダーファンガイア。
ドレスを着た恵の美しさには誰もが同意するだろうが、スパイダーファンガイアの喜び方は、完全に変態のそれだ。


「さぁて、衣装も整ったし……遂に、遂に念願の結婚式をぉぉぉぉぉぉぉ!」


一際オーバーな動きをしつつ、スパイダーファンガイアは顔と思わしき部分を、眠り続ける恵に近付けていく。


「めぇぐみぃ……これでお前は俺のものだ――」


ステンドグラスから零れ落ちる月光が照らす礼拝堂。
歪んだ誓いが、神の下で交わされる――






ガッシャーーン!!





「ヒッ!」


突然の轟音。
礼拝堂上部にあるステンドグラスの窓が次々と割れ、彩りの破片がぱらぱらと落ちていく。
まるで虹の雨だ。


「な、何が……!」


スパイダーファンガイアに思考の余裕は与えられなかった。
割れた窓から、無数の黒い影が、礼拝堂になだれ込んで来たからである。


「ヒッ、な、なんだこりゃあ!?」


影の正体は、無数の蝙蝠だった。
夜の獣達はスパイダーファンガイアの視界を奪い、再び漆黒の闇に消えていく。


「くっ、一体何がどうなって……っ!?」


言いかけて言葉を失う。
いない。さっきまで棺で眠っていたはずの花嫁――恵がどこにもいない。


「恵!!」


慌てて外に飛び出したスパイダーファンガイア。
眼前にある荒れ果てた広場には霧が漂い、より不気味さが募っていた。


「!! 誰だ!!」


ファンガイアの鋭敏な聴覚が、物音を捉えた。
霧は段々と彼方に消え、仇なす敵を映し出す。


「貴様は……!」


愛しの恵を両手に抱き抱える男――紅奏夜を、スパイダーファンガイアは憎しみを込めた目で睨む。


「何故ここが分かった!?」
「聞いただけだ。この人の――恵さんの『心の音楽』をな」


そっと、恵を近くの柵に寄りかからせながら、奏夜は抑揚のない声で告げた。


「一応忠告しておく……。死にたくなければ、さっさと消えろ」
「ふざけるな! 恵は俺のものだ、人間風情が出しゃばるな!」
「そうか。なら……」


手加減できなくても恨むなよ。
奏夜はゆっくりと、その左手を掲げた。


「キバット!!」
「おう!!」


飛んできたのは金色の蝙蝠、キバットバット三世。


「よっしゃあ! キバッて、行くぜ!!」


キバットを右手でキャッチし、そのまま左手を強く噛ませる。




「ガブッ!!」




牙から注入されるアクティブフォース。
鎖と共に巻かれる真紅の止まり木『キバットベルト』。
そして、頬に浮かび上がるステンドグラスの紋様は『破壊の魔帝』覚醒の証。


突如、スパイダーファンガイアの顔が恐怖に歪んだ。
先刻まで狩る側の目だったそれは、更なる強者に狩られる獲物でしかない。


「き、貴様……それは、その、力は……!!」


奏夜は研ぎ澄まされた眼差しで、スパイダーファンガイアを睨んでいた。
自らの力となった『鎧』を保有するキバットを手前に突き出し、奏夜は叫ぶ。





「変身!!」





キバットベルトに逆さまに止まったキバットの瞳が点滅し、円環状のウェーブが巻き起こる。


変化はそれだけではなかった。
光で構成された鎖が、奏夜の身体に巻き付いていく。


じゃらり、と鎖が軋み、まるで、生まれた力に耐え切れなくなったかのように、光は弾け飛んだ――


◆◆◆


(……う)


暗い夜の冷たさが身を貫く。
背中に堅い感触。
少なくとも家にいるわけではないのは分かった。
首を僅かにもたげると、ぼんやりと古めかしい教会が見える。


(なんで、こんなとこに……)


寝起きで動作不良を起こす頭を全力で回しながら、恵は今までのことを思い出していく。


(……そうだ。私、あのファンガイアに負けて、気を失って……)


身体を起こそうとするが上手くいかない。ダメージは大きいようだ。


(……っそうだ。あのコは……)


さっきまで一緒にいた青年。
自分が無事だからといって、彼が無事である保障はない。
段々と意識が覚醒し、それに伴い、霞んでいた目の視力が戻っていく。
――庭園の中心部。対峙する2つの影。


一人はスパイダーファンガイア。





そしてもう一人は――





「……っ!!」


恵は言葉を失った。
その瞳に飛び込んで来たのは、血の如き真紅の外皮。
重厚感溢れる目映い銀色の甲冑。
夜の闇の中にあっても、狩り人の鋭い光を失わない、蝙蝠を模した仮面。


(あれ、は……まさか!!)


間違いない。
その名をファンガイアに轟かせ、リーダーである嶋からも、幾度となくその危険性を聞かされてきた『ファンガイア以上の脅威』。





「キバ……!!」




全てを無に帰す破壊の魔帝。
その存在が今、恵の目の前にいた。



◆◆◆


「ハッ!」


両腕を大きく広げた独特の構え。
重量感漂う鎧からは想像もつかないスピードで、キバはスパイダーファンガイアに真っ正面から突っ込んでいく。


「グッ……、うぉぉぉ!」


思わぬ敵の出現に怯みこそしたが、スパイダーファンガイアも負けるわけにはいかない。
花嫁を取り返すべく、こちらも小細工抜きでキバを迎え打つ。


―-ガンッ! 
生物同士が奏でるとは思えない重厚な音が激突する。
拳がぶつかり合ったことを認識した瞬間、両者はすぐさま次の攻撃に転じる。


「はっ!」
「しゃあっ!!」


拳と脚の壮絶なラッシュ。間合いをとったかと思えば、次の瞬間には距離が詰まっている。人外としての強大な力が、夜の暗闇の中でしのぎを削っていた。
激しさを増す戦いは、雑木林に場所を移していく。


「ふっ!」


未だに続く攻防戦の最中、キバは突如スパイダーファンガイアに背を向け、彼の拳を回避しつつ、鮮やかな宙返りを決めた。
しかし、それは防御を優先させての行動ではない。
キバは空中にある脚を、近くに立つ木の枝に引っ掛け、そのモチーフに恥じぬコウモリのように、逆さまの状態でぶらさがったのだ。


「はぁぁぁぁっ!」
「ご、はっ!」


宙吊りから、スパイダーファンガイアへの猛烈なパンチの嵐。
雑木林に移動したことをすぐさま駆け引きの中に取り入れる手腕が、キバの戦闘センスを物語っている。


「クッ……出でよ!」


肉弾戦では不利と判断したのか、スパイダーファンガイアは左腕に魔力の流れを集める。すると、左腕のステンドグラスの外皮が輝き、ぱらぱらと細やかな破片を落としていく。
落ちたガラスはひとつの形として集束し、一本の長剣を生成した。


「はっ、せいっ!」


鈍く輝く剣が振り抜かれる。伸びたリーチにキバは一旦距離を取るが、攻守が逆転してしまったのは痛い。キバも徐々に追い詰められ、逃げ場を失っていく。
ふいに、背中に何かが当たる感覚。
木が邪魔で後退できない、追い詰められた。


「ハァッ!」
「ぐっ!?」


生まれたチャンスに、キバへと浴びせられる無数の斬撃。
斬られた部位の鎧からは紅い火花が散り、装着者へのダメージも着実に蓄積されていく。


「トドメだぁ!」


勝利を確信し、スパイダーファンガイアは最後の一撃を放つ。


――ドスッ!!


申し分ないスピードで突き出された鋭き刃が、キバの胴体を貫いた。


「あっ!!」


キバを追いかけてきた恵が、息を呑む。
スパイダーファンガイアに勝利の余韻が、恵に「まさか」と思う気持ちが、それぞれ錯綜する。
しかし、


「へっへっへ~~!」
「何ィ!?」


必殺の一撃にも関わらず、キバには傷一つ無かった。
ベルトに止まっていたキバットが、刃を口に咥えることで防いでいたからだ。


「じゃんにぇん(残念)でした!」
「はぁっ!!」
「ごふっ!?」


驚愕に注意力を削がれたスパイダーファンガイアは、キバの強力なストレートをモロに食らう。
木々を薙ぎ倒しながらもその勢いは止まらず、木々の切り開かれた広い伐採所まで、スパイダーファンガイア吹き飛ばされてしまった。


「ぐ、おのれぇ……!」


悔しさに歯を軋ませるが、ダメージは大きい。
動けぬスパイダーファンガイアの前に、甲冑が擦れるような音を響かせながら、キバが近づいてくる。
月明かりを浴び、敵を冷たく見下すその姿は、まるで処刑人だ。


キバは静かに、ベルトのサイドケースから、水晶のように輝く笛『ウェイクアップフエッスル』を取りだし、ベルト中央部のキバットにそれを咥えさせる。


「よし、行くぜぇ!! 『WAKE.UP!』」


ベルトから外れたキバットはキバの周囲を飛び回りながら、高らかにフエッスルを吹き鳴らす。まるで夜の静寂を切り裂くように。


「ハァ〜〜〜ッ!!」


キバが両手をクロスさせた途端、何処からともなく立ち込めた紅い霧が、夜空に立ち上っていく。
すると、半円だったはずの月が突如、キバフォームの力を最大限にまで発揮できる三日月へと変貌する。
世界の摂理以上に優先される力。その恐ろしさとは裏腹に、夜の漆黒に浮かぶ三日月は妖艶な美しさを放っていた。


「ハッ!」


キバが右足を振り上げると、周囲を飛び回っていたキバットが、右足に装着されている甲冑『ヘルズゲート』の鎖――否、強大な力を抑える封印を解き放つ。
地獄の門が開かれ、顕現するは悪魔を思わせる赤い翼。
残った左足に力を込め、天高く飛び上がるキバ。真紅の両翼は彼を夜空へと誘っていく。
三日月をバックにキバは空中反転。スパイダーファンガイアへと狙いを定め――




「ハァァァァァァァ―――ッ!!」




勢いをつけての急降下攻撃。
天より闇を裂く必殺キック『ダークネスムーンブレイク』が、スパイダーファンガイアに叩き込まれた。


「ぐっ、おおおおおおおおお!?」


スパイダーファンガイアは正面からそれを受け止めるが、凄まじい勢いには勝てず、土埃を上げながら後退していく。
まずい。このままでは――!!


「うっ、あああああ―――!」


『逃げ』へと転じる判断はすぐに下された。
渾身の力でスパイダーファンガイアは身体をよろけさせ、ダークネスムーンブレイクのプレッシャーから逃れる。腕が深く抉られはしたが、命には代えられない。


「!!」


キバが驚愕するも、発動した技は方向転換できない。
空振りに終わったキックの力は大地へと叩き込まれ、コウモリを模したキバの紋章を、クレーターとして遺すだけに終わった。
一応周囲を見渡すも、既にスパイダーファンガイアは逃げ延びた後だった。


「……逃した」
「じゅーぶんじゅーぶん。犠牲者もいねーし、初めてでこれだけやれりゃあ上出来だ」


ふうっ、と一息入れるキバ。しかし、難はまだ去っていなかった。


「――キバ」

振り向くと、そこには恵が立っていた。こちらに突きつけられているのは、銀色の銃器・ファンガイアバスター。
彼女の瞳には驚愕と恐怖の二つが宿っている。


「動かないで」
「……」


キバは動かない。
なめられているのか。自分など、簡単に消せるという意思表示か。
恵は内心冷や汗をかきながら、キバと対峙する。


「……うっ」


突如、キバの身体がふらりと揺れ、地面に倒れた。
魔皇力強化による負担が身体に襲いかかり、キバの鎧も強制解除を余儀なくされる。


「……えっ?」


これにはさすがの恵もきょとんとする。
恐る恐るといった風に、キバがいたはずの場所に倒れている人影へと近づいていく。
やがて月光が、キバの正体を映し出す。


「! キミ……!」


そこにいたのは、ついさっきまで自分と一緒にいた青年――紅奏夜が倒れていた。
傍らには、奇妙な金色のコウモリ、キバットが「お、おーい。大丈夫か奏夜~!」と声をかけ続けている。


「そんな、キミが……キバ?」
「う……」


次から次へと襲い来るサプライズの連続に混乱する恵だったが、すぐに我に返る。
キバだなんだというよりもまず、倒れた奏夜へのケアが最優先ではないか。


「ちょ、ちょっとキミ! 大丈夫!?」
「う……、は、は……」
「は?」


何が情報になるか分からない。恵は必死に奏夜の声を聞き取ろうとする。


「腹、減った……」
「……」


……何のことはない。ただのベタ過ぎる欲求だった。




出会いの夜は明ける。
覚醒の時を、告げるかのように。




◆◆◆


――後日。市内某所のトレーニングジムにて。


「キバが現れたとは、確かなのか?」
「はい。私もこの目でキバを見るのは初めてなのですが……」


恵が話しているのは『素晴らしき青空の会』リーダー、嶋護。彼女の上司にあたる男だ。


「そうか……わかっているとは思うが、名護君には言うな。彼が聞けば、真っ先にキバを倒そうとするだろうからな」
「はい。……あの、嶋さん」
「なんだ」
「嶋さんは以前、キバをファンガイア以上の脅威と言っていましたよね?」
「……ああ」


嶋は重量感のあるバーベルを持ち上げながら答える。


「だが私も、キバに関して詳しいわけではない。相手のカードがわからない以上、こちらからカードを切るのは危険だ。
キミの情報を疑うわけではないが、キバに関しては、しばらく様子を見た方がいいだろうな」
「……はい。了解しました」
「? どうした。何か言いたいことがあるのか?」
「いえ、何でもありません。……失礼します」


ぺこりと頭を下げ、恵は嶋に背を向けた。
嶋が首を傾げたのがわかったが、努めて平静を装い、トレーニングジムの扉を開けて外に出た。
歩きながら、恵は考える。


(……どうしよう)


嶋には言えなかったこと。
知ってしまったキバの正体――紅奏夜。


素晴らしき青空の会の一員としては、嶋に報告するべきだっただろう。人類の脅威を野放しにはできない。
だが、奏夜がキバであると知れれば、最悪彼は処分される。
彼の普段の姿を知っている手前、それは嫌だ。


「はぁ……ホントどうしよう」


慣れないダブルバインドに重くなる頭で、恵はなんとか『マル・ダムール』に辿り着く。
コーヒーでも飲んでスッキリしよう。
そう考えての行動だったが――




『……あ』




店の扉を開けた瞬間に後悔した。
カウンター席に誰であろう、さっきまで自分の脳内の大部分を占めていた青年、紅奏夜が座っていたからだ。





「あ、恵ちゃん恵ちゃん。ちょーど良かった」


奏夜と話していたらしいマスターが、恵に笑いかける。


「あの、マスター。その子は……」
「うん。なんか恵ちゃんに用があるんだってさ。――ほらキミ、恵ちゃん来たよ」


マスターに促され、 奏夜は立ち上がって恵を凝視する。
どこか居心地が悪そうな、オドオドした顔つきだった。


「……あの、えっと……」
「……なによ。言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい」


もしかして、キバについてだろうかと勘ぐりながら、恵は言う。奏夜は尚も唸り続けていたが、ややあって、恵を真っ直ぐに見据え――深々と頭を下げた。


「その……ごめんなさい!!」
「えっ!?」


いきなり謝られた。
しかもあまりにキッチリとした前屈姿勢付きで。


(な、なに!? なんでいきなり謝られてるの私!!)


むしろ助けてもらった手前、自分は礼を言うべき立場だ。
戸惑う恵に、奏夜は傍らにあった包み紙に入った箱を差し出す。


「あの、これ……ひ、ひどいものですが」
「あ、うん。ありがとう……」


ちなみにこの場合、「つまらないものですが」というのが正解である。


「でも、どうしたのキミ。いきなりこんなお詫びの品まで持って……私、何も謝られるようなことされてないわよ?」
「いえ……あなたがそう思ってなくても、その、俺自身のけじめって言うか……」
「――もしかして、今までのつっけんどんな態度のお詫びってこと?」


奏夜は押し黙る。
図星だったらしい。


「俺、あれからいろいろ考えたんです……。変わるには、どうしたらいいのかって。そしたら、生まれた時からの親友が『まずは歩み寄ることから始めろ』って言ってくれて……だからまずは、今まで迷惑をかけた人に謝ろうって、ここに来たんです……」


あの不遜な態度が欠片も見られないほど、奏夜は緊張しているように見えた。
恵はようやく気が付く。恵が会話の中で見抜いた奏夜の本質――奏夜は今、本当の自分と向き合えるように、始まりの一歩を踏み出そうとしているのだ。


「だ、だからその……ひ、ひどいこと言って、ごめんなさい。図々しいお願いだって、分かってます。でも、もしまだ許してくれるなら――」


掌が、恵に向けて差し出された。





「俺の、友達になってください……!」





目を伏せて、掌を震わせて、奏夜は恵の返事を待つ。


「……ふふっ」


恵はついつい笑ってしまう。
なんだこれは。さっきまで悩んでいた自分がバカみたいじゃないか。
何がキバだ。何が人類の脅威だ。


(こんないいコが、人を滅ぼすわけないじゃない)


今目の前にいるのは、臆病で、不器用で、けれど変わるために精一杯の勇気を示している、ただの男の子。
そして多分、これから長い付き合いになるであろう――友達だ。


何の迷いもなく、恵は奏夜の手を握り返す。
顔を上げた奏夜を真正面に見つめ、恵は笑顔と共に言う。


「これからよろしく。奏夜くん!!」


奏夜の表情はみるみるうちに喜びに彩られていく。
――それが、奏夜が恵に見せた最初の笑顔だった。


「はいっ! よろしくお願いします、恵さん!!」






――全てはここから始まった。
これはやがて、紅蓮の炎を引き寄せることになる運命の牙。
その誕生の記録である。


  1. 2012/05/31(木) 11:06:33|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第零話・プレリュード/覚醒の夜.中篇

俺がこの力を自覚したのは、小学生の頃だった。


当時の俺は、いじめから守ってくれる兄さん(この頃はまだ、兄さんだとは知らなかったけれど)がいなくなって、再びいじめの渦中に立たされていた。
所詮は悪戯の域を出ないものであり、学校の教師も手を出さず、俺自身も我慢できていたと思う。


だが、あの一度だけは違っていた。
いじめっ子の一人が、からかい目的で俺のバイオリンに落書きをしたのだ。
そのバイオリンは、音楽を習い始めた俺に、母さんがプレゼントしてくれた大切な宝物であり、顔も知らない内に死んでしまった父さんと自分を繋ぐ、唯一の架け橋だった。


――そして事は起こった。吹き上がった怒りをトリガーに、俺の中で眠っていた魔力が覚醒したのである。


幸いにも、そのいじめっ子は軽傷で済んだが、俺と母さんはその地を後にすることを余儀無くされた。
――俺を「化け物」と恐れる人々の視線を、背中に受けながら。


「奏夜、あなたは悪くないわ。悪いのは、私……」


自分がしたことを知り、泣きじゃくる俺を、母さんはただただ抱き締めてくれた。


今にしてみれば、母さんは俺以上に、自責の念を抱いていただろう。
母さん自身が宿す血を――人としての生き方を許さない異形の血を、俺に受け継がせてしまったことに。


だが勿論、子供だった俺は、そんな母さんの想いに気付かず、一つの結論を出した。


――俺が絶対に誰かを傷付けるなら、俺はずっと一人でいればいい。
誰も近寄らないように、俺がみんなから怖がられるやつになればいい。




そう。まるでTVに出てくるような、ただヒーローに淘汰されるような、『化け物』になればいい、と。




◆◆◆


ぱち。
目を開くと、見慣れた天井。右側には昨日まで睡眠の友としていた筈のベッド。
どうやら寝返りを打って落下してしまったらしい。


「……起きます」


固まった身体をほぐし、今日の新聞を取りに行こうと、テーブルの上にあったマスクとゴーグルに手をかける。





――ほら、全然平気じゃない。なーにがこの世アレルギーよ。気のせいよ気のせい。





「………」


脳裏によぎるのは、あの不愉快な女の言葉。
伸ばした手が、不自然な形で止まる。
――いや、関係ないだろう。あんなどこの馬の骨とも知れないような女の言うことなど気にする必要はない。今まで培ってきた『紅奏夜』という人間の在り方を、たった一日のイレギュラーを原因にひっくり返すつもりか。


「~~~!!」


凄まじい葛藤の中、奏夜はこの世アレルギー対策グッズに腕を近付けたり、引っ込めたりを繰り返す。
端から見ると、その光景は拙いパントマイムようで、甚だ異様な光景である。


「何やってんだ奏夜のヤツ……」


親友の奇行を目撃したキバットは、軽く奏夜との付き合い方を考え直したくなったという。


◆◆◆


結局、マスクとゴーグルは着けて出掛けることにした。この世アレルギーを克服した――いや、してしまったことを認めたくないが為の、見苦しい抵抗である。


(不幸だ……)


某幻想殺しの常套句を心中で呟きながら、奏夜は休日で人も多い通りを歩く。
春も近いこの季節、ゴーグルはともかくマスクをしてる人は多いので、奏夜としては気兼ねなく外出できる。しかし、胸に残るモヤモヤは依然として晴れない。


(俺がこの世アレルギーじゃない、か……)


キバットに言った通り、奏夜は少なからずショックだった。
そもそも『この世アレルギー』はある意味、奏夜自身が望んで生み出したとも言える体質だ。
誰も傷付けたくない、だから誰とも関わりたくない、世界と繋がらなければ、誰も傷付かない。恐れから来る拒絶こそが、この世アレルギーの発生要因だからである。


だが奏夜は『この世アレルギー』を社会的なハンディだと思ったことは一度もない。
むしろ、己の本質とも言える『化物』を封じ込める、鉄壁の監獄だと解釈していた。


この体質を知った時は嬉しかったな。
歪んだ感性だと分かっていつつも、奏夜はつい思ってしまう。
だって、これさえあれば、誰も傷付けずに済む。内に秘めた獣を飼い慣らし、この汚れた世界を生き抜いていけると。


――まぁそれも、あの奇妙な女に、完璧に閉じたはずの扉をこじ開けられるまでの話だったが。


目の前の信号が青に変わった。
ばらばらに歩き出す通行人に混じって、奏夜も足を進める。


(公園で、材料集めでもするか)


物憂げな思考を止める方法は、やはりヴァイオリンしかなさそうだ。
本日のスケジュールを決め、奏夜は公園方面に進路を取る。


――と、反対側の歩道に渡ったところで、子供とすれ違った。小学校高学年くらいの男子で、サッカーボールを片手に、休日を満喫しようとしている。


(子供は呑気なもんだな)


こっちの悩みがどうでもよくなる――否、むしろ子供の無知さが馬鹿馬鹿しくなる、と言うべきか。
マスクとゴーグルの下の表情を僅かに歪め、奏夜は子供から目を離す――はずだった。

「……?」


音楽家の鋭敏な聴覚が、不愉快なノイズを捉える。
奏夜は、横断歩道に交差する車道の先へ顔を向けた。


連なって止まる自動車。その間を縫うようにして、一台のバイクが突っ込んで来たのだ。
乗り手はガラの悪そうな若い男。青信号にじれでもしたのだろう。アクセルを緩めずにマシンを進めている。


魔のホイールが進む先には、先程の小さな男の子。――あの様子では、バイクに気付いていない!!


「っ!!」


余計な理屈を考えるより早く、奏夜は駆け出していた。
地を強く蹴り、一瞬で子供とバイクの間に割って入る。
ようやく互いの存在に気が付いた子供と若者をよそに、奏夜はバイクに向かって手を突き出した――


◆◆◆


「……うそ」


事の一部始終を、恵は反対側の歩道から見ていた。
恵もまた、バイクと子供の存在を認知し、事故を止めるべく飛び出しかけていた。
しかしそれよりも更に早く、反対側にいた奏夜――恵にとっては、昨日出会った奇妙な少年という認識だが――が横断歩道に飛び出し、あのままなら確実に、子供をひき殺していたであろうバイクの前に立ちはだかったのだ。


――そして今。
少年はバイクを“片手”で止め、あろうことか、バイクの前輪を力任せに“捻り切った”。


(回転してるホイールを掴んで止めて、しかもフレームごと捻り切るって……!!)


常識的に考えて有り得ない光景に、恵のみならず、集まってきた野次馬達も唖然とする。

当の奏夜はというと、バイクのホイールを無造作に投げ捨て、最早粗大ゴミと化したバイクのグリップを握り続ける若者を睨み付けた。


「……俺も人のこと言えるほど立派な人間じゃねぇが」


地獄の底から聞こえてくるような重低音に、若者は「ヒッ!」と息を呑む。


「交通ルールくらいは守れよ。ゴミが」
「は、はいぃぃ!!」


壊れた玩具のように首を縦に振り続ける若者を余所に、奏夜は後ろの子供を見た。
自分に迫っていた脅威を知り、横断歩道にへたり込みながら震えている。


「…………大丈夫か」


奏夜は「自分のキャラじゃない」と思いつつ、躊躇いがちに男の子に声をかける。
男の子は小さく、こくりと頷いた。瞳の奥には、人外の技を見せた奏夜への、明らかな『畏れ』があった。


「………ちっ」


別に慣れた反応ではあるが、いい気はしない。
舌打ち混じりに、奏夜は転がっていたサッカーボールを拾い上げる。
球体の表面には、手書きでこの子供のものと思しき名前が書かれていた。


――ふーん、『さかいゆうじ』か。


「ほらよ」


サッカーボールを持ち主に放り投げ、奏夜は興味を無くしたと言わんばかりに、踵を返す。
人も増えてきている。今の規格外な所行を考えると、警察に掴まるのは面倒だ。


「あ、あの!」


呼び声に振り向いた奏夜に、ゆうじはおずおずと、しかしはっきりした声で、


「あ、ありがとう、ございました」


ぺこりと頭を下げる少年。奏夜はまさか礼を言われるとは考えていなかったらしく、紅潮した顔を隠し、逃げるように横断歩道を渡っていく。
そのせいか、恵とすれ違ったことにも、気付いていないらしい。


「あ、キミ!」


恵自身もようやく放心状態から脱し、走り去っていく奏夜を追いかけていった。


◆◆◆


朝の喧騒に邪魔され、一旦は奏夜を見失った恵だったが、ややあって、公園のベンチに座る影を見つけた。
――奏夜は何故か、ノラネコを抱き上げ、肉球の感触を楽しんでいる。


(……いや、確かにネコの肉球は癒されるけど)


何故今やる?
あれか、さっきの事故のショックから抜け出す為か。
だが、この前のやり取りからは、なかなかに図太い印象を受けたのだけれど。


「ねぇ、キミ」
「……」


ゴーグル下の目が不快そうに歪み、恵を捉えた。
また貴女ですか。と言外に訴えている。


「隣、いいかしら」
「………」


ポケットを探る奏夜。しかしそれより早く、恵がその手を掴む。


「こら、ポケット台詞帳で会話しない。返事は口でしなさい。この際マスク着けててもいいから」
「……………………………………どうぞ」
「今、かなり激しい葛藤があったわね……」


隣に腰掛ける恵に意識を向けないよう、奏夜はなお必死にノラネコを愛でる。


「キミ、名前は?」
「……………」


どうやらこの人は、自分を逃がしてはくれないらしい。


「奏夜。紅奏夜」
「ふーん。奏夜くんか……いい響きの名前ね。私は恵、麻生恵よ。一応モデルもやってるんだけど、知らないかしら?」
「……世俗に疎いので」


鬱陶しい。この人の腹は読めている。
どうせこれらの質問は切り出し口で、本当に聞きたいのはさっきの信号の騒ぎについてだろう。あれだけのギャラリーだ。見られていても不思議じゃない。


案の定、恵はやや歯切れ悪そうに、


「ねぇ、間違ってたら悪いけど――キミ、ファンガイアでしょ?」


奏夜は少なからず驚いた。
人間じゃないのがバレることは予想していたが、ごくごく普通な女性の口から『ファンガイア』の単語が出るとは。


「……知ってんのか。ファンガイアのこと」
「そりゃね。私、ファンガイアハンターだから。素晴らしき青空の会って組織、知らない?」
「知らない」
「あら意外」
「世俗に疎いって言ったろが」


だが、ファンガイアハンターの名前から、大体予想はつく。
人間を襲うファンガイアから世界を守る秘密組織――そんなところだろう。


「ハンター、ハンターね。はっ、そりゃあいい。つまり、偶然見つけた俺のことも狩りに来たってわけだ」
「む。見くびらないで欲しいわね。私は人喰いしてるかどうかも不確かなファンガイアを狩るほど、盲目的なことはしないわよ」
「アンタの見てないとこで喰ってるかも知れないぜ? 勝手な価値観で俺を見逃しでもしたら、アンタの面目丸つぶれだぞ」
「だから、見くびらないでってば」


獰猛そうに顔を歪める奏夜だが、恵は何一つ動じた様子はなかった。


「子供を助けるためになり振り構わず飛び出して、幼い命を奪いかけたバカ野郎に怒って、ついでに公園でネコと戯れてるような“人間臭いファンガイア”、狩る方がどうかしてるわ」


ぴくりと奏夜の手が反応する。
奇妙な指の動きに不快感を覚えたのか、野良ネコは奏夜の手から飛び出し、草むらへと走り去っていく。


「まぁ端的に言うと、キミともう少し話して見たくなったのよ。私が今まで会ったファンガイアって、それこそ人間らしさの欠片も無かっ」
「……俺は化け物だ」


奏夜が恵の言葉を遮る。地獄の底から聞こえるような低い声だった。


「俺は人間じゃない。……いや、ファンガイアからも弾き出された、ただの化け物だ」
「ファンガイアからもって……」


説明すべきか否か迷ったが、結局奏夜は何かを諦めたように口を開く。
……そう言えば、キバット以外に自分の心境を吐露する、というのも、久しぶりだった。


「俺は、半分ファンガイアで半分人間なんだよ」
「半分人間? えっと、つまりハーフファンガイアってこと?」


奏夜は小さく頷く。
恵もハーフファンガイアの存在は嶋から聞いたことがあったが、出会ったことは無かった。


「でも、化け物ってどういうこと? ハーフなだから、ただのファンガイアよりか人間に近いんじゃないの?」
「……そんな単純な比率の問題なら、誰も苦労しねぇよ。俺は完全な人間でも、完全なファンガイアでもない。ただそこに存在するだけの亡霊だ」


奏夜の声がどんどん影を帯びていく。
恵は黙って奏夜の話を聞いていた。


「アンタ、世界から拒絶されたことあるか?」
「え?」


いきなりの規模が飛んだ。世界から拒絶? 意味が分からない。


「……世界全てを敵に回すっていう意味なら、無いけど」
「俺はある」


奏夜はぼんやりと空を見上げた。
さながら、世界に恨み言を吐くかのように。




「人間からはファンガイアの力を忌み嫌われて、ファンガイアには人間の血を汚らわしい目で見られる。どっちの世界も俺を拒絶して、世界の全てが俺の害悪になった。
歩み寄ってきてくれるヤツもいたよ。でも、俺の正体を知ったらみんな離れてった。俺のそばにいるヤツなんて、今じゃ俺と同じはみ出し者が一匹だけだ」


いつもヴァイオリンを習いに来る少女も、自分の正体を知れば逃げ出すに決まってる。
さっき助けた子供も、物事が考えられる年頃になったら、バイクを片手で止めた自分をどう思うことか。


……どうせ傷付くなら、一人の方がずっといい。幼い頃、苛めっ子を殺しかけた時に決めていたことだ。


「可哀相自慢をするつもりはねぇ。ただ、アンタも不幸になりたくないなら、俺に関わらないことだ。関われば、ファンガイアどころか人間も敵に回すぜ」




俺は、化け物だ。




繰り返しそう告げ、奏夜はベンチから立ち上がる。


「まぁ、アンタの目につくような行動はしないよ。俺、ライフエナジー吸う必要ないみたいだしさ。……それじゃ」


去り際に、せめてもの別れの挨拶。
だが、奏夜の話を聞いていないのか、恵は口元に手を当て、ブツブツ呟いている。


「……ふむふむ、成る程そういうこと」
「? どうしたんだよ」
「これならこの子の社会復帰にもなるか……けど問題は嶋さんが許すかどうかね……」
「おい、聞いてんのか」
「特に名護くんは要注意ね……取り敢えず身分は秘密にしてればいいか。うん、そうしよう」
「……っ、おいアンタいい加減に」
「キミッ!」


いきなりガシッと両手を掴まれる。
美人の部類に入る恵の行動に、奏夜は驚きと羞恥に顔を染め上げる。


「な、なんだよいきなり!」





「気に入ったわ! キミ、『素晴らしき青空の会』に入りなさい!」





「……」


恵の言葉を脳内で幾度も反芻する。
素晴らしき青空の会。さっきも聞いたファンガイアハンターの組織。そしてファンガイアハンターは、ファンガイアを狩ることを生業とする人間、たち、で……。


「……はぁッ!?」
「いやー、ちょうど良かった! 嶋さんからメンバーが不足してるから、誰か優秀そうな人をスカウトしてくれって頼まれてたけど、まさかこんなとこで、キミみたいな人間らしいファンガイアに会えるなんて思わなかったわ~!」
「な、おい、ちょっと待」
「さっきの横断歩道の様子を見てる限り、体力とか筋力も申し分なさそうだし、キミ、即戦力になるかも知れないわよ」
「いや、だから人の話を聞」
「あ。ハーフファンガイアだとかは気にしなくていいからね。黙っときゃ誰も気付かないだろうし、ファンガイアさえ倒しちゃえば誰も文句は言えないから。
ちなみに仕事にはカフェの手伝いとかもあるから、キミの社会復帰にも役立つし……」
「だからちょっと待てと言ってるだろアンタの耳には相手の反論遮断するフィルターでも着いてんのか!!」


トントン拍子に決まっていく話を、奏夜の大声が強制中断させた。
――ちなみに、これが奏夜の生まれて初めてのツッコミである。


「アンタ頭おかしいんじゃないか!? 俺にファンガイアハンターになれ!? 今までの流れからどうしてそんな話になんだよ!」
「うん? ごくごく自然な流れだと思うけど。言ったでしょ、私は優秀な人材を探してるの。
一番必要な身体能力は超有力株。しかもす~~~っごく優しい。私的に採用基準はオールクリアよ。何の問題があるっていうの?」
「俺の意思が何一つ反映されてねぇのが問題だろが!! だいたい何だ! す~~~っごく優しいって! さっきまでの話聞いてて、何で俺にそんな印象を持つんだよ!」
「何でもなにも、私はさっきの話を聞いて、キミがす~~~っごく優しいって思ったんだけど」
「……何?」


激昂が立ち消え、奏夜の顔に無表情が戻ってくる。
若干引きつってはいたが。


「どういう意味だよ」
「そのままの意味よ。――実を言うとさ、キミに初めて会った時から、なーんか違和感はあったのよね。ちぐはぐっていうか、言動と中身が一致してないっていうか。けど、もう一度しっかり話してみて分かったわ」
「だから何が」
「キミ、自分の力が怖いから、自分の力で他人を傷付けたくないから、そんな態度取るんでしょ?」
「――っ!」


顔が急に強張るのを感じた。
自分の内側に、土足で踏み入れられたかのような感覚。


「な、何を訳の分からないことを……」
「訳は分かってるはずよ。他でもないキミ自身がね。まぁそれでも詳しい話をするなら……」


恵は言う。


「アナタの態度はパッと見だけだと、協調性の無さから来るものに見える。
けど、全体を見るとただの暴言じゃない。それは全て相手を『拒絶』する言葉だった。
これにさっきの話を加えると、アナタの人間性が見えてくる。
化け物である自分が、他人を傷付けるのが怖いから『拒絶』する。す~~~っごく優しいからこそ、キミは他人を傷付けることに耐えられない」
「か、勝手な推測は止めろ! 俺はただ他人と関わりたくないだけだ! 他人なんかどうでもいい、まして優しさなんか持っちゃいない!」
「じゃあ何で、さっきの子を助けたの? 形振り構わず、バイクの前に飛び出してまで」


恵が強く言い放つ。
奏夜は言葉に詰まり、なにも言い返せなかった。


「――キミは優しい。だから他人を傷付けたくないっていうのも分かるわ。でも、一生その生き方を貫けるの? ツラいわよ、ずっと一人きりって」


胸がズキリと痛む。
知っている。嫌というほど。


「他人を拒絶することは、優しいキミにとって楽なものじゃないでしょう?
傷をずっと抱えたままいたら、いつか潰れちゃうわよ。
――だからさ、ほんの少しだけでもいいから、誰かを信じてみなさい」
「……けど、俺はやっぱり」
「難しい? じゃあまず、私から信じてみなさい。
さっきはああ言ったけど『素晴らしき青空の会』に入るかどうかはキミの自由。
でも、キミと私はこうして知り合った。だから『素晴らしき青空の会』に入らなくても、キミが望むならこうしてお喋りだってできるのよ?
私はファンガイアのことも知ってるし、ついでに神経も図太いから、ドーンとぶつかってらっしゃいな」


最後は冗談めかしく、恵は締めくくる。
片や奏夜は震えていた。自分の根底が揺らいだことに対する恐怖心か。心の中を次々と見透かされたことに対する怒りからか。


いや、違う。
混乱こそしているが、その理由は降って湧いた清々しさからくるものだ。
今までのしかかって重圧が取り払われたかのような感覚。


こんな――簡単なことなのか?
こうも軽々と、価値観はひっくり返るものなのか?
孤独を貫いてきた奏夜に、人間を知らない奏夜に、答えは出ない。
人を拒絶してきたことが――今だけは恨めしかった。


「ま、いろいろ講釈並べちゃったけどさ。手っ取り早く纏めると」


すっと奏夜に向けて手を差し出す恵。




「私と、友達にならない?」





◆◆◆


――奏夜が恵の手を取ることはなかった。
真昼の公園に似つかわしくない轟音。
視界を覆う赤い電光が、二人の周囲で弾けたからである。


「っ!」
「きゃっ!」


光に目を覆いながら地面を転がり、どうにか受け身を取る二人。
一体なんだ?
その疑問に答えが出るまで、そう時間はかからなかった。


「やぁ~~。また会えたね恵ちゅわ~ん!」


いやに間延びした声と共に、雑木林の影から奇妙な生き物が現れる。
ステンドグラスに覆われた外皮に、クモを彷彿とさせる八本足と上顎を持つ異形の姿――糸矢ことスパイダーファンガイアだ。


「……ファンガイア」
「あーもう、まーたアナタなの?」


恵がうんざりしたように髪を掻く。
何を隠そうこの糸矢は、以前名護が言っていた、恵を執拗に付け狙うストーカーのようなファンガイアなのだ。


「お~いおい、そんな冷たいこと言うなよぉ。こうしてまた会えたんだ。もっと再会を喜び合おうじゃないかぁ!」
「お断りよ。ぶっちゃけるとアナタ、全ッ然タイプじゃないの。不快さで言ったら名護くんといい勝負だわ」
「ぐわーーん!! な、なんというつれなさ……だが、それでこそ、あのゆりの娘だ!! 絶ぇっ対に手に入れるぞ、お前を!」
「うわウッザ。私に目をつけるとこまでは良かったけど、しつこいのはNGね」


俄然やる気を出したらしいスパイダーファンガイア。
片や心底面倒くさそうにしながら、恵は懐から、小型のボウガンのような銃器『ファンガイアバスター』を取り出し、構える。


「神は過ちを犯した。アナタのような存在を許した過ち――私が正すわ」


鋭い眼差しで、恵はトリガーを引く。
銃口から放たれるシルバーアローが、容赦なくスパイダーファンガイアへと突き刺さる。


「ぐおっ! くっ、恵を手に入れる為、これしきの痛みなど何のこともないっ!」
「チッ、やっぱ一筋縄じゃいかないか……キミ、ちょっと離れてなさい」
「……」


奏夜は迷っていた。
――いいのか? ただ見てるだけで、俺は戦わなくていいのか?


「ちょっとキミ、聞いてるの!?」


ファンガイアバスターからワイヤーを伸ばし、スパイダーファンガイアを薙ぎ払いながら、奏夜に呼び掛ける恵。
だが、奏夜は棒立ちになったままだ。


(……たた、かう)


それは、力を自覚した時から、ずっと禁忌にしてきた行為。
敵も味方も、何もかもを無差別に滅ぼす忌まわしい力。
この力のせいで、自分の中に眠る怪物への恐怖心のせいで、奏夜は他人との繋がりを拒絶した。


(身体中が熱い)


だが今は違う。
煮えたぎるような闘争心が、内から湧き上がってくる。


最初は不快感しかなかった。心に土足で踏み入るこの女性が、鬱陶しくてたまらなかった。


――だが、何故だろう。ずっと閉ざしていた心を開けた女性が、今目の前で戦っている。そして自分は、何もせずに佇むだけ。
力に怯えて何もしない、無能な自分。
それは、凄く――




(嫌、だな)




ほんの数分前まで考えもしなかったこと。


(逃げたくない)


目に見える不安を数えて、立ち止まりたくない。


(動き出したい)


閉ざされた窓の奥に隠れていて、何が始まるんだ?
窓を蹴破って、絡みつく鎖を引き千切れ。


「……たい」


心の底から噴出してくる高揚を感じながら、奏夜は呟く。


「……戦い、たい」






――~~~~♪






「っ!!」


突如、奏夜の頭の中に響く音色。
単調ながら、尚も優雅さを失わないリズムを奏でるそれは――


(ブラッディ、ローズ……!?)


父である紅音也の残した最高傑作。彼と奏夜、親子を繋ぐ唯一の絆が作り出す音色が今、奏夜の頭の中に響いていた。


(――戦え)


リズムの中に紛れる声。


「な、にっ……!?」


(戦え)


頭蓋を襲う激痛。
それに伴い、脳裏に鮮明なイメージが流れこんでくる。





それは三日月をバックに、蝙蝠の仮面と、真紅の甲冑を纏う戦士。





(戦え―――に流れ―――を―る為に!!)





「う、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「奏夜くん!?」


一際大きな痛みの波に、奏夜は膝から地面に崩れ落ちる。
スパイダーファンガイアに応戦していた恵は驚き、一瞬意識を奏夜に向けてしまう。
スパイダーファンガイアにとって、それは大きな隙だった。


「ふっ!!」


スパイダーファンガイアの口から吐き出された糸が、恵のファンガイアバスターを絡め取る。
そのままスパイダーファンガイアが支点である頭ごと振り上げると、糸に付着したままだったファンガイアバスターが恵の手を離れ、宙を舞う。


「!! しまっ……」
「ふんっ!」


間髪入れず、スパイダーファンガイアは体内の魔皇力を集め、紫色のエネルギー弾を射出する。


「きゃああぁぁぁぁ!」


生まれた衝撃が恵と奏夜を吹き飛ばす。
手加減していたのか、それが生み出す結果は、二人の意識を奪うに止まった。


「チュ~リッヒヒヒ! やった、つ~いにやったぞ!! さあ、俺と一緒に行こう! 恵ちゅわ~ん!」


スパイダーファンガイアの勝利の高笑いが、雑木林に轟いた。




◆◆◆


――~~~~~♪


「むむっ!? この音色は!!」


紅邸。
ヴァイオリン型の巣箱から飛び出したキバット。
その瞳が捉えたのは、ショーウィンドウに飾られたブラッディローズ。


演奏者がいないにも関わらず、立てかけられたブラッディーローズの弦は震え、何かの警告の如きリズムを奏でていた。


「遂にこの時が来たんだな……よっしゃ、待ってろよ奏夜!! 今こそお前に『鎧』を渡してやるからな!!」


キバッて行くぜ~~!!
意気込みもハイテンションに、キバットは紅邸から飛び出して行った。

  1. 2012/05/31(木) 11:05:52|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第零話・プレリュード/覚醒の夜.前篇




この世界は汚れている。


空、海、大地、動物、人間。
どれもこれも鬱陶しくて堪らない。
同じ空気を吸いながら生活するなんて虫酸が走る。
こればかりは、生まれついた性格だったのだから仕方がない。
俺がそもそも“そういう存在”だったというだけの話だ。


まぁ、それを差し引いても、色々と歪んでいたのは間違いないだろう。


ガキの頃に抱いていた思想が『ヒーローなんか殺されて解されて並べられて揃えられて晒されればいい』というひねくれ具合からも、それは想像に難くない(ひねくれる、という言葉では済まないかもしれないが)。


何を好き好んで、ヒーローは他の人間なんか守っているのだろうか。
しかも、傷つくのは自分で、さしたる見返りもない。ハイリスクローリターンにも程がある。


どちらかといえば、怪人の方に共感していただろう。
彼らが見せる見事なまでの散り様は、ある意味、ストーリーの中で憎まれ役を買って出た結果だ。
ヒーローの引き立てとしての仕事を全うし、ただ物語の舞台を降りていく。


悪役であるという、それだけの理由で。


自分と同じく、何の文句も言えないまま、ヒーローに淘汰されていく怪人を、俺は幼心ながらに可哀想と思ったものだった。


――あの頃の俺は、常人からすればあまりに逸脱した価値観を包括しながら、数少ない友人と共に、打算的な生き方を貫いていた。


変わることはない。その必要もない。


そう、思っていた。




だから多分――何かが変わったとするなら、あの日が全ての発端だったんだろう。




◆◆◆


御崎市某所の公園。
午後と言えど平日であるため、人の数はまばらだ。


「オイ、何黙ってんだよ!」


と、その和やかな風景に、一際似付かわしくない罵声。
柄の悪い三人組の男に、一人の青年が絡まれていた。


「なぁ、ぶつかっといて詫びも無しかァ!?」
「あ! こいつ知ってるぜ、近所でお化け太郎とか言われてるヤツだ!」
「格好もおかしけりゃ、態度もおかしいみたいだなぁ!」


三人組の言う通り、青年の姿はやや異質だった。


右手には薔薇の花びらが詰め込まれたビニール袋。
目深に被った毛糸の帽子に、目元全てを覆うゴーグル。
極めつけに風邪予防のマスクを付け、表情は完全に隠れている。
体躯から男性だというのはわかるが、不審者と捉えられても文句は言えない格好だった。


「………」


青年はゴーグルの奥で目を細め、ポケットから手帳を取り出した。
片手で器用にページをめくり、三人組に突き出す。


『うざい、五月蠅い、鬱陶しい。さっさと消えろ雑草が』


それは、沸点の低い三人組を怒らせるには十分なセリフで。


「あぁッ!? テメェ馬鹿にしてんのか!」


振り被られた拳が、青年の顔面を狙う。
青年は面倒臭そうに、拳を突き出してきた男の足を払った。


死角からの攻撃に男はバランスを崩し、ひっくり返る。
青年はそのまま、思いっ切り男の胸を踏みつけた。


「ごぶっ!?」


奇声を挙げ、肺から空気が全て吐き出される。


「こ、このっ!!」


残る二人も拳を振り上げるが、それよりも早く、青年の放つ拳が、彼らの顔に炸裂した。
バキッ、という気味の悪い音を鳴らし、二人は地に沈み、激痛に悶える。


「……」


青年は踏みつけた男を見下げ、再び足を宙に浮かせる。
確実なトドメを刺すためだ。


「ひっ……!」


自分の辿るであろう末路に、男は声を漏らす。


――が、


「奏夜!」


聞こえてきた甲高い声。
奏夜と呼ばれた青年が足を寸止めし、声のした方に目をやる。


「ちょっとなにやってるの! 喧嘩なんか私が許さないわよ!」


現れた中学の制服に身を包んだ少女――野村静香は、後ろで纏めた髪を振り乱しながら近付いてくる。


「……チッ」


去り際、男の腹を蹴飛ばしつつ、奏夜は静香を無視して、公園を後にする。


「あっ、こら! 待ちなさいよ!」


静香は律儀にも男達に「ごめんなさい」と謝罪し、慌てて彼の後ろ姿を追いかける。


「……オイ、着いてくんじゃねぇ」


心底鬱陶しそうに、奏夜はゴーグル下の目を細めた。


「奏夜!  喧嘩なんかしちゃダメって、何度言えばわかるのよ!」
「……お前は俺の母親か? あいつらが勝手に絡んできやがったんだ。正当防衛だろうが」
「だからってすぐ暴力を使うなんて最低だよ! 言葉があるんだから話し合えば……」
「アレが話し合いでどうこうなるシチュエーションに見えたかよ。状況よく見てからモノは言え」


奏夜はゴーグルの下で、静香を睨む。
苛烈に研がれた視線には、一片の温かみもなかった。


「いいからもう俺に関わるな。鬱陶しいんだよ。お前」


苛々を吐き出し、頭に上がった血が退いていく。
冷静さが戻った時、静香は今にも泣き出しそうに震え、涙目になった顔を俯かせていた。
さすがに罪悪感が生まれるが、それでも奏夜は突き放すような口調を止めない。


「……ヴァイオリンを教わりたいなら余所を当たれ。それこそ部活に入るなりしろ」
「っ、私は、奏夜に教えて貰いたいの!!」


そこだけは譲れないとばかりに、静香は声を荒げた。


「音楽が大好きで、あんなに凄い演奏が出来るんだから、教えるのだって……」
「買いかぶりだ。例え教えたとしても、二流三流が関の山だって何度も言っただろうが」
「……私に、音楽を習うだけの才能が無いってこと?」
「俺に、教えられるだけの余裕が無いんだ」


そこだけは、刺々しい口調ではなく、卑下するようなトーンだった。
そう、本当に余裕など無い。 まして、他人に教えられる才能など。


――否。俺はそもそも、


(他人になんか、興味は無い)


世界は、自分だけが全てだ。
他人だからこそ得られるものがある?
吐き気がする。 そんなもの、自分が大切に保ってきた世界への侵略に他ならない。


――イラナイ。




「他人なんか、いらない」




◆◆◆


「これは……確かに酷い臭いだ」


鼻を突く異臭に、呼ばれた警察官は顔をしかめる。


場所は、御崎市某所のとある邸宅。
通報は、付近の住人から。
この家から漂ってくる異臭に、ほとほと困り果てているのだと言う。
城門の前には、警察官の他、訴えを起こした住人達が詰めかけていた。


「強制立ち退きでも何でもいいから、とにかく何とかして!」
「その前に家宅捜査だろ!」
「遺体でもでりゃ、それこそ大事件だよ!」
「いや……それはさすがに」


飛躍し過ぎた話に、警察官が苦笑していると、邸宅に続く坂道から、二人の男女が歩いてくる。


奏夜と静香だ。


「あ、ほら、お化け太郎よ!」


我が家に向かおうとする奏夜に、住民達は指差した。


「あ~、君がここの住人だね」


警察官が、「近所の人も迷惑してるから」だの「下手をすれば公害の可能性もある」だの、形式的な質問をする傍ら、奏夜は終始無言だった。
周囲に群がる住民に目もくれず、まるで自分が世界の中心、とでも言いかねない立ち振る舞いだった。


「ちょっと! マスクとんなさいよ! おまわりさん聞いてんだから!」


奏夜の態度にじれたのか、小太りした体格の中年女性が、無理やりマスクを剥ぎ取ろうとする。


「まったくもう、こんな迷惑かけやがって! 親の顔が見てみたいもんだ!」


住民の誰かが口走った台詞に、奏夜は初めて反応した。


「………あ゛?」


ゴーグル下の目は据わり、激怒一歩手前といった声音だった。
鋭い眼孔に睨み付けられ、警官を含めた住民達が、恐怖にたじろぐ。
張り詰めた空気を、危険信号と捉えた静香が、慌てて奏夜と警官の間に入る。


「あの、すいません! この人アレルギーなんです!」
「アレルギーって……花粉症には、まだ早いんじゃないか?」


疑わし気な警官の目の前で、静香は無造作に、奏夜のマスクを剥ぎ取った。


「……!! うぅっ!?」


さっきまでの剣幕が嘘のように、奏夜は晒された口を、両手で抑えながら、うずくまった。


「『この世アレルギー』」
「こ、この世アレルギー?」


どよめく住民に、静香が淡々と告げる。


「病気というより、奏夜の特異体質みたいなものです。
なんていうか、この世界の全てに、免疫機能が過剰反応を起こし、下手にマスクを外すと、最悪命にかかわります。
それでもというのなら、こちらでも医師の立ち合いを求め、家宅捜査をするのであれば、捜査令状の提示を要求します」


凛とした態度の静香と、苦しみながら、彼女からマスクを取り返そうとする奏夜。


異様と言えば異様な光景に、住民と警官は二の句が継げなくなっていた。


◆◆◆


一連の様子を、紅邸の窓から眺めている影があった。
羽音を鳴らす翼と、暗闇でも怪しく輝く、赤い複眼。


犬歯を覗かせながら、金色のコウモリは、ニヤリと笑う。


「静香、グレイト」


◆◆◆


「はいOK!! 恵ちゃん、お疲れ様!」
「お疲れ様でしたー!」


場所は市内某所の撮影スタジオ。
アイドル界期待の新星である彼女――麻生恵は、達成感を含んだ挨拶で、今日の仕事を終えた。


「ふう……やっぱり笑顔を作るとなーんか疲れるのよねー」
「ふっ、相変わらず呑気なものだな、キミは」


撮影室から出ようとした矢先、恵は先ほどまでの笑顔が嘘のように、表情をひきつらせた。
彼女と同年代位の、猫っ気のある髪をした長身の男――彼女の天敵とも呼べる人物が、入り口の壁に寄りかかっていたからだ。


「今こうしている間にも、世界では数多くの人々が、不幸になっている。キミには戦士としての自覚が足りな過ぎるな」
「……こんなとこにまで来て言うことが嫌味? 自覚がないのはどっちなのかしらね、名護くん」


入り口に立ち、恵に辛辣な言葉を投げかけてきた男。


名前は名護啓介。
恵の“本職”の同僚にして、その中でも卓越した能力を持つエリートだ。
恵の皮肉を意に返さず、名護は笑みさえも浮かべてみせる。


「馬鹿を言うのは止めなさい。まだ私がイクサに選ばれたことを妬んでいるのかな?」
「妬んでないわ。ただ、貴方みたいな人にイクサを渡す『素晴らしき青空の会』の行く末が心配なだけよ」
「手厳しいな。私は選ばれた人間なりの責任を果たすつもりなのだがね」



よく言うわこの偽善者が。
喉元まで出掛かった罵倒をどうにか飲み込み、代わりに恵は溜め息をつく。


「もういいわ。他に要件が無いなら、私はこれで失礼させて貰うわよ」
「待ちなさい。嶋さんからの伝言だ。いつだったかキミの取り逃がした蜘蛛のファンガイア――再び動き出しているらしい」


取り逃がした、の部分を強調され、恵は再び青筋を浮かべるが、名護は素知らぬ顔で続ける。


「しかも、今度はキミを狙っているようだ。どうやらあのファンガイアは昔、君の母親にご執心だったらしくてね。当時からストーカー紛いの行動を続けていたらしい。その娘だと知られた以上、ヤツの目は必ずキミに行く。用心するように――とのことだ」
「……ふん、母さんからの因縁なら望むところよ。次に来たら今度こそ返り討ちにしてやるわ」
「出来るのかな? キミの力で」
「なんですって?」


恵の瞳に剣呑な光が宿る。
名護はやれやれと首を振り、恵に背を向けた。


「まぁ、努力は怠らないようにしなさい。何かあれば、私が助けに向かおう」


名護の姿が通路の端に消えるまで、恵は怨磋の視線を向け続け、


「~~~っ! あぁーー! ムカつくムカつくムカつくムカつくーーっ!!」


腹癒せに近くのゴミ箱を蹴飛ばした。


◆◆◆


結局、ゴミ箱を蹴飛ばしても苛々が収まらなかった恵は、スタジオ近くの定食屋でヤケ食いに走っていた。


「ったく、あの偽善者がどうしてイクサの資格者なのよ! 店長、ごはん(大)追加!」
「はいよっ!」


今日の恵ちゃんは荒れてるなぁと思いながらも、店長は自分の職務を果たし、大盛のご飯をテーブルに置く。
ちなみに、恵の机には優に20枚の皿が積まれている。


「ふぅ……ま、八分目ってとこかしら」


そら恐ろしいことを呟きながら、怒声と食事によって苛々が払拭された頭が、冷静な思考を生み出していく。


(……でも、私がイクサに相応しくないっていうのも確かなのよね。名護くんは性格がずば抜けて駄目だけど、それ以外は完璧超人だし)


恵も、名護の強さだけは認めている。
あの偽善的な態度だけは絶対に認められないが、裏を返せばそこさえ直してくれるなら、名護がイクサを使うことには何の問題もないとさえ思っている。


(だとしたら……やっぱ単純に、名護くんを妬んでる部分もあるのかな、私)


イクサは恵の祖母が立案し、恵の母、ゆりが完成させたもの。
言わば麻生家の志だ。
祖母、母の魂が籠もったイクサを、麻生家以外の者に使われたくない。という気持ちは、そうそう拭い去れるものではない。


「……あー、もう! ヤメヤメ!」


後ろ向きな考えではダメだ。
こんな体たらくでは、それこそ名護に馬鹿にされる。


イクサは今、恵の手元にはない。
けれど、自分がやらなければならないことに変わりはないのだ。
イクサを手にしたいという気持ちはあるが、先ずは目先のことから片付けていかなくては。


「よし! そうと決まれば『マル・ダムール』に行かなきゃね! 店長、お勘定を――」


席から立ち、飯代を払おうとしたところで、恵は言葉を切る。
無い。さっきまで白米と共に自分が食べていた魚料理。
その残りである骨が消えていた。


「あれ? 店長、片付けるなら皿も片付けな、きゃ……?」


恵は視線の端に、奇妙な人影を捉える。
毛糸の帽子とマフラーをつけ、厚手のコートを着た青年。
――その手元には、ビニールで包まれた魚の骨。


「ちょ、ちょっとキミ!」


恵の声が轟き、青年は面倒そうに振り返る。
マスクをした口から声は発さず、ゴーグル下の眼が恵を睨む。
彼はビニールを持っていない方の手で、開いた手帳を彼女に突き付ける。


『いらないでしょ。別に』
「いや、そりゃそうかも知れないけど、女性が食べたものを勝手に持っていくっていうのは倫理的に……ってだから無視して出て行こうとしない!」
「グッ!?」


マフラーを引っ張られ、苦しそうに喘ぐ青年。他の客の奇異の視線など、もはや恵の頭の中には無い。


「人の話も聞かず逃げようとするってどういう了見よ! キミ、ちょっと着いてきなさい!!」


飯代を置き、『はーなーせー!!』と書かれたページを広げる青年を引きずりながら、恵は料亭を後にする。




――二人はまだ知らなかった。
この出会いが、彼らの運命を大きく変えてしまう結果になることを。


◆◆◆


なんでこんなことになったんだろう。


「だ~か~ら、何で魚の骨なんか盗もうとしたのよ?」


向かいの席に座る恵の執拗な追究に、青年――紅奏夜は鬱陶しそうに視線を逸らした。


あの後奏夜は、恵によって馴染みのないコーヒーカフェ『マル・ダムール』なる店に連行され、魚の骨を盗った理由を、根ほり葉ほり聞かれる羽目になった。


他の客のことなど歯牙にもかけず、恵は奏夜に詰め寄り続ける。


(うざいなぁ……)


どうせ魚の骨なんか食わないんだから、ここまでしつこく理由を聞いてこなくてもいいのに。
気だるそうな動作で、奏夜は会話用の手帳をめくっていく。


「……キミ、取り敢えず、そのマスクとゴーグル取りなさい! 表情が見えないんじゃ会話し辛いわ!」
「!!」


何を言ってるんだこの女は。
俺に死ねと言うのか。


「――! ――!」
「こら、暴れないの!」


決死の抵抗を見せる奏夜だったが、日頃から鍛えている恵には適わず、マスクとゴーグルを剥ぎ取られてしまう。
恵は初めて、奏夜の素顔を正面から見た。


「あら! 意外とかわいい顔してるじゃない!」


恵の言う通り、奏夜は鋭い風貌ながらも、どこか子供っぽいあどけなさを残し、大多数の人間がイケメンと評する顔をしていた。


「――むぐっ!?」


慌てて口を押さえるが、焼け石に水だ。
空気を遮断するものが無くなり、この世アレルギーが奏夜を蝕む。
だが、そんな事情を知る由もない恵は、


「え? なに、どうしたの? ……はは~ん。私があまりにも美人だから緊張してるんだ」
「ち……がうっ!!」


間髪入れず否定する青年に、さすがの恵も顰めっ面を向ける。だが、命に関わる状況で、奏夜に恵のことを気にしている余裕は無かった。


「お、俺は、アレルギーなんだよ……! この世アレルギーって言って……と、とにかく、早くマスクとゴーグル返せ……!」


奏夜からすれば切実な要求だったのだが、『この世アレルギー』などというふざけた病名を、常識人である恵が信じるはずもなく、


「この世アレルギー? 何言ってるの、有り得ないから。ほら、深呼吸深呼吸」


恵は奏夜の背中に回り、彼の腕を持ち上げて万歳の姿勢を取らせる。


「あ、アンタ、なんで更に空気吸わせようとしてるんだよ! うっ!? し、死ぬ! 本当に死ぬ!」
「死ぬわけないでしょ、アニメの見過ぎ。……ほら、吸って~吐いて~吸って~吐いて~」


腕を上下させながら、奏夜の深呼吸を手助けする恵。
最初こそ吐き気に身悶えしていた奏夜だったが、呼吸を繰り返す度に、その苦悶に満ちた表情も和らいでいく。


――数十秒後には、奏夜の息は完全に整い、あの気持ち悪さも消えていた。


「ほら、全然平気じゃない。なーにがこの世アレルギーよ。気のせいよ気のせい」
「…………」


恵の言葉も、驚愕した奏夜の耳には入らない。
自分の身体に起きた事実を受け入れることができないまま、奏夜は魚のように口を開閉させることしか出来なかった。



◆◆◆


その様子を、一世代前の望遠鏡で覗く男が一人。


「あれが恵ちゃんかぁ……う~ん、やっぱり母親と同じで綺麗だねぇ」


ややウェーブのかかった髪に、白いタキシードに手袋。音楽家のような出で立ちだが、木の幹に身を潜め、女性の様子を覗き見している姿はただの変質者だ。


「二十二年前は失敗したけど……今度は逃がさないよ。待ぁっててね恵ちゅわ~ん……チューリッヒヒヒヒヒ!!」


手にはめたネズミのパペットを不気味に動かし、男――糸矢は意地汚い笑みを浮かべた。


◆◆◆


カポーン。
この擬音を考えたのは某有名漫画家らしい。


「おい、奏夜。お前まだ昨日の女のこと考えてんのか?」


紅邸の浴室。
体育座り気味に浴槽へ浸かる奏夜へ語りかける声。


声の主はなんと、赤い複眼に金色の身体を持つコウモリだった。
ヴァイオリン型の小さな桶に乗り、湯の上を漂いながら、コウモリ――キバットバット三世は問う。


「そんなにいい女だったのか? ジャンヌの肖像画みたいな!」
「誰だよ。それ」
「お前、何度言ったら分かるんだ! 偉大なる画家、モディリアーニが描いた肖像画の女だよ! あの長い首がど~~にもたまらん!」
「関係ねぇよ、ってかどうでもいいよそんなこと。
問題なのは、俺が本当はこの世アレルギーじゃないかもしれないってことだ」
「何だ、そんなことかよ。それならそれでいいじゃねーか!」
「そんな簡単なことかな……」


奏夜は蒸気の立ち上る天井を、ぼんやりと見上げた。


「こんな汚れた世界の空気を吸っても生きていけるってことは、俺も汚れた人間なんじゃないか? ……そう思うと、なんかショックでさ」
「へっ、アホゥ」


見当違いな悩みを抱える友人に呆れつつ、キバットはぽつりと呟く。


「やれやれ。まだ『鎧』を渡すには早いかねぇ……真夜」


  1. 2012/05/31(木) 11:05:15|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第二十四話・超新星/帰還のエンペラーゴールド.後編



「う~ん、やっぱタッちゃんがいると違うぜぇ!」
「ええ、ワタシも奏夜さんとキバットさんがいる場所が一番落ち着きますよ!」


遂に本来の姿、エンペラーフォームに強化変身したキバ。
興奮の余り語らうキバットとタツロットを目に収めながら、キバEFは声を張り上げる。


「門矢! シャナ! 一瞬でいい、あの竜の幕瘴壁を撃てないようにしろ!」
『!!』


八方塞がりなこの状況にあって、確信の籠もったキバの宣言。
――奏夜が突破口を切り開く。
そう信じ、彼の指示に従うことに一瞬の躊躇もなく、シャナとディケイドは目線を交差させる。


「シャナ、炎を最大まで刀に集めろ! あの生意気な外皮をぶった斬る!」
「わかった!」


シャナの刀が紅蓮の輝きを増していく中、ディケイドはマゼンダと黒でカラーリングされた、タッチ式の携帯端末『ケータッチ』を取り出す。
ディケイドは中にカードを挿入し、描かれたライダー達の紋章を画面越しにタッチしていく。


【KUUGA.AGITO.RYUKI.FAIZ.BLADE.HIBIKI.KABUTO.DEN-O.KIVA!!】
【FINAL.KAMEN.RIDE-DECADE!!】


ケータッチのコールと共に、ディケイドの瞳が赤色に変化。
肩幅にかけて装着されたヒストリーオーナメントには、9枚のライダーカードが収められ、仮面の額には、ライダー世界の王者の証、ディケイドクラウンが輝く。
ケータッチをベルト中央部に付け替えれば、変身完了。


全ライダーの力を引き出すディケイドの真の姿、仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームがここに光臨した。


「切り札が出揃いましたか……異形の竜よ、迎え撃て!!」


エンペラーフォーム、コンプリートフォームを楽観視できるほど、レティシアは自分の力を過大評価してはいない。
早期決着を狙い、死者の書でイルヤンカの動きを操る。


――ゴオッ!!


イルヤンカが肺に空気を吸い込み始める。幕瘴壁へのアプローチだろう。


「向こうもやる気満々みたいだな」
「なら、真っ向から勝負するだけ」


シャナの炎剣は彼女の身の丈を優に越し、その熱気は大気を揺らがせるほど強い。
ディケイドCFの言葉通りに、彼女の全力を注いだのだろう。


「士、半端な攻撃なら必要ないわよ」
「ハッ、それはこっちのセリフだ! お前こそ、俺の足を引っ張るなよ!」


ディケイドCFはケータッチに描かれたクレストの一つ――仮面ライダー響鬼の紋章をタッチする。


【HIBIKI!! KAMEN.RIDE-ARMD】


ヒストリーオーナメントのカードが反転し、ハードターピュラーの右翼に、赤く重厚な装甲を纏う戦士『仮面ライダー装甲響鬼』が現れる。


これこそがディケイド・コンプリートフォームの力。九人の仮面ライダーを最強フォームの状態で呼び出し、その力を使役することができる。
装甲響鬼と動きをシンクロさせながら、ディケイドCFは、右腰に移動したディケイドライバーにカードを装填する。


【FINAL.ATTACK.RIDE-HI.HI.HI.HIBIKI!!】


『はぁぁぁぁ……ッ!!』


ディケイドCF、シャナ、装甲響鬼が各々の剣を振り被る。
すると、ディケイドCFのライドブッカー、装甲響鬼のアームドセイバーからも、マゼンダと赤色の炎が立ち上っていく。
勝負の時と言わんばかりに、正面のイルヤンカは吸い込んでいた息を止め、


「バハァァ――――ッ!!」


凄まじい勢いで発射された攻撃用の幕瘴壁が、風を切る轟音と共に撃ち出される。


『ハァッ!!』


迸る三本の炎剣が、一寸のズレも無く振り抜かれた。
一本では力不足だったその剣も、三本分となれば話は別。
刹那の鍔迫り合いの末、三本の炎剣は幕瘴壁を切り裂き、そのまま延長上にある、絶対の硬度を誇っていたイルヤンカの右腕を深く抉った。


「オォォォォォ――ッ!?」


切り口から鈍色の光を噴出させ、イルヤンカは激痛にその巨体を捩る。


「くっ!!」


レティシアの死者の書に光が灯るも、イルヤンカの支配権はなかなか戻らなかった。
例え意志がなくとも、ダメージを受容する感覚までもが失われたわけではない。
錯乱したイルヤンカの精神が、レティシアの支配を妨げているのである。


「上出来だぜ。門矢、シャナ」


次は自分の仕事だ。


クウガゴウラムから様子を窺っていたキバEFの右手には、いつの間にかバッシャーマグナムが握られていた。
そのままキバEFは、左腕に止まっているタツロットの角『ホーントリガー』を引く。
すると、タツロットの背中に装備された『インペリアルスロット』が回り始める。
やがて回転を止めた図柄が示すのは、緑色の銃器。


『バッシャー・フィーバ~~!!」


タツロットが左腕から外れ、代わりにバッシャーマグナムの銃口部分にジョイントする。


「カチャッ!!」


アームズコネクターから魔皇力が注入され、バッシャーマグナムをフィーバーモードへ移行する。
トルネードフィンが、通常とは比にならないレベルで回転し、大気中の水分を限界まで吸い込んでいく。


「喰らえッ!!」


――バァンッ!!


バッシャーアクアトルネードが水球だったのに対し、今回射出口から放たれた『エンペラーアクアトルネード』は、水蒸気に近い細かな水が螺旋を描く姿は、渦潮のような形状だ。


だが、魔皇力が含まれていようと所詮は水。
イルヤンカの脇腹に勢いよく噴射されたそれは、頑丈な外皮に弾かれ、パラパラと地上に落ちていく。


だが、それでいい。
“頑丈だろうがなんだろうが、その皮膚が上皮組織と結合組織から成り、身体の内側にまで続いてさえいれば”、この技からは逃れられない。


「爆ぜな」


――キバEFが指を鳴らすと、突如としてイルヤンカの腹部から水の粒が飛び散った。太陽光を反射し、美しく輝く様子とは裏腹に、イルヤンカの悲鳴は更に激しさを増す。


それはそうだ。


(何せ、“内側から体内器官をブッ壊されてんだからなぁ)


通常のバッシャーアクアトルネードは魔皇力を含んだ水球により、外側から敵の細胞結合を弛緩させるもの。
対してエンペラーアクアトルネードは、“細かな水の粒一つ一つ”に魔皇力が込められており、例え堅い外皮であろうとも、僅かな隙間から体内に入り込み、内側の細胞結合を弛緩させる技だ。


水の一発一発が細かい粒の為、粉塵の盾である『幕瘴壁』では、本体に届くより先に塵へと付着し、阻まれてしまう技だが(ディケイドCFとシャナに隙を作って貰ったのもこの為だ)、バッシャーアクアトルネードよりも多人数戦に優れ、水球では覆い切れない巨大な敵にも効果がある。


あれなら防御用の幕瘴壁は、しばらく貼れまい。


「ふう……さすがに、しんどいかな」


バッシャーマグナムを下ろし、キバEFはクウガゴウラムの背に膝をつく。
周囲にはディケイドCF、シャナ、キバーラに抱えられた悠二らが集う。


「王サマとしちゃ、及第点ってとこだな」
「……はは、お前のジャッジは厳しいな。門矢」


キバEFの声には、疲労の色が濃い。
当然だ。
エンペラーフォームに戻れたとはいえ、ここに来るまでの奏夜は連戦に次ぐ連戦。
正直な話、いつ限界が来ても可笑しくない状態のまま、この戦いに望んでいたのだから。


「先生、やっぱり今まで無理して……」
「奏夜、もう離脱した方がいい。あとは私達で何とかできると思う」


気遣わし気な悠二とシャナの言葉に、キバEFは自分のボロボロな身体を省みる。
――レティシアとの決着はつけねばならないが、しかしシャナやディケイドの足手まといになるのでは話にならない。


「……そうだな。確かにこのままじゃ、お前らの邪魔になっちまうか」
「いや、そうでもないかも知れないぜ?」


だが、ディケイドCFは平然と現実を鑑みずに告げる。


「レティシアと決着をつけるべきなのはお前だ。あれだけの啖呵切って逃げるなよ」
「ちょっと士くん、それはいくらなんでも無茶苦茶ですよ……」
「夏海ちゃんの言う通りだぞ! レティシアだけならまだしも、それに加えてあの竜と戦えるほど、奏夜の力はもう残ってないだろ!」
「『奏夜の力』は、だろ?」


呆れるキバーラと食ってかかるクウガゴウラムに、ディケイドCFは涼しい口調のまま、一枚のカードを取り出す。
絵柄は、ディケイドとキバが輝く光の糸で繋がれているというもの。


「なら、他の力を借りればいいだけだ」


【LINK.RIDE-KIVA!!】


ディケイドライバーの音声と共に、細い光の糸のようなものが、ディケイドCFとキバEFを繋ぐ。


「わ! 何だこりゃ!?」


――ファイナルアームライドに次ぐ、ディケイドの新たな力、リンクライド。
そのカード効果は、対象のライダーと味方の間で、それぞれに掛かっている能力を共有すること。
だが、光の糸が繋ぐライダーは二人だけではない。


◆◆◆


「何だこの光の糸は。敵意は無いようだが……」
「ああ。むしろ逆に力が湧いてくるようだ」


地上で戦っていたライジングイクサとサガは、突如として上空から降り、自分の背中と繋がった光の糸に困惑していた。


「自在法……じゃないわね。かといって魔術でも無いわ」
「士の力だよ。君達は今、士とあのキバと能力を共有しているのさ」


トーガから聞こえるマージョリーの分析に、ディエンドが質問を加えた。


「早くその力を使ってみてくれたまえ。いい加減僕も、この屍達にはウンザリしてきたところだ」
「言われなくてもそうしてやるさ。名護、始末をつけるぞ」
「ああ、任せなさい」


未だにひしめき合っている屍のファンガイア達を真正面から見据え、ライジングイクサとサガが並び立つ。


『ハァァァ……ッ』


動作とタイミングを揃えながら、二人は両手を広げるような構えを取る。
ややあって、二人の足元に朧気な光が集束し、太陽と王冠――ライジングイクサとサガを象徴する紋章を象った。


『ハァッ!』


キバEFとの能力共有によって作られた紋章は、二人の意志に従い、荒れた大地を滑り出す。
紋章は徐々に面積を広げながら、屍のファンガイア達を目映いスパークで捕縛した。


――ギィィィィィィィ!!


荒々しく弾ける光は、屍のファンガイア達の動きを縛り、動作を起こすことを許さない。
動かせるのは悲鳴を上げる口だけだ。
無論その状態は、四人からすれば好機以外の何物でもない。


「さっきのはソウヤの魔術……」
『なーるほどなぁ、力を共有するってのはこういうことか!』
「感嘆は後にしたまえ。攻撃するなら今だよ」


トーガの反応を余所に、ディエンドは新たなカードをドライバーに挿入する。


【KAMEN.RIDE-OOO!!】


「取って置きだ。――行け!!」


トリガーが引かれると共に、幾重にも重なった影が、一人の仮面ライダーの姿を作り出す。
身体は上から赤、黄、緑を三段重ねにしたようなカラーリング。
頭部の仮面は鷹を模したタカヘッド。虎の猛々しさを示すトラアーム。圧倒的な跳躍力を秘めたバッタレッグ。
胸部には、ベルトに装填されたメダルの特性を示すオーランドサークルが刻まれている。


【タカ、トラ、バッタ!!】
【タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!】


同種のメダルによるコンボ発動を認識したベルトが発する奇妙な歌をバックコーラスに、メダルの力を操る仮面ライダー、オーズが召還された。


傍らでその歌を聞いていたマージョリーはしばし沈黙し、


「……何よ、今の耳に残る歌」
「歌は気にしない。さぁ、終わらせるよ」


【ATTACK.RIDE-CROSS.ATTACK!!】


召還したライダーとの同時攻撃を発動する『クロスアタック』のカードを使うディエンド。
ディエンドライバーの銃口が輝き、弾丸のエネルギーが溜められていく。
オーズは専用武器である大剣『メダジャリバー』に、銀色のセルメダルを三枚投入し、オースキャナーで刀身をスキャンする。


【トリプル!! スキャニングチャージ!!】


甲高い音声と共に、メダジャリバーの刃を青白い光が覆う。


「その命、神に返しなさい!」


ライジングイクサは、イクサライザーのグリップ部分にあるライザーフエッスルを取り外し、ベルトのイクサナックルに読み込ませる。


『~~♪』


法螺貝を吹き鳴らすような深みのある音色が流れ、ライジングイクサ胸部のコロナコアから、右手のイクサライザーへと、光子エネルギーが吸い込まれていく。


『ウェイクアップ』


無機質なコールと共に、サガークがウェイクアップフエッスルを奏でる。
サガはジャコーダーをベルトにインサートし、赤い魔皇力に染まったロッド部分を構えた。


『木を削れ、土を練れ、岩を運べや堀を掘れ』
『築いた牙城は一級品』
『余剰分は?』
『積み木に使え!』


屠殺の即興詩が紡がれ、トーガが吐き出した火の玉の一つ一つが回り出し、サーカスの如き円環状の火の輪を作り出す。


ファンガイア勢が迫り来る攻撃に『ギッ!?』と呻くが、自らを縛る結界は一向に力を緩めない。


――それに、動けたとしても、回避出来たかどうかは怪しかっただろう。


ディエンドのシアンに煌めく光弾の嵐。
オーズの空間ごと敵を切断する『オーズバッシュ』。
ファンガイアの肉体を一瞬で破壊するライジングイクサの『ファイナルライジングブラスト』。
鞭のように敵を刺し貫くサガの『スネーキングデスブレイク』。トーガの頭上の輪から放たれる群青に燃える火炎弾の一斉砲撃。


五人の強者達の持つ必殺の一撃が、ほぼ同時に牙を剥いたのだから。


耳を貫く衝撃音。
それぞれの武器(トーガは腕)を下げた五人の眼前に残ったのは、炎と大量のステンドグラス片。
ふう、と全員が安堵と疲労から来る溜め息を付く。


「ご苦労様」


何を思ったか、召還時間を過ぎて消えていくオーズに、労いの言葉をかけるディエンドに、


「ライダーは助け合いでしょ」


その一言だけを継げ、オーズの輪郭は霞ようにぼやけ、瞬く間に消え去った。


「さて」


虚空から目を離し、ディエンドは上空を見上げる。


「向こうもそろそろケリがついた頃かな」


◆◆◆


「……魔力が、少し戻った?」


リンクライドの光に繋がれながら、キバEFはゆっくりと腰を上げる。
戻った力は僅かだが、戦うには十分だ。


「下にいる太牙とも力を共有してるからな。ホラ、行くぞ」
「ああ!」


二人が手を広げると、足元にキバとディケイドの紋章が浮かび上がる。


『ハァッ!!』


平面的なそれらは空中で向きを変え、イルヤンカの巨体を双方向から挟み込む。


「くっ!?」
「オォォォッ!?」


赤とマゼンダのスパークが散り、レティシアごと対象を捕縛した。
ディケイドCFはライドブッカーから、二枚のカードを取り出す。
どちらもファイナルアームライドのカードだが、一枚目はポジ・キバの世界で紅渡をファイナルアームライドさせたもの。
二枚目は、先程悠二づてに海東から貰ったカードだ。


「海東からの貰い物ってのが癪だが……仕方ねぇ、使ってやるとするか」


しばし悩んだ末、ディケイドCFは海東から貰った方のカードを選び、左腰のディケイドライバーに装填する。


【FINAL.ARM.RIDE-KI.KI.KI.KIVA!!】


「奏夜、ちょっとくすぐったいぞ」
「は?」


仮面の下で口を開くキバEFを無視し、ディケイドCFは先程のクウガの時と同じように、彼の背中へ手を突き入れる。


「のわっ!?」


背中から金と赤色の翼が現れ、足の部分が折り畳まれるように収納。そのままキバEFは更に様相を変えていく。


――見た目は、巨大なキバット。
だがその姿の至る所には、キバEFの鎧の名残が見られ、おでこには巨大なインペリアルスロット、足に当たる部分には銃のグリップ。
前方には、タツロットの頭部が融合しており、開いた口からは、ヘルズゲートの甲冑を模した矢が覗いている。
キバEF、もう一つのファイナルアームライド――エンペラーキバボウガンだ。


「奏夜が、武器に?」
「ちょ、ちょっと士さん! これ中の先生は大丈夫なんですか!?」
「心配すんな。本人はちょっとくすぐったいだけだ」


驚愕を覚えつつ、視覚的にかなり惨い変型を遂げた奏夜の身を案じるシャナと悠二。
ディケイドCFは素知らぬ様子でグリップを握る。
すると、エンペラーキバボウガンから、かなり動揺したキバEFの声が聞こえてきた。


「オイ、ちょっとどうなってんだこれ!? 視界が明らかにおかしいし、さっき足があらぬ方向に曲がったぞ!?」
「喧しい。痛みは無いんだから我慢しろ。ユウスケ、後ろから支えてくれ。このバイクの上じゃ、反動でぶっ飛んじまう」
「よっしゃ!」


乗り手のいなくなったクウガゴウラムがディケイドCFの背に回り、角で挟むようにして彼を支える。狙撃体制が整い、ディケイドCFはエンペラーキバボウガンの照準をイルヤンカに合わせていく。


「シャナ、まだ炎は出せるか?」
「? ええ、余力はまだ残ってるけど」
「十分だ。お前もグリップを持ってみろ」


ディケイドCFに促され、シャナは怪訝そうにしながらも、エンペラーキバボウガンのグリップを握る。
その途端、エンペラーキバボウガンの金色だった外装が、紅蓮の炎に包まれ、目も覚めるような真紅に染まる。


「!! これって、私の力を……」
「そうだ。使い手の力を吸収し、己のパワーに加える。これがこのボウガンの――いや、俺達の力だ!」


キバの鎧は、ガルル達アームズモンスターの力を反映し、フォームチェンジを行う。
故に、このエンペラーキバボウガンにも、その特性は引き継がれているのだ。
煌めく紅蓮はまさに、シャナの力を吸収した証であり、その色に紛れ、ディケイドCFのマゼンダのエネルギーと、キバEF本人の持つ真紅の魔皇力も視認出来る。


「キバッて!!」
「テンション、フォルティッシモ!!」


――バキィィン!!
キバットとタツロットの声が重なり、エンペラーキバボウガンの先端にあるヘルズゲートが開放される。
弓が引き絞られていき、弾け飛んだ鎖の下には、紅蓮、マゼンダ、真紅の光を交互に放つ、三叉の矢。




『はぁぁっ!!』




トリガーが引かれ、緊張していた弓が戻ると同時に、先端から目映い光の矢が放たれた。
四方八方に飛び散っていく無数の閃光は、マゼンダ、紅蓮、真紅の軌跡を描きながら、イルヤンカの巨体を射抜いていく。


百を優に超える、破壊の流星群。
連なった刺突音を奏でる閃光の勢いに負け、イルヤンカの巨体は急速に高度を下げていく。


「オォォォォォ――――ッ!!」


広がった翼をも閃光に貫かれ、イルヤンカは回避の術を失っていた。
強固だった筈の外皮も次々に剥がれ落ち、矢によるダメージを追っていく。


――強大な“王”は遂に大空を離れ、叩き落とされた大地には、王の威光を示すキバの紋章が、巨大なクレーターとして刻まれる。
完全敗北を喫したイルヤンカは、自らを葬った者達を瞳に移すと、その肉体は砂のように崩れ落ち、元の屍へと帰っていった。



◆◆◆


(ここまで、ですか)


イルヤンカの残滓とも言える霞が、風に乗って流れて行く。
閃光に貫かれ、歪にひび割れたステンドグラスの肌を見ながら、ロブスターファンガイア――レティシアは静かに、自分自身の幕引きを受け入れていた。


あの矢に射抜かれた傷から、魔皇力が流出していくのが分かる。
身体は地に吸い付いているかのように重く、寄りかかっている木々には、ファンガイアの青い血が滲む。


――腕にあった筈の『死者の書』も無い。
イルヤンカと共に落下した際に紛失したか、それとも跡形も無く砕けたのか。
今となっては、もはや気にすべくも無いが……。


「……カロンには、謝らないといけませんね」


皮肉めいた笑みを浮かべる余裕も、終わりを迎える今だからこそ湧いてくるものだった。


……そう。やっと終わる。


サミュエルとジェフを失った時から始まった、この長い旅路が。


「よぉ」


状況に似つかわしくない軽い声。
顔を上げると、輝かしい黄金の光が目に飛び込んでくる。
その後ろには、彼の仲間の姿もあった。


「あら、ごきげんよう」


そう返したものの、機嫌はまったくよろしくない。
今にも意識が飛びかねないのだ。


余裕ぶってはいるが、あれだけ連戦を積み重ねていたキバEFも、致命傷は負っていないにしろ似たような容態だろう。肩で息をし、足元は目に見えてフラついている。


「……何だよ、逝っちまうのか」
「ええ。そのようです」


キバEFはボロボロになった自分を仮面に映したかと思うと、こちら目掛けて何かを放り投げる。
いつの間にか手から離れていた愛剣、クレイモアが土塊を巻き上げ、近くの地面に突き刺さった。


「俺達はお互いに、もうズタボロだ」


行動の意図が読めないままに、キバEFは告げる。


「最初の戦いも、二回目の戦いも、俺は病み上がりだったからな。今回も門矢達の力を借りた以上、フェアとは言い難い」
「……?」
「けど今は」


二人共、満身創痍。
背後で見守るディケイド達にもシャナ達にも、手は出さないように言ってある。



「――レティシア、最後の勝負だ。俺とお前のケリをつけようぜ」


疲労を感じさせない気迫を纏うキバEF。


「…………ふふ」


レティシアもまた口元に笑みを蓄えながら、クレイモアを杖代わりに立ち上がる。


「良いですね。貴方を倒して散るという幕引きも、悪くない」
「悪いが、俺は死ぬつもりは無ぇぞ。お前は俺の超カッコいい勝利ポーズを見ながら散るんだ」


冗談めかしい態度を取るキバEF。
だがレティシアには、彼の本意が見えていた。


キバEFの理想、レティシアの理想。どちらが正しいのかは、永遠に答えの無い問題。求められるのは、正誤の枠組みに囚われず、理想を追い続ける強い意志。
1対1で対等な条件の元、互いの信念をぶつけ合うキバEFとの勝負。
それは正に、レティシアが最後の一瞬まで理想を貫いた証に他ならない。


(まったく貴方という人は……つくづく甘い)


こんな勝負、私をただの負け犬にしないための手向け花じゃないか。


どこまでも甘く、優しさに溢れた王に向けた笑みは、敬服か、それとも嘲りか。 レティシアが握るクレイモアが、今までとは比べ物にならないほど濃密で、凄まじい量の魔皇力に包まれる。


「……凄ぇな」


文字通り、死力を尽くした最後の一刀。
彼女が奏でる心の音楽は、死にもまるで臆さず、凛とした力強さに満ちている。


(全力で行こう)


後のことなんざ知るか。
今、レティシアの音楽に応えられるだけの力があればいい。


敬意と共に、キバEFはタツロットのホーントリガーを引き、インペリアルスロットを回転させる。
出た絵柄は、大きく広がった真紅の両翼。


『WAKE.UP.FEVER~~!!』


タツロットのコールに呼応し、足裏のルシファーズナイフに真紅の魔皇力が集束していく。
腕を交差させるキバEFの周囲は、溢れ出した力が大気を震わせていた。


渾身の力を持って望む真剣勝負。
ディケイドCF達にせよ、シャナ達にせよ、今はキバEFの勝利を信じることしか出来なかった。





――視線を交錯させ、二人はほぼ同時に動く。
キバEFは上空へと飛び上がり、レティシアが踏み込みから一気に距離を詰め――





『はぁぁぁぁぁ―――ッ!!』


レティシアの青白い魔皇力で生成された巨大なエネルギーブレードと、真紅の翼を生やした両足から繰り出すキバEFの『エンペラームーンブレイク』が、真っ向から衝突した。






轟音と、剣の切っ先と両足の境目に起こった力の激突が、周囲にいた全員の視界と聴覚を奪う。
見えるのは、輝く真紅と蒼の閃光のみ。


――光が止んだ頃には既に、キバEFとレティシアは地に足を付いていた。互いに微動だにせず、まるでそこだけ時が止まっているかのよう。


どちらに軍配が上がったか判断しかねている一同だったが……。


「……っ!!」


苦渋に満ちた呻きと共に、キバEFの身体が僅かに揺れた。
まさか。という思いが全員の胸中を駆け抜ける。





「……お見事」





――ほんの僅かに唇を動かし、レティシアは地に崩れ落ちる。
エンペラームーンブレイクのダメージからか、倒れた瞬間にレティシアの身体は砕け、元の人間態に戻っていた。
手を離れたクレイモアが下に突き刺さり、身体の一部だったステンドグラスが散らばる。


キバEFは紙一重で致命傷を避けた身体を引きずりながら、レティシアの傍に歩み寄る。仰向けのまま、自分を見上げてくるレティシアに、キバEFは静かに告げる。


「……謝んねぇぞ」
「ええ。それでいいのです」


謝れば、すべてが無駄になる。
貫くべき自分の覚悟も、結果的に自分が砕いたレティシアの覚悟も。


「まぁ……、貴女が謝ろうと……謝るまいと……、私は自分の人生を悔やむつもりは、ありませんよ」


一字一句を紡ぐ間にも、レティシアの身体は崩れていく。
だが、彼女にとってそれはさして重要ではないようだった。
ただぽつり、ぽつりと自分の心情を吐露していく。


「私の人生は全部、私が選んで……この結末を迎えた。私は、何も後悔しません……。きっと何度選択の岐路に立たされようとも……同じ道を行くでしょう……」
「……シャナも言ってたが、本当に馬鹿だな。アンタ」
「ふふっ……貴方も、でしょう?」


その言い草に反論する気は――何故か起きなかった。


「おや――そろそろ、時間、です、ね……」


砕け、身体から離れた右腕を眼に収めながら、レティシアは僅かに首をもたげた。


「転生の輪廻の先で……貴方の理想が――作る景色を、見極めさせて貰いますよ……」
「ああ、言われなくても見せてやるよ。アンタが真に望んでた世界をな」


迷いを感じさせない言葉に、レティシアは皮肉っぽくも満足そうにも見える表情を浮かべた。


「……ああ」


朦朧とする意識の中で、彼女はおもむろに虚空へと手を伸ばした。
まるで、そこにいない誰かの手を取ろうとしているかのように。


――蒼い瞳からは零れ落ちたのは、一滴の涙。
震える声で、レティシアは唇を動かした。





「……やっと、一緒にいられるね。サミュエル、ジェフ……」






――暖かな過去を取り戻す為、必死に運命と戦い抜いた女性。
愛した者の名前を最後の言葉に、レティシアは命という名の音楽に幕を引いた。


砕け散った身体から浮かび上がったライフエナジーは、雲一つない空に溶けていく。


舞い上がっていくライフエナジーをやるせない気持ちで見送り、そのまま所在なさげに佇んでいたキバEFの肩を、誰かが叩く。
振り向けばそこにはディケイドとシャナ。
更にその後ろには、自分を支えてくれた仲間達。


「終わったな」
「お疲れ様、奏夜」
「……おう」




二人の労いを素直に受け取り、己の信念を巡る長い戦いは、遂に終焉を迎えた。





◆◆◆


「行くんだな」
「ああ。この世界で、俺達がやるべきことは果たした」


数日後。レティシアの弔いを済ませた一同は、光写真館の前に集まっていた。


見送りの席に現れたのは奏夜、シャナ、悠二の三人で、ディケイド一行の面子は士、ユウスケの二人だけである。


「士、夏海や海東は?」


二人を探すシャナだったが、彼は姿を見せてはいない。


「あいつなら、写真館の中でふてくされてる。魔皇竜を手放した挙げ句、この世界じゃ何の宝も手には入らなかったからな。夏みかんは彩香と爺さんと一緒に、そのお守りだ」


いい気味だ、と言わんばかりに意地悪く顔を歪める士。
ユウスケは「あはは……」と苦笑いを浮かべるしかなかった。
一方の奏夜はと言うと、


「それならちょうど良かった。門矢、こいつを海東に渡してくれ」


言って、奏夜が士に押し付けれ形で手渡したのは、粗末な造りの湯のみ。


「なんだこりゃ、湯のみか?」
「ああ。かのわび茶を大成したとされる偉人、千利休が障害使ったという幻の湯のみだ」


「……先生、湯のみの底に文字を修正した跡があるんですけど。これ寿司屋の湯のみの改造品じゃ……」
「何を言うか悠二。別にタツロットを返して貰っても俺のムカムカは消えないのでせっかくだからちょっと仕返しをしようとかは全然思ってないぞ」


早口でまくし立てる奏夜。
どうやら悠二の考えは正しかったようだ。


「てなわけで、忘れずに渡してくれよな」
「……フッ。任せとけ。必ず渡してやる」


完全に利害が一致し、いたずらっ子のような笑みまでシンクロする士と奏夜。
その他三名の心境も「本当にいい性格してるよ」で統一されていたのは余談である。


「けど、何から何まで世話になっちまったな。今回の一件、お前らがいてくれて本当に助かった」
「気にすんなって。それが俺達の使命なんだからさ」


ドンと胸を張るユウスケ――此度、自分が立ち上がるキッカケをくれた青年に、奏夜は徐に手を差し出す。


「なら、また連れて行ってくれるか? 俺の本当に行きたい所まで」
「――ああ、勿論さ!」


例え異なる世界を生きる人間同士でも、それが友となることの妨げにはならない。
奏夜とユウスケの間で交わされた固い握手が、その証拠だった。


「じゃあ、シャナちゃんも悠二くんも元気でね」
「はい! 色々、ありがとうございました!」
「士も、油断して怪我しないようにね」
「ふん、俺様の心配するなんざ百年早ぇよ。お前の方こそ、せいぜいフレイムヘイズの使命とやらを全うしろよ」


ぴんっ、とシャナのおでこを弾き、士はもう一度奏夜に歩み寄る。
額を押さえるシャナの抗議を無視しながら、士は怪訝そうにする奏夜の耳元で、小さく呟く。




「負けるなよ、奏夜。“お前の運命”に」




「……ああ」


その言葉の真意を読み取った奏夜が短く答え、士は近付けていた顔を離した。
一連の動作に気付いたシャナが首を傾げ、


「奏夜、どうかした?」
「いや、なーんも」
「嘘。何か隠してる」
「隠してねぇって。俺が正直者なのは、お前が悠二を好きってことと同じくらいに周知の事実――」


言い終わるか言い終わらない内に、顔を紅潮させたシャナの上段回し蹴りが、奏夜の首筋にヒットした。


「がっ!! お前、俺一応ケガ人だぞ!?」
「うるさいうるさいうるさーーい!!」


痛みに悶えるよりも早く、額に怒りマークを刻む奏夜が反撃を繰り出し、二人の間で子供の喧嘩が始まる。


「ちょっ、先生もシャナも落ち着いて! 端から見てると凄くみっともないから!」


止めに入る悠二を含んだ三人のやり取りに、ユウスケは困ったように頬を掻いて、


「喧嘩するほど仲が良いって言うけど……」
「あいつらほど、それが似合う連中はいないな」


言いながらも、士はどこか楽しそうしながら、首に下げたカメラのフレームを三人に向け、シャッターを下ろした。


◆◆◆


「~~♪」


光写真館。
テーブルにつきながら、鼻歌混じりに湯飲みを眺めている海東大樹。
どうやら結局、士づてに奏夜の嘘情報を信じ込まされたようだ。


(……すっげー嬉しそう)
(カブトの世界の時も思いましたけど、海東さんって、案外ピュアですよね……)
(アホだね♪)


ユウスケ、夏海、彩香が複雑そうに海東を見る中、士だけは手元にある写真を見つめていた。
そこには、じゃれあうように喧嘩する奏夜とシャナ、焦りながらも二人を止めようとする悠二の姿が映っている。


「おお、士くんも随分腕を上げたねぇ。この写真、喧嘩しているように見えて、彼らの仲の良さが伝わってくるよ」
「だろ?」


栄次郎の賞賛を受けながら、士はその写真をアルバムに収め、今までのライダー世界と同じく、その姿を自分の旅路として記録する。


「奏夜達、きっとこれからも大丈夫だよな」


ユウスケがアルバムを覗き込みながら問う。


「ああ、あいつらなら、どんな運命も乗り越えられる。――さて、そろそろ俺達も行くとするか!」


立ち上がった士は、そのまま撮影室奥の鎖を引っ張った。


――ガララララッ!


背景ロールが回転し、新たな世界の絵が降りてくる。


さあ、次なる世界は――?




◆◆◆

「……」


紅邸。
物憂げな表情で自身の手を見つめる紅奏夜。
傍らの机には、キバットバット三世とタツロットが止まっているが、こちらもあまり顔色は優れていない。


「……奏夜」
「ああ、分かってるよ。あのコンディションでエンペラーフォームになれば、こうなるってことは分かってた」
「すみません奏夜さん、ワタシが戻ってきてしまったから……」


うなだれるタツロット。
奏夜は彼を安心させるように、普段と変わらぬ柔らかな表情を見せる。


「何言ってんだよタツロット。お前が戻ってきてくれて、俺は本当に嬉しかったぜ。
エンペラーフォームになるって言ったのは俺なんだし、タツロットが気にすることじゃねぇよ」
「けどよ、奏夜。タッちゃんのことはいいとしても、エンペラーフォームの多用を控えた方がいいのは確かだぜ。 このままエンペラーフォームへの変身を続けたら、お前は……」
「いや、エンペラーフォームはこれからの戦いに必要な力だ。ファンガイア相手にしろ“徒”にしろ、四年前と同格……もしくはそれ以上の力を持つ連中がうようよ出てきてる。そんな中で、我が身可愛さに変身を躊躇うつもりはない」
「けどよぉ……」
「それに、まだ“そう”なると決まった訳じゃない。母さんの話じゃ、兆候が見え始めたとしても、確率は五分らしいしな」


「だからこそ」と奏夜はキバットとタツロットを真っ正面から見つめる。


「キバットにタツロット。お前らは俺の“時間”を知る数少ない存在だ。 俺が変身すると言った時には、必ず変身させろ。お前らはその傍らで、俺を支え続けてくれ」
『……』


奏夜の言葉と瞳には、何があっても曲がらない芯が打ち立てられているように思えた。 レティシアとの戦いが、彼の中の信念を更に強くしたのだろうが……。


果たしてそれは、本当に良いことだったのだろうか?


疑念と不安を入り混ぜながらも、主の力強い姿に平伏したのか、キバットとタツロットは恭しく頭を下げる。


『仰せのままに。我らが王よ』


満足げに二人の答えを聞き、奏夜は木漏れ日の差し込む窓を見やる。






「急がないとな……。“俺”が俺を殺す前に」




呟く奏夜の右手は、ひび割れたステンドグラスに覆われ、窓から差し込む光を鈍く跳ね返していた。





◆◆◆


「スリーカード」
「わん、ぺあ」
「フルハウス。また僕の勝ち~♪」


したり顔をするラモンに、次狼は悔しさから舌打ちし、力は「のぉ~~」と頭を抱えている。
キャッスルドランの中で、ポーカーに興じるアームズモンスター達。
つい数時間前まで、レティシアとの戦いを繰り広げていたとは思えない朗らかっぷりだった。


――しかし、嵐は唐突に現れるものである。


「貴方達は相変わらず楽しそうね」
「!!」


不意を突く声に、臨戦態勢を取る三人。
しかし、声の主を見た途端、敵意は驚愕にすり替わる。


『クイーン……!』


自分達のゲーム場であるホールの中央には、誰であろう、奏夜の母にしてファンガイアの元クイーン、真夜が悠然と立っていた。


「お久しぶりね。四年前の結婚式で会って以来かしら?」
「……ああ、久しぶりだな、クイーン。今日は一体どうした?」
「そうそう。キャッスルドランに顔を見せるなんて珍しいじゃん」
「とりあえず、おちゃとおかし」


気を落ち着かせる為か、椅子に腰掛けた真夜に、紅茶とケーキを差し出す力。
「ありがとう」と微笑み、紅茶を一口啜る真夜だったが、三人はその優美な姿よりも、彼女がここに来た理由が一番気になっていた。


クイーンの力を剥奪され、山奥に移り住んでから、彼女は表舞台に出ることを極端に避けるようになっている。
危険、ということもあるが、それは彼女自身の戒めにも近い。
故に、彼女が洞窟から外に出るのは、余程の事なのだ。


「今日来たのは、貴方達に頼み事ができたからよ」
「頼み事だと?」
「ええ、“これ”をキャッスルドランに封印しておいて貰いたいの」


真夜はフード袖から包みを取り出し、巻かれていた紐を解く。その中身は、三人の予想の斜め上を行く代物だった。


「これは……!!」
「あのカロンって“徒”が持ってた手甲じゃないか!」
「ししゃの、しょ」


レティシアが最後の最後まで無くしたと考えていた宝具『死者の書』。
それが今、三人の目の前で鈍い輝きを放っていた。


「奏夜達とレティシア・リネロが戦った森の近くで見付けたわ。この宝具をその時が来るまで、誰にも言わずに封印しておいて」
「『その時』だと? 」


反芻する次狼に、真夜が頷く。




「そう。過去と現在の扉が、再び開かれるその時まで」





◆◆◆


「どうだ。世界の破壊者の様子は」
「問題ありません、無事に『BLAZING.BLOODの世界』を通過したようです」


周囲を摩天楼に囲まれた小さな噴水広場。
壮観な景色から切り取られたかのようなその姿は、どことなく寂しさを感じさせる。


本来は星が支配している筈の夜空には、高層ビルが鏡合わせの如く立ち並ぶという非現実的な世界で、二人の青年が言葉を交わしていた。


「『BLAZING.BLOODの世界』への影響も殆どありません。我々が出向くこともないでしょう」
「それは僥倖だ。あの世界のバランスを崩すわけにはいかないからな」


鋭い風貌に、サングラスと黒ずくめのスーツを身につけた青年が、僅かにその表情を緩める。


「ただでさえ今は、『フォーゼの世界』が誕生したばかりで、世界の理が不安定な時期だ。ディケイドが鳴滝を追っている以上、余計な問題は少ない方がいい」
「ええ。しかし、危惧すべき問題が消えたわけではありません。……何より今回の一件で、紅奏夜がエンペラーフォームを取り戻してしまいました」


白いセーターにマフラーを巻いた青年が物憂げに目を伏せ、黒スーツの青年もまた、再び顔を曇らせる。


「……紅奏夜。お前に最も近いキバであり、お前の――オリジナルの『残像』か」
「このまま行けば、僕があの世界に出向く日もそう遠くはないでしょう。――なるべく、そうならなければ良いのですがね。あなたはどう思いますか、剣崎さん」
「……俺も最悪の事態は避けたいが、難しいところだろうな」


黒スーツの青年、剣崎一真は、先ほどまで高層ビルが立ち並んでいた夜空を見上げる。
いつの間にか空には、無数の惑星が瞬いていた。




「あのキバが――いや、『BLAZING.BLOODの世界』が、オリジナルの世界の残像である限りな」







◆◆◆


――ヨーロッパのとある国で交わされた会話。


「うーん、さすがに7月ともなると、欧州も暑くなるなぁ……。ま、こっちはカラッとした暑さやし、向こうのむわっとした暑さよりはマシやけど」
「俺様にとっちゃあ、どっちの暑さも地獄だぜぇ……季節はクールな冬にかぁぎる」
「ああ。お前にとっちゃそうやろな……。あーあ、せめて秋くらいまでには日本に帰りたいでぇ」
「だがもうじき、仕事は片付くんだろぉ?」
「うーん、もうじきっちゅうても八割方ってトコやけどな。ファンガイアに加えて最近は、名護さんから聞いた『トモガラ』っちゅーワケの分からんヤツらもおるし」
「徒か……。聞くところによっちゃあ、ヤツらはファンガイアの一派と手を組んでるらしいが、一体何を企んでいるんだろぉな?」
「まだそっちは噂話の領域やしな、俺にも推測は立たん。せやけどな、噂話にかまけとってもあかんで。俺達は、日本で踏ん張っとる奏夜達の分まで、俺達にしかでけへんことをするんや」
「……フッ、そぉれもそうだな」
「分かればよし。さ、休憩は終わりや。また頼むで、相棒」
「ああ、任せとけ。では行こうか! 華麗に激しく!!」





――それぞれの思惑は絡み合い、世界の歴史に新たな1ページを刻む。

  1. 2012/05/31(木) 11:04:41|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第二十四話・超新星/帰還のエンペラーゴールド.前篇


「ほいさっと!」


炎の衣『トーガ』に身を包んだマージョリーの剛腕が、ファンガイアの軍勢を叩き潰す。
やはり、この再生態は相手ではないが――


「死者を生み出すペース、段々上がってきてるわね」
「あくまでも、僕達と奏夜達の合流をさし止めるつもりだろう」


サガがジャコーダーを振るい、キバーラがサーベルで敵を斬りつけつつ、城に鎮座するイルヤンカを見上げた。


「早く行かなきゃいけないのに……。いくら士くんやユウスケでもあんな龍を相手にしてたら……きゃっ!?」


突如巻き起こった衝撃に、キバーラのみならず、全員が一瞬怯む。
地上に待機していたイルヤンカが飛翔したことに伴い、巻き起こされた爆風だ。
その巨体の背中では、時折紅蓮とマゼンダの光が視認できる。


「名護さん、シャナ達が……」
「ああ、見えているよ。――これは出し惜しみしている場合ではなさそうだな」


悠二の傍でファンガイアを蹴散らしていたイクサは、仮面の口元からイクサライザーを取り外し、コードを入力していく。


【1.9.3.ラ・イ・ジ・ン・グ】
【ENTER】


アーマー胸部のコロナコアと頭部のクロスシールドが展開し、装甲の一部が弾け飛ぶ。ガーディアンコバルトの鮮やかな青がイクサを覆い、ライジングイクサへの変身が完了した。


「死者達よ、その命、今一度神に返しなさい!」


イクサライザーから放たれるオレンジのエネルギー弾が、ファンガイアを打ち抜いていく。
マージョリー、ライジングイクサ、サガ、キバーラ。火力は十分のはずだが、全てを殲滅するとなれば、時間がかかるだろう。
それまで奏夜達があの龍を落とすか、持ちこたえてくれればいいが、戦いに絶対はない。


早期決着は全員が望むところだった。


「どうやら苦戦してるみたいだね」
「!」


涼やかな声と、後方で煌めくシアンの光弾。
その影は軍勢の一角を撃ち抜きながら、凄まじいスピードで5人の前に現れた。


「大樹さん!」
「海東さん!」
「やあ、夏メロンにミステス君」


声を揃えた悠二とキバーラに片手を挙げ、ディエンドは振り向き様にディエンドライバーの引き金をひく。


「海東さん、何でここに……?」
「愚問だね。僕の行動理由はお宝だけ……と言いたいところだが、今回はそれだけじゃないかな。――ほら、これを受け取りたまえ」


ディエンドは握り拳を解き、何かを悠二の掌に落とす。
悠二が目を落とすと、そこにはゴールドカラーのフエッスルが光っていた。




「これって、先生が使ってる笛ですか?」
「ああ、魔皇竜を呼び出すための起動キーさ」
「魔皇竜……って、まさか!?」


ディエンドが奪った、奏夜の友達の名前ではないか。
口を開きかけた悠二だったが、ディエンドは「おっと」と言葉を遮る。


「勘違いするなよ。今はレティシアの持ってる『死者の書』――あっちの方が貴重なお宝だと思っただけさ」


さすがにそれが建て前だということは分かったが、それを口に出すほど、悠二は野暮ではなかった。


「それと、こっちは士に渡してくれ」


ディエンドがベルトのケースから一枚のカードを悠二に手渡す。
絵柄には、悠二も見たことがない姿のキバと、弓のような武器が描かれていた。


「FINAL.ARM.RIDE……なんですかこのカード?」


「士に渡してくれれば分かるよ。あのキバをファイナルアームライドさせるには、このカードじゃなきゃダメなんだ。
――紅奏夜は、オリジナルの『残像』だからね」
「……?」


一瞬、悠二はディエンドの口調に引っかかるものを感じたが、切迫した状況に、その思考は直ぐに埋没してしまった。


「ま、とにかく、僕はこの屍達を片付けるから、キミはそれを士とキバに届けてくれたまえ」
「いや、届けろって言われても……」


困惑した悠二は上空を仰ぐ。
どうしろと言うのだろうか。
例え悠二が百人肩車しても、これを届ける為に必要な高さには足りない。


「世話が焼けるねぇ……夏メロン、ミステス君を二人のとこまで送ってくれ」
「だから! 私は夏メロンでも夏みかんでもなくて夏海です!」


いつになったら覚えてくれるのだろうか。


「それに大樹さん、二人の所になら私が一人でも行けますよ。……あんな場所に悠二くんを連れてくのは危ないです」
「いや、ここは彼が行かなきゃダメだ」


ディエンドは有無を言わせぬ雰囲気のまま、悠二に向き直る。


「『炎髪灼眼の討ち手』やあのキバがキの言う“仲間”なら、そのくらいはやってみせてくれ」
「!」


挑発。いや、試されている。
悠二は本能的にそれを感じ取った。
海東に仲間の意味を説いたのは悠二。
ならば、身を持ってその意味を証明すべきなのも悠二だ。


「はい!」


首肯し、悠二はキバーラに頼み込む。


「お願いします夏海さん、僕を上まで運んで下さい!」
「――分かりました。悠二君本人がそう言うなら」


悠二の眼光に並々ならぬものを見て取り、キバーラも彼の願いを承諾した。
片手で悠二を抱き留めるように支え(情けない体勢ではあるが、バランスの関係上仕方ない)、紫色に輝く両翼を生やすと、キバーラはイルヤンカ目指して飛翔していく。


「ま、あとは彼次第か。――さて、こっちもさっさと片付けちゃうかな」


二人を見送り、ディエンドは仮面の下で不敵に笑った。


◆◆◆


「落ーーちーーる――!」
「この高さはシャレにならねぇな」


キバの絶叫とディケイドの舌打ちが重なる。
――悠二達が贈り物を届けるべき4人は、現在空を絶賛落下中であった。


戦闘開始直後、レティシアは四対一の戦いを最初から不利とみたのか、イルヤンカを操り、両翼を羽ばたかせる。


その巨体にそぐわぬ速さで龍は飛翔し、背中に乗っていたキバ、ディケイド、シャナ、クウガは空中に放り出されていた(レティシア当人は、愛剣であるクレイモアを突き刺し、踏みとどまっていたが)。


「くっ!」


シャナは紅蓮の双翼を顕現させ、


「奏夜、掴まってくれ!」
「悪い!」


再びクウガゴウラムにファイナルフォームライドしたクウガの足に、キバが掴まり、


「空の勝負ならコイツだ!」
【ATTACK.RIDE-JET.SLIGER!!】


地上に乗り捨ててあったマシンディケイダーを、Φを模した紋章が通過。
オールレンジホイールと五つものジェットエンジンを搭載した、銀色に輝く高性能バイクマシン――ジェットスライガーが、エンジンの噴射で滑空し、主であるディケイドの下へ飛んでいく。


「奏夜、シャナ! 一気に叩くぞ!」
「分かった!」
「おう!」


操縦席に乗り込み、ディケイドはパネルを操作。
ジェットスライガーのフロントが開き、二段重ねに搭載されたミサイル弾が、パネル上でイルヤンカをロックオンする。


「はぁ……ッ!!」


シャナの構える贄殿遮那の刀身が煌めき、紅蓮の奔流に包まれる。
全てを灰燼に帰すには十分な火力だ。


「バッシャーマグナム!! ア~ンド、バッシャー・バイト!!」


飛来したバッシャーマグナムにより、キバはバッシャーフォームへ。
キバットの魔皇力チャージにより発動した『バッシャーアクアトルネード』の水球が、銃口付近に生成される。


「ユウスケ、悪いが弾の反動は我慢してくれ!」
「俺は気にしないでいい、思いっきりやってやれ!」


掴まるクウガゴウラムの声援を受けながら、キバBFはトリガーに指をかけ、


『行けぇ!!』


バッシャーの魔力が込められた水球『バッシャーアクアトルネード』が放たれ、それに伴い、シャナの大太刀から特大の火炎流と、ディケイドのジェットスライガーから無数のミサイル弾が発射された。


イルヤンカは迫り来る脅威に対し、開いた口から並んだ牙を覗かせ、


「ッガハアアアア――――!!」



イルヤンカが吐き出したのは、蒸気にも似た鈍色の粉塵。
空中で広範囲に広がったそれは、三人の攻撃を阻むにはあまりにお粗末な代物に見える。


しかし、三人の攻撃が粉塵と接触した途端、豪快な衝突音と共に、水球は弾け、火炎は掻き消え、ミサイルは部品さえも残さず砕け散った。
その光景をジェットスライガー内から見ていたディケイドは、他三人の気持ちを代弁するかのように呟く。


「おいおい、ミサイルを弾く煙ってどんな煙だよ」
「アラストール、あれは?」
『“甲鉄竜”イルヤンカの持つ、最硬の防御力を誇る自在法、『幕瘴壁』だ』
「幕瘴壁……」


シャナの問いに対するアラストールの答えを、キバBFが復唱する。


『先のように拡散させれば無敵の防御壁に。集束させれば全てを貫く鋼の砲弾にも成り得る』
「攻守自在ってワケか……。遠距離がメインで、一撃のダメージが低いバッシャーフォームじゃ勝ち目ねーかもな」
「近距離で攻撃を入れていくしかなさそうね。反撃のリスクもあるけど、あっちはあの巨体だから、小回りの利くこっちの方が回避はし易い筈」
「だな。レティシアの方は援護に回ってるみたいだし」


クウガゴウラムの言う通り、レティシアは現段階で攻撃を仕掛けてきてはいない。
蘇生陣に使った魔皇力が回復していないのだろう。イルヤンカの力をメインに、自分は後衛にということか。


「俺も病み上がりなんだがな……ま、仕方ないか。門矢、シャナ、バラけて攻撃するぞ。固まってたら幕瘴壁の餌食だ」
「うん。奏夜、負傷中なのが分かってるなら、無茶しないでよ」
「油断して落とされるんじゃねぇぞ、お前ら」


キバBFがシニカルに言い放ったのを合図に、散った三人はそれぞれ別の方角からイルヤンカへと迫る。


(それにしても、なんて威圧感)


スピードの差から、最初にイルヤンカへ辿り着いたシャナは、改めてイルヤンカの強さを肌で感じ取る。
歴戦の中で磨き上げられた力は、例え操られた身であっても褪せることはない。


(でも、勝つ)


巨竜の正面近くに描かれた紅蓮の軌跡に、闘争心しか無かったはずのイルヤンカの瞳に、微かな感情の炎が灯った。


『炎髪灼眼の――討ち手……!』
「――久しいな。かつての好敵手よ」


紡がれた声に、アラストールは懐かしさと敬意を込めた言葉 だけを送る。
だが、その余韻も直ぐに戦いへと呑まれていく。


「斬る!」


瞬時に形成された巨大な炎剣が、イルヤンカの外皮に振り下ろされる。



「!!」


シャナの表情が驚愕に彩られる。
手加減なしの一撃にも関わらず、自身の炎剣は、イルヤンカの肌に僅かな傷と焦げ跡を残しただけだったからだ。


『離れろ!』
「っ!」


アラストールの声に反応し、ギリギリで回避行動を取ったシャナのすぐ傍を、イルヤンカの翼が掠めた。
巻き起こる爆風に踏みとどまり、シャナは再び距離を取る。


『油断するな。屍と言えど、あやつは大戦にその名を轟かせた強力な王だ』
「うん」


気を引き締め、シャナは紅蓮の翼を羽ばたかせる。
その下方、ディケイドはジェットスライガーを走らせ、攻撃の機を伺う。


(さっきのシャナの攻撃からして、コイツの外皮はかなり硬い。攻撃を加えるなら――)


やはり、この竜を操っている本人。
ジェットスライガーを浮上させ、イルヤンカの背中――レティシアをミサイルの射程圏に入れるディケイド。


「やはり私を狙いますか」


現れた銀色のマシンを見やり、レティシアは不敵な笑みを浮かべる。


「ですが――よもや私が、それを予想していなかったとお思いですか?」


レティシアはゆらりと、手を動かす。


―――ガガガガガッ!!


「なっ!?」


ディケイドの乗るジェットスライガーが、連なって襲い来る衝撃に揺れる。
レティシアもイルヤンカも、攻撃を加えてきた様子は無い。
だが現に、ジェットスライガーは見えない攻撃に火花を散らし始めている。


「クソッ!!」


せめて撃墜だけは避けなければ。
ディケイドは新たなカードをバックルに装填した。


【ATTACK.RIDE-HARD.TERPULAR!!】


ジェットスライガーをWの紋章が通過し、その機体を黒いフロント部分に、赤い安定翼とジェットエンジンを搭載したマシン――『ハードターピュラー』に変えた。
バイクの表面積が少なくなったことで、衝撃は止んだ。だが未だに、レティシアの攻撃はディケイドでも視認できない。


「ッバハア――!!」
「チィッ!!」


隙を突き、先刻の防御用ではない――煙を集束させた幕瘴壁の弾頭が、ハードターピュラーを狙う。


アクセルを入れ、幕瘴壁を緊急回避するディケイド。
そして見た。
避け際、先程まで自分がいた場所を幕瘴壁が通過すると、何か水泡のようなものが弾けたのを。


「しゃぼん玉……いや、そうか!」


ディケイドは気付く。
先の見えざる攻撃は、レティシアの魔皇力が籠もった、破壊力抜群のしゃぼん玉。
消えていたのは、恐らく光の三原色を利用していたからだ。



(三原色の赤、緑、青が交錯すれば、しゃぼん玉は無色となり、太陽光を反射する透明球と化す……!)


光を扱うカメラマンである彼の知識が解答を導き出すが、分かったところで対処のしようがない。


レティシアが先程手を動かしていたのを見ると、あのしゃぼん玉はある程度方向操作ができるとみていい。
これではレティシアへの攻撃も未然に防がれる。
アクアクラスのレティシアなら、魔皇力もそれほど消費せず、しゃぼん玉を生成できるだろう。


重厚なジェットスライガーを揺らす威力のしゃぼん玉なら、迂闊に割ることもできない(最悪、バイクから落ちてしまう)。
しかもその間に、幕瘴壁でのカウンターも考えられる。


「考えてやがるぜ、敵ながら」


当面は、ジェットスライガーより小回りの利くハードターピュラーで、突破口を見つけるしか――




「先生ーー!! 士さーーん!!」




『!!』


戦場に響く自分達を呼ぶ声に、ディケイドとバッシャーマグナムの弾丸を放っていたキバBFが、声のした方を振り返る。


「悠二!?」
「夏みかん?」


イルヤンカからやや離れた後方。
輝く翼で飛翔するキバーラと、彼女に抱えられた悠二に驚く二人。


「悠二、お前何しに……!」
「話は後です! 先生、これを!!」
「士くんも!」


悠二、キバーラが投げて寄越した何かを、キバBFとディケイドは器用にキャッチする。


「!! お前、これ……!」
「なんだ、新しいカードか?」


キバBFの掌には、黄金に輝くフエッスル。
ディケイドの手には、ファイナルアームライドのカード。
どちらも、戦局を変える切り札と成り得るものだ。


「海東さんが二人に渡してくれって!!」
「……ハッ、こそ泥が、粋なことするじゃねぇか!」


仮面の下で満面の笑みを浮かべながら、キバはバッシャーフォームを解除。
クウガゴウラムの足から背中によじ登る。


「ユウスケ、ちょっと背中借りるぜ」
「へ? 別にいいけど……何をするんだ?」
「なぁに、大したことじゃないさ。……寝ぼすけな友達を、ちょっくら起こしてやるだけだよ!」


イルヤンカを見据えながら、キバは金色のフエッスルを構える。


「キバット、頼むぜ!」
「おうよ! 久々の再会だぁ!!」


ベルトに留まるキバットも、キバと同じく歓喜の声を挙げた。
黄金のフエッスルをくわえ、キバットは高らかに覚醒の号令を吹き鳴らす!!





『タツロットォーー!!』





◆◆◆


――~~♪


「ねぇねぇおじいちゃん! こっちこっち!」


その頃の光写真館では、まるで何かを呼ぶかのように、絶え間ない音色が響き渡っていた。


「おお、彩香ちゃん。音の出所が分かったのかい?」
「うん、ホラ。あの鞄!」


栄次郎を引っ張る彩香が指差すのは、部屋の片隅に置かれた年代物の鞄。


「こりゃ大樹くんの鞄じゃないか」
「なんだろ? 携帯の着メロかなにかかな?」


どこか緊張感の無い二人は、心の中で海東に断りを入れつつ鞄の中を探り、この奇妙な音の出所を突き止める。


彩香が中から取り出したのは小さな小箱。
何故か鎖が幾重にも巻かれ、それこそ携帯電話のバイブの如く、音を鳴らしながら小刻みに震えている。


「この箱が出所っぽいねぇ」
「でもこの箱、鎖が巻き付けてあって外れないよ? どうやって止めたら――」


そう彩香が言い終えるか言い終わらない内に、小箱の震えは更に激しさを増し、鎖を引きちぎらんばかりに暴れ初めた。


「わぁっ!?」


突然の振動に驚いた彩香は、つい小箱を床に落としてしまった。


――ガッチャーーン!!


箱の『中身』の目覚めにより脆くなっていた封印の鎖は、落下の衝撃により粉々に砕け散る。
それとほぼ同時に、箱を構成する六面の板が吹き飛んだ。





「じゃっじゃ~ん!! 」





「おおっ!?」
「わわっ、竜だ! 金ピカの竜だ!」


彩香の言う通り、中から飛び出したのは、翼に銀色の二本角を持つ小さなドラゴンだった。


「ドラマチックに行きましょ~~う!!」


黄金の身体を歓喜に震わせ、魔皇竜『タツロット』は、自分を呼ぶ主の元へ飛び去っていく。




◆◆◆


「奏夜、なにぼんやりしてるのよ!」


クウガゴウラムの上に乗ったまま、急に動きを止めたキバをシャナが叱咤する。


「慌てるなシャナ」


だがキバは動じない。
威風堂々と、何かを待ち続けていた。


「そういや、お前にはまだ見せてなかったっけな。――俺の切り札を見せてやるよ」
「切り札? ちょっと、何のはな――」





「ビュンビュンビュンビュンビューーン!!」





ハイテンション極まりない甲高い声。
彼方から雲を掻き分け、猛スピードで接近してくる黄金の影。
キバとキバットにとっては見慣れた、しかし懐かしい親友の姿だ。


「タツロット!」
「タッちゃ~ん、こっちだこっち!」
「奏夜さぁ~ん、キバットさぁ~ん!!」


主と友達の元に到着したタツロットは、久方ぶりの再会に涙まで浮かべていた。


「久しぶりだなタッちゃん! 無事で何よりだ!」
「ううっ、本当にお久しぶりですぅ~! ずっと会えなくて寂しかったですよぉ~!」
「ああ、悪かったなタツロット。一人ぼっちにさせちまって」


よしよしとタツロットの頭を撫でるキバ。状況に着いていけないのは周りの面々だ。
キバの近くを浮遊していたシャナが、突然の乱入者であるタツロットをじっと見つめる。


「何なの、こいつ……金色の竜?」
「おんやぁ? なにやら知らない人がチラホラいますねぇ」
「話は後だ。タツロット、久しぶりに頼むぜ」
「おっとっと、そうでしたそうでした! ワタシの役割を忘れちゃいけませんね!」
「役割?」


シャナが首を傾げ、キバに何が起こるのかを見守る。


「そんじゃ、いっちょうキバッて――」
「テンション、フォルティッシモォーー――!!」


タツロットがキバの周囲を飛び回り、キバの肩当て――プテラプレートに巻き付いた封印の鎖『カテナ』を解き放つ。
鎖の外れた肩当ての隙間から零れた黄金の光が、無数の蝙蝠を型取り、空へと舞い上がっていく。
全ての準備が整ったキバが左腕を振り上げると、そこに装着された真紅のとまり木『パワールースト』に、タツロットが収まった。


――カチャリ!


タツロットによって鍵が回され、キバの力を封印していた最後の枷が遂に究極覚醒(ファイナルウェイクアップ)した。




「変・身!!」




キバの全身を、黄金の光の蝙蝠が飛び交い、その姿を『キバ本来の姿』に変えていく。
膝にはヘルズゲートの代わりに、クローを展開することによって強烈なニークラッシュを放つことができるルシファーメタル製のニーパッド、シルヴァ・ニークロー。
全身には魔皇力の影響で金色に染まったルシファーメタルにより、防御力を通常の5倍に跳ね上げたインペリアルアーマー。
宙、水、地の魔皇石を固定するヘルズマウントは、キバの強大な魔皇力を制御すべく右脚から移動し、身体の中心部に位置するヘルズブレストに変化している。
顔を覆う仮面は、並のファンガイアでは見ただけで戦意を喪失するとされる、キバ本来の禍々しき面構えを象徴したエンペラー・ペルソナに。
炎と共に背中に伸びた、血霞の如き真紅のマントを翻せば――変身完了。




――仮面ライダーキバ・エンペラーフォーム。




奏夜の持つ『黄金のキバ』本来の姿であり、封印された魔皇力を究極覚醒させた、キバの最強形態だ。


(――王)


傍目から見ていたシャナ、悠二にも、理屈抜きでそう思わせるほどの神々しく、気高い姿。
帰還せし王は自らの道を阻む者に、己の誇りを持って宣言する。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈め!!」



  1. 2012/05/31(木) 11:02:42|
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第二十三話・リバイバル/信じる答え.後篇


眼前に広がる、炎の赤い輝き。
レティシアはその光景を茫然と見つめていた。


「サミュエル……? ジェフ……?」


愛する夫と息子の名前。しかし、その呼び掛けに答える者は誰もいない。
聞こえるのは、周囲を取り囲む人間達の蔑みだけ。


『化けもの』『化けもの』『化けもの』『化けもの』『化けもの』『化けもの』。


事態について行けないレティシア。
ふと彼女は、炎の中に2つの影を捉える。
貼り付けにされ、今まさに業火で身を焼かれる2つの影を。


――ややあって、炎は静かに消えていく。黒く焼かれた大地に残る、二つの消し炭。


「ひっ…………!!」


限界まで見開かれたレティシアの瞳に、『地獄』が映り込む。






――無残な亡骸と化した、夫と息子の姿が。







「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」







◆◆◆


「レティシア!!」
「!」


傍らで自分の肩を揺するカロンの呼び声により、レティシア――アナザーキバの意識は覚醒する。
見ればここは、自分達のアジト二階層にある広いホール。
目の前の床には、自らの悲願を達成するカギとなる、綿密な研究・計算がいくつも書かれた模様――『蘇生陣』。


「す、すみません。カロン。コントロールを手放してしまいました」
「いや、儂も先程まであの気配にあてられ、意識を失っておった。あれは一体なんだったんじゃ……?」


レティシアとカロンの言う『気配』。それは、クウガ・アルティメットフォームの生み出した悪しき波動のことである。
普段ならば威圧こそすれ、気絶するほどのことではないのだが――今回は状況が違った。


「迂闊でしたね。蘇生陣の発動にばかり集中していて、他への警戒が疎かになっていました」
「うむ。ただでさえ、蘇生陣発動に裂く集中力は尋常なものではないからな」


二人は蘇生陣発動に全精神力を注いでいた為、他への警戒心が限りなく削がれていた。

そこに出現したクウガUFの持つ『究極の闇』のエネルギー。
不意を突かれ、心構えさえしていなかった精神に、クウガUFの力は影響が大き過ぎたのだ。


(……あんな白昼夢を見たのも、あの波動のせいですかね)


もはや何かの啓示のように思える。
運命が自分を駆り立て、先へ進むことを促しているかのような。


(……大丈夫。もう少し、だから)


レティシアは掌の上にあるペンダントを握り締める。
あの波動の持ち主が来たとしても、負けるわけにはいかない。


長い間、ただ一つの願いを叶える為だけに、ここまで歩き続けて来たのだ。
どれだけの屍を見ても、どれだけの罪を負っても、どれだけの返り血を浴びても、歩き続けた。






――あと少しで、二人の温もりを感じることができる。





邪魔など、させるものか。


「……カロン、陣発動を続けましょう」
「うむ、今度は更に処理スピードを上げるとしよう。次はあの波動に当てられることも……」


ない。と続けようとしたカロンの言葉は、背後から聞こえた派手な音に遮られた。


――ドガッ!!
凄まじい勢いで蹴破られたドアがホールの床を滑り、壁に激突して止まる。


「!!」


カロンとレティシアが警戒心を露わに、侵入者の姿を捉えた。


「よぉ、お二人さん」
「……貴方ですか」


黄金の魔剣を担ぎながら現れた紅奏夜に、レティシアは敵意に満ちた眼光を向ける。


「今更、何の用じゃ?」
「決まってるだろ」


その隣に立つ小野寺ユウスケが奏夜と声を揃え、カロンの問いに答えた。


『邪魔しに来た』




◆◆◆


「あれが、アヴェンジャーの居城?」


紅蓮の翼で滑空するシャナの眼前には、切り立った崖の上にそびえ立つ、古めかしい城が広がっていた。


その真下でバイクを駆る太牙が頷く。


「ああ。その昔、ファンガイアが使っていた場所だよ」
『ふむ。巨大なアジトだな』
「でもあんな場所、御崎市にありましたか?」


古城を見上げながら、イクサリオンを操る名護の後ろで、後部座席に座る悠二は疑問符を浮かべた。
悠二は生まれも育ちも御崎市だが、あんな城の存在は認知していなかったのである。


しかしその疑問は、シャナと同じく、グリモアで空路を行くマージョリーが解決してくれた。


「ファンガイアの魔術結界の跡があるわ。普段は人間が視認できないようになってたみたいよ」
「跡……ってことは、今は別の結界が張られてるんですか?」
「ええ。今は自在式製の、単純に侵入者の行く手を阻む結界ね。この進行方向だと、あと少しでブチ当たるわ。途中でルート変更すれば、結界は貼られてないみたいだけど……」
「結界が貼られてない方の道はどうせ罠だろ」


マシンディケイダーに乗る士がしれっと言い放つ。
その意見には全員同意するところだ。


「このままの道で問題ない。私が結界を斬るから」


シャナが夜傘から、贄殿遮那を抜く。
異能の力全てを無効化するこの刀なら、結界など紙切れに等しい。


「でも結界が破られてないってことは、奏夜さんとユウスケはもう一つの道を行ったんですよね?」


ならば、何かしらの罠にかかっている可能性もある。
マシンディケイダーの後ろに乗る夏海は二人の身を案じていた。


「余計な心配をするな夏みかん。ユウスケのしぶとさは、お前もよく知ってるだろ」
「奏夜は殺したって死なないわよ」
「こっちが心配したと思えば、すぐケロッとした顔で帰ってくるもんね」


あのバカが付くほどのお人好しが、そう簡単にくたばる訳がない。
あの非常識が服を着て歩いてるような教師が、そう簡単にやられるわけがない。


やや歪んではいるものの、士、シャナ、悠二の評価は二人への信頼に他ならない。
――だからといって、彼らの救援に急ぐ足を緩めようとは思わないが。


そうこう話している内に、遠巻きに見えていた古城が目の前まで近付いていた。
マージョリーの読み通り、進む先には複雑な文字や陣形の刻まれた自在式の障壁。


「ふっ!」


シャナは短く息を吐き、双翼から吹き出す炎の勢いを上げる。
紅蓮の軌跡を描きながら、シャナは障壁に特攻し、


「――だあッ!!」


一閃。
振り抜かれた贄殿遮那は、幾重にも刻み込まれた式を造作もなく切り捨てる。


「やるな」
「どうってことない」


士とシャナの短いやり取りと共に、全員が結界の内側に侵入する。


「!!」


しかし、古城の門まであと少しという所で、全員が足を止めた。


――グルオォォッ!!


周囲の景色から切り取られたような、円形の広場。
重く閉じられた城門を守護するかの如く、大勢のファンガイアが群れを成して待ち構えていたのである。


「再生態のファンガイアか」
「奴らめ……どうやら残る兵力全てをここに集めていたようだな」


名護と太牙が呟く間にも、カロンが生み出したであろうファンガイア達は侵入者を排除するべく進行してくる。


「ふう、屍人形なんてブチ殺し甲斐が無いけど、どーやら蹴散らしていくしかないみたいね」
「それっきゃねぇか。――シャナ、遅れんなよ」
「そっちこそね。士」


二人が好戦的な笑みを浮かべ合い、士はバイクのアクセルを入れ、シャナは翼を羽ばたかせ、ファンガイアの軍勢に向かっていく。


「来い、サガーク!」
『◆〆∞£!!』
「キバーラ、行きますよ!!」
「はいは~い、おっ任せ~♪」


太牙がサガークを、夏海がキバーラを呼び出し、士と名護はディケイドのカードとイクサナックルを構える。




『変身!』




【KAMEN.RIDE-DECADE!!】
『フィ・ス・ト・オ・ン』
『ヘン・シン』
「チュッ♪」


十の虚像、山吹色のアーマー、ブルーのステンドグラス、無数のハート型の光が四人に重なり、彼らの姿をそれぞれ仮面の戦士――仮面ライダーディケイド、イクサ、サガ、キバーラへと変えた。




『そこを退けぇーーーッ!!』




覇気勇々とした戦士達の声が大気を震わせ、両陣営の最終決戦の狼煙は上がった。




◆◆◆


「はっ!!」
「っ!」


古城内のホール。
ザンバットソードの一薙ぎを二の腕で受け止め、至近距離で睨み合う奏夜とアナザーキバ。


「どうしました? 変身しないのですか?」
「へっ、お前なんざ、この魔剣一本で十分だっつの。そっちこそ、自慢の高速移動はどうしたんだよ?」
「……変身していない貴方など、この身一つで十分です!」


強がる二人だが、それぞれの力を使わないのにはちゃんと理由があった。
奏夜は連日の戦いによるダメージと、変身に不可欠なキバーラが、変身時間超過による負担からまだ回復していないことと。
レティシアは蘇生陣発動時、膨大な魔皇力を消費しており、高速移動に避ける力が残っていなかったということ。


「答えを持たぬ者が――今度こそ消えなさい!」
「うおっ!?」


ただ、やはり互いにハンデがあったとしても、奏夜とアナザーキバの力の差は歴然だ。


アナザーキバが呼び出した水球が奏夜を取り囲み、一斉に弾ける。
ギリギリで回避と防御は間に合ったかにみえたが、肩に出来た僅かな傷痕を見て、奏夜は舌打ちした。


「ちっ、さすがに生身じゃ限界があるか……」


唯一の救いは、カロンの相手をユウスケが変身するクウガが引き受けてくれていることか。


「だぁっ!!」
「ぬうっ、小癪な!」


クウガの拳を回避し、カロンが鳥の形を模した炎弾を飛ばす。


ユウスケとカロンも、アルティメットフォームの蘇生陣の負担からか、勝負はほぼ互角だった。
死体を呼び出せない分、カロンの方がやや不利だろうか。


しかし、レティシアと奏夜の戦いは、明らかに奏夜の劣勢だった。


(ま、嘆いたところで、今持ってるカードで戦うしか無いけどな……)


アナザーキバの腕を弾いて距離を取り、ザンバットソードを構え直す奏夜。


「……理解しかねますね」


問いかけるアナザーキバは、拳を構えながらも仕掛けてくる様子は無かった。


「答えを持たぬ時点で、貴方がここにいる資格はない……そう言った筈ですが?」
「………」


奏夜は何も答えない。ただ、視線だけは逸らさなかった。


「何の支えも無く進んでも、それはただ苦しみが続くだけ。
貴方の信念は、所詮夢物語。掲げたとして、それが何の支えになるのですか?」


「ハッ、夢物語はお互い様だ。……さっき発動させようとしていた陣、死者を蘇えらせるものだろう?」


蘇生陣は魔術と自在式が組み合わさったもの。
奏夜には魔術の心得はあっても、自在式の素養は無かったが、今までのレティシアの言動等から、推測は立っていた。


「……夢物語などではありません。私達が今まで集めたライフエナジー、キバの鎧、そしてカロンの死者の書。これらがあれば、死を超越することは十分に可能です」
「そんなやり方で蘇らせて貰って、お前の大切な人達が喜ぶとでも思ってんのかよ」
「強がりは止しなさい。――貴方にだっているでしょう?」




何を投げ打ってでも、蘇らせたいと願う人が。




「………」


奏夜の瞳が僅かに揺れた。


「私達の大命は、敵である貴方にも利を与えるもの。貴方の自分本位な理想郷、どちらに人やファンガイアが着いてくるか、もう分かっている筈です」
「……ああ、そうだな」


奏夜はあっさりとそれを認める。


――出会い方が違っていたのなら、奏夜はレティシアに着いていっただろう。
もし叶うなら、“あの人”との時間を取り戻せるなら。
例え悪魔にでも魂を売ってもいい。


そう思っていた時が、奏夜にも確かにあったからだ。


「貴方と私は似た者同士なのかも知れません。違うのは、叶う理想を追っているか、叶わぬ理想を追っているのかどうか。
貴方が答えを見つけられず、自らの理想に絶望したのなら――まだ遅くはない」


アナザーキバは無造作に、奏夜へ手を差し出す。


「私達と共に来なさい。貴方の過去を、運命の鎖から解放しましょう」


奏夜にとって余りにも甘い誘惑。
身動きさえ出来ず、頭をくらくらと揺らし、冷静な判断を奪う毒。
叶わぬ理想を追って何になる。そんなものの為に、何故大切な人との未来を捨てなければならない。


奏夜の口元に笑みが浮かんだ。
酷く虚ろで、歪んだ笑顔。
担いでいたザンバットソードを下ろし、奏夜はレティシアに近付いていく。


差し出された手に、自分の手を伸ばしながら、奏夜は確かな意志と共に、自分の答えを述べる。






「やなこった」






奏夜の笑みはいつの間にか虚ろなものではない、いつもの人を喰ったようなものに変わっていた。


「!!」


レティシアがそれに気付いたころには、もう遅かった。
奏夜は彼女の手をはたき、返す拳で、アナザーキバの仮面を渾身の力でぶん殴る。


「がっ……!」


生身のものとは思えないほどの力に、アナザーキバは数歩仰け反る。


「あ―、痛ぇ痛ぇ。やっぱ生身だと色々不便だなぁ」


拳から血を滴らせながら、奏夜は緊張感の無い口調で呟く。


「な、何故……ですか!?」


アナザーキバの仮面の下から、驚愕の言葉が漏れると同時に、





『奏夜が、お前とは違うからだ(よ)』





窓に貼られていたステンドグラスが割れ、細かく砕けた破片を浴びながら、二つの影がホールに着地した。


「ようユウスケ、生きてるか?」
「士!」
「ごめん奏夜。遅くなった」
「シャナ!」


颯爽と現れたディケイドとシャナに、奏夜とクウガは呆けたように立ち尽くす。


「外のファンガイア達が思いの外多くてな。ヤツらの相手を名護達に任せて、俺達だけ先に来たんだよ」


ディケイドはすれ違い様に、奏夜の肩を叩く。


「あのカラスは俺とユウスケが相手をする。奏夜、俺もお前の答え、聞かせてもらうぞ」
「……」


まったくコイツは――いちいち見透かしたようなことを言う。
奏夜は苦笑して、


「ああ。頼んだぜ、門矢」


ディケイドは小さく頷き、カロンと戦うクウガに加勢する。


「クッ……世界の破壊者か……!!」
「ユウスケ、いつまでもこんなヤツに手間取ってるな。それとも、主役の俺に見せ場を取られたいのか?」
「……相変わらずすげー自信だな。お前はさ」


皮肉っぽく言いながらも、クウガはこの友人の助けに感謝しつつ、拳を構え直す。


「見せ場はまだまだこれからだよ。何てったって、俺はクウガだしな」
「よし、その意気だ。――行くぞ!」


付近でライドブッカーの弾丸とカロンの炎弾が舞う中、シャナは奏夜を庇うように、彼の前に立つ。


「奏夜、下がってて。その様子じゃ身体もボロボロだし、変身もできないんでしょう?」
「――そーだな。せっかくだ、お前に出番を譲ってゆっくり……と言いたいとこだが」


一度は後ろに退いた奏夜が、シャナを押しのけ再び前に出る。


「これは俺がケジメを付けなきゃならん戦いなんでな。ちょっと任してくんねぇか?」


シャナを見る奏夜の瞳は穏やかで、とても戦いに赴くようなものではなかった。
しかし、シャナにとってはもはや見慣れたもの。


(いつもの奏夜だ)


それを確かめ、しかしシャナは奏夜の背中に回るようなことはせず、代わりに彼の隣に立つ。


「いやよ」
「あん?」
「ここまでずっと奏夜の好きにさせて来たんだから、いい加減私も手を出すわよ。それに」


好戦的な、しかしさながら奏夜の如く、シャナは快活に笑った。


「やるなら二人で、でしょ?」
「……はっ、お前も言うようになってきたな!」


奏夜が、シャナの髪を乱暴に撫でたのを気に二人の武器、ザンバットソードと贄殿遮那が交差した。


「そーいうわけだ、レティシア。残念だが、お前の信念とやらに賛同するわけにはいかない」
「……何故、ですか」


レティシアの声はどこか震えていた。


「貴方は何故、立っていられるのですか? 貴方だって、生き返らせたい人がいるでしょう?まさか本気で、自分の夢物語が現実になるとでも思っているのですか?」
「思ってるんじゃねぇ、信じてんだよ」


仮面ライダークウガ――小野寺ユウスケに教えられたことだ。


「例え夢物語と笑われようが、それを諦めずに信じ続ける限り、可能性は0じゃねぇだろ」


酷い現実を信じ、自分の願いを諦めるな。
優しい綺麗事を信じ、誰も泣かない現実を願い続けろ。


「これが俺の答えだ。誰が何と言おうが、俺は人とファンガイアが笑っていられる世界を作ってやる。信じて、信じて、俺がくたばるまで信じ続けてやるよ。
――レティシア、お前も含めてだ」


奏夜は真っ直ぐ、アナザーキバを見据えた。


「お前の理想が間違っているとは言わない。でも、それは俺の理想と相反するものだ。だったら、俺の理想の中でお前を救ってやるよ」


流れるように告げる奏夜。
しかしレティシアは、それを自分への侮辱として拒む。


「わ、私にそんな絵空事を押しつけるなッ!! 貴方に救われる謂われなど無い!」
「そうか? 今の俺にはお前が自分の理想のせいで、もがき苦しんでるように見えるがな」
「戯れ言を! 私が私の理想に何故苦しめられなくては……」
「なら何故、俺を殺さなかった」


――刹那、レティシアの全ての動きが止まった。
奏夜は言葉を切ることなく、唇を動かしていく。


「よくよく考えりゃおかしな話だ。アンタにゃ俺を殺すメリットはあっても、生かしておくメリットはない。最初に戦った時は、ただでさえマッド博士との戦いでグロッキーだったからな。造作もなく俺を殺せたはずさ」


シャナも――そこは引っかかっていた。
レティシアにとって、奏夜は邪魔にしかならない。
ならば何故、奏夜を殺さず生かしておいたのか。


(奏夜は、あいつがわざと見逃してたっていうの?)


シャナは黙って、奏夜の話の続きを聞く。


「信念だの理想だのと、アンタが執拗に問い掛け続けた問題にもこれで説明がつく。
アンタは俺の理想を夢物語と言ったが、本当は俺がその夢物語を、現実にしてくれるのを望んでいたんじゃないのか?
――理想のために人間を犠牲にし続けるアンタ自身を、止めて欲しかったから」
「ふ、ふざけるなッ!! 人間など価値の無い生き物だ! 私の理想の糧となればそれでいい!」
「いや、アンタは知っているハズだ!」


奏夜はザンバットソードの切っ先をアナザーキバに向けた。


――今から自分が彼女に与える事実は、ある意味では絶望の刃と成り得る。
だが、それでも言わなければならない。


運命の鎖から、彼女を解き放つために。
自分の理想を貫いた上で、彼女にも救いを与えるために。


「アンタは人間の醜さを嫌と言うほど知っているだろうが、それと同じくらい人間の素晴らしさも理解しているだろう!
アンタの――夫と息子から!」
「ッ!」


レティシアの中で、記憶がフラッシュバックする。
だが、先刻の残酷な白昼夢ではない。
自分を呼ぶ声と、三人で暮らした暖かな時間。


「……アンタは非情に成り切れなかった。アンタの夫と息子と同じである人間を、理想のために殺し続ける自分が恐ろしかった。
その感情を『自分の信念』という形で正当化し、無理やり抑えつけていた」


最初の頃と、もはや立場は逆転していた。
奏夜は毅然と立ち、レティシアはその有り様を揺るがされている。


奏夜は、レティシアが投げかけた問いを思い出す。
――自分の理想は果たして、本当に他の誰かを幸せにできるものなのか。





「この問いに誰よりも苦しめられていたのは――他ならぬアンタだったんだ。
レティシア・リネロ」





◆◆◆


「ハァッ!!」
「ぐおっ!?」


ディケイドのライドブッカーが、カロンを横薙ぎに斬りつける。
傷口を抑えながら後退すれば、次はクウガの追撃だ。


「だりゃッ!!」
「ちぃっ、舐めるでないわッ!」


クウガの拳を、至近距離からの炎弾で防ぐ。
クウガが爆炎で吹き飛ばされたのが見えたが、ダメージはそこまで追ってはいまい。


(せめて死者の書を使うだけの力が残っておれば……、いや、いずれにせよこのままではマズい……!!)


足止めの屍達がやられれば、『弔詞の詠み手』達も加勢に来るだろう。
だが撤退するにせよ、レティシアと死者の書、キバの鎧だけは死守しなくては――


「余所事考えてる暇があるのか?」


【ATTACK.RIDE-BLUST!!】


「!!」


マゼンダカラーの光弾が、硝煙の彼方からカロンを狙う。


「ぐ、あっ!!」


カロンが動けない隙をつき、ディケイドは新たなカードをドライバーに装填する。


【FINAL.FORM.RIDE-KU.KU.KU.KUGA!!】


「ユウスケ、ちょっとくすぐったいぞ!」
「げっ! アレやるのかよ!」


クウガの悲鳴も束の間、ディケイドが彼の背中に手を翳すと、クウガの鎧が割れ、中から甲虫を模した装甲が現れる。
クウガの頭が装甲に吸い込まれ、空中で反転。クウガの姿は黒と金でカラーリングされたメカニカルなクワガタ虫『クウガゴウラム』へ変わる。


「ハァッ!」


翼の後ろから噴出されたエネルギーが推進力となり、クウガゴウラムは一瞬で、その銀の二本角を用いてカロンを挟み込む。


「ぐっ、こ、れしきぃぃ!」


振り解こうとするカロンだが、身体はがっちり挟まれている上、飛翔するクウガゴウラムのスピードよってかかるGが、更に彼の活動を緩慢にさせていた。


【FINAL.ATTACK.RIDE-KU.KU.KU.KUGA!!】


「決めるか」


カードを入れ、手を軽く叩くディケイド。
クウガゴウラムはカロンを挟んだまま、広いホールの天井付近で転回。
加速しながらディケイドへと標的を運ぶ。


ディケイドがタイミングを合わせて飛び上がり、マゼンダのオーラに包まれた右足を突き出す。




『ハァーーーッ!!』




「ぐ、ぉおおおおお!?」


クウガゴウラムとの連携技『ディケイドアサルト』が炸裂し、カロンはダメージによって受け身すら取れぬまま、地面に叩きつけられた。




◆◆◆


「ぬ、ぉお……」


傷は、かなり深い。
カロンは自らの存在の力が漏れ出していくのを、まるで他人事のように感じていた。


(……もはや、儂にこの先を見届けることは不可能、か)


――自分には、レティシアのように大層な理由など無かった。
ただ、自らの持つ死者を操る力を、どこまで高められるのか。そしてその力で如何なる景色を見ることができるのか。
それが知れさえすれば良かった。


レティシアと出会い、共に行動してきたのも、言わば探究心の延長に他ならない――


(そのはず――だったのじゃがのう)


カロンは嘴を僅かに歪ませる。
変わった女だった。
激情に駆られた哀れな存在かと思えば、同じ境遇の持ち主にはまるで慈母のように接する一面もある。


所詮は、各々の都合上組んでいただけのこと――だが、数百年に渡る旅路の中を、それだけの理由で共に歩んだのか、と問われれば、確実に嘘となるだろう。
――今ここで自分が消えれば、その旅路も、何もかもが水泡に帰す。


それは、それだけは。


「み、とめぬぞ……!!」
『!!』


ディケイドとクウガゴウラムが警戒する中、カロンはボロボロの身体でホールを進む。
向かう先は、蘇生陣の中心。


「無限に死者を呼び出すことは叶わなんだが――今までに集めたライフエナジーと、我が存在の力を束ねれば、一度限り、歴戦の猛者を呼び出すことが出来る……!!」
「!! あいつ、ここで何かヤバいヤツを蘇らせる気か!!」


ディケイドの瞳に移る死者の書が輝きを増すと、陣の模様が呼応するかのように蠢き始める。


「レティシア!!」
「っ!!」


陣が発動したのを確かめ、カロンは腕に装着されていた『死者の書』を取り外し、アナザーキバに放った。
迷いを見せていたアナザーキバが、咄嗟にカロンの方をみやる。


「許せ、今まで集めていた力をここで使う!! 主は儂が今から呼び出す死者を使い、こやつらを滅ぼせ!!」
「カロン……そんな!!」


アナザーキバ――レティシアの声は震えていた。
普段とあまりにも違うその様子に、カロンは自身の状態も忘れて、笑い声を挙げた。


「何というザマじゃ。貴様の理想は、あの男の言葉程度で失われるものではなかろう?」


カロンの姿は、もはや頭半分しか残っておらず、他の部分は、蘇生陣の光と同化しつつあった。





「最後まで――貴様の理想を貫け――我が、友よ――」





それが、カロンの最後の言葉だった。
存在の力全てを消費し、その身は蘇生陣発動の糧となり果てたのだ。


「あ――あぁ……!!」


アナザーキバの身体から力が抜け、精神状態を乱したのか、ベルトからキバットが外れた。アナザーキバの鎧が弾け飛び、その姿はロブスターファンガイアへと戻る。


「きゅううう……」
「キバット!」


奏夜が呼び掛けると、キバットは「ハッ!」と目を醒まし、主の元へ飛んでくる。



「奏夜~~! 良かったぁ、来てくれんの待ってたぜぇ!」
「再会の挨拶は後だ、今はとにかくこの城から――」


奏夜が言った途端、ホールの床がひび割れ、瓦礫となって下へ落下していく。


「やべっ!!」
「奏夜、捕まって!!」
「士、お前も早く!!」
「ああ!」


クウガゴウラムと紅蓮の翼を顕現させたシャナが、すんでのところでディケイドと奏夜を回収する。
瓦礫の雨を縫うようにして、四人は間一髪、古城を脱出した。
空中で一旦制止し、四人は再び崩れ行く建造物を眼下に収める。


途端、全員が言葉を失った。


「な、なんだありゃ……」


クウガゴウラムからユウスケの驚愕の声が漏れた。
他三人も口にこそ出さないが、この事態について行けないのは同じである。


古城の瓦礫を砕き、中から首をもたげた巨大な影。岩肌のような両翼を広げ、鋭い瞳は、死者の書の支配下にあって尚、強者の光を宿していた。


『……馬鹿な』


この面々の中で、一番眼前の状況を信じられなかったのはアラストールかも知れない。
今、目の前で冥界の淵から蘇ってきたのは、かつての契約者と自分の前に立ち塞がり、死闘の末にようやく倒れた、まさに歴戦の“紅世の王”だったからだ。




『“甲鉄龍”イルヤンカ……!!』




遥か昔に起きたフレイムヘイズと徒の一大戦争、その発端となった組織[とむらいの鐘]最強の将、『両翼』の左、イルヤンカ。
虹の翼“メリヒム”と並び、討たれた後もその名を轟かす実力者。
死者の書は、蘇らせる死者の記憶を、使用者が持っていなければならないはずだったが――


『迂闊だった……“冥夜の船頭”め。“大戦”に参加していたのか……!』
「凄い気配……」


シャナに“大戦”の知識は無いが、あの龍が今までの“徒”の中でも、最上位に入る力を持っていることは理解できた。


「コイツは骨が折れるな……」
「あっ! みんな、あの龍の背中!」


クウガゴウラムが角で刺す先、重厚そうな外皮の上に、威風堂々と立つ影。


「……レティシア」


◆◆◆


「な、なんなんですか。あの龍……!」
「……もしかしなくても、かなり面倒な状況なんじゃない? コレ」


古城を食い破って現れたイルヤンカを見上げつつ、夏海――仮面ライダーキバーラは息を飲み、マージョリーは本気で面倒くさそうに呟く。
無論、周囲に群がるファンガイアに炎弾を叩き込むのも忘れない。


「例えそうでも、我々がやるべきことは一つだ」
「奏夜達のためにも、ここで屍達を食い止めなくてはな」


イクサの銃弾が放たれ、サガのジャコーダービュートが伸び、またファンガイア達がステンドグラスとなって砕けた。


「シャナ、先生……」


空で微かに光る紅蓮の炎を見つめる悠二 。
今は、信じて待つしかない。


◆◆◆


イルヤンカの背に降り立ったディケイド、シャナ、奏夜、クウガの四人。
まだ死者の書の所有者が命令を下していないためか、イルヤンカが暴れ出す気配は無い。
改めて、四人とレティシア――ロブスターファンガイアは真っ向から対峙する。


「……あくまで、戦わなきゃならないのか」


最初に口を開いたのは奏夜だった。


「――ええ」


レティシアは、小さく頷く。
その腕には、カロンから譲り受けた死者の書が光っている。


「私は貴方の理想を否定しなければならない。そうしなければ私……いえ、私達の旅路は、何の意味も無くなってしまう」


一瞬でも揺らいでしまった自分への怒りを込め、レティシアは宣言する。


「私達の理想は、所詮相容れない。――夢は、ただの夢に過ぎません」
「だが、お前は」
「本心からそう思っちゃいない」


しかしディケイドとクウガは、レティシアの揺らぎを見逃さない。
力強く、二人は前に踏み出す。





「奏夜は信じる理想の為に戦える。
目の前に立ちはだかる敵が、例え自分と相反する理想の持ち主だったとしても、それさえも受け入れ、互いが笑っていられるように全力を尽くすことができる!」
「アヴェンジャーのファンガイアが、アンタに着いてきたのと同じだ! その姿にこそ、ファンガイアも人間も、シャナちゃん達仲間も着いてくる! それが、みんなが笑っていられるよう世界を作り出せる、真の王の姿だからだ!」
「お前はそんな世界を望んでいたんじゃないのか? お前と大切な人々との間に起きた悲劇を二度と繰り返させない、人間とファンガイアが手を取り合っていられる世界を!」
「今のアンタを動かしているのは理想じゃない、ただの使命感だ! アンタの選んだ道が間違っているなんて誰も言わない! でも奏夜は、アンタにも幸せになって欲しいと願ってる! なのに、なんで俺達が争わなきゃならないんだよ!」
「――そこまで分かってるなら、こうなることが必然だと言うことも分かっているでしょう?」


レティシアは涼しい口調で、相好を崩す。
異形の姿のせいで酷く分かりづらい笑顔。だがそれは、不思議と好意的なものに見えた。


「私はもう選んだ。今更、救いの道を歩むことは許されない。カロンも同胞も、それこそ糧としてきた人間達も、それを許しはしないでしょう。もはや、正しいかどうかではないのです。
私は最後の時まで、選んだ道を歩み続ける、それだけですよ」


最後通告に似たその言葉に、ずっと話を聞いていたシャナは、


「……なんて、馬鹿なの」


いつだったか、ある“徒”の少女に――最後まで自分の想いに生きた少女に言った言葉を、再び送る。


「本当に――馬鹿だわ」
「ふふ――そうかも、知れませんね」


シャナに笑いかけながら、レティシアは死者の書に手を添える。
もはや――話は終わりだという意思表示か。


「奏夜」
「ああ、分かってるよ門矢。――キバット!」
「あいあい! 俺様ふっかぁ~~つ!」


飛来したキバットが、操られていた分のフラストレーションもあってか、気合い十分に奏夜の手を噛む。


「ガブッ!」


ステンドグラスの紋様が奏夜の頬に浮かび、腰に巻き付いたキバットベルトに、キバットが逆さ向きに留まる。


「変身!!」


アクティブフォースが奏夜の体内を駆け巡り、その姿を仮面ライダーキバへと変えた。




並び立つ四人の戦士にレティシア――ロブスターファンガイアは戯れのつもりで問う。


「最後に聞いておきましょうか――貴方達は、何者ですか?」


レティシアから目を逸らさぬまま、四人は誇るように、自らの名を高らかに告げた。




『通りすがりの仮面ライダーだ!!』
「ファンガイア影の王、キバ!」
「“天壌の劫火”アラストールのフレイムヘイズ、『炎髪灼眼の討ち手』、シャナ!」






『覚えておけ!!』




  1. 2012/05/31(木) 11:02:12|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第二十三話・リバイバル/信じる答え.前篇

「はぁっ!!」


クウガの鋭い拳が、スパイキーラットファンガイアを貫く。


「くっ!!」


カウンターのパンチを肘で受け止め、がら空きになった下腹部に強烈なキックを繰り出すクウガ。
赤のクウガ、通称マイティフォームは、その名の通り汎用性に優れ、肉弾戦を得意とするが故に、様々な相手への対応力がある。
しかしユウスケは、


「!!」


キックした脚を即座に退かせ、スパイキーラットファンガイアと距離を取る。


「気付いたか。なかなかの判断力だ」
「その身体……」


見れば、攻撃を行ったクウガの拳と脚から、僅かに血が流れている。
出血の原因は、スパイキーラットファンガイアの身体を覆う、鋭い体毛だ。


「針鼠みたいなもんか」
「その通り。鋼の強度を誇る私の身体は無敵の盾であり、そして――」


スパイキーラットファンガイアは、先程奏夜に見せたように、身体を丸くした状態で、ハリを巨大化させた。


「こうして最強の矛にもなる!!」


歪な球体が回転を初め、真っ直ぐクウガに突撃してくる。
ハリがスパイク代わりとなり、攻撃力にスピードによる突進力が付与され、当たればクウガとてただではすまない。


「ちっ!」


クウガは横っ飛びで球体の魔手から逃れようとするが、


「甘いわ!」


球体は軌道をすぐ様修正し、再びクウガを串刺しにしようと向かってくる。
回避は不可。恐らくドラゴンフォームになっても結果は同じ。


(なら、真っ正面から受け止めてやる!)


クウガの意思に呼応し、アマダムの輝きがその色を紫に変える。


「超変身!」


クウガの瞳がアマダムと同じ紫へと変わり、その身体に紫のラインが描かれた重厚な鎧を纏わせる。


――邪悪なるものあらば、鋼の鎧を身に着け、地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり。


クウガの持つパワー形態、タイタンフォームだ。


「変わった……?」


奏夜が呟く傍ら、クウガTFは両手を大きく広げ、スパイキーラットファンガイアと真っ正面から対峙する。
土を巻き上げながら突進してくる球体が、遂にクウガTFへと届くが――


「なにっ!?」


驚いたのはスパイキーラットファンガイアの方だった。
球体がクウガTFに接触した途端、球体の動きが止まり、回転の勢いが完全に殺されたからである。
しかも、ハリは刺さっていない。


「紫のクウガのパワーと硬度を舐めるなよ……!!」
「くっ、だがこのままでは貴様も反撃は出来まい! 加えて、我の装甲は丸腰で砕けるほどぬるくは無いわ!!」
「丸腰ならな!」


言いながらクウガは暴れるファンガイアの群れの中から、青い影を見つけ出す。


「ガルルさん!」
「!」


群れの中で戦っていたガルルが振り返る。このガルルはユウスケの知るガルルではないが――ワタルのいたキバの世界の経験から、彼がどんな能力を持っているのかは、ユウスケも知っていた。


「今だけでいいです、俺に力を貸してください!」
「――わかった!」


ガルルもまた、ユウスケとの面識はない。だが、力を貸すことに対しては、何の躊躇いも無かった。


――自分の主を認め、救おうとしてくれている。
力を貸す理由は、それで十分だった。


「ラモン、力! しばらく持ちこたえろ!」


ガルルの身体がブルーの光と共に、彫像形態へ。
浮かび上がった空中で彫像は更に姿を変え、魔獣剣ガルルセイバーとなり、球体を押し止めるクウガの右手に収まる。


すると、ガルルセイバーの湾曲した刀身が両刃に変化し、生物的だったデザインが、シンプルな大剣『タイタンソード』となった。
――これはクウガの持つ力、決められたイメージを持つ物体を、各フォームの特性を活かす武器に変えることができる力だ。


渾身の力でスパイキーラットファンガイアを僅かに押し返すクウガTF。
またすぐに回転を取り戻すだろうが、彼にとってはその僅かな時間だけで十分だった。


「うぉりゃああ!!」



封印エネルギーを刀身に込めた一点突破の突き技『カラミティタイタン』が、スパイキーラットファンガイアに炸裂した。


「ぐがっ!!」


カラミティタイタンのパワーは針を砕き、そのままスパイキーラットファンガイアの頑丈な皮膚にまでヒビを入れた。


「ぬぅっ、これしきの傷!! ――ウォォォッ!!」


スパイキーラットファンガイアが自身を鼓舞するかのように雄叫びを挙げる。
それだけで、攻撃を食らった腹部に浮かぶクウガの刻印は掻き消えた。


「確かにパワーはある……ならばスピードはどうかな!!」


スパイキーラットファンガイアは再び身体を丸め、球体は二・三度その場で跳ね、


「シャッ!!」
「!!」


クウガTFは、反動を溜めたスパイキーラットファンガイアの突撃を辛うじて避ける。
が、球体は近くの木々に当たって跳ね返り、クウガTFを狙い続ける。
縦横無尽に跳ね回るその姿は、まるでピンボールだ。




(くっ、敵が見えない……!!)


カブトの世界で見たクロックアップと同じだ。
視認できなければ勝負にもならない。
装甲の代わりに機動力の欠如したタイタンフォームでは無理だ。


「フハハハ!! 反動による加速、貴様の視力では捉えられまい!!」
「それなら……!」


クウガTFはガルルセイバーを一旦手放し、


「バッシャーくん! 頼む!」
「オッケイ!!」


彫像に戻ったガルルセイバーと入れ替わりに、バッシャーはクウガの元へ向かう。バッシャーの彫像から変化した魔海銃バッシャーマグナムをキャッチし、クウガは再び姿を変える。


「超変身!!」


クウガの眼とアマダムが緑色に染まり、身体は左肩にプロテクターの付いた、同じく緑の鎧へと変化。
右手にはバッシャーマグナムから変化した縦型のボウガン『ペガサスボウガン』が握られる。


――邪悪なる者あらば、その姿を彼方より知りて、疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり。


感覚機能に特化した形態、クウガ・ペガサスフォームだ。


(……………)


クウガPFは地面に片膝を突き、感覚を研ぎ澄ませた。
余計な雑音は全て排除。
スパイキーラットファンガイアが動くことにより生まれる音を聞き逃さぬよう、全神経を集中させる。


木々を跳ね回るスパイキーラットファンガイアは、そこまで知る由も無かったが、クウガPFが微動だにしないことに警戒心は覚えたようだった。


(諦めたか……? いや、ならば何故姿を変えた? いずれにせよ、接近するのは念の為避けるべきか)


あの武器の形状――動いてさえいれば的中確率は低い。
ここはこちらも遠距離から攻めるべきだ。
スパイキーラットファンガイアは戦法を決め、歪な球体から伸びる針の一本を、クウガへと向ける。


細い針、速い発射スピードに加え、その出所は掴めない。
完璧な状況だ。


(消えろ、異形の戦士!)


射出された針が、風を切りながらクウガPFに迫る。


「!」


強化された聴覚でなければ知り得ない風切り音。
クウガPFが頭を上げ、射出方向を見ることさえもせず、指先だけで針をキャッチした。


「なっ!?」
「見つけた!!」


針を捨て、クウガPFはペガサスボウガン後部のレバーを引く。
弧の部分が緊張し、射出口に封印エネルギーが収束された。


針の飛んできた方向、敵のスピード、僅かな木々の動き。
あとは、それらから算出されたポイントにトリガーを引けばいい!


「ハッ!!」


――バシュッ!!


甲高い音と共に、クウガPFの必殺技『ブラストペガサス』がボウガンから発射された。放たれた弾は、スパイキーラットファンガイアを寸分違わず捉え、カラミティタイタンが作ったヒビに命中した。


「ぐ、あぁぁぁ!!」


さすがに二撃目には耐えられない。
落下するスパイキーラットファンガイアの腹には、クウガの刻印が再度浮かび上がり、ステンドグラスの外皮のヒビは、さらに広がる。


「よし、今だ!! ドッガさん!!」
「まか、せろ」


即座に手持ちの武器を、バッシャーマグナムから、ドッガの武器形態である魔鉄槌ドッガハンマーと入れ替え、クウガPFのアマダムが青色に輝く。


「超変身!!」


アマダムと同じ青い瞳と肩無しの軽量装甲。
両手にはドッガハンマーから変化した、先端に金色の装飾が成された棒状の武器『ドラゴンロッド』。


――邪悪なる者あらば、その技を無に帰し、流水のごとく邪悪を薙ぎ払う戦士あり。


運動能力に優れた形態、クウガ・ドラゴンフォームである。


「ふっ!」


その身体能力をもって、クウガDFはスパイキーラットファンガイアの落下地点まで一気に踏み込む。


(マズい……か、回避を……!)


だが、腹部の激痛がそれを阻害する。
スパイキーラットファンガイアは受け身の体勢すら取れず、自然落下に身を任せる他無かった。


無論、クウガDFにとって、その時間は好機。


「ッハァ!!」


ドラゴンロッドの横薙ぎから繰り出される打撃技『スプラッシュドラゴン』が、三度腹部の外皮に直撃した。


「ガ、アァァァ!!」


――バキィィン!!


その一撃で遂に、スパイキーラットファンガイアのヒビが入っていた鋼の針と外皮が砕け散った。
スプラッシュドラゴンの勢いに負け、地面に叩き付けられたスパイキーラットファンガイアの腹部は鬱血し、刻印の刻まれた脆い皮膚が露出していた。


「バ、バカな!! こ、こんなことが……」


どうにか立ち上がるスパイキーラットファンガイアだったが、その足は覚束なく、戦いの構えすら取れていなかった。


「――超変身」


彫像に戻ったドッガハンマーが飛び去り、クウガは再びマイティフォームへ。
狙いを定め、クウガは両手を広げながら右足を一歩退く。


「はぁぁぁ……ッ!!」


黄金に輝く封印エネルギーを右足に収束させ、クウガは駆け出す。


クウガが踏んだ大地に残るエネルギーの残滓は、勝利へのカウントダウン。
踏み切った片足の反動からクウガは天高く飛び上がり――





「だりゃあああぁぁぁ――ッ!!」





マイティフォームの必殺技『マイティキック』が、スパイキーラットファンガイアの脆くなった腹部に炸裂した。


「グ、ガアァァァッ!!」


固い外皮が砕けた今、マイティキックの威力を妨げるものはなにもない。スパイキーラットファンガイアは、キックのパワーを直に受け、吹き飛ばされる。
そのまま近くの樹木で背中を打ったかと思うと、スパイキーラットファンガイアはピクリとも動かなくなった。


「倒……した?」
「ハァッ……ハァッ……!!」


着地したクウガが、息を切らしながら立ち上がる。


(一応、急所は外したけど……)


アヴェンジャー達の事情を知っているだけに、クウガはトドメを刺しきれなかった。
もっとも、しばらく動けなくしたことに変わりはないが。


「た、隊長殿が……」
「嘘だろ?」
「なんなんだあのクワガタは!?」


ガルル達と戦っていたファンガイア達も 、指揮者が倒された為か、戦意を失いつつあった。
あれなら、向こうを相手にすることもないだろう。


クウガが奏夜の方を一瞥し、手を差し伸べる。


「大丈夫か? 奏夜」
「あ、ああ……。ていうか、むしろお前の方こそ」


奏夜が、クウガの血が滴る足と拳に目をやる。


「このくらい平気だって。傷の内に入んないよ」


仮面の下からでも、クウガがニカリと笑っているのが分かった。
奏夜は気が抜けたように目尻を下げ、クウガの手を取ろうとした――


時だった。


「ヴ、ア……」
「!!」


クウガと奏夜が、ほぼ同時に同じ方向に視点を合わせる。
気絶していた筈のスパイキーラットファンガイアが、満身創痍ながらに立ち上がったのだ。


「あいつ、まだ動けるのか……?」
「お、おい止めろ!! それ以上動いたら本当に死んじまうぞ!?」


呆然とする奏夜の傍らでクウガが叫んだが、スパイキーラットファンガイアの目はまだ死んでいない。


「ハッ!!」


スパイキーラットファンガイアが手を翳す。しかしそれはクウガや奏夜に向けてではなく、ましてや攻撃でさえも無かった。


スパイキーラットファンガイアが手を翳したのは、仲間のファンガイア達の方。
放たれた光は、攻撃を遮断する障壁を生み出す魔術だった。


「た、隊長殿!?」
「皆、伏せていろ!!」
「!!」


スパイキーラットファンガイアの言葉。
意図せずして、結界の内側にいたガルルが、顔を青ざめさせた。


「おい、そこのガキと奏夜!! 今すぐそのファンガイアから離れろ!!」
「っ!!」


そこで奏夜もようやく気が付く。
スパイキーラットファンガイアの内に、膨大な魔皇力が収束しつつあることに。


「自爆か!!」
「フ、ハハハ!! 気付いたとて無意味!! この威力……この森全域――我が張った結界以外の場所は確実に消し飛ぶ!!」


そう――彼が張った結界は、仲間を巻き込まないようにする為だった。
アームズモンスター達まで範囲に入れてしまったのは計算外だったが、心配はあるまい。
アヴェンジャーの精鋭達だ。たかだか三人、どうとでもなる。


だからこそ自分は――


「レティシア様の為、アヴェンジャーの為、貴様らは生かしておかん!!」


傷口から魔皇力が溢れ出す。爆発の前触れだ。


「奏夜!! くそっ!!」


アームズモンスター達が結界を破ろうとしているのが見えたが、頑丈な障壁はビクともしない。


「キバーラ、まだ変身無理か!?」
「無理無理無理――!!」
「くっ……!?」


どうする。
クウガは次々と思考を展開させていく。


逃げる。
奏夜とキバーラを連れて、この数秒の内に森の外まで? ドラゴンフォームでも不可能だ。
爆発の前にヤツを倒す?
倒せたとしても、爆発自体が止まる保証はない。最悪、爆発までのカウントダウンが早まるだけに終わる可能性もある。


「諦めろ!! 影のキングに異形の戦士! 貴様らの命という旅は、ここで終わりだ!!」


スパイキーラットファンガイアは、勝利を確信し、仲間達を見る。


「レティシア様を……頼んだぞ、同朋達よ!!」
「隊長殿!!」


その言葉を皮切りに、スパイキーラットファンガイアの身体が膨張を始める。


「ここまでか……!?」


奏夜は歯噛みし、自分の無力さを嘆く。
クウガは何も語らず、目の前に近付く旅の終わりを見つめ、


「……まだ、終わらないよ」
「?」


瞠目する奏夜を庇うように、クウガが前に立つ。


こんなとこで終われるか。
あの人と約束した。
世界中の人を笑顔にすると。
もう二度と、誰かの涙を流させないと。




「俺はまだ、あんたの本当の笑顔を見てない!!」
「消えろぉ!!」


スパイキーラットファンガイアが内側から爆ぜ、眩いばかりの光が周囲の景色を飲み込んでいく。





(みんなの笑顔を守る為なら、俺は――)





爆炎の中で、クウガのアマダムが『黒色』に輝いた。






◆◆◆


「何なの? この自在式」


太牙が広げた資料の内、シャナは複雑な陣と式の描かれた模様に着目する。


『我にも見覚えのない自在式だな』
「そりゃそうでしょうね。だってこれ、自在式と魔術を複合させた陣だもの」


マージョリーが軽く付け加えたその言葉に、館内の空気が変わった。
予想した通りの反応に構わず、太牙は話を進める。


「これは大昔、魔術に精通したファンガイアが作った代物でね。ある場所に保管されていて、以前アヴェンジャーに原典を盗まれていたんだ。
作られて以来、解読不能と呼ばれてきた魔術だったんだが――」


それも当然である。魔術の他に、自在式という全く理論の異なる要素が混じっていたのだから。
今回、自在師であるマージョリーがいなければ、太牙も気が付かなかっただろう。


『恐らく開発者のファンガイアは、紅世と通じていたのだろうな。しかし、自在式と魔術を組み合わせるだと……? そんなことが可能なのか?』
「可能かどうかは問題ではない。問題は、この式が何を生み出すのかだ」


アラストールの指摘に答えながらも、名護は険しい表情を崩さない。
それほどまでに厄介なものなのだろうか。


「連中にこれが盗まれた以上、何か関係あると見て間違いない」
『つーわけで、マージョリーと俺様、キングの兄ちゃんでこいつを解読してみたんだよ。そしたら何とビックリ』





「私とタイガの解読が間違ってなきゃ――これって死者を黄泉から引き戻す式なのよね」





『!!』


全員が受けた衝撃は、先程のものを遥かに超えていた。
死者を黄泉から引き戻す。それは、つまり――


「死んだ誰かを、生き返らせる式ってことですか?」


『そのとーり。しかも、カロンの野郎が呼び出す死体以上――魂まで持ったまんま生き返らせちまうみてーでな。
加えて、一度起動の為の自在式さえ入れちまえば、何度でも働く永続式の陣だ。
ヒヒッ、いよいよ何でもアリって感じだぁな』


悠二はマルコシアスの冷やかしが、ややシニカルな口調であることに気付いた。
その態度が逆に、事の重大さを理解させる。


「でも、死者を呼び戻すなんてバカな真似できる訳ない!!」


自在法に疎いシャナでも知っていること。いかなる自在法を持ってしても、死者は生き返らない。
理論以前の問題、言わば絶対の真理。
アラストールもまた、その真理を疑ってはいなかった。


『かの“螺旋の風琴”ですら、遺失物を復元させる自在式を組むのが限界だったのだぞ?
無機物ならいざ知らず、生命ある者をいくらでも蘇らせられるなど、夢物語もいいところだ』
「ああ。事実、この陣は不完全だった。このままでは自在式としても、魔術としても体裁を成さない。使えたとしても、膨大な存在の力とライフエナジーが必要だ」
『ならば……』
「だが、今回は状況が違うんじゃないか?」


アラストールの声に被せるように、沈黙し続けていた士が口を開く。
彼の中では既に、全てが繋がっていた。


「連中は今、王の鎧である『キバ』と魂の無い死体を劣化させずに操る『死者の書』を手中に収めている。――そういうことだろ、太牙」


『キバ』と『死者の書』。
それらの単語により、シャナ達も士の言いたいことが分かった。
太牙が頷き、話を続ける。


「ああ、その通りだ。『キバ』は装着者に強大な力を与える。例えライフエナジーが足りずとも、不足分を補うことくらいはできるだろう。
しかもレティシアは、チェックメイトフォークラスの実力者だ。不完全だった自在式も、完成させているとみていい」
「あのカラス野郎も、紅世じゃ名の通った自在師よ。『死者の書』の能力を考えれば、陣発動のサポートには十分でしょうね。プラスして、生き返らせた連中を操ることもできるわ」


太牙とマージョリーの説明を否定できる者はいなかった。
これだけの要素が集まれば、世の理をひっくり返せる可能性も、無視出来ないものとなる。
疑問は、これで全て氷解した。


『“冥夜の船頭”の目的は恐らく、自身の軍団を最強のものにすることであろうな』
『だろーよ。『死者の書』は破格の宝具だが、蘇らせるヤツの記憶がなきゃならねぇし、その対象が強けりゃ強いほど、使う存在の力もデカくなってくるからなぁ、ヒッヒヒ』


逆に此度の永続式の陣が起動すれば、厄介な制限は消え、同時に、死した数多の徒、ファンガイアを自由に呼び出すことが可能となる。そうなればカロンは、真に死者を自在に操る強大な敵となって、自分達の前に立ち塞がるだろう。


「あのファンガイア――レティシアがカロンに協力してるのは」


悠二が口元に手を当てながら呟き、シャナが言葉を継いだ。


「……大切な誰かを蘇らせる為」
「ま。あのアヴェンジャーって組織の根幹を考えりゃ、それが妥当なとこだな」


士が緊張感の感じられない様子で付け足した。
人間を敵と見る組織。そんな組織の構成員の中になら、レティシアのみならず、大切な誰かを失ったファンガイアは五万といるだろう。


「レティシアとカロンが組んだのは、利害が一致したからだろうな。何しろあの陣は、魔術と自在式の素養が無ければ読み解くことすら出来な――」


名護が突然口を閉ざす。彼にしてはかなり焦った様子で、写真館の中を見渡していく。


「……士君。多少予想がつくんだが敢えて聞かせて貰いたい。奏夜君はどうした?」
「ユウスケとバイクツーリング中だ」


夏海の「何故わざわざ暗に伝えるんですか」というツッコミも間に合わないまま、まず名護と太牙が写真館から飛び出していった。
二人のバイクのエンジン音が轟いた後、マージョリーはシャナ達の方を振り向き、


「じゃ、私達も行こうかしらね。どーせアンタ達のことだから、奏夜の気配感じ取れなかったんでしょ?」
「ば、馬鹿にするな!」


「明確に否定はしないんだなぁ」と悠二は思ったが、言った瞬間にシャナの鉄拳が飛んでくるのは目に見えていた為、口には出さない。


「士君、私達も行きましょう」
「……仕方ない。ユウスケも拾ってこなきゃならんしな」
「アヴェンジャーの本拠地……お宝もありそうだね」
『お前は留守番してろ!!』
「えー?」


いつの間にかいた海東を指差す士とシャナの動きがシンクロした。


こいつは場を引っ掻き回すことしかしない。
士はもちろんのこと、シャナも何となくそれを理解しつつあった。


「仲間外れにするなよ士。僕とキミの仲じゃないか」
「何が俺とお前の仲だ、ただの被害者と加害者だろ!! おい彩香、爺さん、こいつを縛り上げて物置にでも――」





店の奥にいる二人を呼ぶ士の声が、突然止まった。
数瞬遅れ、シャナ達もまた、その波動を感じ取る。





「な……なんだ、この、気配……!!」


辛うじて、声を発することができたのは悠二だけだった。
シャナとマージョリーは突如現れた存在の解析に全ての神経を使い、声を出せるような余裕はなく、アラストールとマルコシアスもまた同じだった。


士、夏海、海東だけが目の色を純粋な驚愕に染め上げ、虚空を睨んでいる。


――遥か遠くで吹き上がり、しかしここからでも、その暗さと恐怖は否応なしに人の精神を蝕む。そして士は、誰よりもその恐ろしさを知っていた。


――今、生み出されている『闇』はかつて、自分の前に立ちはだかった存在なのだから。




「ユウスケ……『究極の闇』になるつもりか?」




◆◆◆


爆発は起こらなかった。


「……?」


アームズモンスターとファンガイア達が、恐る恐る目を開ける。


凄まじい光はあった。
全員がそれを爆発の合図と判断し、反射的に目を瞑ったのだから。


しかし既に結界は解除され、周囲には煙が立ち込めているものの、景色そのものにはなんら変化はない。
木々は消し飛ぶどころか一本も折れたり燃えたりはしていないし、大地が焼け野原になっているということもない。


「どうなっている……?」
「確かにあのファンガイアが膨らんで、凄い光が見えたよね?」
「そうやは、ぶじか?」


アームズモンスター達もファンガイア達も戦うことを忘れ、状況把握に全力を注ぐ。


――と、風のお蔭で段々と視界が晴れていく。


まず目についたのは、砕け散ったステンドグラス。
これがスパイキーラットファンガイアのものなのは間違いないだろう。
不思議なのは、ステンドグラスに炎が灯っていることだ。


「これは……」


ガルルが近くでそれを観察する。
爆発による炎――ではないだろう。規模が中途半端過ぎる。


(この炎があのファンガイアを、爆発する前に焼き尽くしたのか?)


だが、ただ燃やし尽くすだけでは爆発は止められない。刺激を与え、爆発時間を短縮して終わりだ。

(まるで……)





原子・分子レベルで、内側から自然発火でも起きたかのような――





ザッ。


大地を踏みしめ、奮迅の向こうから黒い影が歩いてくる。
その場にいた全員が身構え、彼の放つ絶大なオーラに畏縮した。


黒く歪な形状に、血管の如く金色のラインが駈け巡る鎧。
鋭く天を突くように伸びる四本角。
アークルの外観は黄金に染まり、アマダムの色は深い闇を思わせる漆黒。
希望の霊石と同じブラックに染まった無機質な瞳が、ファンガイア達を睨み付けていた。


――聖なる泉、枯れ果てし時。凄まじき戦士雷の如く出で、太陽は闇に葬られん。





『究極の闇』の名を冠す最強形態、クウガ・アルティメットフォーム。
世界の破壊者に勝るとも劣らぬ力を持つ、究極の域に達した仮面ライダーだ。





クウガUFは流れるような動作で左手を上げる。


――ボウッ!!
すると、ファンガイア達が立つ直ぐ傍の気が、何の前触れもなく燃え上がった。
突然の怪現状に、ファンガイア達が震え上がった。


クウガ・アルティメットフォームが持つ超自然発火能力。
対象物を即座にプラズマ化し、内側から原子・分子レベルで焼き尽くす。
衝撃を与えないのだから、誘爆の危険性もない。原子・分子の単位で敵を燃やすのだから尚更だ。


「……あのファンガイアは、残されるお前達のことを想って、自爆の道を選んだ」


クウガUFのクラッシャーの下から、低く唸るような声が漏れる。


「あのファンガイアの遺志を無駄にしたいっていうなら、相手になろう。
だが、気を付けろよ」


――この姿は、俺自身も上手く手加減できないからな。


そのクウガUFの警告がトドメだった。
彼が纏う絶対的強者の風格。
このまま戦えば、スパイキーラットファンガイアが犬死になってしまう。
アヴェンジャー達がそう理解するのに、時間は要らなかった。


「――っ、全員撤退だ! 負傷者に手を貸せ!」


アヴェンジャー勢は苦虫を噛み潰したような表情でクウガUFを睨みながら、森の奥深くへ消えていった。


「……………うっ!」


同時に、クウガUFの姿がブレた。
スパークが走り、アルティメットフォームの輪郭が、どんどん変化していく。


(やっぱまだ、こいつは制御出来ないか……っ!?)


これ以上の変身はマズい。
アルティメットフォームの破壊本能に精神が飲み込まれる。


制御の手綱を手放し、クウガUFはふらりと後ろ向きに倒れた。
その身体が地面につくかつかないかという内に、クウガの姿は白い弱体化形態・グローイングフォームに変わり、すぐユウスケの姿へと戻る。


――ガシッ。
だが、ユウスケが地面に倒れることはなかった。


「……サンキュ」
「どういたしまして」


ユウスケの振り返った先――同じくフラフラな紅奏夜が、彼の身体をしっかり受け止めていた。


◆◆◆


「ユウスケ。お前何で、俺にここまでするんだよ」


不躾に、奏夜がユウスケに尋ねる。


アームズモンスター達をキャッスルドランへ返し、キバーラは奏夜のポケットの中で睡眠中。
奏夜とユウスケも戦いの疲れからか、小休止のつもりで近くの木に寄りかかっていた。


「何かあるとすぐ落ち込んで、理想を見失っちまうようなヤツの為に、どうして違う世界から来たお前が戦ってくれるんだ?」
「いくら情けなくても、俺が違う世界から来た人間でも、それが奏夜を助けない理由にはならないよ。ただ俺は、アンタが泣いてるのを見たくなかったんだ」


ユウスケはまるで悩むこともなく、軽々とした様子で答えた。逆に奏夜は納得がいっていないらしく、


「それだけか?」
「俺はそれで十分な理由だと思うけどな。あと他に理由があるとすれば――」


ユウスケは目を細める。
誰かの笑顔の為に戦う。けれど、奏夜を助けたいと思った理由はそれだけではなくて――


「似てるからかな」
「え?」
「アンタさ、俺の友達にそっくりなんだよ。誰かに迷惑を掛けたくなくて一人で頑張っちゃうところとか、一度迷うとすぐ思考の袋小路に入っちゃうところとか」


奏夜と同じ、キバの世界の仮面ライダー、ワタル。
最初は似ていないと思った。
ワタルと違い奏夜は、自分の本音をガンガン出していくタイプだと思っていた。


けれど、そうではなかった。
ワタルが前に進まないことで、周囲の人々と向き合うことを拒絶したのに対し、奏夜はがむしゃらに前に進むことで、自分の本音を人々に悟られまいとした。
ワタルのは弱気で、奏夜のそれは空元気。


――要するに、


「アンタ、強いように見えて、凄く危なっかしいんだよな」


だから放っておけない。
フラフラしながら前に進んでも、道は開けない。
旅路の過酷さに負け、すぐ倒れてしまう。


「俺は、奏夜の理想は間違ってないと思うよ」


奏夜から目を逸らさず、ユウスケは真っ正面から告げる。
力の無かった奏夜の瞳が、僅かに揺れた。


「そりゃ、反対するヤツはいるだろうさ。どんな理想でも、それを拒絶するヤツは必ずいる。でも、本当に自分の理想を貫きたいなら、そいつらとも向き合わなきゃダメだと思う」
「――向き合う?」
「ああ。そいつらの抱えた理想も全部受け入れた上で、みんなが笑っていられる為にはどうすればいいのか考えていかなきゃ」


迷うのではなく、考え続けること。


ユウスケもかつて、答えの無い二択を迫られたことがあった。
親友と世界とを天秤にかけるという、残酷な選択。
だが最後には、親友を止めるべく、心中も覚悟の上で『究極の闇』になることを選んだ。


それがもたらす結果を、覚悟の上で。


「奏夜ならできるよ。奏夜は、自分の選択から逃げないだけの覚悟があるはずだ。
もし、選択の重さに耐え切れなかったり、理想を見失って迷い道に出たりして、アンタが行きたい場所に行けないって言うなら」


ドンと自分の胸を叩き、ユウスケは自分が今できる最高の笑顔で告げる。





「俺が連れてってやるよ。奏夜の、本当に行きたいところまで」





呆けたように奏夜はユウスケを見つめる。
彼の言ったことを脳が処理し終えた瞬間、奏夜は盛大に破顔してしまった。


「――馬鹿だな。お前」


少し小馬鹿にするような口調。だがその表情に刻まれたのは紛れもなく、奏夜の本当の笑顔。


「馬鹿で、度を超えたお人好しだ」
「よく言われるよ」
「………っくく」
「………ははは」


緊張の糸が切れたのか、二人はしばらく声を出して笑い合う。
特に奏夜は、今までの余裕の無さが嘘のように、声のトーンを落とさず、心の底から笑っていた。


さっきまで真っ暗だった心が、今は青空のように澄み切っているのがわかる。
一人でズタボロになるまで戦っていた分、傍らに誰かがいてくれることが、堪らなく嬉しかったから。


「――ユウスケ、悪いんだけど、もうしばらく付き合ってくれないか?」


一頻り笑い声を出し切った後、奏夜は立ち上がった。


「会わなきゃならないヤツが――答えを聞かせなきゃならないヤツがいるんだ」
「りょーかい」


ユウスケもよっこらせと足を立たせる。


「どこまででもお供しますよ。我らが王」


冗談めかした言い方に、奏夜はいつもの人を喰ったような態度で応える。


「うむ、苦しゅうないぞ。ついて参れ」


二人の仮面ライダーは疾駆する。


互いに支え合うような、二本のわだちを残して。




  1. 2012/05/31(木) 11:01:35|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第二十二話・蒼天/空は我に在り.後篇


「もう夜明けですね……」


古城の一室。レティシアは天井のステンドグラスを見上げていた。
色彩豊かなガラスに光が差し、煌びやかな輝きが彼女に降り注ぐ。


この場所は好きだ。血生臭い出来事ばかりの中にあって、唯一心が安らぐ場所。


「世界は、こんなに美しいものを作れるのに」


私達は何と愚かしく、矮小なことか。
くだらない理由で互いに牽制し、争い、傷つけ合う。その中に安息の時など無い。


レティシアは自身もまた、そんな世界のシステムに組み込まれた存在だと自覚している。
所詮は自分も、己の願望の為に争っているだけなのだから。



(影のキングが愚かしいというのなら、私も同じなのでしょうね)


所詮、同じ穴の狢。しかし、それがどうした。


今更、自分の罪など数え切れはしない。
迷いは愚の骨頂。
目的の為ならば、そんな汚名も喜んで被ろう。


影のキングをもはや危惧する必要はない。注意すべきはやはり、フレイムヘイズと世界の破壊者か。


「大丈夫」


ライフエナジーを集め、キバの鎧を手に入れ、ようやくここまで来たのだ。
余計な邪魔を入れさせはしない。
祈りを捧げるかのように、首にかかったペンダントを握り締めるレティシア。


「待っていて。もう少し……もう少しだから」
「レティシア」


振り向くと、カラスの頭部を持つ異形――自分の宿願になくてはならない“徒”。カロンが立っていた。


「首尾の方は?」
「問題はやはりライフエナジーと存在の力じゃが……まぁ差し支えはなかろう。あとはぬしのキバがあれば、不足分に補えようて」
「そうですか。では」
「うむ、いよいよじゃ。儂が死者の王となり、ぬしは非情なる運命から、己の過去を奪い返す」


それぞれの望みを確認し、頷き合った二人。
しかし――いざという時に、余計な邪魔は入るものである。


「!」


カロンとレティシアはほぼ同時に、ここへ近付いてくる気配を感じ取った。


「……まったく、黙って見ておればよかろうに。往生際の悪いことじゃな」
「忌まわしきは、諦めの悪い人間の血ですね。カロン、私が行きますから、準備の方は任せましたよ」
「良いのか。ぬしが出向かずとも、守護の為の兵は配置しておろう?」
「別に彼を迎え撃つわけではありません。彼が来たところで、今更私達を止められるわけがないでしょう?」
「ならば、何をしにいくと?」


レティシアは肩を竦め、淡白な口調で答える。


「一応は、答えを聞いてあげようかと思いましてね」
「?」


疑問符を浮かべるカロンに、レティシアは苦笑する。
自分でも馬鹿げているとは思う。
こんなこと、本当は意味などないというのに。


「まぁ、所詮は与太話の類いですよ」


直ぐ戻ります。レティシアがローブを翻すと、細かな光の粒子が輝き、彼女の姿は掻き消えた。


「……」


カロンは彼女の消えた虚空をしばらく見つめ、ステンドグラスの部屋を後にした。


◆◆◆


「薄気味悪い森ねぇ……奏夜、普通に整備された道を通った方が良かったんじゃないの?」
「舗装された道の先は結界が張られてる。通れるのはこっちしかない」


森に轟くバイクのエンジン音。
写真館を出た奏夜とキバーラは目下、レティシアの魔皇力を感じ取った場所――町外れの森林地帯へやってきていた。


朝方だというのにも関わらず、光の差さない森は、キバーラの言う通り薄気味悪い。


「でも何で、この森しか結界が張られてないのかしら?」
「侵入経路を絞る為だろ。八方を防ごうとすれば、必ず無理が生じる。迎撃し易いポイントを敢えて用意するのも手だ。……ま、よっぽど腕に自信が無きゃできない策だがな」


実際、それだけの力はある。
カロンとかいう“徒”については分からないが、レティシアに関して言うなら、彼女の力はチェックメイトフォークラス。
Rキバーラさえも完封したのだから、そのポテンシャルの高さは認めざるを得まい。


(せめて『黄金のキバがあればいくらか違ったんだろうが……)


やはり夜中の内に、海東の荷物にガサ入れしておくべきだったか。
と、奏夜が今更な後悔をした時だった。


「!!」


マシンキバーが土を巻き上げながら止まり、奏夜は森林地帯を貫くように伸びる道の先を見る。
行く手を阻むように立つ、黒いローブに蒼眼蒼髪の女――レティシア・リネロと目が合った。


「貴方も相当往生際が悪いですね」
「お褒め戴き光栄だ、レティシア・リネロ」


台詞こそ軽口めいたものだったが、奏夜の表情は真剣そのものである。
このファンガイアに対し、一片たりとも油断できないのは、もう理解していた。


「答えは」


レティシアは問う。


「答えは……出ましたか?」
「……」


奏夜は言葉を発せなかった。
答えを提示しようと思えばできないことはない。
だが、考え抜いた結果に生まれた解答は、どれも味気ない定型文のようなもの。


そんなものでは、誰も納得などしない。
レティシアも――それこそ奏夜でさえも。


だから、奏夜は口を開かない。言わばこれは、記号選択式ではなく記述式なのだ。
問題の意を理解しなければ、部分点すら与えられない。


「……わからねぇよ」
「そうですか」


レティシアは感情の読めない口調で、短く返す。
呆れたとも、幻滅したとも取れた。


「お前には分かんのかよ。俺の望む理想が、果たして希望なのか絶望なのか」
「絶望だと――“私”は思います」


強い口調で言い切るレティシア。


「いかに貴方の思想が素晴らしかったとしても、百人中九十九人が貴方の思想に共感しても、私は認めません。
それが私の選んだ答え。選んだことで、いずれ報いを受けることになったとしても、この意志だけは奪わせない。
私は人間を憎み、私の願いの為に生きる。それだけです」


僅かな迷いも感じられなかった。
正しさも間違いも全て飲み込み、前に進む覚悟。
レティシアにはあって、今の奏夜にはないもの。
奏夜が――見失ってしまったもの。


(こいつは“本物”だ)


ある種の敗北感さえ、抱いてしまう。
――頼りなく立つ影の王。
既にレティシアの瞳からは、彼への興味が失われていた。


「答えを出せぬ貴方が、ここにいる資格はありません。今度こそ、転生の輪廻に沈めてあげましょう」


パチンとレティシアが指を鳴らした途端、上空や木々の影から、数多のファンガイアが姿を現す。
レティシアの揃えたアヴェンジャーの精鋭と、カロンの蘇らせた死者の軍勢だ。


「今の貴方など、私が手を下すまでもない。我が同胞よ、貴方達の好きになさい。私が許します」


――ウォォォッ!
覇気雄々と、ファンガイア達は己の持つ殺気を、容赦なくぶつけてくる。


「では、ご機嫌よう」


指をもう一鳴らしして、レティシアの姿は掻き消えた。
一抹の虚無感を覚えながらも、奏夜は戦いへと思考を切り替える。


「奏夜、この数いける?」
「やるっきゃねーだろ」


正直なところ、まだ本調子ではない。
回復率は全体のニ割。
精神はガタガタに揺れ、燃料供給がストップしたかのように、何の闘志も湧き上がってこない。


(――ソラトとティリエルが襲ってきた頃のマージョリーも、こんな最悪のコンディションだったんだろうな)


戦いへの矜持がまるで生まれない、というのは予想以上のハンディキャップだが、それでも『逃げる』という選択肢だけは浮かんでこなかった。


闘志を失っても――戦えないわけではないのだから。


「行くぞキバーラ」
「オッケイ!!」


ポケットから飛び出したキバーラが、奏夜の指先に噛み付く。


「か~ぷっ♪」
「――変身」


静かに唱えた奏夜を、スペード型の紅光が覆い、ステンドグラスとなって弾け飛ぶ。
不調を賭して光臨したRキバーラの姿は、それでもその凛々しさを失っていなかった。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈めぇ!」


鼓舞するように叫び、手元の二刀剣を交差させるRキバーラ。
それを皮切りに、ファンガイアの群れはRキバーラへと襲いかかっていく――


◆◆◆


「なんで奏夜を一人で行かせたの!?」


机をばんっと叩くシャナ。傍らには彼女ほどではないが、険しい顔をした悠二もいる。
が、士は終始表情を変わらず、しかめっ面のままだ。


「ちょっと士くん、シャナちゃんと悠二くんの話聞いてるんですか?」
「あー、聞いてる聞いてる。やっぱりダヴィンチコードは映画より原作の方が……ってちょっと待て、わかった。冗談だから親指を立てながら近付いて来るな夏みかん」


夏海に笑いのツボ発動を示唆され、はぐらかそうとした士の目論見は失敗に終わる。


「真面目に答えて下さい。なんでみすみす奏夜さんを行かせたんですか。何故かユウスケまで出て行っちゃいましたし」
「そうですよ。先生はまだ怪我も治りきってないし、例えユウスケさんが着いていったとしても……」
「あいつ――奏夜は、誰かに命令されて足を止めるようなタイプじゃない」


悠二の言葉に被せる形で、士は自分の考えを述べる。


「むしろ、一度決めたら頑固に突っ走るタイプだ。お前らも分かってるだろ?」
「それは……」


反論しかけて、シャナは口を噤む。
確かに、奏夜はそういう性格だ。力もあるし、本気になれば誰も奏夜を止められないだろう。


「でも士さん! 今の先生はいつもの調子を取り戻せてません! このままじゃ、今度こそ大怪我じゃ済まないかも知れないじゃないですか!」
「だったらどうする。確かお前らは、奏夜がキバにならなきゃその気配を追えないんだろ? すぐに追い掛けたユウスケならいざ知らず、今更どこに行ったかなんてわかるかよ」


もっともな意見に、悠二も言葉を無くしてしまった。
事の発端であるレティシアの気配を探ろうにも、シャナの話によれば、彼女は魔術で気配を消しているらしく、奏夜や太牙クラスでなければ、その所在地を探ることはできない。


「大人しく、太牙かマージョリーとかいう女が来るのを待ってろ。……それに、奏夜にはユウスケもついてるだろうしな」


淡白な口調。しかしその台詞からは、士がユウスケに抱く信頼感が滲み出ていた。


「あいつはバカがつく程のお人好しだが、頼りにはなる」
「……あいつ――ユウスケって、そんなに強いの?」


ディケイドの強さを知るシャナからすれば、士が一目置くという時点で、その相手は凄まじい強さを持っていると思わざるを得なかった。


「ああ、あいつは強いよ。何より『心』が強い」


士はふっと笑って、


「俺を止める為に、究極の闇にまでなるような奴だからな」
「……?」


どういう意味。と問おうとしたのとほぼ同時に、写真館のドアが勢いよく開け放たれた。
館内の人間が肩を跳ね上げるのを後目に、名護、太牙、マージョリーの三人が入ってくる。
なにやら不穏な空気を感じ取ったマージョリーが、


「んー? なんかお取り込み中だったかしら」
「いや、別に何でもない。何かあったのか?」
「ああ、太牙が集めた情報を元に、連中の目的が見えてきたんだ」


名護の報告に館内がどよめく。
太牙がテーブルに抱えていた資料を広げ、全員の目をこちらに向けさせる。


「奴らの目的は、単なる殺戮じゃなかった。――誰もが願う、だが決して願ってはいけない望みの為に、人々を喰っていたんだ」


◆◆◆


『WAKE.UP!!』


キバーラのコールと共に、二本の剣が紅い光に包まれ、Rキバーラの背中から輝く両翼が顕現する。


「ウォォォォッ!!」


急降下から繰り出される斬撃『ソニックスタップ』が、ファンガイア数十体を薙ぎ払う。砕け散ったステンドグラスが視界に入るが、気にしている隙は無い。


――グルォォォッ!!


仲間の屍を踏み越え、新たに現れた数十体が、間髪入れずになだれ込んでくる。


「チィッ!!」


キバーラサーベルとザンバットソードを振り抜き、目の前の敵を斬り捨てていく。
だが、相手は一向に減る気配がない。


(クソッ、今何体倒した? あと、何体倒せばいい?)


連日の無理が祟ったのか、Rキバーラにも疲労の色が濃い。
剣技のキレも鈍ってきている。


「なかなかにしぶといな。影のキング」


軍勢を押し分け、一体のファンガイアが姿を現した。
外観はラットファンガイアと似ているが、外皮の一部がハリのように尖った亜種――スパイキーラットファンガイアである。
はっきりした言語を話したのを見ると、屍ではない。
アヴェンジャーの一派か。


「次の相手は、お前か?」
「そして、貴様の最後の相手になる」
「ほざいてろ!!」


Rキバーラの姿がぶれ、超高速の世界に消える。


(一撃で決める!)


同じスピードを持たない限り、Rキバーラは認知できない。
こちらが劣勢である以上、相手の力が発揮される前に潰すべき。
現状を鑑みれば、Rキバーラの判断は満点と言えるものだった。


――しかし、


「ぬうん!」


それは適わなかった。
突如、スパイキーラットファンガイアの外皮――突起状になっている毛皮が、全方位に張り巡らされたのである。


「なっ!」


これでは加速しても意味はない。
展開された防御膜は、Rキバーラの攻撃を阻み、彼の鎧の一部を貫く。


「全力を出せぬ身でこの力とは恐れ入る……しかし、ここまでだな」
「はっ、傲るなよ。その針だって、剣をぶつけ続けりゃいつかは壊れるぜ」


肩の傷を押さえながら、Rキバーラは魔皇力を再び高める。
また超加速を発動させる為だ。


「いや」


スパイキーラットファンガイアは動じず、薄く笑う。


「ここまでだ」


――スパイキーラットファンガイアがそう呟いたのと、Rキバーラの鎧に電光が走ったのがほぼ同時だった。


「が、あぁぁああぁぁぁ!!」
「じ、時間切れ……!? は、早く解除しなきゃ……!!」


聞くに耐えない絶叫を挙げるRキバーラのベルトから、キバーラが外れた。同時に鎧が弾け飛び、そのまま奏夜は地面に倒れる。


「ぐ、が……」
「きゃぷ~……」


奏夜は地を這いながら激痛に悶え、キバーラは目を回している。
だが、ファンガイア達はまだ動ける連中ばかりだ。


「だから言っただろう。終わりだと」
「て、てめえ、制限時間のこと知ってやがったのか……!!」


Rキバーラはキバと違い、魔皇力消費が激しく、変身時間は短い。
数で押しながら持久戦に持ち込み、確実に倒す。奏夜はスパイキーラットファンガイアの策にまんまと嵌っていたわけだ。


「レティシア様ほどではないが……我々にとっても貴様は憎むべき相手。悪いがその命、貰い受けるぞ」
『おい、俺達を忘れてくれるなよ。アヴェンジャー共』


不躾に聞こえてきた声。
見れば、Rキバーラの変身解除時、突き刺さったザンバットソードが輝き、ザンバットの中から、三体の異形――ガルル、バッシャー、ドッガが現れる。


「次狼、ラモン、力……」
「ここは任せて、お兄ちゃん」
「やす、んで、ろ」
「ほう、希少種族最後の生き残りか……面白い」


スパイキーラットファンガイアの合図に応え、新たな標的達をファンガイア達が取り囲む。
三人がいかに歴戦の戦士といえど、この数はさすがに厳しいだろう。


「ラモン、力。何体までいける?」
「さあね。ま、やるだけやるしかないんじゃない?」
「ぶっ、つぶ、す」


三人は劣勢にも動じぬまま、自らの主を傷付けた敵を睨む。
恐らく、全ての敵を倒すことはできない。だが、このままみすみす主を死なせては、従者の名折れ。


――何よりも、親友との約束を破ることになる。


全力を賭し、一体でも多くの敵を倒す。
その覚悟で挑まなければならない。


(俺もヤキが回ったな……)


ガルルが僅かに笑い、鋭い爪を立てる。
遂に来るか、とファンガイア側にも緊張が走った。
だから、理由を付けるならそのせいだろう。





誰もが、森に近付いてくるバイク音に気が付けなかったのは。





――ブォン!


重厚なバイクの叫びが森に轟く。
ファンガイア達を跳ね飛ばしながら、フロントに金色の装飾が施されたマシン――トライチェイサーが現れた。


「ハァッ!!」


バイクの乗り手は、アームズモンスター達の前で急停車。ウィリー走行の要領で前輪を上げ、そのまま後輪を支点に、バイクを一回転させる。
車体がヒットし、ファンガイアの何体かが吹っ飛ばされた。


乗り手はバイクから降り、無造作にヘルメットを取り、奏夜の方を見やる。


「ごめん奏夜。遅くなった」


ヘルメットの下には、小野寺ユウスケの屈託の無い笑顔があった。


「ユ、ユウスケ? お前、何で、どうしてここに……?」
「助けにきた。それだけじゃダメか?」


戸惑う奏夜にそう告げ、ユウスケは、打って変わって険しい顔つきでスパイキーラットファンガイアを睨む。


「随分好き勝手してくれたみたいだな。ファンガイア」
「……ふん、人間か。この結界に入ってきた以上、ただの人間ではないようだが……まぁいい。侵入者は侵入者、偽物の王を片付ける前に、貴様を始末してやろう」
「……奏夜が偽物だと?」


反応したユウスケに、スパイキーラットファンガイアは、高らかに宣言する。


「そうだ!! あと少し……あと少しでレティシア様は、王をも超える力を手に入れる。人間は駆逐され、ファンガイアの新たな時代が始まるのだ!!
そうなれば、そこにいる王は、偽物へと成り下がるのだよ!」
「……そうか。なら、お前のご主人様は、王にはなれないよ」


ユウスケは一片の躊躇もなく言い放った。勿論、スパイキーラットファンガイアも黙ってはいない。


「何……? 貴様、レティシア様を侮辱する気か!?」


憤怒の感情にも気圧されず、ユウスケは奏夜を一瞬だけ振り返り、強い眼差しでスパイキーラットファンガイアに啖呵を切る。




「人間とファンガイアがいがみ合うのを望む王なんか間違ってる!
――俺が認める王は、奏夜だ!」




「!」


胸が熱くなるのがわかった。何故ならユウスケの台詞は、今奏夜が最も欲しかった言葉だったから。


ユウスケは、認めてくれているのか。
――自分が、王だと 。


ユウスケは変身の前段階として、腹部を覆うように手を当てる。


「遅いッ!」


しかし、アークルが出現するよりも早く、一瞬で距離を詰めてきたスパイキーラットファンガイアに首を掴まれ、木へ打ち付けられる。


「ぐっ!?」
「ユウスケ!?」


奏夜が声を挙げる。


「次狼、ユウスケを!!」
「分かっている!」


主の命を一瞬で察し、アームズモンスター達が早々に動くものの、敵はスパイキーラットファンガイアだけではない。
幾多のファンガイア達が、三人の行く手を阻む。


「もうっ、邪魔しないでよ! ――ぷっ!!」
「フンガッ!!」


ガルルの爪、バッシャーの水球、ドッガの剛腕が次々とファンガイアを消していくが、ユウスケの元に辿り着くには、まだ時間がかかる。


「くっ、キバーラ……! 変身は、まだ出来ないのか?」
「む、無理……。あと三十分は待たないと……」


舌打ちし、奏夜はふらふらの身体を気力だけで立たせ、スパイキーラットファンガイアとユウスケの方へ足を進めていく。
幸いにも、雑兵のファンガイアはガルル達を相手にしている。危険は少ない。


満身創痍の自分に何が出来るのかという疑問は、既に存在していなかった。


「馬鹿なヤツだ……あのような王の為に命を捨てるのか?」
「が、うっ……!!」


首を掴む力を緩めず、スパイキーラットファンガイアは彼に哀れみの言葉を投げかける。


「人とファンガイアがいがみ合うのは間違いだと言ったな……。だが、実際はどうだ? ファンガイアに虐げられた人間。我々のように、人間に虐げられたファンガイア達。『共存』などという道を選んだが為に、行き場を無くした者も数多くいる」


ユウスケの言葉で生まれた熱さが一瞬で消し飛び、奏夜はまた、胸を刺す痛みに苛まれる。


「人間とファンガイアは、所詮相容れぬ種族だ。
我々は最初から、どちらかがどちらか一方を支配するしか道は無い!!」
「がっ!!」


ユウスケはスパイキーラットファンガイアに勢いよく放り投げ、そのまま土を巻き上げながら地面に叩き付けられた。


「ファンガイアは人間を貪り尽くし、人間はファンガイアを恐れる。そこにあるのは殺し合いしかない!!
共存をなど、現実の見えていない綺麗事に過ぎんのだ!!」


ぐらり。
奏夜は、自分の意思が暗転仕掛けるのを感じた。
唇を血が出るまで噛み締め、意識をつなぎ止める。
しかし、痛みは止まらない。
ずきずきと、奏夜を内側から壊していく。


頑張ってきたつもりだった。
誰も不幸にならないよう、努力してきたつもりだった。
でも事実、奏夜が作った世界を望まないものがいる。
そればかりか今目の前で、ユウスケやガルル達も、奏夜への憎しみに巻き込まれ、傷ついている。


(きれい、ごと……)


その言葉だけが反芻される。
自分の理想は結局、何も解決しない、新しい怨磋を生むだけだったのだろうか。
誰も幸せに出来ないのだろうか。


脳が思考を止め、痛みでさえも薄れていく。
姿の見えない何かが、奏夜を暗闇へ引き込んで――





「……綺麗事の」





奏夜は一気に、現実へと引き戻された。
小さく、しかし何故かよく聞こえる声を漏らし、ユウスケは立ち上がったのである。


スパイキーラットファンガイアが怪訝そうに彼を見る中、ユウスケは自分の感情を爆発させた。





「綺麗事の何が悪いんだよ!!」





ここにもし、士や夏海がいたのなら、さぞ驚いたことだろう。
その時、ユウスケが発したあまりに鋭い語調は、長い付き合いの彼らでさえ、数えるほどしか聞いたことがないであろう力強さを持っていたからだ。


「奏夜の言っていることは、確かに綺麗事なのかもしれない。酷い現実ばかりの世界で、それを叶えるのは絶対に無理なのかもしれない」


事実、現実は酷いことばかりだ。
守ると誓った人を失うこともある。
自分を助けてくれた親友と、世界のために戦わなければならないこともある。


「でも、それの何がいけないんだ!? 人間もファンガイアも関係ない、みんなが笑顔でいられる世界を願って何がダメなんだよ!
酷い現実のせいで誰かの涙が流れるなら、誰も泣かない綺麗事を現実にしなきゃいけないんじゃないのか!?」


ユウスケの言葉の一つ一つが聖なる泉となって、傷付いた心に降り注いでくるようだった。
呆然とする奏夜を庇うように立ち、ユウスケは言う。


――かつて、無二の親友が自分にかけてくれた言葉を。





「奏夜が誰かの笑顔を守るなら、俺も一緒に守る!! みんなの笑顔も、奏夜の笑顔も!!」





響き渡る声を聞きながら、奏夜はずっと、前に立つ青年の背中に目を奪われていた。
見た目よりも、遥かに大きく見える背中。
まるで、浄も不浄も選ばず全てを包み込み、太陽の温かさを与える――偉大な青空だ。


高ぶったユウスケの魂に呼応するかの如く、彼の腰に銀色に輝くベルト――『アークル』が現れる。


突き出した右手をスライドさせながら、ユウスケは叫んだ。




「変身ッ!!」




スライドさせた右手を、左手と共にベルト右側へと押し込む。
希望の霊石『アマダム』が真紅に輝き、ユウスケの身体を変えていく。


甲殻を思わせる赤いプロテクター。
雄々しく伸びる黄金の二本角。
プロテクターと同じ真紅の瞳は、燃える炎の如く輝いていた。


「なっ!? 貴様、何だその姿は……何者だ!?」
「仮面ライダー……クウガ!!」


――邪悪なる者あらば、希望の霊石を身につけ、炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり。


超古代の能力を宿した戦士、仮面ライダークウガは拳を握り締め、戦場に降り立った。
  1. 2012/05/31(木) 10:59:55|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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第二十二話・蒼天/空は我に在り.前篇


「……またこんなパターンか」


目を覚ました奏夜を待っていたのは、身体中を襲う痛みと、見慣れない天井だった。


「……何処だろ。ここ」


少なくとも病院ではなさそうだ。
あちこちに包帯が巻かれた身体を叱咤し、奏夜は上半身を起こす。
周囲を見渡すと、自宅に少し似た作りだが、部屋のレイアウトはまるで違っている。


「えっと……」


何がどうして自分はこんな怪我をし、見知らぬ部屋に横たわっていたのか。


(門矢のとこから出て、あのレティシアってファンガイアが来て、戦って、負けて、シャナ達が来て……)


俺が今までしてきたことを、真っ向から否定されて。


「……」


胃の中に、澱んだ何かが重々しく沈殿していく。
物理的なそれとは違う痛みに、奏夜は再び上半身を倒した。


今まで見えていた道が、いきなり崩れ落ちてしまったような、明確な道標を失ったような不安。
奏夜を苦しめるのはそれだった。
目を閉じれば、すぐレティシアの言葉が浮かんでくる。


――共存などと下らない絵空事を掲げた連中に、私の痛みが分かるものか!!


「あそこまで否定されると、流石にこたえるよな……」


何も言い返せないのだから、余計に苦しみは増す。


レティシアの痛みは――とても身近に感じる痛みだ。
だからこそ否定は出来ないし、彼女が選んだ道も理解できる。
そして彼女の道が、自分の道にとって強大な障壁となることも。


――貴方の理想は果たして、本当に人間とファンガイアを幸せに出来るものなのですか?


「……わからねぇよ」


これは模範解答が存在しない問題だ。
賛成率100%の政策は存在しない。
誰かが幸せになるということは、必ず誰かが不幸せになるという意味でもある。


レティシアが正にそうだ。
レティシアに限らず、誰か一人でも不幸せになれば――それは奏夜の理想とは違う。


(分かってたはず……なんだけどな)


みんなを幸せにすることが、限りなく不可能に近くても、そうあるように努力しなければ、本当に望みは閉ざされてしまう。


――だから頑張ってみよう。がむしゃらでも何でもいいから、誰も不幸にさせないようにしよう。


そうやって、自分にできることをしてきたつもりだった。
しかしレティシアの凄惨な過去が、『現実』という形で奏夜にのしかかってきたのである。


(結局は、綺麗事なのか?)


倦怠感に包まれた動作で、蛍光灯の光に手を翳す。




「俺は、間違ってるのかな」




――がちゃり。


「!」


虚を突いて開いた扉に、奏夜は肩を跳ね上げた。


「あ! 気が付いたんですね」


入ってきたのは、氷枕を抱えたユウスケだった。


「良かった良かった。結構危なかったんですよ? 傷もかなり深かったし」
「ユウスケ……ここは何処だ? あれからどのくらい寝てた?」
「光写真館の二階ですよ。今はちょうど、1日経った後の夜ですね。
あ、まだ身体起こしちゃ駄目ですよ。ハーフファンガイアでも、一週間は安静にしてなきゃって話ですから」


言いながら、パッパッと氷枕を代えていくユウスケ。
手際の良いヤツだな、と奏夜は思った。


「……お前が、ここまで運んでくれたんだよな。ありがとよ、これで二回も助けられた」
「気にしない気にしない。困った時はお互い様ですって」


ユウスケは屈託の笑顔を浮かべる。
やや気落ちしている奏夜は、その笑顔に応えないまま、ユウスケに問う。


「キバーラは、無事だったか?」
「大丈夫。怪我はしてますけど、奏夜さんと比べればずっと軽傷です。明日には治りますよ」


良かった。
奏夜は胸を撫で下ろす。
自分に付き合わせて、一緒に大怪我を負わせてしまっては洒落にならない。


「あれから奏夜さんが眠った後……」
「奏夜でいいよ。あと敬語もいらない」
「えっ、でも……」
「気にすんなよ。見たとこ、歳も変わらねーだろ」
「そう? えっと、じゃあ奏夜が眠った後の話なんだけど、士やシャナちゃんが中心になって、今後の方針を決めたんだ」


――あの後、レティシアがディケイドから逃げおおせたとほぼ同時刻に、“冥夜の船頭”カロンも、サガとマージョリーの前から姿を消した。


『貴様らに裂く力はあまり持ち合わせておらんでな、とか言いながら、屍を盾にしてすたこら逃げてったわ。あのカラス爺』


とは、獲物を逃がして不満そうにするマージョリーの談。


その後、全員の聞いた情報を踏まえ、太牙の指揮下にあるファンガイア達を、御崎市全域の巡回に当てて犠牲者を減らし、相手の出方を見るということになった。


太牙は、ファンガイア側への手回しの為にD&Pへ戻り、名護とマージョリーは吉田、田中、佐藤を送り届け、彼ら三人の護衛についているらしい。
彼らは事情を知りすぎている為、狙われる危険性が高いと判断された為だ。


「一美ちゃんも、栄太くんも、啓作くんも、去り際までずっと奏夜を心配してたぜ」
「そっか……」


ばつが悪そうに頬を掻く奏夜。
生徒に心配されているようでは、教師の名折れである。


「シャナと悠二は?」
「士達と一緒に一階にいるよ。俺達の中じゃ、奏夜が一番狙われやすそうだから、護衛の意味も兼ねてるんだって」
「……迷惑かけてばっかりだな、俺」


気分は重くなるばかりだ。
ユウスケから視線を外し、ぼんやりと天井を見つめる。
突っ走った挙げ句、この体たらく。笑い話――いや、もう笑うことすらできない。


奏夜は暗い表情を見て、ユウスケは、


「なぁ。何か俺にできることってある?」
「……?」


奏夜はユウスケの方に顔をもたげた。


「あのファンガイアが最後に言ってたんだ。あんたの理想は綺麗事だって。何か、あいつに言われたから悩んでるんだろ?」
「……」
「話したくないなら話さなくていいし、話したいならいくらでも話を聞くよ。俺は俺にできることをやりたい。だから、俺に何かできることがあるなら、何でも言ってくれ」


ユウスケの目は真剣そのものだった。
何故そんなにも自分を気遣うのかは分からなかったが、これが彼の優しさなのは、奏夜にも伝わってきた。


――が、ユウスケの言葉にも、奏夜は表情を変えられなかった。
気落ちした奏夜の心が欲するものは、条件反射の如く口から飛び出す。


「そうだな……。じゃあ爆笑必至のジョークを一つ」
「ハードル高ッ!?」
「はい。3、2、1、スタート」
「え、えーっと、宿に止まったグレースとマイケルが、食堂で肉料理を注文すると……」
「ありがとう。もういいや」
「いや、せめて最後まで聞いて!? 自分でもつまんないかもって予感はあったけど!!」
「肉料理か……そういえば腹が減ったな。何かない?」
「本筋と関係ない部分に食らいついた!!」


ブルーな奏夜は扱いづらかった。
食べ物など用意していないユウスケは慌てて、ジャケットのポケットを漁る。


「……あ」


そんな中、ユウスケが見つけたのは、ある意味“キバである奏夜”へ渡すに相応しいものだった。


「こんなもんしかないけど」
「棒付きアメ?」
「昔、ある世界で出会った友達の好物なんだ。あれ以来、癖で持ち歩いててさ」
「……誰か知らないけど、ガキみたいなヤツだな。その友達」


いや、実際にワタルはちびっ子だったんだけど。というユウスケの心境など露知らず、奏夜は棒付きアメを口元に運ぶ。


「甘い」
「そりゃ良かった」


オレンジ味を舌で楽しみながら、奏夜はぽつぽつと語り出す。


「なぁユウスケ」
「何?」
「さっき、話したいなら話を聞くって言ったよな」
「? ああ」


奏夜は何故か、言葉を紡ぐのに躊躇いを覚えなかった。
まるで昔から知っていたような、違う世界で出会いでもしたかのような、奇妙な安心感をユウスケから感じていたからかも知れない。


「じゃあさ、ちょっと俺の下らない話を聞いてくれよ」


◆◆◆


「ねぇ」


写真の現像作業をしていた士に、背中から声がかかる。
手を止め、士が振り返ると、泊まり込みで奏夜の護衛についたフレイムヘイズ――シャナの姿があった。


「何か用か? ちびっ子はもう夕飯の時間だぜ」
「子供扱いしないで。お前に聞きたいことがあるの」


シャナはじっと、自分を睨むように見つめてくる。
本当なら話したくもない。とでも言いたげな眼孔だ。


「……ふん、まぁいい。ちょうど作業も一段落したところだ」
「お前。奏夜のこと、何か知ってるの?」
「意味が何重にも取れるな。具体的に言えよ、赤チビ」


シャナの額に青筋が浮かんだが、ここは自重すべきと思ったのか、大人しく質問を変える。


「私が怒鳴った時、お前言ってたわよね」


――成る程、そういうことか。面倒くさいヤツだ。


「……キバットを盗られてから、奏夜はどんどんおかしくなってる。
仲間をいいようにされているからってだけじゃ、説明がつかないくらいに」


士への態度が正にそれだ。
普段の奏夜には、良くも悪くも余裕がある。それは彼の強みであり、戦いにおいて冷静な判断力にも繋がる。
だが今の奏夜は、戦いどころか、他人に気を配る余裕すら無くなっている。
それは、悪い結果にしか繋がらない。


「だから、何か思い当たったなら、教えて欲しい」
「心配なのか? あいつが」


シャナは沈黙を持ってそれに答えた。
すなわち肯定である。


「――俺は今まで、多くの仮面ライダーに会った」


士は手近にあったアルバムを開く。
今まで巡った世界で、彼の写した写真の数々が収められているものだ。


「世界が変わればライダーも変わる。姿形からその資格者までな。が、ただ一つだけ、どこの世界のライダーでも変わらなかったものがある」
「変わらなかったもの?」
「戦う理由――常に誰かを助ける為に戦うってことだ」


多少の違いはあれど、全てはそこに直結していた。
最後にはそれぞれの世界を守る為、互いに戦うことにまでなったのだから。


「あいつも仮面ライダーなら、誰かを守る為に戦ってるハズだ。そんなヤツが、他人を遠ざけているんだとしたら、そこに何のメリットがあると思う?」


シャナの脳裏に、今までの奏夜の姿が浮かぶ。
思いのほか、その答えは早く導き出された。


「……他人を巻き込みたくないから?」
「正解」


士は笑い、アルバムのページを進めていく。


「あのレティシアとかいうファンガイアは、俺からみても中々の敵だ。キバまで盗られりゃ、いよいよ危険度は増す。自分の落ち度で敵を強くして、誰かが傷付かせたくないんだろうよ。
……わざわざ、会ったばかりの俺にまで気を使ってな」


シャナも今なら分かる。
思えば奏夜が、士に一番剣呑な態度を取ったのは、士が奏夜に協力を持ち掛けた時だ。
あれは、出会ったばかりの士達を、自分のせいで傷つかせたくなかったのだろう。


「要するに、あいつは変な所で不器用なんだ。他の世界のキバと同じようにな」


本当に面倒くさいヤツだ。と士は繰り返す。シャナは浮かない顔で口を開く。


「奏夜は、大丈夫だと思う?」


ああ見えて、奏夜は頑なだ。シャナ達が何度言おうが、協力を求めたりはしないだろう。


「また、無茶なことをしてしまうかも」
「さあな。結局はあいつ次第だが……まぁ多分、問題ないだろう」
「どうして?」
「あいつが無茶しても、お前達が止めるだろ」


急な言葉。
呆気にとられたシャナを、士は指差す。


「お前が俺を怒鳴った時、奏夜とそれくらいの信頼関係は築いてると思ったんだが?」


淡白な口調は変わらない。
しかし、シャナはその士の言葉から、僅かに柔らかさを感じたように思えた。


「……お前も、奏夜を不器用って言えないと思う」
「どういう意味だよ」
「別に」


不機嫌そうに口を尖らせた士を見て、シャナは僅かに笑う。
まだわだかまりが溶けた訳では無いが、シャナは少しだけ、士への認識を改めた。


「奏夜が起きたら、また話を纏めましょう。邪魔したわね」
「まったくだ。神聖な現像室へ勝手に入ってくるな」


シャナが部屋から出て行くのを見送り、士はアルバムを片付けながら呟く。


「そう……。あいつらが奏夜を信頼しているように、奏夜もあいつらを信頼している」


――しかし、もしそうなら、シャナに話した理由では、説明がつかない。


「分からない。紅奏夜……お前は何を考えている?」


◆◆◆


一方、シャナと共に泊まり込みの護衛についている悠二は、


「シャナ~? ……はぁ、どこ行ったんだか」


シャナを探し、写真館をうろうろしていた彼は、溜め息をつきながら、撮影用のカーテンロールのある居間に戻ってくる。
手近にあるテーブルにつこうとするが、そこには先客がいた。


「やぁ、“ミステス”くんじゃないか」
「……海東さん」


気さくな海東に対し、悠二はやや固い声だ。
彼がシャナの刀を狙ったことを考慮すれば、当然のことだが。


「『炎髪灼眼の討ち手』なら現像室だよ。何か用でもあるのかい?」
「いえ、これといって特別な用は無いんですけど」


海東は「そう」と短く相槌を打ち、悠二から目線を外す。


「海東さんは、何やってるんですか?」
「ん? お宝の手入れだよ。すぐ壊れるようなショボいお宝を集めてるつもりはないけど、どうしても埃とかは溜まるからね」


意外に几帳面な性格のようだ。
清掃用の布を動かす海東の前――円形のテーブルには、確かに悠二が見たこともない物品が置かれていた。


「突っ立ってないで座れば? せっかくだから、僕のお宝を見ていたまえ。ただし、手は触れないでくれよ」
「はぁ……」


お宝至上主義な言動に、なんとなくフリアグネを思い出しながら、悠二は席につく。
そのまま海東に促された通り、彼のお宝を眺める。


(確かに、これは『お宝』かも)


それが悠二の感想だった。
彼には理解不能なものばかりだったが、その『わからなさ』に、興味をそそられる。


携帯電話と一体になったベルト。
豪華な宝石が散りばめられた黄金のピストル。
奇妙なアルファベットが描かれたUSBメモリ。
動物の刻まれた赤と金のメダル。
そして、何故か何の変哲もないコショウ。


「このコショウは何ですか?」
「コショウとは失礼な。士から貰ったお宝でね。大航海時代、かのバスコ・ダ・ガマが命がけで捜し求め、金と同じ値段で取引されたという伝説のスパイスさ」」


ぜってー嘘だ。


悠二は即座にそう判断したが、得意気な顔をする海東を見た途端、真実を語る気が削がれてしまった。
世の中、優しい嘘を信じさせたままの方がいい時もある。


(そう言えば……)


ふと悠二は、宝の山の中から“あるもの”を探そうとする。


「断っておくけど、あのキバが探してるお宝は別で保管してるから」


悠二の意図を見透かした海東が先手を打つ。


「言ったろ。同じ価値のお宝がなければ、魔皇竜は返さないって。なんなら、キミの中身を差し出すかい?」
「……さすがにそれは出来ませんけど」


零時迷子を取り出されることは、坂井悠二消滅を意味するのだから、当たり前だ。さして期待はしていなかったのか、すぐ作業に戻った海東に、悠二は問う。


「貴方は先生から何を盗んだんですか?」


奏夜のあの様子じゃ、相当大切なもののようだったが。


「魔皇竜と呼ばれるドラン族の子供だよ。キバの鎧を最終覚醒(ファイナルウェイクアップ)させる存在さ」
「魔皇竜……」


今聞いた役割からすれば、その魔皇竜もキバットや次狼達と同じ、自分達と出会う前からの大切な仲間ということだろう。


「じゃあ、尚更返してください」
「やだよ。何度も言わせないでくれたまえ」
「っ、何でですか! 仲間を失えば誰だって辛い! あなたにも仲間がいるなら、それは分かる筈でしょう!?」


あんまりな言い草に声を荒げた悠二に、海東は一瞥をくれる。


「……仲間、ねぇ」


独り言のように呟く海東。悠二の怒りには微塵も威圧されていないようだ。


「キミの言う仲間が士達のことを言っているなら、それは少し違うな」
「えっ?」
「いや、キミ達の言う仲間とは違うってとこか」


海東は机に頬杖をつく。


「僕にとっては、仲間もお宝の一つなんだよ」
「仲間が、宝?」
「ああ。ただ、これがまた価値の判断しづらい代物でね。士はしょっちゅう口にするんだけど、仲間が一体どういう意味を持ち、何を与えてくれるのか、僕には分からないんだ」


冗談を言っているようには聞こえなかった。
今までのフラットな口調とは打って変わって、海東の声は明らかに本気の感情が籠もっている。


「要するにさ、僕はまだよく分からないんだよ。仲間ってヤツがどんなお宝なのか。僕はそれを知る為に、士達に引っ付いてるってワケ。
ほら、キミ達の言う仲間とは違うだろ?」


もはや悠二は絶句していた。
仲間をお宝を定義するのもそうだが、何より海東の考え方そのものが、明らかに常識を逸脱していた。


(ああ、そうか)


ようやく理解した。
海東大樹は、あまりに特殊な価値観を持った人間であり、シャナや悠二とは明らかに違うのだと。


だが、


「あまり、深く考えなくてもいいんじゃないですか?」
「えっ?」


悠二は躊躇いがちに口を開いた。


「仲間の意味なんて、人それぞれ違いますよ。海東さんが『仲間ってこういうものなんだ』って思えば、それが答えです」
「……答えを決めるのは、僕自身ってことかい?」
「はい。仲間の意味が分かれば、仲間を失う気持ちだって分かる筈です。僕達からすれば、海東さんと士さん達は、もう十分仲間だと思いますけどね」
「ふむ……」


また思案顔になる海東。深い思考の海へ入り込んでしまったようだ。


(僕が説得できるのは、ここまでかな)


海東がちゃんと、奏夜の友達を返してくれるといいのだが。
自分の手で奪い返す力の無い悠二にできる、これが最大限の努力だった。


席を立ち、部屋から出ようとする悠二に、


「キミにとってのお宝は“炎髪灼眼の討ち手”なのかい?」
「は?」


海東は予想外の質問を投げかけた。


「違うのか? てっきり恋仲か何かかと思ってたけど」
「こっ……!!」


最初は反応が鈍かった悠二だったが、海東の言葉にどんどん顔が赤くなっていく。
――海東としては、自分に『仲間』の意味を教えようとした少年に興味を持っただけで、特に他意は無いのだが。


「それとも吉田って女の子の方? 他の友達と比べれば随分親しげだったけど」
「い、いや、あの、二人は、そういう話とはまた別で」
「別? それなら一体……」
「し、しし失礼します!!」


追求を恐れた悠二は、顔を染め上げたまま、居間から逃走した。


「何なんだ?」


自分のせいだという意識は一切無いまま、海東はお宝の乗ったテーブルに目線を戻す。


「……仲間の意味は人によって違う、か。そうかも知れないな」


海東は足元の鞄から、鎖の描かれた小箱を取り出す。


「他人にとってはガラクタでも、人によってはそれが『お宝』だってこともあるしね」


小箱の中にあった“黄金のフエッスル”を撫でながら、海東はぼやいた。


◆◆◆


そして、全員が寝静まった夜中。


「……ダメだ」


小野寺ユウスケは寝付けずにいた。
原因は分かっている。先程、奏夜から聞いた話のせいだ。


――彼を悩ませている、答えのない問題。
奏夜は「聞くだけでいい」と前置きしてくれたが、いずれにしても、ユウスケが明確な答えを出すことは不可能だっただろう。


結局はユウスケも、奏夜と同じ深みに嵌ってしまったわけである。


「俺も……って言うか、誰にも答えられないだろ。こんな質問」


言い方を変えれば、結局は奏夜の気持ち次第という話だが、そこで納得できないのが小野寺ユウスケという男だ。


友を止める為、『究極の闇』にまでなった彼のこと。目の前で困っている人間を放っておける筈がなかった。


(あー、でもそれだけじゃないんだろうな―)


単純な自分に苦笑いを浮かべるユウスケ。
奏夜を助けたいと思うのは、自分の性分だけでなく、どこかで――。




――ブオンッ!!




「わっ!」


突然の音にユウスケは跳ね起きた。
一階から聞こえてきた音は、なるべく大音量にならないようにしているようだが、どう聞いてもバイクのアクセル音。


「……まさか」


ユウスケは嫌な予感がした。
他の人を起こさないよう、しかし出来る限り早足で、隣の奏夜が寝ている部屋へ。


扉を開けると、心地の良い夜風が通り抜ける。
しかし、ユウスケにそんな心地良さを感じる隙は無い。


――部屋のベッドは蛻の殻。近くの開け放たれた窓から流れる風が、カーテンを靡かせていた。


◆◆◆


「身体は……ま、全快時の二割ってとこか?」
「そんなんで大丈夫なの?」
「何とかなるだろ。それよかキバーラ、お前の方こそ大丈夫なのか?」
「奏夜よりは大丈夫よ。もう怪我も治ったし。それに最初、キバの鎧を取り返すまで付き合えって言ったのは奏夜じゃない」
「……悪いな」
「気にしてないわ」


キバーラをポケットに隠し、奏夜はマシンキバーのアクセルを入れようとする。


「こんな夜中にお出かけとは、有明の海でも見に行くのか?」


と、夜の静寂を突然の声が破る。
気が付けば、いつの間にか光写真館の表札の柱に、誰であろう、門矢士が寄りかかっていた。


「……バレねーように気は払ったんだがな」
「俺は人の気配を探ることにおいても、頂点に立つ男だ」


その言葉の意味はわからないが、とにかく凄いのは分かった。


「分かってるだろうが、止めても無駄だぞ。それに、お前の手は借り……」
「俺達やお前の生徒達を巻き込まないように、か?」
「……そこまで分かってるなら」
「ああ、俺も止めるつもりはない。そうする義理も義務も無いしな」


士は眠そうに欠伸をする。
……まさか奏夜が抜け出すのを予想し、出るタイミングを待つ為にずっと眠気と戦っていたのだろうか。


「だが、本当にそれだけなのか?」
「? 何がだよ」


士は表情を変えないまま、何の前置きも無く言い放つ。





「俺達やあいつらを巻き込みたくない理由は、本当にそれだけなのか?」





「………………」


閉口した奏夜の顔に 、感情の色はなかった。
シャナ達がみたらさぞ驚いたであろう――あまりに虚ろな顔だった。
しばらくして、奏夜は士から目線を外す。


「何の話だ? これはあくまで俺の落ち度で、お前らは何も……」
「とぼけるな」


奏夜の声が揺らいだのを見て、士は畳み掛けるように言う。


「お前の生徒達と話せば、お前達が本当に信頼し合っているのは分かる。その信頼する相手を、自分のいざこざに巻き込みたくないって気持ちに、嘘は無いんだろう」


奏夜は無表情のまま、ただ黙って士の言葉を聞いていた。


「だが、お前がそこまで仲間を思いやれるヤツなら、本当の信頼がどういうものか分かっているハズだ。一人で突っ走ってお前が傷付けば、仲間も同じだけ傷付くってこともな。
多分、普段のお前なら、仲間を信じて、一緒にキバットを取り返そうとするんじゃないか?」


持論を展開していく士に、奏夜は段々と無表情だったその顔を曇らせていく。
だが、無論士は止まらない。


「お前にはまだ、何か隠してることがある。何か、あいつらに知られてはならない秘密がな。敢えて予想するなら」


親友だってこと以外にも、早くキバットを取り返さなきゃならない事情がある、とか。


「………んー」


奏夜は士の問いには答えず、困ったようにそう呟く。
首を変に曲げたり、あらぬ方向に目線を向けたり、身体をゆらゆら揺らしたりと、奇妙な動揺の仕草を繰り返し、


「参ったねこれは」


奏夜は薄く笑った。
笑みを作るだけの余裕はあるようだが、困惑した雰囲気は消えていなかった。


「本当に変なヤツだな。お前」
「お前に言われたかねぇよ」
「あはは。そりゃそうだ」


マシンキバーを止めて機体から降り、奏夜は士に向き直る。


「さて、お前は誤魔化せないだろうし、聞きたきゃ聞かせてやるが……シャナや悠二に言わないでくれよ?」
「ああ、そんなつもりはない」


士としてはあくまで、気付いてしまったから聞く、程度の興味だ。
奏夜に不都合があるなら、シャナ達に話す気は皆無である。


「門矢。確かお前は、二つのキバの世界を巡ったらしいな」
「ああ、そうだ」
「その世界のどちらかで、ハーフファンガイアにも会ったか?」
「勿論。まぁ、あの世界でハーフファンガイアは、キバの資格者くらいのものだったがな」
「……つまり、二人だけか」


――しかし、すぐ士は後悔することになる。
興味本位で奏夜の――奏夜の抱える『爆弾』の話を聞いてしまったことに。


「門矢、ここで一つクイズだ」





なんでハーフファンガイアは、数が少ないんだと思う?





含みを持たせた奏夜の問いに、士は何の気なしに答える。


「昔から、人間とファンガイアが交わるのが禁忌だからじゃないのか?」
「50点だな。確かにその掟のせいもあるだろう。けど、お前の巡った二つのキバの世界では、人間とファンガイアの共存が果たされてたんだろ?
ならもう少し、ハーフファンガイアが増えていてもいいんじゃないか?」
「それは……」


言われてみれば、確かにそうだ。
単純に、偶然出会ってないだけという話かも知れないが、そんな偶然が果たして成り立つだろうか。


「時間切れだな。では正解発表」


士の思案顔に満足しながら、奏夜は笑顔で言い放つ。


――そう、“笑顔”で。





「ハーフファンガイアには、“時間”が無いからだよ」





◆◆◆


「――とまぁ、そういうわけ。理解したか?」
「………」


すべてを聞き、士は言葉を失った。


有り得ない。
奏夜の行動の全ては、まさに生命の暴走だった。
自らの全てを燃やし尽くし、その先のゴールが決して救いではないと分かっていながら、尚も進む。


――かつては士も似たようなことをした。世界を蘇らせる為、ただ一人だけで歩む道を選び、孤独にライダーを倒し続けた。
だが、そんな士でさえも、奏夜の生き方には、畏敬の念を抱かざるを得なかった。


「何故だ」


耐え切れず、士はバイクに戻ろうとする奏夜に問う。


「そんな運命に縛られて、お前は何故先に進もうと思える? お前は、自分を待つ未来が怖くないのか?」
「……怖いよ。怖くて仕方ない」


今だって、レティシアにもう一度会うのを考えただけで、足が竦んでしまう。


「でも、俺は止まれないんだ」


まだ、レティシアの問いへの答えは出ていない。
結局、いくら考えても分からなかった。
しかし――例えが出なくとも、立ち止まることだけは許されない。


「俺はキバで、仮面ライダーで、人とファンガイアを繋ぐ架け橋だから」


平和な世界で、みんなの顔に浮かぶ笑顔。
それを背負った自分が、立ち止まってなどいられるものか。


「俺の理想が間違ってたとしても構わない。みんなが笑っててくれれば、俺は立っていられる」
「……お前が、その笑顔の中にいなくてもか」
「ああ。……少し、残念ではあるがな」


小さく本音のようなものを漏らし、奏夜はマシンキバーのアクセルを入れる。


「ああ、そうだ門矢」
「何だ?」
「言い忘れてたよ。レティシアの時、助けてくれてありがとな」


朗らかな笑顔だった。しかし士は何かが気に喰わず、つんと顔を逸らす。


「空元気の笑顔で礼を言われても嬉しくねぇよ」
「そっか。悪いな、今はちょいと上手く笑えねーんだ」


それじゃあな。と言い残し、マシンキバーはあっという間に夜の闇へ消えていった。士がその姿を見送ると、入れ違いに写真館の中から、ユウスケが飛び出してきた。


「士! 奏夜がここに来なかったか?」
「夜のお散歩だとさ」


それが言葉通りの意味でないのは、さすがにすぐ分かった。
ユウスケは舌打ちしつつ、止めてあった彼のマシン、トライチェイサーに乗り込む。


「行くのか」
「ああ」
「――今のあいつを、本当の意味で笑わせるのは難しいぞ、ユウスケ」
「それが何だ」


ユウスケはヘルメットを被りながら答える。





「目の前の人を笑顔に出来ないで、世界中の人を笑顔になんか出来るかよ」





ヘルメットのグラス越しに見えるユウスケの目は、強い光を宿していた。
重厚なエンジンとアクセルの音と共に、トライチェイサーはユウスケを乗せ、あっという間に士から見えなくなった。


「単純なヤツめ」


どこか喜びを含んだ表情のまま、士は二人が消えた夜の闇を見つめていた。



  1. 2012/05/31(木) 10:59:19|
  2. 仮面ライダーキバ/BLAZING.BLOOD
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【感想】特命戦隊ゴーバスターズ Mission13.サプライズな休日

・ヨーコちゃんが来るまでのみんなの動きが、妙にシンクロしてて笑えました。
「特命!」で背筋が伸びるのは条件反射かw

・ポスターの中から 現れるヨーコちゃんシュール……とか思ってたらまさかの私服姿で滅茶苦茶高まった!
なんだあれ!超可愛いじゃないか!
あ、ヒロムとリュウさんもカッコいいですよ。ええ(ついでかよ

・本日はヨーコが企画したサプライズ休日。
動物見てはしゃぐゴリサキが微笑ましい……しかしバディロイドは普通に出回って大丈夫なのか?

・一方で休日すら貰えないエンターさん。マジェスティ復活のエネトロンは足りているようですが、マジェスティは『創造する者は足らんと言っている』とのこと。
また意味深な発言ですね。まさかマジェスティはボスではないのか……

・「黙って動け…ですか」
エンターさん、絶対後半で裏切る気がする。

・「ぼーん、ボンジュール!」
エンターさんマジパンダwwwwww
もうこの人好きすぎるwwwwww

・バスターズが次に赴いたのは遊園地。しかし間が悪いことにエネトロン消費反応が…ってアレ?司令官は不在?

・「私と一緒にファンファーレ!」
敵は楽器から生まれたチューバロイド。わざわざ行進する戦闘員さん乙ですw

・お、私服での変身は新鮮ですね。

・ニックつええええ!(°□°;)
そういやニックの個人戦は始めてか。

・「待ちたまえー!キミにもファンファーレを!」
そんなにギャラリー欲しいのかチューバロイドw

・メガゾードは倒したものの、メタロイドを取り逃がしてしまったみんな。
楽しみにしてた休日が台無しになってしまったヨーコちゃんが切なそうです…

・一方で司令官は謎の空間へ。マジェスティのいた空間に似てますが……?

・だからエンターさんは何でチューバやってんだw帽子まで被ってw

・メリーゴーランドに乗っけられちゃうウサダかわいい。

・サプライズ休日をしてる暇はないと言ってしまうヒロムに、しょんぼりしてしまうヨーコちゃん。
ここでチラ見するあたり、ヒロムは大分他人を気にできるようになりましたね。

・そうこうしている間に、メタロイドは更に一人誕生。
先に生まれたチューバロイドはヒロムとリュウさんに音を聞かせ、「あと一人」と言いましたが……。

・「断る!お前音痴だろ!」
遂にストレート発言が敵にまでwwww

・チューバロイド一体は倒したものの、二体目が登場…というあたりで次回へ。

次回はヨーコが人質になってたり、バスターズのグラサン割れてたり(重要なのそこか)、かなりのピンチが予想されますね。
そして予告にチラッと出てきたあの影はもしや、噂に聞く新しい……?
  1. 2012/05/21(月) 09:14:25|
  2. 【感想】特命戦隊ゴーバスターズ
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【感想】仮面ライダーフォーゼ 第36話.本・気・伝・歌

・JKが去り、コズミックステイツにも変身不可。途方に暮れる弦ちゃんですが、そうこうしているうちにもカプリコーンの洗脳は続いていきます。ユウキ、友子、賢吾もハイテンションの反動か、どんどん元気が無くなってきて……。

・そう言えば賢吾病弱設定でしたね。最近アグレッシブだったので忘れてました(笑)

・レオさんは理事長に「カプリコーンの力で、失われたコアスイッチを探す」ことを進言します。
理事長がサジタリウスゾディアーツだとするなら、コアスイッチはそれに変身するためのものなのか、はたまた完全な別物なのか…

・JKを追う流星、美羽、大文字先輩。一方で弦ちゃんは謎のオヤジと釣りを始めてしまいます。
うーん、弦ちゃんの釣った魚意外とデカい気が……。

・「俺は特異体質でな……どのスイッチも使えるのさ」
歩く完全ゾディアーツ図鑑ですねわかります。
個人的にスコーピオンは、園ちゃんよりレオさんの方が似合っ(ry

・「レオは強過ぎる。次会ったら迷わず逃げたまえ」
幹部のゾディアーツスイッチを狙うタチバナさんが言うんですから、やはりレオさんは相当な強さなんですね。
こういう力関係が明確に描写されるのはグッドです。

・「ジーンとダチになりに来た!!」
ジーンとカプリコーンのライブに乱入する弦ちゃん。
つか弦ちゃんギターうめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
ギター詳しくないんですが、素人から三日やそこらで、あそこまでのレベルになるものなのか……?
というか弦ちゃん、意外にマルチな才能の持ち主なんですよね。前はボクシングなんかもやろうとしてたし。

・弦ちゃんの心に打たれ、自分が夢見たスター、ジーンとして友達の印を交わすJK。
なんか流星の時と同じで、本当の意味での絆を結んだって感じですね。JKがライダー部に入ったのって、若干なし崩しなトコがありましたから。

・復活したコズミックステイツでカプリコーンを下すフォーゼ。
ヴァルゴさんはもはやスイッチャー回収係なのか……。

・「記憶を消してどこかに転がしておけ。カプリコーンはホロスコープスとして実にいい働きをしてくれたからね」
ああ、今までネビュラ行きになった(なりかけた)方々は、特に目立った活躍してませんでしたからね……蟹さんは強かったけど、理事長に貢献したかっていうと違う気がするし。
・コアスイッチはこの学園の誰かが持っている模様。うーん、賢吾あたりがそれをコアスイッチと知らないまま持ってたりしないかな。

・不覚にもJKのモノローグで泣きかけた。ゴッドとも円満解決を迎え、親父とも少し和解できたみたいで何より。親父さんの「いい友達がいるんだな」ってセリフが地味に嬉しかったです。
トドメにJKが、ライダー部のみんなに必死に謝ってるシーンとかもう……本当に成長したねJK。

・ジーンへ。JKこと神宮海蔵より
ここで明かすかJKの本名!
しかし随分男っぽい名前だなぁ……。
  1. 2012/05/21(月) 09:12:06|
  2. 【感想】仮面ライダーフォーゼ
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【感想】仮面ライダーフォーゼ 第35話.怪・人・放・送

予想以上に重い話でした。
JK帰ってこーい!


・冒頭から始まる謎のラジオ番組。
……あれ、この声は……?

・京都の件以来、ザホールの力はやはり増大。
ホロスコープスはあと六人か……結構進行遅くないですか理事長。

・「コズミックステイツを手に入れた今、フォーゼは無敵だ!!」
フラグ乙。

・「2人ともジーン知らねーの!?」
むしろ弦ちゃんが知ってる側なのに驚きです(笑)
だって一番ラジオとか聞かなそうじゃんwww

・やっぱあの声JKか!!
しかしライダー部の面々も気が付かないって…いや、機械越しだと声って結構わかないもんだけどさ。

・あれ、OPまた変わりましたね。コズミックやストーム、そしてホロスコープス……何気に歴代の中で一番OPアレンジがある気が……

・ラジオ中にJKにかかってきた不穏な電話……何やらJKの知り合いのようです。

・ユウキ「バンドやろーよバンド!」
ラジオに影響される若者達。ビートスイッチってアンプにも使えんのかwww

・賢吾「俺もドラムの心得ならある!」
誰か賢吾を止めてw

・JKを待っていたのは中学時代のバンド仲間のようでした。しかし彼が持っていたのはやぎ座のゾディアーツ。
なんかあまりワルという感じはしませんけど…

・「やー、助けてー!!」JKのこういう一面久しぶりだなぁw

・VSカプリコーンゾディアーツ。
しかし友達を思ってか、JKの妨害を受けてトドメは刺し損なってしまいました。

・「私が見つけた」
橘さん、ラプラスの瞳で調子に乗ってるw

・「コアスイッチを見つける…」
レオさんの語るコアスイッチ。
……なんで理事長、橘さんには教えないのか(笑)

・ライダー部とゴッドの間でモヤモヤしてるJK。
ジーンの正体に気付いた弦ちゃんに、JKは自分の過去を語ります。
有名ロックスターだった父に憧れていたJK。才能の無さから挫折した後も、自分が思い描いたスター『ジーン』に成りたいと願い、ラジオを続けていたようです。
……また切ない話ですね。序盤のJKがああも歪んでいたのは、その親父絡みなのか。

・はやぶさくんロックバージョンwwww
ユウキの人、こんな声も出せるのか……

・ユウキ達がおかしい原因は、ジーンとゴッドのラジオ番組。カプリコーンの音色で人が興奮してしまったんだとか……要するにみんな松岡修造に(ry

・「大丈夫。今夜の放送はありませんから!」
ゴッドを止めようとするJK。しかし「お前の親父みたいになりたいのか」という謎の問いを投げかけられ、結局ラジオを始めてしまいます。
やっぱりJKも変わりましたね。昔の彼なら、止めようという発想すらなかったでしょうから。

・「よく…ここがわかりましたね」
この自嘲めいたJKの笑みが切ないです……。

・カプリコーンとの再戦。
アレ?ここってミュージアムの(ry

・「俺は夢を捨てて、親父みたいになりたくない!」
夢と友達の狭間で揺れ、ライダー部を止めると言ったしまったJK。途端、コズミックステイツが解除されてしまいました。
絆の力を使うコズミックステイツですからね…絆が揺らげばこうなってしまうのは道理か。


次回は……なぜ弦ちゃん釣りを?
  1. 2012/05/17(木) 13:20:10|
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【感想】特命戦隊ゴーバスターズ Mission12.変装はお好き?

特撮恒例のそっくりさんネタ。

・「新たな力!順調だ!」
マジェスティちゃんと仕事してたんスねw
・今回のミッションは、来日するトップ女優の持つ、クリスタルイヤリングの護衛。しかしその女優がヨーコにそっくり。
関係ありませんがヒロムの驚いた顔は凄く面白いんですがどうでしょう(聞くな

・ヒロムの格好wwwやべえ、不意打ち過ぎて滅茶苦茶笑ったwww
リュウさんの執事姿は滅茶苦茶似合ってるのになんでヒロムはピエロなんだ……しかも本人はクソ真面目に任務進めるもんだから余計に笑えるwww

・「映画はトレビア~ン♪」
ノリノリで会見場のマイクまで使っちゃうエンターさん。楽しそうだなーw

・今回のメタロイドは高木さんか、去年のナノナノダを思い出しますね。要するにアドリブが楽し(ry
・「いい男!」
こらw

・「アンタ達ねぇ。そんなことの為に世界がどうなってもいいと思ってんの!」
ヨーコちゃんの正論。まぁ個人と人類全体を天秤にかけたらね……。

・「こっちが化けるってのはどう?」
やはりというかなんというか、変わり身作戦決行。
ヨーコは囮、ヒロムはメガゾードの相手、リュウジはヨーコの護衛……三人バラバラのミッションともあって、なかなか困難そうですな。

・「お母さんか…あんまり覚えてないなぁ」
母を目指す女優さんを見て呟いた一言。……切ないです。

・「フツーの女の子だよ」
これって多分、ウサダの願望も入ってるよね。ヴァグラス倒すだけがヨーコの全てじゃないっていう。

・「さっきは言い過ぎたと思って…」
最近素直に謝れるキャラが少なかったせいか、この女優さんの好感度は高いです。ヨーコに対して「つらくない?」っていうあたりにも、本心から心配してるのが伝わってきました。
後半に再登場とかないものか。

・まさかのエースvsコピーエース!
便利っすね。今回のメタロイドとメガゾード。

・ここは、俺の持ち場だ!
ヒロムの責任感溢れるセリフですね。このブレなさがヒロムの強みでもあり、弱みでもあるわけですが…

・待てメタロイド、その姿戦場カメラマンじゃん(笑)

・「シャッターチャンス!!」
そのアングルは犯罪になるから止めなさいw

・あー……イヤリング片っぽ取られちゃったか。

・「だったら両方攻撃すればわかる!」
ヨーコ流の偽物と本物の見分け方。雑だw

・ヒロム「お前も飲むか?」
ニック「おっ、サンキュー」
ヒロム「お前飲めないだろ」
バスターズとバディのやり取りは毎回微笑ましいです。

・ニ○ニコ動画の再現率すげぇ(笑)

・あ、EDのダンス久しぶりっすね。

最近ミッション失敗多いですね……まぁずっと成功ばかりじゃ話進みませんけど。


そして次回……エ ン タ ー さ ん な ぜ パ ン ダwwww
  1. 2012/05/17(木) 12:52:09|
  2. 【感想】特命戦隊ゴーバスターズ
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【感想】特命戦隊ゴーバスターズ Mission11.ねらわれたウィークポイント

本日はゴリサキとリュウジの絆回。

・リュウさんの熱暴走の状態を知らせる安全装置を開発したゴリサキ。しかしそのせいでバスターズの集中が乱れることに。
リュウさんは怒ってませんでしたが、彼が自分に気を遣ってくれたことにゴリサキは心を痛めているようで……

・ゴリサキ「怒られる~」
ウサダ「ヨーコなら何言われるか」
ニック「ヒロムは心を抉るようなこと言うし」
完全に保護者会だコレwww

・ヒロム「確かにあれは邪魔だったな」
ヨーコ「ピーピー鳴ってうるさかったし」
今回のストレート発言は×2。

・ニック「エネトロン十分の一って顔してるな」
リュウジ「そっちはエネトロン満タンって顔してるな」
屋上で黄昏るバディロイド二人。
ゴリサキは他二人のように、相棒と本音をぶつけられないことに悩んでるようです。
二人とも大人だったからこそ、未熟さ故のぶつかり合いを経験できなかった……というのは確かに大きいですね。大人になればそれだけ相手に遠慮して、本音をぶつけることが出来なくなりますから。

・今回のメタロイドは扇風機。……うん、あちこちで言われてることですけど、こいつやっぱりエアーマ(ry

・二人にメガゾードを任せ、一人メタロイドと戦うリュウさん。しかし序盤の戦いでリュウさんのウィークポイントを分析したエンターは、メタロイドを使ってリュウさんの怪力を使用させ続ける作戦に出ていました。

・「ムッシュが熱暴走を起こせば、気絶し戦闘不能。……そうなれば削除するのは簡単」
こういう効果的かつエグい作戦が立てられるエンターさんパネェっす。

・ヒロム「あーらら……」
ニック「そんなぁ~」
風で吹っ飛ばされたヨーコとウサダに対して。この滅茶苦茶疲れた言い方が好きです(笑)

・リュウジ「バカ野郎!そんなもんどうでもいい!なんでムチャしたんだ!」
自分を庇って無理をしたゴリサキに怒るリュウさん。
暴走状態リとはまた違う、ゴリサキが大事だからこそ出る本音ですね。

・リュウジ「ゴリサキ……言い過ぎだ!」
ゴリサキ「何でも来いって言ったじゃん!」
無事メガゾードを倒した末の本音合戦。いつもはお兄さんなリュウさんですが、こんな彼もちょくちょくみたいですねぇ。


次回は……そっくりさんネタ?
  1. 2012/05/11(金) 07:04:10|
  2. 【感想】特命戦隊ゴーバスターズ
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【感想】仮面ライダーフォーゼ 第34話.天・穴・攻・防

すみません。結局木曜日まで伸びてしまいました……


・つぇーなぁレオ……久しぶりにへたれなさそうな幹部のようで安心です。
あとレオさん、その爪と扇風はまさか去年のトラさ(ry

・なんかメテオがユウキの「大丈夫?」に対して『なんとかね』とか普通に返してるのに感動しました。

・「おぶってってー!」
→イラッ♪
ごめん、マジこの娘受け付けられねぇ……。

・髪下ろした弦ちゃんktkr!カッコいいなやっぱり!

・あ、大文字さんパズル完成したんスねw

・「おい?おーい?」
流星さんディスられたww

・「なんかフォーゼみたいだな?」
「また無駄に変身する……」
そして何事もなかったかのように、変身したまま机に座る弦ちゃんww
石碑にあった○と×の意味に気付き始めるみんな。石碑を破壊し、学園にコズミックエナジーを集中させることに何か意味があるようです。

・その頃橘さんはレオさんと飲み屋。
橘さん、超新星覚醒してなかったのか……理事長、園田先生にあげた力、橘さんにもあげてくださいよ……。

・「それに失敗すれば……後はないぞ?」
なんかレオさん、ガチで演技怖いんスけど……クルミ握り潰すとことか。

・修学旅行名物枕投げww

・流星「焦るな賢吾。お前の計算を信じろ!」
石碑を守る為、二手に別れるライダー部。賢吾の言う通り、本当に流星変わりましたね……(しみじみ

・タチバナさん=人類を愛する者
まだ彼は全てを明かす気はないようですね。隠し通す気なのか、まだ言うべき時ではないのか……

・大文字焼きってそっちじゃねぇよwwwそして大文字先輩もなんでいい笑顔なんだよwww

・弦ちゃんとユウキはパワースポットに向かうべく、優希奈に事情を説明することに。
いつも思うことですけど、弦ちゃん本当にすぐ変身姿を見せるなぁ……仮面ライダーらしかぬ感じですが、それもまた弦ちゃんの個性ですね。

・「知ってたよ!」
不覚にもびっくり。

・「止めちゃえばいいんだよ。仮面ライダーなんて!」
今まで弦ちゃんを見てたなら、弦ちゃんがどんな想いで戦ってきたかも分かるだろうが……そんな簡単に止めちゃえばいいなんて言うなよ。

・レオさん、メテオストームパニッシャーも破るだと……!?

・「キミのお父さんを殺したのは、私だ……」
「いや、直接手を下したわけではない」
と言いつつも確実に直接手を下してる理事長。この博士もグルなのか?

・一方でリブラと遭遇する弦ちゃん。しかし優希奈はドライバーを返そうとはしない……いやだからさ、弦ちゃんを見てきたなら弦ちゃんの性格だってわかるだろ。どんだけ上辺しか見てないんだよ。

・必殺、大文字切り!(文字通り)
こうもあっさり、遊びみたいなペンスイッチの技で拘束される橘さんの扱いェ……

・「石碑だけは…!」
もう意地だな橘さん……。

・「待ってください!ダークネビュラ行きだけはご勘弁を!」
怯えた演技すげぇwww

・校長「嫌だ!俺は嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!」
(;0M0)「ウワァァァァァァァァァァァ!」
絶対俺以外にもこのシーンが被った人いるよね。

・「リブラ、キミは実にしぶとい男だね」
土壇場で超新星、星の運命を読むラプラスの眼の力を発現させる校長。理事長は射手座なのか……。

・慌てる弦ちゃんかわいいなオイwww後ろのしてやったりな流星の表情がまたwww

色々ありましたが、何はともあれ校長が退場しなくて良かったです(笑)

次回は……もしかして久々のJKメイン回?
  1. 2012/05/10(木) 16:54:10|
  2. 【感想】仮面ライダーフォーゼ
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【感想】仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦

総評

お祭り作品としてはかなり良作。
普通の映画としてはギャグ(海東的な意味で)

いや、勘違いしないで欲しいんですけど、つまんなかったわけじゃないですよ?
同じお祭り映画では199ヒーローの次には食い込む出来でした。
けどなんといいますか……最初と最後で面白さの質が違うといいますか(またしても海東的な意味で)。

では、感想にゴー。
※ネタバレ注意










・キャプテン・マーベラス
初っぱなから栄光の七人ライダーを全滅させる凄いお方。
士ほどメンタル強くないイメージなんで、多分ジョー達の言葉はかなり応えてたんじゃないでしょうかね。
しかしそれでも士と同じくらいヒール役が似合ってたのは内緒。

・門矢士
我らが大首領様。井上くんお帰りぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!(感涙)
いやもうね。士の姿が見られるだけでこの映画には行く価値がありますよ!
次元のオーロラから登場→眼光鋭く「潰す」の一言→カメンライド、ディケイド!→の流れは終始鳥肌モノでした。本当に士が帰ってきたんだなぁって…。
そして相変わらずヘタな悪役よりも悪役になる仮面ライダー。あと個人的にはあの髪型がおかし(ry

・ジョー
主人公その1。
本編では一貫してマーベラスを信じてきた彼ですが、今回はその芯が揺らぐことに。
ラストの種明かしに対する、海東との反応の差は、彼らの持つ『仲間』の価値観の違いかと思うと、深いものがあったりなかったり。

・海東大樹
主人公その2。
相変わらずヤンデレ街道を爆進する、自分の欲望に忠実な盗っ人ライダー。
三年経ってもキャラがブレなかったのは喜ぶべきか、士のように「いい加減(そのキャラ)卒業しろ」と呆れるべきなのか…。しかし「これからは自分の世界を映すんじゃなかったのかい?」と問うシーンは好きです。
序盤では比奈ちゃん助けたり、ある意味本編よりマトモ。
しかし後半でハジケた。

・ハカセ&比奈ちゃん
この作品の良心。
個人的にハカセはホント成長したなぁと思いました。臆病だけどちゃんと自己主張する子になったといいますか。
比奈ちゃんは相変わらず可愛い。しかし怪力が…www

・その他ゴーカイジャー
あんまり出番なし。序盤でアイム消えちゃったのが残念過ぎ……かと思ったら、最後マーベラスが戻ってきた時、一番に「マーベラスさん!」と言ってくれたので全部許せました。最終回といい、ホントにマーベラス大好きですねこの子は(←赤桃派

・電王チーム
劣化しない皆さん。
海東がデンライナーおびき出す時、絶対エピソードイエローで盗んだカップ使うと思ってました。
あとオーナー、枠とか言わないで下さい。放送的時間的な意味で間違ってはいませんがww

・ライダー部の面々&特命戦隊
あんまり出番なし。しかし現行ライダー&戦隊らしく、最後キメるとこはキメてくれました。
弦ちゃん&マーベラス、特命戦隊&士が話すシーンは、やはり良い意味で違和感がありましたね。クロスオーバーはこれだからたまらない。

・大ショッカー
三年越しの再結成。
だが何故ジョーカー がいる……これ始じゃないよね?ハジメ所長の方だよね?
さりげなく今回、今までの連合軍の中で一番強かったんじゃないですかね……ダグバまでいたし。
あとどうでもいいけどルカ、バットファンガイアに単体で挑むのは無謀だw

・大ザンギャック
終始ギル親子に萌えてました(え
なんなのこの二人、ただの理想の家族じゃねーかw涙ぐんで去ってく陛下を追っていくアクドスさんマジ父親の鏡。
あと公式はブラジラさんをどうしたいんですかね……もうスピンオフで救星戦隊ブレドランとか出さん勢いなんだがw

・仮面ライダーvsスーパー戦隊
お互いの特性やモチーフを生かした戦いで、かなり見所のあるシーンでした。

フォーゼESvsデンジマン(電気対決)
フォーゼFSvsマジレッド(炎対決)
カブトvsレッドバスター(加速対決)
ブレイドvsスペードエース(スペード対決)
響鬼vsバトルジャパン(和風対決)

え?ファイズvsバスターズ?……べ、別に類似点が見つからなかったわけじゃないんだからね!

・真のスーパーヒーロー大戦
マーベラスと士、俺様コンビプロデュースの壮大な自演計画。うーん、士は海東をあまり信用できないのはわかるけど(ひでえ)、マーベラスはジョー達に話してあげても良かったんじゃないかなぁ……。
ゴーカイジャーの面々は納得してくれるだろうし。
そしてスーパーヒーロー大戦は……やっぱり今回は気合い入ってましたね。流石に全員は無理でしたが、戦隊とライダー一つ一つの能力が丁寧に描かれてました。同じ年代の戦隊とライダーを組ませるのもニクい。

・「僕が傷付いた分、キミも傷付きたまえ」

カイトウサーン!!オンドゥルルラギッタンディスカー!!
いや、すみません。シリアスシーンの筈なのに笑い堪えるのに必死でしたwww
ヤンデレ過ぎんだろ海東wwwまさかお前がボスキャラになるなんて誰も予想できねぇよwww
とまぁ爆笑しながらも、海東の気持ちもわからんでもないんですよね。
海東としては、ムービー大戦を経て仲間との絆(自分含む)を培ってきた士が、それを作戦に利用したことに納得できないわけで、「なら少しこらしめてやるよ」みたいな気分だったんでしょう。良くも悪くも気分屋ですしね。むしろジョーみたく怒らなかった反応の方が、ちょっと出来過ぎてるような気もしますし。
……うん、これだけフォローしても爆笑しまくった事実は変わりませんがねw

・仮ーー面ライダー、オーズ!!
玩具バレでその存在が示唆されていたオーズレンジャーキー、遂に登場!映画館中がザワッとしてました。そして鎧のハシャぎっぷりに映画館中が笑いにwww

・仮面ライダーとスーパー戦隊の力
ゴーバスターオーとドリルスイッチスーパー3。意外とこの武装は映えますね……でも個人的にはビックマシンの方がカッコ良(ry

・おのれディケイドォ!
やはりあんたか鳴滝www

・友情
戦いは終わり、仮面ライダーとスーパー戦隊は互いに友情を確かめ、これからも平和を守ることを誓います。
フォーゼとゴーバスターズの誓いもいいんですけど、映司もこの役を担ったのは良かったです。彼ほどヒーローの助け合いを全面に出しているヒーローはいませんから。

・士と海東
大気圏で爆発しても無事な海東さんパネェっす(笑)
「俺の作戦にも穴があった」と素直に認め、海東に手を伸ばすあたり、士は丸くなったなぁ……けど「キミのことなんか早く忘れたい」とふてくされちゃう海東。うん、やっぱりこっちの方が二人らしいですね。



ライダー映画ではいつものことですが、なんやかんやで楽しめました。少なくとも見て損ではないと、太鼓判を押しておきます。


余談
映画館出た後、ちびっ子のお母さんが

「えっと……誰だっけ。あの最後ボロボロになっちゃった人」

とか言ってて吹いた。海東=最後ボロボロになっちゃった人www
  1. 2012/05/06(日) 14:12:04|
  2. 雑記
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【感想】仮面ライダーフォーゼ 第33話.古・都・騒・乱

すんません。文章は書いてあったのにうP忘れてました……

修学旅行編。聞くところによると、プリキュアも最近京都に行ったらしいですな。なんだこのシンクロ(笑)

・修学旅行先候補にNASAがあるとかすげーなぁ。その分レポート書かせるあたりしっかりしてるが。

・「学校を荒らす怪物が京都に出るわけないだろ!」
田中最近マトモだな……しかしそれはフラグですw

・まさかの財団X来たー!?(°Д°;)
本当に平成ライダーシリーズ二期全てに出る気なのかこいつらは?

・そしてなんだこの竹内力みたいな強面のオジサンは!こいつがレオなのか?
あとクルミ握りこんで殴っちゃ駄目ー!

・「はやぶさくん京都だよー!」
ユウキのアホの子レベルがどんどん上がってく……いや、それがいいんだが(え

・「やはり間違いない……弦太郎が狙われている」
「弦太郎は俺が守る。お前には返しても返し切れない借りがあるからな」
……あの、流星さん。弦太郎が心配だってのはわかるんですけど、いきなり馴れ馴れしくしてくる人が怪しいのはわかるんですけど、借り返したいのもわかるんですけど……なんかこう、色々と発言の一つ一つが危ないよ?
ほら、最近はスーパーヒーロー大戦でヤンデレ二号ライダーが再登場しちゃったから、世間はそのテのセリフに過敏になってるよ?

・「私一人で十分だ……」
橘さん、あんたの今までの戦績を考えろw

・「西方に波乱の気配がする~!」
流石友子。

・「弦太郎くんは…好きな人とかいるの?」
弦ちゃんが「いないよ」っつった時一瞬切なそうに見えたのは私だけでしょうか。……撫子はもう戻ってこないのかな。

・「うずらの焼き鳥だ!」ドヤァ
「マキビシッ!」
超ツボったw
流星肩の荷が降りたみたいで良かったなぁ。

・わざわざ隠れて変身する流星。もうクセになってるんですねわかりますw

・この娘、やはりあまり好きになれんな……何か狙いがあんのは予想つくけど、それを差し引いてもウザい。初期の亜希子とかは「ああ、この子はアホの子なんだな…」と分かってた分まだマシだったけど、ここまで黒いと逆にイラッとくる……

・はやぶさくん目ぇ瞑ってるw

・一方で別行動の賢吾は、京都大学にいるお父さんの友達を尋ねに。
……関係ないですが、この教授役の人、凄く爽やかな笑顔してますな。

・コズミックエナジーが降り注ぐザ・ホール。その二つが天の川都市と京都にある。そして京都のザ・ホールは四つの封印で守られている……ですか。
また重要そうな設定ですね。理事長がザ・ホールを利用しようとしているのは間違いないみたいですが……

・「ったく、どこまでも甘いやつでおじゃる」←大納言コス
「あの女…できるッ!」←沖田コス
もうやめて流星wそのキャラはスピンオフまで取っといてw

・「私だって、お姫様になりたかったぁ……」
私もユウキの着物姿超見たかったよ……ッ!(血涙

・ダスタードに忍者屋敷とか分かってるなぁw

・「宇宙キター!」in京都
……うん、やっぱりロケ地の影響か、去年のライダーの映画が被(ry

・スクリューさんお久しぶりでーす。

・「口の割には手間取ってるな……」
許してあげてください。それが橘さんですw

・やはりメテオストームパニッシャーのエフェクトが格段にカッコ良くなってる……

・スイッチコンボの決め方テキトーだなオイw

・レオゾディアーツカッコ良い……今までの幹部は濃いカラーリングが多かったですが、白基調というのもなかなか。

次回は賢吾と理事長接触。今日中に感想挙げます。
  1. 2012/05/06(日) 09:11:10|
  2. 【感想】仮面ライダーフォーゼ
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第二十一話・アチェレランド/崩壊の兆し.後篇

「奏夜、これからどうするの~?」


あてどなく街を彷徨う奏夜に、キバーラはポケットからこっそり問う。


「ファンガイアが現れるまで、適当に街をぶらつくさ。
あの海老のファンガイアがこのまま何もしないとは思えないし、こうしてヤツを嗅ぎ回ってれば、あいつも俺を邪魔に思って出てくるかも知れないだろ」


至極淡白な口調で告げる奏夜に対し、キバーラは思う。


やはり奏夜はキバットを奪われて以降、投げやりというか、つっけんどんになっている気がする。
士への態度が良い例だ。
初対面で、しかも得体の知れない相手というので警戒するのは分かるが、普段ならあそこまで不躾な対応はしない。


(まぁ“奏夜の時間”のことを考えれば、余裕がなくなるのもわかるけどね……)


いや、それ以前の問題か。
幼い頃から連れ添ってきた親友。
それを奪われれば、他に気を払えないのも無理からぬことだ。
しかし、このままの状態が続くのも、キバーラとしては気詰まりしてしまう。


ので、遊んでみた。


「ねぇねぇ塔矢」
「……俺の名前を某囲碁漫画における、プロ棋士期待の新星みたいに呼ぶな。俺の名前は奏夜だ」
「失礼。噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「かぷっ♪」
「リアルにポケットに入れた俺の指を噛むな!! つかこのネタの場合、お前がやらなきゃいけないのはスポーツ腐女子だろう!」


余裕の無い時でも、ボケとツッコミだけは忘れない奏夜だった。
例え周りの人間の目が、悲しいものを見るような光を帯びていたとしても。


と、そんな時だった。


「随分と楽しそうなことですね」
「……そう思うなら、お前の目は節穴だ」


突然、背後からかかった涼やかな声に振り向く奏夜。


目線の先にいたのは、黒いローブのような服装に、蒼眼蒼髪を持つ容姿端麗な女性。
年齢はさして奏夜と変わらないようだが、細長い切れ目と、口元に浮かべている優美な微笑のせいか、より大人びてみえる。


現実離れした美しさに、道行く人々は好奇の目線を向けるが、奏夜の瞳には敵意しか宿らなかった。


「その声……お前があの時のファンガイアだな」
「ええ、レティシア・リネロです。以後、お見知りおきを」


奏夜の威圧的な眼光にも屈さず、レティシアは笑みを崩さない。


「レティシア……成る程、お前があの『アヴェンジャー』の頭目か。
何の用だ? 俺を確実に消しに来たか」
「いえ、正直な話、私“達”の目的において、貴方にはもう興味はありません。ただ、証を失った裸の王が、どんな調子か気になりまして」
「そうだな。わざわざ被害者の前に、面を晒しにくる盗人くらい間抜けだろうな」
「くすっ、皮肉を言うだけの覇気はあるんですね。取り敢えず、場所を変えませんか? このように人間共がのさばった場所では、貴方もやりづらいでしょう」
「気が利くな。気が利くついでに、俺の親友をさっさと返して貰いたいんだが」
「それもまた、向かった先でお話いたしますよ」


ローブを翻し、奏夜の脇をすり抜けていくレティシア。


「むきーっ! なんなのよあの女! 癪にさわる態度取って!」
「カッカすんなよキバーラ。何を考えてるか知らねえが、俺達にとって好都合には違いないだろ」


好戦的に口角を吊り上げ、奏夜はレティシアの後に続いた。


◆◆◆


「で、一体どういうことかしらねこりゃ」


マージョリーが面倒くさそうな、どこか投げやりなような口調で、目の前にある現状を批評した。
士もまた、似たり寄ったりの口調で言葉を返す。


「どういうことかも何もない。ファンガイアの一団だろ」
「こんなにたくさん、街の中心地で、それも封絶の中でか?」


太牙がクールながらも、驚愕を刻んだ表情で告げる。
顔にこそ出さないが、隣に立つシャナも同感だ。


「どうなってるんだ? ここまで沢山の敵対ファンガイア、ワタルのとこでも見たことないのに……」


ユウスケの言う通り、現在五人の眼前には、ビースト、インセクト、アクア等様々なクラスのファンガイアが、ステンドグラスの如き外皮を輝かせながらひしめき合っていた。


場所は大通りに面する交差点。
人気は少ないが、ファンガイア達のすぐ傍には、ライフエナジーを吸われ、色素が透明に変わった人々の亡骸が幾つか転がっていた。


救えなかった人々を想い、太牙は悔しさに歯を軋ませる。


「くそっ、封絶の中なのをいいことに、人々を貪り食うとは……!」
『冷静になれ、登太牙。先刻感じた“徒”の気配も近い。判断力を欠けば、敵の思う壷だ』


太牙を窘めるアラストールの声を聞きながら、既に炎髪を靡かせているシャナは、贄殿遮那を握り締める。
アラストールの指摘にあった、“徒”の存在を警戒しているのだ。


今まで、封絶内にファンガイアが乱入してきたことはあった。
しかし、こうしてファンガイアが狩り場とした場所に、打ち合わせたかのように配置された“封絶”。
これらが意味するものは、


(ファンガイアと“徒”が組んでいる)


シャナの読みは的中していた。
ファンガイアの群れが両脇に捌け、謎の人影が現れたのである。


端が破れ、不気味にはためくコートだけなら、まだ常識の範囲内。
だがその姿は、人間の身体にカラスの頭部を持つ異形。


「あれが、“徒”ってヤツか」


士とユウスケはその出で立ちの異様さから、シャナ、マージョリー、太牙は存在の力の質から、あのカラスが敵の中でも一線を隔す存在――“徒”と悟る。


異形は五人を見やり、嘴を僅かに動かす。


「この街に同朋殺しが常駐しておるとの噂は聞き及んでおったが……まさか魔神の契約者と、フレイムヘイズきっての殺し屋とはのぅ」
『“冥夜の船頭”カロン』


アラストールが、ペンダントから遠来の如き唸り声を漏らす。


「ホウ、儂も名を知られるようになったものじゃ。……そこの二人もただの人間ではないのう。もしや、世界の破壊者の一派か?」
「はっ、この門矢士を知っているとは、なかなか博識なカラスだな」
「なに、あの奇妙な外套を着た男から聞き知っていただけのことじゃ」
「お前……やっぱり鳴滝の仲間か!」


食ってかかるユウスケだったが、カロンは肩を竦めるだけだ。


「ただ少々協力を仰いだだけの仲じゃ。世界の破壊者共の排除を依頼されてもいたが、所詮は口約束に過ぎん」
「ふん、誰の差し金かなんてどうでもいいわ。“渡し守”がこの街に何の用よ?」


直接の邂逅は無くとも、噂からこの“徒”のえげつなさを知るマージョリーは、忌々しげに問う。


「儂の――否、儂等の目的に必要なモノを調達しに、かのう」
「儂“等”ですって?」
『まさかオメーみてぇな変わり種が、今更誰かと組んだってのかぁ? ヒッヒ』
「そのまさかよ。キング、貴様なら名くらいは知っておるのではないか? 我らが組織――“アヴェンジャー”を」
「何!?」


太牙の表情が驚愕に変わったのを見て、シャナは問う。


「太牙、アヴェンジャーって……?」


「……アヴェンジャー。未だ存在する、ファンガイアと人間の共存を良しとしないファンガイアで構成された組織だよ。
共存に関わる様々な重要拠点を破壊しているテロリストのようなものだ。
そうか、では奏夜を襲ったファンガイアが、あのレティシア・リネロか!!」
「ご明察」


黒コートを靡かせ、カロンは手甲に覆われた右手を突き出す。


「彼女は少々、貴様の弟に用があるようでのう」
「奏夜にだと? バカな。お前達の目的は知らないが、キバの鎧を奪った以上、奏夜にもう構う理由は無いはずだ」
「理由までは知らんよ。儂は邪魔をされないようにと足止めを買って出ただけじゃ。悪いが、ここでしばらく、このファンガイアと踊って貰おう」
「せっかくのお誘いだけど遠慮しとくわ」


炎の衣『トーガ』を纏い、マージョリーはその群青の巨体を震わせる。


「あたしは自分を安売りしないし、アンタらよりよっぽど、世話のかかるヤツがいるみたいだしね」
『ヒャーッハハハ!! 確かに、今のキバの兄ちゃんは、放っとくと何しでかすかわかんねぇからな!!』


シャナと太牙もまた、贄殿遮那とジャコーダーを構える。
マージョリーの言うように、今の奏夜を一人で戦わせるのはまずい。
余裕が無い精神状態も心配だが、何か言い知れない不安を感じていたからだ。


「シャナちゃん、マージョリーさん、太牙さん、俺達も手伝うよ」


ユウスケが力強く前に躍り出る。士はやや気乗りしない様子ではあったが、


「やれやれ、あいつはあまり好かないが……ま、これも縁には違いないか」


溜め息をつきながら、彼はカードとディケイドライバーを取り出した。
ユウスケも、古代に繁栄した種族、リントの勇者が残したベルト『アークル』を顕現させ、太牙の下にはサガークが飛来し、彼の腰に取り憑く。


『変身!!』


士がカードを反転させ、ディケイドライバーに装填。
ユウスケはスライドさせた右手を、左手と共にアークルの側面へ押し込む。
太牙はジャコーダーをサガークベルトにインサートし、一気に引き抜く。


【KAMEN.RIDE-DECADE!!】
『ヘン・シン』


トリックスター、アマダム、蒼いウェーブの光がそれぞれのベルトから放たれ、三人の姿をディケイド、クウガ、サガ――三人の仮面ライダーに変える。


「ファンガイアの王に平行世界の戦士か……面白い」


カロンがファンガイア達に見えるよう、ディケイド達を指し示す。


「行け。場合によっては滅しても構わん」


ウォォォォッ!!


空気を震わす雄叫びを挙げ、ファンガイアの軍勢は獲物を排除しようと襲い掛かってくる。


「足を引っ張るなよ、赤チビ」
「どっちが」


手を軽く打ち鳴らすディケイドと、彼を未だ敵意を込めた視線で見るシャナを筆頭に、五人はファンガイアの群れに向かっていった。


◆◆◆


「おい、どこまで行く気だ」
「二分二十秒前にも同じ質問をされましたね。せっかちな方は嫌われますよ」


ちっ、と舌打ちをして、奏夜はレティシアの後に続く。


せっかちになるのにも理由はあった。
レティシアに連れられて二十分弱。歩いている場所は既に御崎市の外れ――“何度となく通った道”なのだから、否が応でも予想はついてしまう。


しかし、脳は必死にその推測を捨て去ろうと働く。


(大丈夫)


連れて行かれるのは“あの場所”じゃない――と。


「着きましたよ」


雑木林を抜けると、青空の光が差し込み、景色が開ける。
周囲を山岳が取り囲み、目先には小高い丘。
その頂上には――。


「……」


奏夜は口を閉ざしたまま、レティシアに促され、丘の頂上へ。
点在する岩に紛れ、煌びやかに研磨された石碑を前にし、ようやくレティシアは立ち止まった。


「よく手入れされていますね、このお墓」


おもむろにレティシアは、蒼みがかかった石碑――否、墓標に触れる。


「普通、こんな場所で野晒しにされていたら、どんどん状態が悪くなっていくものですが……手入れはあなたがしているのですか? それとも、兄君がされているのかしら」
「……気安く」


質問に答えず、奏夜は声を怒りに震わす。


「それに触れるな……!!」
「あら、失礼」


シニカルな微笑を浮かべたまま、レティシアはあっさり手を退いた。


「意外と女々しいんですね。四年経った今でも、同じ女性を愛し続けているなんて」
「……回りくどいのは嫌いでね。お前は一体何が言いたいんだ、レティシア・リネロ。こうして俺の“過去”を晒して、みっともないと小馬鹿にしたいのか」
「いいえ。言ったでしょう、あなたにもう用は無いと。あなたをここに呼んだのは、つまらない与太話の為ですよ。
あなたの過去については……ただ、懐かしいなと思うだけですね」
「懐かしい?」
「ええ」


妙な言い回しをするレティシア。奏夜は警戒を怠らぬまま、自分の怒りを抑えつける。


「私もかつて、人間を愛しました」


不躾に、レティシアは口を開く。
だが、淡々と語られた事実は、奏夜をその話に引きつけるには十分だった。


「まぁ、貴方が生まれるずっと前の話ですけれどね」


遠くを見るような目で、レティシアは続ける。


「貴方達が中世と呼ぶ時代、ファンガイアは今よりも認知されていましたが、それ故に、人間の畏怖の対象でした。
既にその頃、ファンガイアは全ての種族の頂点にいましたが、人間の中には、無論、それを良しとしない連中がいましてね。
各地でレジスタンスが結成され、末端のファンガイア達を弾圧していました」
「……酷い話だな」


素直にそう思うが、当たり前だとも思った。
一時期『素晴らしき青空の会』が自分をそう見られていたのと同じく、ファンガイアを未だ恐怖の象徴として見る人間は多い。


人間は、自分と違うものを恐れる。
レティシアは奏夜の心中を見越したのか、


「ええ、酷い話です。ですが、そんな時代に、私は人間を愛したのです」


と、答えた。
ほのかに、暖かさを感じさせる声で。


「私は当時、さしたる力も持たない一介のファンガイアに過ぎず、人々から虐げられて生きてきました。
そんな時、人間によって瀕死の状態に追い込まれた私を助けてくれたのが、私の夫です。彼は辺境に住む医者で、私がファンガイアと知って尚、私に手を差し伸べてくれました。『傷付いた誰かを放ってなどおけない』なんて理由でですよ?」


お人好しですよね。とレティシアは言うが、決して貶すような口調ではなかった。


「私は彼と暮らし、互いに愛し合うようになりました。人間の家族と同じように、ささやかですが、それでも私にとっては十分な幸せを手に入れました。
既に禁忌とされていた人間とファンガイアの恋ですが……、掟や規律で恋心が縛れないのは、貴方もよく知っているでしょう?」
「……」


知っている。嫌と言うほどに。




――そして最悪の場合、それがどういう結末をもたらすのかも。




「……失ったんだな。あんたも、愛した人を」


レティシアは何も言わない。
沈黙。すなわち肯定だ。


「なんで、失った?」
「殺されました。人間に」


冷水をかけられたような衝撃を受ける奏夜。
それほどまでに、レティシアの放つ威圧感が、劇的に変化したのだ。
それこそ日溜まりのような暖かさから、絶対零度の冷たさにまで。


「魔女狩りという言葉くらいは、知っているでしょう。人間であっても、人外のものを匿うということは、その時点で異端とされる行為。 人間とファンガイアが共にあることを知った人間は、私達家族を捉えました」


奏夜は、足元がぐらつくのを感じた。


「――まず、夫が私の目の前で焼き殺されました。次に、生まれたてだった私達の息子も焼き殺されました。逃げおおせた私も、火炙りよりも激しい絶望を味わいました」


ふっ、と息をつき、レティシアは奏夜に向き直る。
冷ややかな瞳を浮かべたまま。


「貴方の理想は、それは素晴らしいものでしょう。人とファンガイアが互いに手を取り合って生きていく。理想的な形です。ただ――」


私は受け入れられない。


「人間もファンガイアに苦しめられたでしょうが、ファンガイアも人間に苦しめられた。互いに傷つけあって、今更共存など出来るわけがない」


何も言い返せず、奏夜はただレティシアの声に気圧されていた。


「だから私は、人間に虐げられたファンガイアを集め、アヴェンジャーを作った。痛みを抱えた者のことなど知らず、のうのうと生きる人間に、我々の苦痛を知らしめる為に」
「そ、そんなのただの八つ当たりじゃない!!」


我慢出来なかったのか、奏夜のポケットからキバーラが飛び出した。


「人間に酷いことをするヤツがいるのはわかるわよ!! でも、何の罪もない人達を襲って、それじゃ貴女の家族を殺した人間と変わらないじゃない!!」
「知った風な口を聞くな、キバット族!!」


さっきまでとは段違いな剣幕に、キバーラは小さく悲鳴を挙げる。


「ならばこの憎しみはどこにぶつければいい!? 私が得られなかった人とファンガイアの幸せを見せ付けられ続ける世界で、この憎しみがいつ晴れるというのだ!! 共存などと下らない絵空事を掲げた連中に、私の痛みが分かるものか!!」


魂の奥底から響いてくるような叫び。
レティシアから聞こえる心の音楽は、地獄の劫火を思わせるような、激しい憎悪を奏でていた。


「……私が貴方に会いに来たのは、貴方が私と同じ痛みを持ちながら、私とまるで違う理想を追っていることに、興味を持ったからです」


レティシアは冷静さを取り戻した声で、しかし奏夜にとっては、絶大な苦しみを伴う質問を口にした。


「紅奏夜――いえ、影のキングよ」






貴方の理想は果たして、本当に人間とファンガイアを幸せに出来るものなのですか?






「……それ、は」


答えられなかった。


ずっと信じてきた。
人間とファンガイアは手を取り合える。
そうすれば、もう誰も自分のように傷つくこと無く、みんなが笑って暮らせるようになると。


だが今、目の前にこうして、その掟を享受出来ず、新たな苦しみを抱えたファンガイアがいる。
信念を根底から揺るがされた奏夜は動揺し、もはや答えを導き出す術を見失っていた。


「答えられないのですか?」


呆れたようにも、落胆したようにも取れる淡白なトーンで、レティシアの言葉は紡がれていく。


「私は先刻、貴方を消すつもりはないと言いましたね。……ですが、気が変わりました」


ゆっくりと、レティシアは手を前に掲げる。


「信念を貫く意志もない者など、見苦しくて仕方がない。ここで消えなさい」


宣言を合図に、レティシアの姿は海老を彷彿とさせる異形――ロブスターファンガイアへと変わる。


「っ、キバーラ!!」


我に返った奏夜は、未だに動揺した様子のまま、キバーラを己の指に噛みつかせる。


「か~ぷっ♪」


頬にステンドグラスの模様を浮かべ、奏夜はキバーラを手間に突き出す。


「変身!!」


スペードの光が奏夜の身体に収束し、その姿は瞬く間に仮面ライダーRキバーラへと変化した。


「断罪の牙の下、転生の輪廻に沈め!」
「沈むのは……貴方です」


召還したクレイモア型の大剣を、片手で軽々と持ち上げながら、レティシアは挑発的な態度を崩さずに告げる。


Rキバーラはザンバットソードとキバーラサーベルを交差させ、ロブスターファンガイアと対峙した。


――その心を、激しく揺れ動かせたまま。



◆◆◆


同時刻、御崎市大通り。


「くそっ、キリが無い!」


ジャコーダーから伸びる真紅の鞭を振るい、サガは周囲のファンガイアを凪ぎ払う。
だが、砕けたファンガイアのステンドグラスを踏みしめ、また新たなファンガイアの波が押し寄せてくる。


「こいつら、一体何人いるんだ!?」


クウガが肉弾戦はきついと悟ったのか、敵の一体の手を蹴り上げ、所有していた槍を奪い取る。


「超変身!」


アークルが青色に輝き、クウガは運動能力に長けたドラゴンフォームへ。


「はっ、だりゃあっ!!」


槍から変化させたドラゴンロッドを振り回し、敵を倒していく。


「中々やるのう、じゃが……!」


観戦していたカロンの腕に装着されていたガントレット、手の甲にあたる部分に装え付けられた小さな鏡が輝く。


――ギィィィッ!


雄叫びを挙げながら、鏡が生み出す光の中から、新たに数体のファンガイアが現れた。


「なんだありゃ? 中からファンガイアが出てきたぞ」
『ヤツが“冥夜の船頭”や“渡し守”といった異名で呼ばれる理由……屍を繰る宝具“死者の書”だ』


ライドブッカーでファンガイアを切り倒すディケイドに、アラストールが答える。


『ヤツの記憶にある魂の情報から、対象者が存在していた頃の姿を映し出すことができる。ファンガイアの魔術と違うのは、リビングデッドと化しても、そのファンガイアの力が劣化しない点だ』
「死人をそっくりそのまま呼び寄せるってワケか。道理で何体か、何の意志も感じられないファンガイアが混じってたわけだぜ」


つまり、アヴェンジャーに所属する生者のファンガイアと、カロンの蘇らせたファンガイアが入り混じっているわけだ。


「でもそうだとすれば、敵は無尽蔵に出てくるんじゃない?」


シャナが危惧するように、このままではゴールの見えないマラソンマッチを永遠に続けることになる。


(早く、奏夜のところに行かなきゃいけないのに)


敵が何を思って奏夜に会っているのかは知らないが、どうせロクなことでは無いだろう。
尚更、奏夜の身が案じられる。
珍しく焦りを見せるシャナの心境を察したのか、


「なら、何人かがこのファンガイア達を足止めするしかないだろ」


ディケイドの提案に、近くで戦っていたマージョリーとサガが、


「確かに、こいつら片付けつつ奏夜のとこに行くのは難しそーね」
「足止めは、僕と『弔詞の詠み手』が買おう。数だけの相手なら、二人もいれば十分だ」


この状況での最善の策、ということを認識し、二人はあっさりとディケイドの提案に乗った。


「でも、本当に大丈夫なんですか? たった二人で」
『ヒャーッハハ!! 気にすんなって! むしろ、こーゆーただぶっ壊せばいいだけの仕事は、俺様達の専売特許ってもんだ!』


気遣わし気なクウガの言葉をマルコシアスの声が一蹴したところで、全員の意見が纏まる。


「なら、道を作らなきゃね」


言って、シャナは贄殿遮那に存在の力を送り込む。
紅蓮の炎に包まれていた刀身が、更に輝きを増した。


「炎か……なら、こっちも炎だ」


ディケイドはライドブッカーから、新たなライダーカードを取り出し、ディケイドライバーに装填する。


【KAMEN.RIDE-RYUKI!!】


現れた白い虚像が、幾重にもオーバーラップしたかと思うと、次の瞬間、ディケイドの姿は鏡の世界の騎士――仮面ライダー龍騎に変わっていた。


【ATTACK.RIDE-STRIKE.VENT!!】


天から落ちてきた手甲、ドラグクローを装着した右手を引き、D龍騎は腰を深く落とす。


「サービスだ。火力はヴェルダンにしてやる。――ハァッ!!」
「だぁっ!!」


シャナの贄殿遮那から生み出された紅蓮の奔流と、D龍騎のドラグクローから放たれる昇竜突破が、ファンガイアの軍勢の一角を、正面から根刮ぎ焼き払った。


――ギ、ガァァァ!!


後には、消し炭と化したファンガイアと、包囲網を突破する大きな通り道。


「行くぞ、ユウスケ、赤チビ!!」
「ああ!」
「赤チビって言うな!」


カロンの生み出すファンガイアによって、再び塞がろうとする道を、D龍騎、シャナ、クウガは駆け抜ける。
サガとマージョリーが、敵を蹴散らしていくのを目の端に収めながら。


◆◆◆


ガンッ!!


交差させたザンバットソードとキバーラサーベルが、ロブスターファンガイアのクレイモアと真っ向ぶつかる。


「クソッ、舐めんな!」


火花が散り、剣の重圧に足が笑うのを必死に抑え、Rキバーラはロブスターファンガイアを押し返す。


「腐っても王ですね。ですが!!」


クレイモアを構えたまま、ロブスターファンガイアの姿が残像を残して消え去る。


「無駄だ! キバで戦った時とは違う!!」


キバーラもまた加速能力を使い、超高速の世界に入った。
常人には認知すらできない領域での戦いが、二人の間で巻き起こる。
聞こえるのは、互いの剣がぶつかる際の、甲高い金属音だけだ。


剣を挟み、ロブスターファンガイアは不適に笑う。


「成る程。確かにこれで手数は互角ですね。でも、やはり貴方は私には勝てない」
「何っ!?」


言葉を交わす間にも、二人は壮絶な剣さばきで相手へのダメージを狙う。
一方が攻めれば相手が防ぐ、逆もまた然り。
だが、その均衡が破られるのにそう時間はかからなかった。


「はっ!!」


ロブスターファンガイアのクレイモアが、Rキバーラのキバーラサーベルを剣先で弾き飛ばしたのだ。
Rキバーラがそれに気を取られたのは一瞬だったが、ロブスターファンガイアにとってはそれで十分だった。


「しゃッ!!」


水の波動を纏った刀身が、Rキバーラを真一文字に切り裂いた。


「が、はっ!!」


傷口を抑えながらも、Rキバーラは追撃に備え、相手から距離を取る。


「奏夜、大丈夫!?」
「あ、ああ。何とかな……」


キバーラサーベルを持っていた右手を見ると、痙攣を起こし、痺れるような感覚に覆われている、


「いかに手数が互角だろうと、貴方の獲物は、所詮細身の刀剣。
片や私は、一撃必殺をも狙える重量級のクレイモア。剣で防御すればするほど、貴方の腕にはダメージが蓄積されていく。戦略としては、受けるのではなく避けるべきでしたね」
「くっ……」


普通なら、こんなことは有り得ない。
本来両手持ちのクレイモアを片手で軽々と操り、軽量の刀剣と同スピードで振るえるロブスターファンガイアのパワーがあってこそだ。


(やはり、一筋縄じゃいかないか……)


――奏夜は気づいていなかった。


基本的な実力差以上に、先刻の質問が、彼の心を大きく揺さぶり、奏夜の力を鈍らせていることに。
普段の奏夜なら――仮面ライダーキバである紅奏夜なら、一度戦い、戦闘スタイルを把握した相手に対し、こんな愚作は使わないだろう。


冷静な判断が下せないまでに――奏夜には余裕が無かったのだ。


(キバーラ。ウェイクアップだ……一撃に賭ける!!)


自分の状態に気付く由もなく、奏夜は残ったザンバットソードを構える。


「WAKE.UP!!」


キバーラのコールと共に、Rキバーラは紅の翼を羽ばたかせ、ロブスターファンガイア目掛けて特攻する。
Rキバーラの必殺技『ソニックスタップ』だ。


「愚かですね。最後の技がその程度とは」


流れるような動きで、ロブスターファンガイアは宙に指を走らせる。
彼女の魔皇力に引き寄せられ、大地の奥深くの水脈から、怒涛のような水流が吹き出した。


ソニックスタップの解除は効かず、Rキバーラの特攻は、彼女の操る水流に阻まれる。


(み、水で俺のスピードを……!!)


Rキバーラが理解できたのはそこまでだった。


「貴方が、転生の輪廻に沈みなさい」


――ザンッ!!


彼をせき止めていた水流を目眩ましに、ロブスターファンガイアがクレイモアの一撃を叩きつけた。


「ぐあぁぁぁぁ―――っ!!」
「きゃあぁぁぁ!?」


轟くような悲鳴を挙げ、剣と水流の勢いに負けたRキバーラは、地面に叩き付けられた。
小さなクレーターができたのと同じくして、Rキバーラの変身は強制解除される。


後には、激痛に呻く奏夜と、目を回したキバーラが残された。


「うっ……」
「きゃぷ~……」
「……まだ息がありますか。しぶとさは人間並みですね。忌々しい」


倒れた奏夜に近付き、クレイモアを突きつける。
確実に、トドメをさすためだ。


「せめて安らかに眠りなさい。愚かな信念を掲げた王よ」





◆◆◆





「そこまでだ」


【ATTACK.RIDE-BLAST!!】


「!!」


突如放たれたマゼンダ色の光弾、ロブスターファンガイアはすぐ様これに対処し、奏夜から離れた。


「よぉ、随分と楽しそうだな。俺達も混ぜてもらおうか」


戦場に駆け付けたディケイドがライドブッカーの銃口を向けながら、不敵に言い放つ。
傍らには、シャナとクウガの姿もある。


「奏夜、キバーラ、無事?」
「門矢、シャナ、ユウスケ……?」
「喋っちゃ駄目だ! 傷が深いんだから!」


クウガが奏夜を担ぎ上げ、シャナが目を回したキバーラを夜傘に隠す。


「ごめんね、シャナちゃん……私が、奏夜を守ってあげなきゃいけなかったのに……」


夜傘から聞こえる、キバーラの沈んだ声。シャナはキバーラを気遣い、頑張ってくれた友達に優しい言葉を返す。


「大丈夫。あとは私達が何とかするから、キバーラはゆっくり休んでて」
「……うん、ありがとう」


ややあって、キバーラの安らかな寝息が聞こえてきたのを確認し、シャナは仲間と友達を傷つけた敵――ロブスターファンガイアを、烈火の如き瞳で睨む。


「……世界の破壊者の一派、それに魔神の契約者ですか」
「名乗りは要らなそうね。……討滅させてもらうわ」


シャナの怒りを真っ向から受け止め、ロブスターファンガイアは疲れたような溜め息をつく。


「あなた達三人を相手にするのは、少しばかり骨が折れますね。やむを得ませんか」


次の瞬間、ロブスターファンガイアが掲げた掌には、金色の蝙蝠――キバットバット三世の姿があった。


「キバット!?」


シャナの呼びかけにも反応しないところを見ると、やはりロブスターファンガイアの魔術で操られているらしい。


ロブスターファンガイアはそのまま、腰に巻かれたベルトにキバットを止まらせる。


「変身……」


光の鎖が巻きつき、ステンドグラスのように弾け飛ぶ。


彼女が変身したのは、奏夜と同じ仮面ライダーキバ。
変身プロセスこそ同じだが、奏夜のものとは異なり、アクアクラスであるロブスターファンガイアのイメージを反映したのか、鎧の各部分は固そうな甲殻に覆われ、キバ・ペルソナはガルルフォームよりも鮮やかなマリンブルーに染まっていた。


「蒼い、キバ?」
「こいつは手間がかかりそうだな……。赤チビ、ユウスケ、お前らは下がれ」


前に進み出るディケイドを、二人は当然のごとく止める。


「待てよ士!! キバになったってことは、あいつは並みのファンガイアじゃないぞ! だったら三人で戦った方がいい!」
「お前の勝手な指図は受けないわ」
「なら奏夜とキバーラはどうする。コートに入れたり、背中に担ぎながら戦うわけにもいかないだろ」


ディケイドの正論に、二人は押し黙る。


「安心しろ。俺は全てのライダーをも破壊した男だ。今更あんなパチモンのキバにやられるかよ」
「大層な自信ですね。それともただの慢心ですか?」
「どうかな。やればわかるさ」


アナザーキバの挑発にも、ディケイドは余裕綽々といった口調だ。
彼はそのまま、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。


「本物の力ってヤツを拝ませてやるぜ」


【KAMEN.RIDE-KIVA!!】


新たなカードを入れたディケイドの身体を光の鎖が包み、ステンドグラスとなって弾け飛ぶ。
奏夜の使うキバと同じ、赤い仮面ライダーキバの姿がそこにあった。


「キバの鎧!?」
「キバにはキバってね」


驚く仕草を見せるアナザーキバに、Dキバは悪戯を成功させた子供のような気分だった。
しかし、驚いたのはシャナも同じだ。


「あいつ、キバにまでなれるの?」
「当然だよ。全ての仮面ライダーの力と、歴史を受け継ぐ仮面ライダー。それがディケイドだからね」


事情を知るクウガは別段驚きはしない。戦いの行方と、奏夜の容態を気にかけるだけだ。


「はぁっ!!」


奏夜のキバと酷似した構えを取り、Dキバは鋭いパンチを繰り出す。
対するアナザーキバは変身前と同様に、クレイモアの腹でそれを防ぐ。


「甘いな!」


Dキバはそのまま、アナザーキバのクレイモアを持つ腕を自分の両腕で挟み込んだ。
斬撃を封じ、キバは再びカードを取り出す。


【FORM.RIDE-KIVA.GARURU!!】


狼の鳴き声と共に、Dキバはガルルフォームへとフォームチェンジ。


「ハァッ!」


ディケイドライバーから出現したガルルセイバーを掴み、相手の右腕を離した瞬間に、その刃を振り抜く。


「くっ、小癪な!!」


ダメージをものともせず、クレイモアを振り被るアナザーキバに背を向け、DキバGFは次なるライダーカードを装填する。


【FORM.RIDE-KIVA.DOGGA!!】


「そら、よッ!!」


重装甲に覆われたパワー形態、ドッガフォームは、振り返り様に魔鉄槌・ドッガハンマーをスイングする。


「ガハッ!!」


さすがに耐えきれなかったのか、重厚な一撃に押し負けたアナザーキバは、数メートル先まで吹き飛ばされる。


「まだまだ行くぜ!」


【FORM.RIDE-KIVA.BASHER!!】


バッシャーフォームの持つ魔海銃・バッシャーマグナムから発射された水球が、ドッガハンマーの攻撃に怯んだアナザーキバを襲う。


「ちぃっ!」


アナザーキバは手を突き出し、バッシャーマグナムと同じように魔皇力の籠もった水球を放ち、DキバBFの弾を叩き落とす。


「ほう……パチモンにしては中々やるじゃないか」
「貴方こそ、さすがは世界の破壊者と謳われるだけのことはありますね。そこの王とは比べ物になりません」


多少ダメージを喰らいながらも、アナザーキバはまだまだ余力があるらしかった。


(ユウスケの言う通り、ただのファンガイアじゃなさそうだな。少なくともワタルの親父と同等の力は持っている)


敵の強さを再認識し、DキバBFは、更に畳み掛けようとするが……。


「ですが、これ以上の戦いは無駄なようですね」
「……何だと?」


DキバBFの目の前で、アナザーキバは変身を解除し、レティシアの姿にまで戻る。


「おい、何の真似だ。まさか今さら敵前逃亡かよ」
「そう思いたくばどうぞ。 貴方がいかに強者かは分かりました。ここで貴方に勝てたとしても、残る二人を相手にするだけの力は残らないでしょう。
今戦ったのは、あくまで貴方の力を試す為ですよ」
「俺がこのまま逃がすと思うのか?」
「逃がすしかないんじゃありませんか? そこの方が背負う愚かな王――早くしないと手遅れになりますよ」


よく見ている。


士は相手の掌で踊らされた気分だったが、確かに奏夜の容態は素人目に見ても危ない。 できるだけ早く、医者に見せるべきだろう。


「狸野郎が。あいつの容態を見越して俺と戦ったってわけか」
「何とでも。私は無理な戦いはしない主義でしてね。 私達の――いえ、私の果たすべき目的を達成するまで、私は決して死ねないのです」


ローブを翻し、レティシアはDキバBFに背を向ける。


「愚かな王が目覚めたら伝えてください。貴方の思想は、所詮ただの綺麗事だと」


その言葉を最後に、レティシアの輪郭はぼやけ、周囲の景色へと溶けていった。


「……“私”の果たすべき、目的?」


変身を解除した士の言葉は、誰に届くでもなく、吹き抜ける風に浚われていった。



  1. 2012/05/01(火) 00:48:22|
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第二十一話・アチェレランド/崩壊の兆し.前篇


「行くぞ!!」


Rキバーラは、ザンバットソードとキバーラサーベルを交差させ、軸足に力を込める。
生み出された爆発的な瞬発力により、Rキバーラはディエンドとの距離を一瞬にして詰めた。


「おっと!?」


ディエンドは一対の剣を、ディエンドドライバーの銃身で受け止める。
カキン、と軽い金属音が響くが、その音をディエンドが捉えた時、Rキバーラは既に彼の背後にいた。


(早ッ……!!)
「っはぁ!!」


ディエンドでさえも瞠目せざるを得ないスピード。
感知する隙さえも与えない刃が、ディエンドを袈裟に斬りつける。


「このっ……」

【ATTCK.RIDE-ILLUSION!!】


電子音と共に、ディエンドの姿がぶれ始めると、生まれた残像が実体化し、新たに二人のディエンドが現れた。


「今度は分身……あいつ、本当に何者なんだ?」
「攻撃が多彩過ぎる。いくら奏夜でも……」


見守るしかない悠二とシャナを嘲笑うように、ディエンドは新たなカードを装填する。


【ATTCK.RIDE-BLAST!!】


「今度のは、そのスピードでも避けられないよ」


三丁のディエンドライバーから、追尾能力のある【ディエンドブラスト】が放たれる。流星群の如く飛来する光弾、しかしRキバーラは動じない。


「確かに避けるのは難しそうだ。――それなら」


Rキバーラは構えた二本の剣を、上空目掛けて振り抜く。
目にも止まらない、残像さえも生み出す高速斬撃に阻まれ、シアン色の光弾は全て撃ち落とされる。


「全て止めればいいんだよな」


唖然とする人間の中で、悠二が隣に立つ少女と白騎士に尋ねる。


「……シャナ、名護さん、見えた?」
「初撃だけ。あとは朧気にしか見えなかった」
「私も似たようなものだ」


だが、驚愕するのは彼らだけではない。


「い、一瞬であれだけの弾丸を……」
「すごーい! びゅんびゅん動いてて全然見えないや!」
「あの人、凄いです……。私よりも完璧に、キバーラを使いこなしてる」


はしゃぐ彩香に対し、夏海はやや羨望が混じった瞳を浮かべていた。
彼女が仮面ライダーキバーラに変身した回数は、未だに両手で数えられる程度。
片や奏夜は、キバとして長年戦い続けていた歴戦の戦士。
経験による戦闘スキルの差は、もはや言うまでもないレベルだった。


ディエンドの口調から余裕は消えていたが、それでもまだ、皮肉っぽい笑い声を、仮面の下から漏らす。


「へぇ……キミ、そんな鎧も持ってたんだね。この前僕が“魔皇竜”を盗んだ時は、使っていなかったけど」
「ああ、今は諸事情でキバが使えないんでな。それまでの代用品だ」
「ちょっと! 私をいらない子みたいに言わないでよ!」


バックルのキバーラから抗議が聞こえてきたが無視する。


「確かに、基本スペックは『黄金のキバ』をも凌いでいる。素晴らしいお宝だ――けど、その鎧には何かリスクがあるようだね。でなければ、キミは普段からそっちの鎧を使っているはずだ。一番可能性がありそうなのは……変身の時間制限ってところかい?」
「……さあて、それはどうかな?」


誤魔化すRキバーラだが、ディエンドの読みは当たっていた。
黄金のキバよりも、変身に要する魔皇力が多いRキバーラには、長時間変身を維持できない、という弱点がある。


相手が持久戦を狙うのを避ける為、あまり知られたくない事実ではあったのだが、ディエンドには無駄だったようだ。
Rキバーラは再び、二本の剣を重ねる。


「例え時間制限があろうが無かろうが、お前をボコボコにするのに、そこまで時間はかけないさ」
「ふっ、ボコボコにされるのはどちらだろうね」


二体の分身を解除し、ディエンドは新たな二枚のカードを取り出した。


「君には、これなんかちょうどいい」


【KAMEN.RIDE.OUJA!!】
【KAMEN.RIDE.ZANKI!!】


「行ってらっしゃい」


ディエンドがトリガーを引くと、七色の影がオーバーラップし、二人の戦士の姿を象った。


「祭りの場所は、ここかぁ……?」


首をゴキリと鳴らすのは、コブラの意匠を凝らした紫色の戦士――仮面ライダー王蛇。
ギター型の武器、音撃真弦・烈斬を担ぐのは、筋肉質な黒い外皮を持つ戦士――仮面ライダー斬鬼。


「またあの召還能力か……」
『厄介な能力だな。蛇と……鬼か?』


ザンバットから聞こえる次狼の声に、


「鬼だ」


斬鬼が次狼と似た声のトーンで答え、Rキバーラへ向かってくる。


「っと!」


烈斬をまるで槍のように使いこなす斬鬼の攻撃を、ザンバットソードで受け止める。


「俺も混ぜろぉ……!!」


そこへ別サイドから、王蛇のベノサーベルが振り被られた。
キバーラサーベルで防御するも、王蛇は鬼気迫る勢いで剣を押してくる。


「どうした、この程度か……。俺をイライラさせるなよぉ……!!」
「知るか! そんなイライラするならサバでも喰っとけ!! カルシウム含まれてるから!」
「サバじゃねぇ……!!」


どこかで聞いたようなやり取りをしつつも、Rキバーラはきっちりベノサーベルを弾き返す。

「高速移動で一気にカタをつけるぞ!!」
「わかった!」


キバーラが応じると、Rキバーラは再び超高速の世界へと姿を隠す。


「ホウ……本当に楽しいなぁ、ライダーってのは……!」


Rキバーラにも動じず、王蛇は召還杖ベノバイザーの上部、カードリーダー部分を開き、アドベントカードをスロットする。


【UNITE.VENT】


電子音に呼び寄せられ、何処からともなく王蛇の契約モンスター、ベノスネーカー、メタルゲラス、エビルダイバーが現れる。
召還された三体が一所に集まり、一体のモンスター『ジェノサイダー』へと姿を変えた。
すかさず王蛇は、新しいカードを装填する。


【FINAL.VENT】


ジェノサイダーの腹部が開き、小型のブラックホールが顔を出す。
圧倒的な吸引力が、Rキバーラのスピードを鈍らせ、高速移動状態が解除される。


「なっ、そうきたか!?」


加速を維持しようとするが、直ぐ吸引力に阻害される。
すかさず、ジェノサイダーの背後にいた斬鬼が、音撃真弦・烈斬に、バックルの音撃震を装着し、本体下部の刃を展開する。


「音撃斬!! 雷電斬震!!」


斬鬼が音撃真弦・烈斬をかき鳴らし、激しいビートの音楽が周囲一帯を支配する。


「なんだ? あっちの鬼、いきなり音楽弾き出したけど」
「いえ、ただの音楽じゃないわ! 奏夜、離れなさい!!」


悠二の観察通り、端から見れば、ただの野外ライブか何かにしか見えないだろう。
しかしシャナは、斬鬼の奏でる旋律に、存在の力に近い何かを感じ取っていた。


「せいやっ!!」


しかし、時すでに遅し。斬鬼は曲を弾き終え、音撃真弦を地面に突き立てた。
清めの音が地を伝い、Rキバーラの足元を吹き飛ばす。


「うおっ!!」


踏ん張る力を失い、浮き上がったRキバーラが、ジェノサイダーへ吸い込まれていく。


『奏夜(くん)!! キバーラ!!』


シャナとイクサが駆け出すとほぼ同じく、


「うるぁぁぁ!!」


吸い込まれるRキバーラの背後から、追い討ちをかけるように王蛇が、吸引力を上乗せしたキック【ドゥームズデイ】を叩き込む。


「終わりだ!!」


斬鬼もまた、ジェノサイダーの背後からジャンプし、音撃真弦を振り被る。
二体のライダーによる挟み撃ちの状態だ。


「……なーんちゃって」
「うふふ~、WAKE.UP!!」


おどけた口調で、Rキバーラは内に秘めた魔皇力を高める。
キバーラのコールと共に、真紅に輝く――シャナの物にも似た紅の翼が、Rキバーラの背中から広がった。
羽ばたく翼が、王蛇と斬鬼の攻撃から、Rキバーラを上空へ逃がす。


『なにっ!!』


「そのヘンテコモンスターの上空なら、吸引力も何もねーだろ!!」


今度は逆に、王蛇と斬鬼の方が、空中で身動きが出来なくなっていた。
これを見逃すRキバーラではない。


「じゃあな。――はぁっ!!」


二刀を構えたキバーラが二体のライダーに突撃し、彼の必殺技『ソニックスタッブ』が発動。
翼による加速と、持ち前のスピードを併用した一撃は、王蛇と斬鬼に敗北すら通知しない。


『ぐあぁぁぁっ!!』


二体のライダーが、七色の影となって消えたのを目の端に収め、Rキバーラは勢いを殺さず、そのままディエンドへと特攻していく。


(夏メロンのキバーラより速いし、避けるのは無理だな……なら)


ホルダーからカードを取り出し、素早い動作で、ディエンドはライドリーダーへ装填する。


「迎え撃つまでだ!!」


【FINAL.ATTACK.RIDE-DI.DI.DI.DIEND!!】


ディエンドライバーの銃口を正面に向ける。彼の必殺技『ディメンジョンシュート』の発動動作だ。


「くらいやがれっ!」
「ハァッ!」


ほぼ同じタイミングで、Rキバーラが二刀を振り被り、ディエンドがトリガーを引く。


二人の必殺技が、正面からぶつかった――



◆◆◆


「……お前ほど発言が信用できないヤツはいないな、海東」


ぶつからなかった。
銃を持つディエンドの腕と、Rキバーラの二刀を、何者かが差し止めていたからだ。


【TIME.OUT】


電子音が鳴り、黒いボディに赤い複眼の戦士、仮面ライダーDファイズ・アクセルフォームが現れる。


「この世界にいる間、お前の顔を見なくていいと思った俺の喜びを返せ」
「……僕は奪ったものをそう易々とは返さないよ、士。君の喜びとやらもね」


ディエンドが銃を収めたのを見て、DファイズAFは変身を解除し、ディケイドが彼の腕を放す。


「ほら、あんたも剣収めて。いきなり拳で語るっていうのも良くないだろ」
「その声……あんた、ユウスケか?」


Rキバーラを止めていたのは、小野寺ユウスケが変身した超古代戦士――仮面ライダークウガ。
その運動能力特化形態、ドラゴンフォームだった。
その手には、棒きれから変化させたドラゴンロッドが握られており、長い柄はRキバーラの二刀を受け止めていた。


「なんの真似だ。俺はそいつに盗られたものを取り返したいだけなんだが?」
「と、とりあえず、剣を押すの止めてくれないか? 足が笑ってきた」
クウガDFに言われ、Rキバーラも渋々剣を収める。


「まーまー。あんたの言い分は、海東の所業を考えればすごーく分かるんだけどさ。もうちょっと話し合わないか? 闘うのなんて、そうした後でも遅くないだろ?」


RキバーラはクウガDFをしばらく凝視した後、


「……ふん、一理あるな。だが話合いがどうなろうと、俺の友達はどんな手を使ってでも返して貰うぞ」


静かに変身を解き、Rキバーラは奏夜の姿へと戻る。
ディケイド、ディエンド、クウガも変身を解除し、それぞれ本来の姿に戻った。
シャナ、悠二、イクサらが状況について行こうとする中、士が奏夜に向けて口を開く。


「あんたが“この世界のキバ”だな」
「お前、何でそれを知って……いや」


“この世界”という単語から、奏夜はある名を連想する。


「そうか。お前がディケイドってヤツだな」
「ほう、俺を知ってるのか」
「ああ、お前のことは聞いている。世界を破壊する悪魔だとな」


聞き覚えのあるフレーズに、士の顔がやや曇る。


「……チッ、随分と懐かしい手を使ってきやがったな。鳴滝のヤツ……」


吐き捨てるように毒づき、士は奏夜に向き直る。


「この世界について、いくつか尋ねたいことがある。こっちのこそ泥の話も聞かせてやるから着いてこい」
「オイオイ、物の頼み方がなってないな。『着いてきてください』じゃないのか?」


互いの不遜な対応が癪に触ったのか、士と奏夜の間に火花が散った。
その場にいた全員が、二人の性格を照らし合わせ、思った。


(この二人、絶対相性悪いな)


◆◆◆


「白状しなさい、あなたがニセモノでしょ!?」
「言いがかりはやめて頂戴! あなたこそニセモノなんじゃないの!?」


場所は移って光写真館。
士達はあの後、『内緒話ができる所』という括りでここを紹介し、キバや紅世に関わる人間を招いていた。
――その際、ディケイド一行のキバーラと、奏夜の連れたキバーラが鉢合わせてしまい、前述のようなやり取りになってしまったのだが。


「……なんか、すみません。奏夜さん」
「いや気にしないでくれ、こっちにも問題はあるから」


苦笑いしながら、奏夜と夏海がキバーラを諌めている内に、店の奥から夏海の祖父――光栄次郎が現れる。


「ささ、皆さん。コーヒーでもいかがですか?」


栄次郎が、シャナ、悠二、吉田、田中、佐藤といった1年2組のメンバーに、コーヒーを振る舞う。


「……コーヒー好きじゃない」
「シャナ、折角出してくれたのに失礼だろ。吉田さん、佐藤と田中にも回してあげて」
「はい」
「あ、どうも」
「わざわざすみません」
「ハハハ、なんのなんの。しかし今日はまた大所帯だねぇ」


佐藤と田中の礼に笑顔で返しつつ、栄次郎を館内を見渡す。
先の1年2組メンバーに加え、奏夜と名護。合流した太牙とマージョリー。
士達ディケイドメンバーを含めれば、計15人の人間がこの写真館に集まっているのだから。


「――と、ここまでが俺達の素性だよ」
「世界を救う為に、様々な世界を旅している、か」


ここにきてまず、士達(士が説明を拒否した為、実際に説明したのはユウスケだったが)は、自分達が何者なのかを明かした。
ディケイド、様々なライダー世界、ショッカー、その他諸々を余すところ無く。


「俄には信じがたいが……士君やユウスケ君の変身を見れば、信じるしかあるまい」
「君達は、僕や名護のことも別の世界で知っていたのかい?」
「はい。名護さんにも太牙さんにも、ポジ・キバの世界でお会いしたんです」


太牙の疑問に答える夏海だったが、やはり名護も太牙も困惑しているらしかった。
まだ半信半疑なマージョリーが口を開く。


「世を渡って長いけど、平行世界ねぇ……」
『こりゃまた突飛な話だぜ。ヒッヒヒ』


グリモアから聞こえるマルコシアスの声に、ユウスケと夏海がびくりと肩を揺らす。



「ほ、本が……」
「しゃべってます!!」
「わー!! 凄い凄い!! しゃべる本なんて初めて見た!!」


彩香がグリモアに目を輝かせるのを見ながら、奏夜が言う。


「ま、お前らの素性に関しちゃ信じてやるよ」
「随分と物分かりがいいな」
「ああ、まぁな」


奏夜はちらりとシャナとマージョリーを見やる。
彼女達の持つ力も、本来は異世界『紅世』からもたらされたもの。
異世界の存在が確かなら、他の異世界が存在する可能性は否定できない。


「じゃあそろそろ、お前達のことについても話して貰うぞ、紅奏夜。俺達の素性を聞いて、今更何も教えないってのはナシだぜ」
「説明したの主にユウスケと夏海ちゃんじゃねぇか。門矢はただコーヒー飲んでただけだろ」
「細かいことをネチネチと……みみっちい器をお持ちだな。この世界のキバは」


バチリ、と再び奏夜と士の間に火花が光る。


(お互い俺様気質っぽいもんなぁ……)


やはり相容れないのか。
二人の授業を受けている一年二組メンバーがそう思っていると……。


「二人とも止めて下さいっ!! 笑いのツボ!!」


仲裁に入った夏海が、二人に親指を突き立てた。


『ぷっ、あはははははははははは!!』


苦しそうに笑い出す奏夜と士。
突然の事態におののく一同に、ユウスケは柔らかな笑みを向ける。


「あ、大丈夫大丈夫。いつものことだから」
「いつものことって……」


どんないつもなんだろう。
悠二は、爽やかなユウスケの笑顔の裏に、底知れない苦労を感じ取った。



運悪く巻き込まれた形の奏夜は、ひぃひぃと腹を抱えながら、同じく笑い疲れた様子の士に向き直る。


「た、確かファンガイアやキバについては知ってるんだったな……ならまずは、紅世のことから話してやるよ」


◆◆◆


「――ここまでの話、わかったか?」
「ああ、だいたいはな」


紅世、フレイムヘイズ、徒のことを聞き終え、士は唸る。


「人間の持つ存在の力を喰う徒に、徒を狩る討滅者、フレイムヘイズか……」
「シャナちゃんやマージョリーさんが、そのフレイムヘイズなんだよね?」


ユウスケの問いに、シャナとマージョリーが頷く。


「私が『炎髪灼眼の討ち手』で、そっちが『弔詞の詠み手』。紅世の王を身に宿し、世界のバランスを保つ為に戦う存在よ」


堂々とした名乗りを聞きつつ、夏海は物思いにふける士を見る。


「……士君、ポジ・キバの世界でも、ネガ・キバの世界でも、フレイムヘイズなんて言葉は聞きませんでしたよね」
「ああ、やはりこの世界は、何か他の世界と異なっているのかも知れないな」
「そりゃそうさ。ここは『完全な融合を果たした世界』だからね」


ここに来て、ずっと黙ったままコーヒーを啜っていた海東が割り込んできた。


「『完全な融合を果たした世界』? ……どういう意味だ、海東」
海東は「言葉通りの意味さ」とコーヒーカップを置いた。


「かつて、士が中心となって起こった世界の融合……引き寄せられた世界同士がぶつかれば、両方の世界が消滅するのは知ってるよね。
しかし、ぶつかった2つの世界が、何かしらの意味で“似通った”世界だった場合、稀に消滅を免れることがある。
消滅を免れた世界は、崩壊を伴わない完全な融合を果たし、以後、世界の融合に巻き込まれることもない」
「その『完全な融合を果たした世界』が、このキバの世界なのか?」


「そういうことだよ」とユウスケの疑問を解消し、海東はコーヒーにミルクを追加する。


「言わば、ここはキバとフレイムヘイズの物語が融合した世界なのさ。知る人間には【BLAZING.BLOODの世界】とも呼ばれているけどね」
「BLAZING.BLOODの世界……」
「ずいぶんと詳しいな、海東。こそ泥稼業の為の下調べか?」


棘のある士の言い回しに、海東は肩をすくめた。


「前に来たことがあるから知ってるだけだよ。そこのキバとも、その時に会ったんだ」
「……そーいや、その話がまだだったな」


がたりと席を立ち、奏夜は海東に詰め寄る。


「おい海東大樹、俺の友達を何処へやった。今すぐに返せ」
「そーだぞ海東、今のうちに返して、穏便に済ませた方が良いって」


なるべく戦いになるようなことは避けたいユウスケも、説得に加わるが、海東は歯牙にもかけない。


「さっきも言っただろ。返せと言われて返すくらいなら、最初から盗みやしないってね。
百歩譲って返すとしても……そうだな。『魔皇竜』に匹敵するお宝を提供してくれるっていうなら、返してあげてもいいけどさ」
「んだとぉ!? てめえ何様のつもりだ!!」


海東に掴み掛かろうとする奏夜を、今度は名護と太牙が諌める。


「落ち着きなさい奏夜君。キミらしくないぞ」
「ここで拳に訴えても、状況を悪くするだけだ。今は目の前のことを片付けよう」


二人の正論に、奏夜は舌打ちをして海東から離れる。


(なんだか、今までのキバとはだいぶ違う人だなぁ)


ユウスケは思う。


今まで出会ったネガ世界のキバであるワタル、ポジ世界のキバである紅渡、二人と照らし合わせてみると、紅奏夜はどちらにも似つかない。
内向的だった二人に比べ、ガンガン自分の感情を出していくタイプに見えた。


そこまで考え、ふとユウスケは単純な疑問を口にする。


「そう言えば奏夜さん、キバの鎧はどうしちゃったんですか? 海東と戦ってた時は、キバーラの力を借りてたみたいだけど」
「……」


表情を曇らせ、奏夜は椅子に深く座り込む。


「奪われたんだよ。つい数日前、海東大樹とは違うヤツにな」
「奪われたって……王の証を!?」


ユウスケが目を丸くする矢先、士がクックと口角を吊り上げた。


「おいおい、反省を活かせてないな。海東に友達とやらを盗まれて、今度はキバの鎧まで盗まれたのか? いい仕事をしていらっしゃる」
「おい士、そんな言い方……」
「いいよユウスケ。そこに関してだけは、門矢の言う通りだ。病み上がりとはいえ、油断してた」


あっさり自分の非を認める奏夜。それだけ、今回の出来事は思いもよらない事態であり、また屈辱だったのだろう。


「だから落とし前は俺がつけなきゃな」


コーヒーを一気に煽り、奏夜は玄関口の扉に手をかける。


「奏夜。どこにいく気だ?」
「決まってるだろ兄さん。あのファンガイアを探してキバットを取り返す。目の前の問題から片付けようって言ったのは兄さんじゃないか」
「それはそうだが……」


言い澱む太牙の後ろから、士が奏夜に声をかける。


「どうしてもっていうなら、俺が力を貸してやってもいいぜ、紅奏夜」
「これは俺の問題だ。部外者を巻き込むわけにはいかない。第一、悪魔なんて呼ばれてるヤツを信用できるか」
「……ああ、そうかい」


館内に剣呑な空気が流れたが、奏夜はしばらく士を睨み付けた後、キバーラを引き連れて、写真館から出て行った。


「お前らの先生ってのは、あまり好感が持てるヤツじゃないな」


士に指摘されるまでもなく、全員が当惑していた。
不遜な態度こそすれ、奏夜があそこまで淡白な態度を取ることなど、今までに一度もなかったからだ。


「今までのキバとはまったく違う。あんなのが王じゃ、未来は暗いな」
「奏夜のことを悪く言うな!!」


誰もが一瞬、誰が叫んだのかわからなかった。
声の主の隣に座っていたはずの、悠二や吉田でさえも、だ。
止まった思考を再起動し、ようやく声を張り上げたのが、シャナだったと気が付く。


周りに構わず、シャナは士に言葉をぶつける。


「会ったばっかりで、奏夜のこと何も知らない癖に、知ったような言葉並べないで!!」


無性に腹が立った。さっきの態度からすれば、士の奏夜に対する判断は仕方がないとは思う。 しかしそれでも、士の言い方には我慢ならなかったのだ。


それだけ、シャナにとって奏夜の存在は大きい。口にこそ出さないが、ここにいる全員にとっても、それは同じことだろう。
それを朧気ながら感じ取った士は、


「……」


じっとシャナの鋭い目線を受け止め、溜め息をついた。


「……成る程、そういうことか。面倒くさいヤツだ」
「?」


士の発した言葉の意味を理解できず、首を傾げるシャナ。
しかし次の瞬間、彼女の瞳が緊張に揺らいだ。
傍にいたマージョリーも同様である。


『気付いたか、シャナ』
「うん、存在の力の動きがある」
『こりゃあ中々の大物みてぇだな、ヒャハハ!!」』
「ファンガイアの気配もあるわね。こっちも結構デカいわ」


言うが早いか、二人のフレイムヘイズは勢いよく写真館から飛び出していった。


「あっ、シャナ。僕も……!!」
「待て悠二くん」


後を追いかけた悠二を、太牙が引き止める。


「君は純粋な戦いでは、役に立てないだろう。ここに残っておいた方がいい」
「でも、またミサゴ祭りみたいな手を使って来たら……!!」
「なら尚更ここにいるんだ。君の仕事は戦いじゃない。得た情報から、何か策を見つけることだろう? 情報を持ち帰るのは、僕らの仕事だ」


悠二を落ち着かせて、太牙は名護を見る。


「名護は、一美ちゃんたちを見ていてくれないか? ここに連中が来ないとも限らない」
「わかった。任せなさい」


名護が頷く傍ら、ユウスケも士を促していた。


「早く行くぞ士、怪人退治なら、俺達の出番だろ!?」
「……まったく世話の焼ける」


士は渋々と立ち上がり、夏海を指差す。


「夏みかんは、そこのこそ泥を逃げないように見張ってろ。ついでに、そこのお気楽娘もな」
「わかりました。士君もユウスケも、気を付けてくださいね」


夏海の気遣いと、彩香の「誰がお気楽娘かー!!」という抗議に見送られながら、士、ユウスケ、太牙もまた、写真館から飛び出していく。
  1. 2012/05/01(火) 00:47:30|
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